パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その111 午前5時~午前5時半

 【午前5時10分~】


 「エ、エリック様? これは一体どうしたことですか!?」

 「ごめんねー。事情は後で話すよーここを通してもらうね」

 謁見の間を抜けた先、2階の国王の私室へと繋がる廊下で、数名の騎士に止められた。
 
 外に居る騎士はスルーしたが、流石にこの人数で2階へつながる階段へ移動しているのは怪しいと思われた。
 そして訝しむ騎士達が質問をしてきた。

 「ここから先は国王の私室がある階段しかありませんよ? 国王に用であれば起きるのを待ってから……」

 「いやあ、それじゃ意味が無いんだよねー……殺しに来たんだから」

 ここまで来て隠す必要は無いと判断したエリックは声を冷たくして言い放つ。
 一瞬気圧され、冷や汗をかきながら呆然とするがすぐに怒号をあげる。

 「む、謀反か! 副隊長ともあろうお方が恥知らずな、ここから先は一歩も通さん!」

 「あの国王に仕える意味なんてあるのかい?」

 「そ、それでもあのお方は<恩恵>を持っておられる! 国王で間違いないのだ!」

 エリックは時間が無いとため息をついて一言だけ言う。

 「頭が固いねー……。君みたいなのを誘わなくて本当に良かったよ。君達、任せていいかい?」

 「「はっ!」」

 すぐにエリック側も相手よりも多い数の騎士が前に出て牽制を始めた!
 その脇をエリックとライノスが抜けていく。

 「おのれ! ぬう!? ええい! 動ける者はおらんか!!! 謀反だ! 国王様が危ない!」

 追いかけようとしても阻まれてしまい、仕方なく大声を上げて増援を呼ぶ。
 その間にエリックは階段を駆け上がり、目的の部屋はすぐそこまで見えていた。

 「あそこだ……! 踏み込……」

 「……! 伏せろエリック!?」

 エリックが扉に手をかけようとしたその時、扉を突き破って剣が出てきた!
 ライノスが頭を下げさせていなければ今ごろは眉間から脳髄に剣が達していたであろう。

 「……」

 「……」

 ドゴン! ガラガラ……

 扉が粉砕され、倒れかかってくる扉の破片を押しのけながら立ち上がるエリックとライノス。

 無言で立ちはだかるのはフルフェイスの兜とフルアーマー身を包んだ例の護衛二人だった。

 「やはりこいつらが鬼門か……」

 すると奥で悲鳴があがる。

 「な、なななななんじゃ今の音は!? き、貴様はエリック、それにライノスか? どうしてここに?」

 豪奢な寝間着とローブに身を包んだ国王、ゴナティソが寝室から出て来た所だった。
 エリックは口元に笑みを浮かべ、剣を抜いて国王へと告げる。

 「僕は……僕たちはこの国を救うため……お前を殺しにきた! 僕の両親、そしてお前におもちゃにされた人達の恨み、今こそ思い知れ!」

 「ぐぬぬぬぬぅ……言わせておけば……! リック! ガーベル! 儂は生き残らねばならん、ここは任せたぞ! 覚えていろ……」

 コクリとフルフェイスの騎士が頷き、エリックに襲いかかった!
 しかしその攻撃はライノスが捌く!

 チラリと横を見ると別の部屋へ駆けて行く国王の姿があった。
 迷いが無いその動作に、どこかに隠し通路があるのかもしれないと思ったライノスはエリックへ叫ぶ。

 「エリックどこかに外に通じる出口があるのかもしれん、隙を見て追え! 逃がしたら負けだ、ここはオレ達が食い止める!」

 他の騎士もライノスの言葉で雄叫びを上げていた。気合いは十分といったところだ。

 「(隠し通路……外から調べた時はそんなものは……まさか地下……?)死ぬなよー? ライノスにはやってもらう事がまだあるんだからね」

 「それはこっちのセリフだ! 来るぞ!」
 
 「……」

 「……」

 剣を持った騎士リックと斧を持った騎士ガーベルが、ライノス達に襲いかかる!
 



 ---------------------------------------------------




 【5時半~】


 「そろそろ時間であります」

 「うまく行っているでしょうか?」

 フレーレ達はウェンディの案内で空き部屋の多い通路へと来ていた。
 まだこの時間は寝て居る者も多い。メイド達は西側に居住しているが、庭師やソムリエといった局地的な職業の者は東に居住している。故に人数も少ないので、火を点けても被害は多くないと踏んだのだ。

 「ここからでは何とも……でも成功すると信じていますから」

 通路に油を撒きながら微笑むイリス。これで準備は整った。


 「よぅし! 私はりきっちゃうわね!」

 「張り切らなくていいんですよ!? ちょっとボヤを起こすだけですから!」

 <(ぴー……ちゃんと止めておかないと何するか分からないわよ……)>

 軽めの皮鎧に身を包んだフレーレとフォルサは相変わらず変装をしていた。
 ジャンナの予想は外れ、特に何事もなく油を撒き終えた。

 そして予定されていた5時半を回り、フレーレ達は通路の隅にそれぞれ散り、松明を油に近づけ火を点けた。

 ボボボボボボボ……

 隅から通路の窓側に撒いた油に燃え移り、たちまち火の手が上がる!

 「すぐに燃え上がります! 部屋を開けながら脱出しますよ!」

 フレーレとフォルサ、そしてイリスが頷き、一斉に扉を叩いたり開けたりしながら大声をあげ始めた。

 「火事です! 火事ですよぅ!! 逃げてくださいー!!」

 「早く起きないとこんがり焼けるわよ!」

 すると、気配のあった部屋から次々と叫びながら人が出てくる。
 
 (うわ!? 本当だ!? さ、財布! 財布だけは……)

 (煙が凄い……巻かれるな!)

 (うわーんおかあちゃーん!?)


 「ここは2階がありません、これで大丈夫でしょう。では私達も……」

 外に出ようと出口側に向かい、角を曲がったその時だ!

 ザシュ……!

 「うぐ……!?」

 煙の中でウェンディの腕が斬られたのだ!
 そして影から騎士が現れた!

 「み、見てたぞ……! お、お前達が火を点けたのを!」

 「どういうことか説明してもらおうか?」

 剣先をこちらに向け睨みつけてくる騎士。それを見てイリスが声をあげる。

 「ここには見張りや徘徊は居ないハズなのに!?」

 「ちょうど夜勤明けで用を足しにトイレに行ったら朝っぱらからこそこそしている奴等を見つけたんだ、こっちのトイレが近いから来ただけだが……面白いものが見れたなあ? 女騎士か? 黙っておいてほしかったらちょっといいことをしようや?」

 「そ、そしたら……はは、黙っておいてやるよ!」

 エリック達が声をかけなかった騎士はおおむねこのようにある意味男らしい思考を持つものか頑固者が多い。この二人は前者のようだ。

 「騎士の風上にも……」

 「おっと、それは言いっこなしだろ? 放火魔さんよ!」

 「こんなことをしている場合じゃないでありますが……」

 そこで前へ出るフレーレとフォルサ。

 「わたし達が主犯です、好きにしてくださって構いませんよ」

 「ほ、ほう素直じゃないか……見た目もいい……楽しめそうだ」

 そんなことを言いながら、フレーレに手を伸ばそうとした騎士が突然弾かれ吹き飛ぶ。
 フォルサが横から殴りつけていたからだ!

 「でも、私達を倒せたら、ね?」

 「お、おい大丈夫か……!」

 「く、くそ……年増は引っ込んでろ! 俺達はお前以外の三人に用があるんだよ!」

 そのセリフを聞いたフォルサの眉がピクっと動いた。





 ---------------------------------------------------




 フレーレ達が火を点ける少し前……



 【午前5時21分】

 
 
 「……んん?……何だか騒がしいですねぇ……」

 ゲルスがベッドから起き上がり、塔の窓から外を見てみると、国王の私室と思われるあたりの窓ガラスが割れたり、椅子や装飾品が投げ出されて、ついには騎士が窓から落ちるなど混迷をを極めていた。

 腕をくっつけたり空を飛んだりするがゲルスも人間である。睡眠も取るし食料を必要とし、排泄も行うのだ。なので、予想外の出来事があれば驚きもする。

 「嫌な予感はしていましたが、まさかこんなに早く動くとは! 狙いは恐らく国王、まずは国王を確保せねば……」

 ゲルスは即座に着替え、窓から飛び立とうとした。

 しかしそれは出来なかった。

 「ぐあ!?」

 「お出かけか? まだ朝は早いんだ、ゆっくり寝てていいんだぞ? ……永遠にな……」

 ゲルスが飛び立つ瞬間、おもりのついた鎖がゲルスの足に巻きつき、引っ張られたのだ。

 それをやったのは当然、ゲルスを追う彼である。

 「お前は……ベルダーか! どうしてここに……まさか昨日の侵入者は」

 「分かったか? だが答え合わせをする必要は無いな、ここで死ね!」

 赤いダガーを抜き、ベルダーは倒れたゲルスへと飛び掛かった!!

「パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く