パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その109 ゲルスの勘とエリックの勘

 

 伝令をアンジェリアさんが出してからしばらく。

 エリックとライノスさんが登城し、私達は1階にある応接間へ集合した。私ことルーナにアンジェリアさん。そしてエレナだ。

 エリックを待っている間は部屋に居たが、現時点では国王はおろか、エレナ以外のメイドも部屋には来ない。
 やっぱりアンジェリアさんが居るからだろうか?

 全員がソファに腰掛けると、エリックが口を開く。

 「やあー、遅くなって悪かったねー。ちょっと一悶着あって」

 「あれを一悶着で片付けていいのか……?」

 エリックは相変わらずだけど、ライノスさんは酷く疲れていた。
 何があったか聞きたかったけど、先にエリックが呼ばれた理由を尋ねて来た。

 「それでー? 昨日の今日でいきなり呼び出しとは驚いたけど、何かあったー?」

 「ええ、昨日の夜にちょっと城内を探索したの。東と西に塔があるのは知ってるわよね?」

 「勿論ー。あそこは国王曰く『賢者様』が居るから近づくなってずっと言ってたけど……まさか?」

 「そのまさか。ゲルスが居たわ、誰かと話しこんでいたようだけど」

 それを聞いてエリックが目を細めて考える。

 ルーナの話が本当なら、この国にゲルスが居るということになる。
 正直、あの男は予測不能なので、ベルダーには悪いがクーデター決行時には不在であって欲しかったと思っていた。

 「丁度いい、一網打尽にするチャンスだな」
 ライノスはやる気のようだが、エリックの顔は少々曇っていた。

 「危険を侵してまで重要な情報をありがとうールーナちゃん」

 「私も早く帰りたいしね。早く終わらせてくれると助かるんだけど」

 ジト目でエリックとライノスさんを見ていると、アンジェリアさんが助け船を出していた。

 「まあ、そう言わないでくれ。国の未来がかかった戦いだからな。関係ない君を巻き込んだのは申し訳ないが……」
 
 「一応私も狙われているって考えれば、巻き込まれるのは必然だったかもしれないですけどね。この国に別の手段で攫われていたら何も知らずにクーデター勃発! だったかもしれないし」

 エレナ以外が苦笑していると、エレナから珍しく声が上がっていた。

 「お兄様~わたしも何かできることがあったら手伝いますね~!」

 「お、おう……お前は逃げる時に転ばないよう気を付けてくれればそれでいいよ……」

 「はい~!」

 ライノスさんはエレナに対して過保護な気がするかな? 私の後を気配を消して追いかけてくるとか割と凄いのに……恩恵って何なのかしら?
 そんな感じで話が進んでいると、エリックが飛んでもなことを口にした。

 「あ、そうそうーさっき城下町でフレーレちゃんと会ったよー」

 「……は? え!?」

 「丁度料理屋で朝食を食べている時に見つかってさ。ルーナさんを助けに来たと凄い剣幕で怒鳴られたよ。あの子あんなに怒るんだって思ったよ」

 「い、いやフレーレは割と感情豊かだから……。それより今はどうしてるの! ああ、もう……追いかけてこないでって手紙も渡したのに……」

 「うんー今は城に入ってもらうため、女性騎士の宿舎に居るよー。ああ、オリビア隊長この後紹介するから一緒に来て」

 「はい!? 何でまた!? あんたまさかクーデターに巻き込んだんじゃないでしょうね!」
 
 エリックの首を絞めて揺さぶると、にこやかな顔は変わらずに話していた。

 「あのままだとルーナちゃんを探しに城まで突っ込みかねない勢いだったからねー。悪いけど、ここは協力してもらう事にした。会うとバレるから悪いけどルーナちゃんは待機ね」

 「ぐ……」

 「それでももう近くに居る訳だし、後は国王を討つだけだ。ルーナさんはいい仲間が居て羨ましいよ」
 
 ライノスさんがそう言うと悪い気はしない。顔がにやけるのを抑えつつ、私は確認をする。

 「で、決行は?」

 「……#明後日__・__#の早朝。そこで僕たちが騎士を集めて城へ突撃する。フレーレちゃん達とイリス、ウェンディが同時にボヤ騒ぎを起こして僕たちの仲間じゃない騎士を誘導してもらうつもりだ」

 「……仲間を攻撃するのは辛くない……?」

 するとこれについてはアンジェリアさんが決意を持った目で話す。

 「必要悪と信じて行うしかない。味方を手にかけたとしても、これを為さねば未来は掴めない。国王を討った後なら、いかような罰も受けよう」

 「……そういうことだね。それじゃ、僕達は行くよ。アンジェリアが居ない間はくれぐれも気を付けて。特にゲルスには見つからないようにした方がいい」

 「分かってるわ、そっちも気を付けて……あ、そうだ! レイドさんは……」

 「レイドは居なかったよ。代わりに僕等も見たことが無い女性を連れていたけど……」

 レイドさんは来てくれなかったか……ちょっと寂しいけど、私が追うなって書いたしね。仕方ない。
 
 私の質問は終わったと思い、エリックがアンジェリアさんとライノスさんを連れて応接室から出て行った。
 
 残される私とエレナ。

 「……みんな仲良くできればいいんですけどね~……」

 「……」

 誰にともなく呟くエレナと一緒に私達も応接室を後にしたのだった。




 ---------------------------------------------------




 「ほっほ、変わりはありませんか?」

 「はっ。国王様もご健在であらせられます(ゲルス……! 戻ってきていたのか)」

 ゲルスは城を徘徊し、昨日の曲者を探しを行っていた。
 しかし有力な情報が得られず、そろそろ国王に帰ってきた報告をしようと思っていた。

 城の騎士達は、先程の者のように疎ましく思っている人間も多数いる。
 何か情報があったとしても、わざわざ告げる者はごくわずかなのだ。

 「(厨房でつまみ食いをしてから……おや?)」

 2階の廊下を歩いていたゲルスだが、内側は吹き抜けになっており、階下を見る事が出来た。
 

 「……!! あれはルーナではありませんか!? どうしてここに……? もしやライノスが誘拐に成功したとでも? だったらあの会談で居なかったのも納得です」

 顎に手を当てて考えるゲルス。

 しかし考えられる理由が、ライノスがうまくやったとしか思えない。
 だが、エクセレティコで油断したということもあるため、嫌な予感を覚えるゲルス。

 ひとまずルーナの件は置いて、国王へ話を聞きに部屋へと赴いた。


 「国王……国王……ゴナティソ殿、入りますぞ」

 ゲルスが国王の私室をノックすると、薄気味悪い声で返事が返ってきた。
 中から女性の嗚咽も聞こえてくる。

 「は、入れぇ……」

 「では失礼して……」

 ゲルスが中へ入ると、女性が首を絞められており、吐瀉物を撒き散らしていた。

 「こ、こうするとな……具合がいいんじゃ! それよりもよくぞ戻った」

 「(私も大概ですが、この男もおかしいですねぇ。まあ今に始まった事じゃねぇがな)」

 女性がゲホゲホとむせているのを尻目に、国王ゴナティソとゲルスは別の部屋へと移動する。

 「ほっほっほ。少し厄介事がありましてな、遅れてしまいました。しかし朗報です、エクセレティコの国王が死亡しました」

 それを聞いたゴナティソが目を見開き、奇怪な笑い声で手を叩き大声で叫ぶ。

 「ひっひゃっは……! ほ、本当か! そうなるとこれで侵略ができるな!! 同盟を組んでいたが、これまでか。ようやくあの土地も儂らのものとなるのじゃな! そうそう、女神の力……ルーナを手に入れる事ができたんじゃ! これも天啓かのう!」

 聞きたかったことを自分から話し始め、手間が省けたと喜ぶゲルス。

 「ええ。先程、姿を見ましてね。聞こうと思っていたんですよ。ちなみにどうやってか、お聞かせいただけますかな?」

 「うむ、ライノスとエリックがな? 着いて来ないと仲間を殺すと脅して連れて来たと言っておったわ。ひっひゃ、あの真面目馬鹿のライノスも考えを変えたようでなによりじゃ。あの側近の仲間に加えてやってもいいかもしれんの」

 「(……あの真面目だけが取り柄のライノスが脅迫……? エリックの入れ知恵か?)それで、ルーナの処遇はどうされているのですか?」


 「おお、何やら女神の力を狙っている輩が居るらしくてのう。あの例の……名前はなんじゃったか……そいつが取り返しに来るかもしれんと城に軟禁しておる。念のため騎士隊長を護衛につけておる。それとエレナを世話役にしてな。ひっひ……ことが終わればあの身体は好き放題……」

 何かよからぬ想像をし始めたゴナティソをよそにゲルスは思考を深めていた。
 この男、強さは絶対ではないが知恵と勘は良く働くのだ。その勘が警鐘を鳴らしていた。

 「(どうも臭いですねぇ……特にライノスの事が。レイドが追ってくるのは恐らく本当でしょうが、他に何か見落としている気が……少し探りを入れてみましょうか)」

 ゴナティソを残し、部屋を後にするゲルス。

 「(あの国王もそろそろ用済みでしょうかね……狂い始めて来たようですし)」

 そして向かった先は……


 ---------------------------------------------------


 「やあーフレーレちゃん元気ー?」

 「君がフレーレか、私はオリビア。この国の騎士隊長を務めている」

 「私はフォルサよ、フレーレはあっち」

 エリックがわざとフォルサにフレーレと声をかけてアンジェリアを惑わし、直後殴られていた。
 気を取り直して本物のフレーレに声をかける。

 「あ、わたしはフレーレと言います。その……ルーナは無事ですか?」

 「ああ、私の名にかけて無事だ。できるだけ早く戻りたい所だが……」

 するとイリスとウェンディが疲れた顔でアンジェリアへよろよろと近づき話しかける。

 「た、隊長……この二人……何なんですか……」

 「じ、自分……自信が無くなりそうです……」

 そこでフォルサが思いついた様に手をポンと叩き、二人に言う。

 「さっきの入隊テストのこと? 随分簡単だったけど、メニュー見直した方がいいんじゃないかしら? ねえフレーレ」

 「……それはフォルサさんだけです……一緒にしないでください」

 フレーレが心外だとフォルサに抗議するととんでもない反撃に出てきた。

 「あら、生意気な事を。みなさんーこの子ね、こう見えて子供の頃は誰も寄せ付けない一匹オオカミみたいな子だったのよ。この子がある日、私の事を間違えて『お母さん』って呼んでねー。そこから段々と懐いて来てフレーレがデレーレになってきたんだけど……」

 「ちょっと!? 人の恥ずかしい過去を簡単に言うの止めてくださいよ!」

 そんなこんなで、お互い自己紹介を終え、今後の話をするためエリックが一同を集める。
 イリスとウェンディも何とか持ち直し、椅子が足りないので立って話を聞いていた。

 「それでさっきルーナちゃんに話を聞いて来たけど、割と面倒な事にゲルスが帰ってきているらしい」

 「……!」

 顔が強張るフレーレ。だが、恐怖は無く、じっと話を聞く体勢になっていた。

 「それでクーデターだけど、#明日の早朝__・__#に決行するねー」
 
 それを聞いて驚いたのはライノスだ。今しがたルーナに明後日と伝えたばかりなのに。

 「おい、おま……」

 ライノスの口を塞ぎ、エリックが話を続ける。アンジェリアはこの事が分かっていたようで目を瞑って腕を組んで聞いていた。

 「恐らくゲルスはこの計画に何らかの手段で気付く。ルーナちゃんを確保したと国王から聞けば疑問を抱くハズさー。この状況、僕ならまっさきにライノスを疑うしね。だからすぐにでも計画を始める必要があると考えたんだ。ゲルスは騎士を拷問なり脅迫するのはお手の物だろうからね。だからこの後、ベルダーへゲルスの件を伝えたら、今日は僕とライノスは宿舎へ泊まり、ゲルスの手にかかりにくい者にだけ明日だと告げる。そして早朝……そうだね、僕達国王討伐組は5時に出よう。フレーレちゃん達は5時半に火を点けてくれると助かる」

 「あ、あの……ルーナはどうするんですか?」
 
 フレーレが手を上げて発言すると、アンジェリアが即座に答えていた。

 「それは私が手引きする。時間は聞いた通りだから、火を点けたらイリスとウェンディと共に門へ移動してくれ。そこで合流しよう」

 「……イレギュラーが起きた時は?」

 フォルサが目を瞑ってエリックに問う。有り得なくはない事なので頷きフォルサに答える。

 「基本的には無いと思いたいけど、可能性は0じゃない。6時半から7時までに僕らが戻らなかったら失敗と思ってそのままルーナちゃんとフレーレちゃん、フォルサさんは国外へ逃げてー。アンジェリア達は城へ入り、国王を探して討つ。ダメなら……死ぬだけだ」

 「最後に聞くわ。ルーナが城から脱出できなかったらどうするの?」

 「……」

 「その時は……悪いが見捨てさせてもらうよー……捕まったら酷い目にあわされるだろうから、君達は逃げた方が……」

 「もういいわ、フレーレ。その時は……」

 「はい。わたし達が城へ仕掛けるんですね」

 「よくできました。エリックだったかしら? フレーレの意向はルーナを助ける事。見捨てる選択は無いのよ? 悪いけど、イレギュラーの時はこっちはこっちでやらせてもらうわね」

 「……了解。はは! まったくここに居る女性はみんな怖いねー! でも頼もしいよ。……この国を救うため、よろしくお願いします」

 エリックは立ち上がって皆に礼をしていた。

 ゲルスとエリック、どちらが先に目的を達することができるのか?

 勝負の時はすぐそこまで来ていた。


「パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く