パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その94 山道を歩くレイドと会談の準備

 話はフレーレが学院へ向かっていた時期まで遡る。

 フレーレが学院に到着する頃には、レイドはすでに山に入っており、ビューリック側の山肌へと向かっていた。

 <なるほどのう、このまま進めば国境を越えられるのじゃな>

 「ああ、あくまでも平地ありきでしか警戒していないから、山側は抜けやすい。一旦登って途中から下山……といってもほぼ崖だが、それを降りれば誤魔化すことはできる」

 ビューリック側と山は続いているが、向こう側は人が登るような山ではなく、切り立った崖がいくつもあり、近づくものが居ないと言っていいほどの難所である。

 そんなところをわざわざ通ってくるとは考えていないので、レイド達はその隙をつく形になる。

 「それにしても寒いな……霊峰より寒いんじゃないか?」

 少し風が出ており、雪もちらついていた。寒いのも無理はない。

 <オイラはコールドドラゴンだから、寒くないけど……>

 <わらわは毛皮があるから、それなりじゃな>

 パタパタと飛ぶファウダーに、軽快な足取りで進むチェイシャ。
 そんな中、レイドはチェイシャをじっと見ていた。その気配に気づき、チェイシャが振り向く。

 <ん? なんじゃ? 早く行こうぞ?>

 「……チェイシャ、暖かそうだな」

 <……>

 何かを察したチェイシャが後ずさる。にじりよるレイド。

 そして数分後……




 「うん、やっぱり暖かい!」

 <くすんくすん……わらわは襟巻じゃないのじゃ……>

 レイドは逃げるチェイシャをあっという間に捕まえ、チェイシャをそっとを首に巻いた。
 大きさ的に丁度いいと判断したレイドは大当たりだと満足していたが、チェイシャは泣いていた。

 「まあ歩かなくて済むからいいじゃないか。それじゃファウダー、行こうか」

 <……朴念仁なだけじゃなくて天然もなんだ……オイラ天然はフレーレ姉ちゃんだと思ってたけど……>

 <くすん……こやつは何気にタチが悪いのじゃ! ……でも楽ちんじゃの……>

 利害が一致し、さらに山道を進むレイド達。

 しかし天候が悪くなったことに気付いておらず、奥へと進む。

 その内方向感覚が無くなり……。




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 <アルファの町>


 「俺も行くのか?」

 「ああ、会談が城で無いなら守りようもあるし、何より顔を見せる事で動揺を誘える」

 アントンに話を聞いたフォルティスが、明日の会談に向けて最終調整をギルドで行っていた。
 今、会話していたアントンとフォルティス以外にこの場はファロスとイルズに、ブラックブレードのクラウス、そしてシルキーが居た。

 「帰って来たと思ったらまぁた面倒事かよ……コキ使いすぎなんだよ……」

 「腐るな。レイドが居ないから、今この町で一番強いのはお前だ。万が一フォルティスに何かあったらそれはそれで問題になる。戦闘力が高いものは多い方がいい」

 「で、あたしもなのね?」

 クラウスがこめかみを抑えながら呻き、シルキーがイルズへ尋ねていた。

 「ああ、回復もこの町でリザレクションまで使えるのはお前だけだしな……」

 「いいわよ。回復魔法を馬鹿にした男が出てくるならベコベコにしてやるんだから!」

 シルキーがニヤリと笑い、持っているロッドを握りしめる。

 「おお、怖ぇ……」

 「何か言った?」

 「いーや、何も!」

 そんなやりとりを見ながら、フォルティスは手を叩いて最終確認に入った。

 「よし、国王も流石に護衛は連れて来るだろう。そして、警戒すべきはアントンの言うゲルスという男だ。得体のしれないスキルを使うようだから、もし仕掛けて来るようならクラウスとアントンで迎撃。国王の失脚が今回の一番の目的だから、無用な戦闘は避けたいということは覚えておいてくれ」

 アントンから話を全て聞き、非は国王側にあると判断したフォルティスは、国王失脚のシナリオに進むことに決めた。

 シラを切ったとしても、アントンという生きた証人が居るのでこちらに分があるのは大きく、やりようはあると言う。

 そして、できればゲルスが出てきて欲しいと思っており、レイドとフレーレ、そしてルーナはゲルスの姿を見た事がある上にアントン殺害の現場にも居た。
 そんな殺人犯が国王の傍らに居ると分かればトドメをさせるからだ。

 そこで「ルーナという重要参考人が居るので捜索する」という名目ができるので、ビューリックへ潜りこむことも可能だとフォルティスは言っていた。

 「失脚後は第一王子のニコラス様が即位なさるのね」

 「ああ。それと大きな声では言えないがニコラス様にこの話はしてある。あの方はこちらの味方だ、どうも父親が何かを隠しているのでは、と不審を抱いていたよ」

 「なるほど、ルーナちゃんを殺人犯の証言者として捜索、か。国王の証明があれば国境を越えるのは難しくないって訳だな」

 「条約に、国同士は協力するべしという条文があるからな、ないがしろにはできんだろう」

 「それをレイド達に言ってやれば良かったのに……」
 
 イルズは呆れながらフォルティスに向かって言うが、首を振って答える。

 「私が状況を完全に聞いたのは彼らが町を出た後だ、仕方ないとしか言えない。後、この状況では条約を使うにはこちらの国王の脛を叩く必要があるだろ? 曖昧な状態で私が安易にそのことを口にすると思うか?」

 「嘘でもいいからとりあえず通るってのはできなかったのか?」

 アントンが面倒くさそうにフォルティスに聞くが、ふんと鼻を鳴らされ反論を受ける。

 「何て言うんだ? 『観光です』か? それとも『こちらの国から攫われた人が居るから調べさせてください』とでも? そんなことをしたら向こうは頑なになるだけだ。だからこそ、国命としてビューリックへ行く名目が欲しかったんだ。国王がこんな状態でなければ普通に国へ相談していたさ。クーデターの件も含めてな」

 エクセレティコがこんな状態でなければ、すぐに助けに行けたのだと肩を竦めて椅子に座りなおすフォルティス。厄介な事が二重、三重に絡まった結果であった。

 「後は明日、国王がどう出てくるかだなぁ」

 「だね。俺も何度か顔を合わせているけど、野心家って感じはあったね」

 「ゲルスと組んで何をしたかったのか、俺はそれが聞きてぇな」



 こうして三者三様の思いを持ち、会談は開始される。
 アントンはフードを被り、一番後ろに立つ。フォルティスを中心として左右にファロスとクラウス。
 真後ろにシルキーが並び、イルズはアントンの後ろで待機していた。
 そして、ゼタの町のギルドマスターであるレイラ、そして間に合ったガンマの町のギルドマスターのハダスもその場に集合していた。
 


 国王側はというと……

 「待たせたようだね、すまない。ああ、座ってくれて構わないよ。こちらの付き人は彼だけだ」

 気さくな一面を見せる国王。不安となることなど無いと言いたげだ。

 そしてその横には……

 「ほっほっほ、ゲルスと申します。以後お見知りおきを、それではお話を聞かせて頂けますでしょうか?」

 要注意人物であるゲルス。そう、ヤツが居たのだった。

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