パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その86 現在のルーナ

 「い、いや……それだけは……!」

 「いいえ、ダメです。早く服を脱いでください」

 「そ、そんな!? 話が違うわ! 私には何もしないって……!」

 「事情など変わるものです……仕方ありません、力づくで行かせてもらいます!」

 「あーれー!!」




 ルーナがビューリックの町に来て早三日。

 すぐに城の変態国王に引き渡されるかと思ったが、色々作戦があるらしくエリックの屋敷でベルダー、ライノスと共に過ごしていたのだった。
 
 そして今、エリックがつけてくれたメイドにより、着ていた衣服を剥がされた所だった。
 理由は『臭い』ただそれだけである。洗濯をするためにメイドが頼み込んでいたが、ルーナが拒否をするので力づくで奪われたのだった。

 「……酷い……」

 「とりあえず洗濯が終わればすぐお返し致します。それまではこちらの服をお使いください」
 事務的に仕事をこなし、メイドが出て行き取り残されるルーナ。下着姿のままでは流石にマズイので、用意してくれた服をのろのろと着ていく。

 「こんなお姫様みたいな服……似合わないんだけどなあ、スースーするし、落ち着かない」

 それでもエリックから呼び出しがかかっているので出ない訳には行かない。
 キョロキョロと廊下を歩きながら、リビングへと向かった。


 「やあ、ルーナちゃん、来たね。サラが抵抗が激しかったってぼやいていたよー」

 エリックがいつもの笑みを浮かべながら紅茶を飲んでいた。その前にはライノスも居た。

 「まさか力づくで持っていかれるとは思わなかったけどね……ベルダーは?」

 「彼は協力者だけど、出入りに強制はしていないんだ。どこか偵察でも行ってるんじゃないかな」

 「ふうん。ま、別にいいけど。で、話って何? いよいよ私を引き渡すの?」
 ルーナはエリックを睨みつけながら聞く。エリックはどこ吹く風だが、ライノスはオロオロしていた。

 「それはもうちょっと後ー。そうだねー、引き渡しは二日後。引率はライノスと僕で行く。その前に、ルーナちゃんには何で僕がクーデターを起こすのかを知っておいてほしくてねー。今日は三人で出かけるよー!」

 どこで聞かれているかも分からないのに、平然と国の転覆を図る事を口にする。これも作戦の内なのか、などルーナは顔色を見ながら出された紅茶を飲んでいた。

 「……オレも行くのか?」

 「どっちでもいいけどね。城に行かなければ何か言われることもないでしょ? お昼はシープドッグスで食べようと思うんだー」

 「ふう、お前とルーナさん二人だけにするわけにもいかんか。行くとしよう。ルーナさん、シープドッグスはこの城下町でも指折りの料理屋です、きっと満足できますよ」

 「そうなんだ。そうね……せっかくだし、城へ売られる前に町を見て回りたいんだけどいい? ビューリックに来るのは初めてだから」

 ルーナがそう言うと、エリックはニヤリと笑いながら手をパン! と叩いた。

 「大歓迎だね! きっと君なら……おっと、ゲフンゲフン……」

 そこまで言ってから咳払いをして誤魔化した。不審に思いながらも、ルーナは一旦部屋に戻り出かける準備をして外出することにした。




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 「エクセレティコと違って、建物が四角いのね」

 馬車などは使わず、歩いて町の中を散策する三人。
 まずはシープドッグスを目指しながら見学と洒落こんでいた。

 「そうだね、ビューリックは湖や海が近くに無いからねー。水不足で心配になることがあるんだ。だから、屋根の上で貯水できるように屋上を作っているんだよー」

 「山からの湧水を引いてはいるんですけど、人口も多いので雨水を蓄える工夫を考えたんです」

 エリックとライノスはルーナに質問されるたび、キチンと答えてくれていた。
 生活様式が少し違うものの、隣の国だけあってそれほど違いは無いのだが、知らない国で見るモノや人は新鮮だったのだ。

 「そういうのはいいわねー。でも、見た感じ穏やかな国じゃない? 国王様ってそんなにひどいの?」

 「……まあ、それは次に行くところで話すよー。おっと、ついたねー。ここが僕たちのオススメの料理屋。シープドッグスさ」

 入って入ってと促され、ルーナは店の扉を開けると中から元気のいいおばさんの声が響いてきた!

 「いらっしゃーい! 三人かい、運がいいね! ちょうど空いた所……って、エリックかい?」

 「そうだよー、久しぶりだねー」
 エリックが片手を上げて挨拶すると、次におばさんは隣にいるライノスをみて驚く。

 「そっちはライノスじゃないか!? 全然顔を見せないから死んだかと……! なんてね! さ、座っておくれ!」

 おばさんはルーナ達を席に着かせると、メニューを置いて別の席の注文を取りに行った。
 ルーナは何となく、山の宴を思い出していたりする。

 「元気な人ね! というか、庶民的なお店でいいじゃない、気に入ったわ。後は味ね」

 「ここはオレ達が学生の頃通っていた料理屋でね。その頃からずっとあのおばさんと厨房にいる親父さんが切り盛りしているよ」

 「僕も今でこそ副官なんてやってるけど、それまでは中流くらいの家柄だったからねー……」

 ライノスが珍しく楽しそうに会話をするのをよそに、エリックの顔は沈んでいっているような気がしてルーナは訝しんでいた。

 そして注文から、料理が届くまで当たり障りのない話をし料理を食べてから再び外へと出る。

 「美味しかったー! ビーフシチューの肉がトロットロでもう……シルバだったら二人前は食べそう! ……って、今頃何してるかな……大人しくしているといいけど……あ、水でお金取られるのはびっくりしたかも」

 つぶらな瞳の子狼の顔を思い出し少し寂しくなるが、話題を変えて持ち直す。

 「さっきも言ったけど水不足はあり得るからね。水だけ飲まれても困るんだよー。でも旅行者とかは事情を知らないからたまにトラブルになることもあるねー」

 そんな話をしながら着いて来いというエリックの後ろを歩く。その場所に近づくにつれ、ライノスの顔は強張っていくのがハッキリと分かった。

 どんどん寂しくなっていく景色。町の中のはずなのに町の外のような空気を醸し出している気がした。
 何故か町の中なのにフェンスのようなものが張ってあり、入り口に見張りが立っていてルーナは息をのむ。


 「……エリック様、どうされたのですか?」

 「ちょっとねー。通っていいかいー?」

 「……ダメだと言っても無理矢理通るでしょうあなたは。どうぞ……」
 陰気な見張りがスッと横に移動し三人は中へと向かう。

 そしてルーナが見た光景は……



 「何……これ……」

 木で出来た家、それも崩れかかっているようなものばかりがずらりと並び、徘徊している人はやせ細り、髪も髭も伸び放題。外で遊ぶ子供たちも衣服はボロボロで、とても栄養が足りているとは思えない細さだった。

 「ここは通称 ”掃き捨て村” 町の中に村があるというのも変な話だけどねー、ライノスとエレナちゃんはここ出身なんだよね」

 「……」

 「え!?」

 「さ、そろそろ語ろう。僕がクーデターを……というより国王を抹殺したい理由を」

 エリックは一歩前へ出たかと思うと、大げさに手を広げてルーナ達に向き直る。
 口は笑っていたが、目は笑っていなかった。

 「ライノス、君は数日僕の家に居たけど両親を見たかい?」

 「? ……そういえば見ていないな。オレが遊びに行くと気にかけてくれていたな……」
 当時の事を思い出す様に目を瞑るライノス。しかし、エリックからとんでもない一言が飛び出し、二人は驚愕する。

 「……居ないんだよ、もう。二年程前にね、秘密裏に処刑されたんだよ」

 「馬鹿な! 一体なんでそんな事に!?」

 「まあ、聞きなよ。さて、それじゃこの掃き捨て村が何故出来るか知っているかい?」

 「……オレは両親が早くに死んで行くところが無くなったから……」
 
 「そうだね。そう言う人も居るだろう。でもそれ以外にも理由はあるんだ」

 「理由?」
 ルーナが聞き返すと、エリックは頷いて言葉を続ける。

 「うん。国王はね、遊びの為にここから人を攫うんだ、そして地下でおもちゃにして殺す。もし死ななくてもここに捨てれたりするんだよ。後は、国王に逆らった人達や意見した人達もね」

 「地下……この魔剣があった場所か? 一体何が……」

 「あの地下には魔物……正確には魔獣かな? それが居るんだ。そして人間と魔獣を戦わせて、その様子を見て楽しむんだよ。もちろん武器なんかない、一方的な殺戮さ」

 ルーナはごくりと唾を飲み冷や汗をかく。どんな魔物かわからないが、冒険者でも素手で魔物と戦う事は有り得ない。それが一般人ならなおさらなのだ。

 「まあここからは簡単な話だけど、ウチの両親はもっぱらこの村についてどうにかしようと考えていたんだよ。でも、国王からしてみればおもちゃが無くなるのは面白くない。それで目をつけられたんだ……後はご想像通り、魔物の餌って訳さ」

 酷く悲しそうに、しかし口は笑って、エリックは肩をすくめる。

 「何で、それが分かったの……?」

 「運が良い、いや悪いのかなー? 丁度その時、城に用事があってね。口論している所を目撃した。後をつけて……ね」

 「!? 父さんは、父さんは知っているのか!」

 「恐らくね。でも君やエレナを人質に取られているだろうから、見て見ぬふりというところかなー? 大臣はある意味犠牲者だ。そして、ベルダーと意見が一致したのが、ゲルスと言う男の存在だ」

 ゲルスはその遊びを提供した主犯の一人で、掃き捨て村から子供やなるべく年の若い人間を攫っている所まで調査しているという。
 攫った後にどうしているかまでは分からないそうだ。

 「またあの男なのね、何が目的であっちこっち顔を出しているのかしら?」

 「さあね。とりあえずあの男は確実に殺さないと、他の人間が同じ目にあう。地下に居る魔獣……頭が三つある犬みたいなヤツだったけど、ゲルスが造ったんじゃないかって話もあるくらいだ」

 アントンの時も「実験」と称して体をいじっていたので有り得るとルーナは思った。
 なるほど、これは復讐だが個人的なものじゃない。ある意味国を救うために必要な行動だと悟った。

 「むう……今までエレナと父さんの手前我慢していたが、今の話、許せん!」

 「お、おい! どこ行くつもりだい!?」

 「決まっている! 今からこの魔剣で国王を叩き斬って……!」

 「アホか君は! ……いや、アホだったな……いつもオロオロしてるくせに、怒ると周りが見えなくなる癖、直した方がいいよー? ゲルスは元より、他の騎士達に殺されちゃうよ? エレナちゃん達はどうするのさ?」

 「エレナならきっと分かってくれる!」

 「ライノスさん……アホね」

 「え!?」

 「ほら、ルーナちゃんにも言われた。何の為に来てもらったか忘れたかい? ルーナちゃんには城へ潜入し、エレナちゃんを見つけ次第脱走。大臣は居れば一緒に逃げてもらうつもりだよ。大臣には事前に僕から話はしておくしね」

 「う……オ、オレがアホだった……すまん……」

 「素直に謝れるのはいいことだけどね? ライノスにもやってもらうことはあるから、それまで大人しく頼むよ?」

 「……分かった」

 エリックはあくまでもルーナの役割はエレナの奪還だけだと最後に言い放った。クーデターみたいな汚れ仕事は自分達だけでやると。

 作戦の概要をエリックの屋敷で話しているとベルダーが戻ってきて持ってきた情報を展開する。
 
 そして……ルーナが城へと向かう日がやってきたのだ。

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