パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その76 包囲

 「これはどういうつもりだ、ライノス?」

 と、レイドさんが本気で怒ってライノスさんへと言葉を放つ……。
 
  レイドさんはライノスさんを睨みつけ、いつでも抜けるように剣に手をかけていた。

 どうしてこんな状況になっているのか。

 少し時は遡り……。





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 夜中に下山したにも関わらず、ダラムさんが暖かく出迎えてくれ、ダラムさんの家に宿泊しているライノスさんと、後からやってきた騎士団をまとめている人、エリックさんと会った。

 真面目なライノスさんとは裏腹にちょっとお調子者な印象で、握手した私の手を離さない事をライノスさんに咎められていた。うーん、苦手なタイプかも? と思ったのは内緒だ。

 で、その日はダラムさんの家で晩御飯とお風呂を頂き、そしてベッドを借りる事が出来た。

 お風呂に入った後、ジャンナさんが目を覚ましたので血の使い方を教わった。
 レジナに血を飲ませ、傷口にも血を塗りこむと荒かった呼吸が静かになり、目は覚まさなかったが一命を取り留めたようで、フレーレと抱き合って喜んでいた。
 
 これならメルティちゃんとアントンもきっと、と思い、急いで戻ろうとダラムさんに挨拶をして出発するつもりだった。


 そして今、ダラムさんの家から出たところでライノスさんとエリックさんに声をかけられたのだ。
 ちなみに騎士達に囲まれている状況で、私達は訳が分からない。

 そこで先ほどのレイドさんの言葉である。

 でもエリックさんはまるで気にした様子も無く、言葉を続けていた。

 「さて、それじゃあ……ルーナちゃん、俺達と一緒に来てもらおうー」

 エリックさんの横には俯いたライノスさんが。そして騎士達が私達を取り囲んでそんな事を言いだしたのだ。
 全員武装し、武器をこちらに向け、いつでも攻撃できる態勢のようだった。

 「え、っと。一緒に行く理由が無いんですけど……」

 いきなりの事で訳が分からなかったが私はハッキリと断った。ライノスさんが悔しそうな顔をして私達に告げていた。

 「……申し訳ないが黙って着いて来てくれないか? 悪い様には、しない……」

 「どうしてですか? 理由を教えてもらわないと……」

 フレーレが困ったようにライノスさんへ聞くと、エリックさん……いえ、エリックに遮られた。

 「いやいや、それはルーナちゃんにだけしか言えないんだよー。あ、君とそっちのレイドさんだっけ? それと、獣達は好きに帰っていいからー」

 「オレも手荒な真似はしたくない、頼む! ここは言う事を……」

 「ふざけるな! 何が目的かは分からんが、こんな理不尽に対して『はいそうですか』と言えるわけがない! ルーナちゃん、フレーレちゃん。俺の後ろに(隙を見てブルル達の所へ行って離脱するぞ)」

 「(わかりました。それじゃ、上級補助魔法かけておきますね)」

 「こそこそ何を喋っているのかなー? ……お前達、力づくで構わない。無力化しろ」

 「エリック!?」

 「埒が明かないからねー。魔法が使えない今なら……え!?」

 エリックは目の前の光景に度肝を抜かれていた!

 「はあああ!!」

 「ええい!」

 「おあいにく様ね! こっちは万全よ!」

 囲んでいた騎士の内、私達の馬車への道を陣取っていた3人を倒し一気に駆ける! 目指すはもちろん馬車だ!

 「ひゅー♪ やるねー! 弓兵、足を狙って射撃!」

 最初は驚いていたが、すぐに平静を取り戻し軽口をたたいてくる。弓まで!? 容赦なしね!
 でもこっちは足が速いわよ!
 
 「かかってきたやつは正当防衛だ、叩きのめしていい! 攻撃してこないヤツは放置を!」

 レイドさんが走りながら、指示を出してくれる。
 状況は……! そう思って振り返るとちょうど背負ったレジナに向かって矢が飛んできていた!

 「痛っ!?」

 身をよじって直撃は避けたけど肩をかすめてしまった!

 「馬鹿野郎! 背中を狙うんじゃない!」

 「し、しかしあの早さでは……!」
 ライノスさんが弓兵に向かって怒鳴っている声が聞こえた。
 
 こっちはあと一息で馬車に辿り着くわ!

 「……ん? 誰か見ている? ……あれかー、補助魔法か? すごいなーこりゃ逃げられちまうなー」

 急にエリックは追撃を止め、私達を見ながら呟きキョロキョロと辺りを見渡す。
 そして私達はブルルとアップルの所まで辿り着き、フレーレ達と一緒に荷台へ雪崩れ込むと、レイドさんは一気に馬車を走らせた!

 「ライノス! 今度俺の前に現れたら容赦せんから覚悟しておけ!」
 騎士達の脇を駆け抜ける時に、ライノスさんへ厳しい言葉を浴びせていた。


 「レ、レイドさん……くっ!? エリック! 逃げられるぞ!?」

 「……あー、ここはとりあえずいいかな?」

 騎士達に号令をかけ、私達の馬車を見逃した。どこか違う所を見てる?

 「……どういうことだ? 何故ヤツはみすみす……?」

 <分からんがここで捕まったら終わりじゃ、急げ!>

 先ほどまで黙っていたチェイシャが荷台の後ろから魔法弾を出しつつ叫ぶ。
 フレーレもマジックアローで弾幕を張っていた。

 追ってきていないが、念のための威嚇射撃らしい。
 
 「もう追ってくる気は無さそうですね」

 「ええ、レイドさんこのまま一気に国境を抜けましょう。関所で待ち伏せされていたら厄介ですし」

 「そのつもりだ! 飛ばすぞ、しっかり捕まってろ!」

 「きゅん!」「きゅきゅん!」

 <はあ、目が覚めたと思ったらバタバタしてるわねぇ。……とりあえずあたしの目で見ても追ってきてないからしばらくは大丈夫でしょ>

 ジャンナさんが私の頭の上に乗り、魔法か技を使って後方を見てくれていた。
 ライノスさん、どうしちゃったんだろ? せめて理由を言ってくれれば……。

 小さくなっていく村の入り口を見ながらそんな事を思う。

 そして帰路を急ぎ、私達はアルファの町を目指した。




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 「どうするんだエリック?」

 少しほっとしているようにも見えるライノスがエリックに今後の事を聞く。

 「とりあえず、ルーナちゃんは一時置こう。どうもお客さんみたいだしねー。ライノスもルーナちゃんを手に入れるまでは城に戻らない方がいい、またケチをつけられてエレナちゃんに何かあっても面白くないだろ?」

 「確かに期限は決まってなかったが……」

 「うん、とりあえずどこに帰るのかは分かってるんだ焦ることは無いさー。それより……そろそろ出てきてほしいんだけどー?」

 エリックが声をかけると、スゥっと一人の男が現れた。驚いた騎士達がどよめきの声をあげる。

 「お前はベルダー!? どうしてこんなところに!?」
 
 顔を隠した自称シーフの男を見てライノスが叫ぶ。

 「ああ、ダンジョンに居たヤツか。久しぶりだな? まさかお前がビューリックの刺客だとはな」
 騎士達と一緒に居るライノスを見て、ベルダーはそう結論付けた。

 「ふふ、ライノスは真面目だからねー刺客とか全然似合わないんだよねー。それはさておき、どうやらずっとルーナちゃん達を追いかけていたみたいだけどいいのかい、追わなくて」

 「ふん、俺の目的はルーナの監視と安全を守る事だ。お前等を足止めすることがそれに繋がるだろう? というか、もう少し危害を加えるように襲っていたらお前等全員皆殺しだったぞ?」

 ベルダーは当たり前のように言い、エリックがそれを聞いて笑う。

 「はは! あなたなら出来そうだねー確かに!」

 それを聞いて騎士達の中には憤慨している者も居たが、ベルダーが殺気を出すとやがておさまった。

 「で、ここに残ったのは俺に話があったからでしょー? 何の話が聞きたいのかなー?」

 「そうだな、お前は話が早そうだ。ルーナの行動を邪魔をさせないのと同じくらいの重要度で、#俺達__・__#はゲルスという男を探している。ヤツは居場所を悟らせないためにあちこち移動しているようだが、城の中までは探りにくいのでな。騎士団のお前なら何か知っているんじゃないかと思ってな? どうだ」

 「……ビンゴー。ルーナちゃんを逃がしたけど、代わりに面白い人が釣れたねー。答えは『ゲルスを知っている』だねー。いいよ、知っていることを話そう。その代わり……」

 「俺の力を借りたい、か?」
 どうせ俺達の目的はルーナが鍵だ、邪魔されないなら……とベルダーはエリックたちには聞こえない呟きをしていた。

 「ゲルスはビューリックの城に出入りすることがある。決まった日や時間は無いけど、俺は見たことがあるぞー。国王とゲルス。俺の目的はその二人を殺す事だからねー……」

 それを聞いたベルダーは目を細めて、どうやら笑っているようだ。

 「それだけでも十分、だな。いいだろうとりあえず次はお前の話を聞こうじゃないか。残りの情報はそのお前の話を聞いてからでも遅くない。まあ嘘だったら……分かっているな?」

 回答に満足したベルダーが、ダガーに手をやりエリックに話をさせる。
 そのやりとりをライノスは黙って見ているしか出来なかった。

 「(一体なんだこれは……オレは夢でも見ているのか……? クーデターに誘拐……このまま流されていたら俺はどうなってしまうんだ? 考えるんだ、流されないためにオレにできることを……)」

 そんな事を考えつつ、ヘタレや腰抜けと言われてもいい。魔剣を抜くことが無くて良かったと、エリックとベルダーの会話を聞きながら、ライノスはため息をついていた。

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