パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その75 脅迫

 <麓の村 コーラル>


 ルーナ達が神殿へ入った頃、ライノスとエリックは野盗のボスと共に話し合いを続けていた。
 果たして、エリックは何を知っているのだろうか? そして良い考えとは何なのだろうか。

 「……俺にも用があるってのか?」

 「そうだねー、ゲルスを知っているなら是非聞いて欲しい話だ。それでライノス、お前の任務は女の子を攫う事。合ってるか?」

 野盗はいつのまにやら元の姿に戻り、鎖でぐるぐる巻きにされて椅子に座らせられていた。
 エリックはライノスへ向き直ると、核心をついた質問をしてきた。

 「……!? ……それは言えん」

 「ふうん、国王直々の命令だとそうなるか」
 ライノスの頬に汗が一筋落ちる。それを見てエリックは言う。

 「なるほど、本当に国王直々か。エレナちゃんが人質なら仕方ないし、お父上も重役だしな」

 「確信を持ったか、なら隠しても仕方ない。俺は今霊峰へ登っているルーナと言う子を攫ってくるように頼まれた」

 「霊峰へ……。戻ってくる可能性はあるのかー?」
 エリックの言葉を聞いてライノスは即答する。

 「レイドさん……勇者レイドが一緒だから間違いなく戻ってくるだろう、そして今はルーナさんが魔法を使えない。戻って来たときがチャンスだと思うんだ」

 「ま、そこは今おいておくかー。国王が関わってるなら、ゲルスの入れ知恵だろうしー。……ここで本題だが、俺はあのクソ国王に対してクーデターを起こそうと考えている」

 ライノスは一瞬考えて面食らった。無理もない、騎士団の副長が国に対してクーデターを口にしたのだから。

 「正気か!? しかもこいつの前で口にするなど! 命惜しさにこいつが喋ったらどうするつもりだ!」

 「はは、相変わらず心配性だなー。こいつは俺の手駒として使うつもりだ。もちろん奴隷紋を入れてからな。城内で国王が気に入らないヤツは多い、そいつらをどんどん引き入れている所さー。で、ライノス、お前も加わってくれないか?」

 「ど、奴隷だと!? こいつ正気か!?」

 ボスが自分を奴隷にする話を聞き、驚愕する。奴隷制度は犯罪者の場合該当するが、手駒として使う奴隷は捨て駒と考えられるため、人道的に反感を買う恐れが高い。
 
 「一体何があった? 急すぎないか?」

 「いんや、そうでもないんだわこれがー」

 エリックは肩を竦めて、ライノスにウインクをして誤魔化す。何かを隠していると直感し、ライノスは言葉を続ける。
 
 「……俺にはエレナと父さんを守る義務がある。お前の案には乗れん……すまんな、今の話は聞かなかったことに……」

 ライノスは立ち上がり、去ろうとする。
 するとエリックがニヤリと笑う。そう言うのは分かっていたかのように。

 「いいのかー? クーデターを起こすってことは国王を殺す……暗殺かもしれんし、戦争になるかもしれん。城に居るお父上やエレナちゃんは巻き添えにならないと、思うのかー?」

 後ろを向いたライノスがビクッとし立ちどまり、怒声をあげて振り返った。

 「お前! エレナに何かあったら許さんぞ!」

 「だからー、そうならないように協力して欲しいんだよー。な? エレナちゃんとお父上を助けるために……」

 口元は笑っているが、目は笑っていないエリックを見て背筋が冷えた気がした。
 野盗を手駒として使う……そしてゲルスとは? 
 ライノスはルーナの誘拐どころではない、もっと大きな災禍へと巻き込まれようとしていた……。
 


 
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 神殿に魔物が居ないので、あっさりと外へ出た私達だが、外はもう暗くなっていた。

 結局休憩せずにジャンナさんの所まで行っちゃったので、時間的には夜中に近いと思う。
 山小屋まではそれなりに遠いので、今夜は神殿内で夜を明かすことにした。


「そういえばルーナの髪、戻ってますね」

 「え? ホントに?」

 フレーレに言われて、髪の毛を手元に持ってくると確かに黒くなっていた。

 「<ストレングス・アップ>」

 補助魔法を唱えると、自分の体に力が湧いてくるのが分かった。魔力が回復している……。

 <……アルモニアが体を乗っ取ったからじゃな。あの時、意識はあったのか?>

 「うん、私の目で物事は全部見えていたけど、体はまったく動かせなかったよ。それこそ他人の景色を見てるみたいに」

 「……ルーナちゃん、寛容のリングは持ってるかい?」

 「? あ、はい。ここにありますけど……」

 急にレイドさんが女神のアイテムの事を切り出してきたのでびっくりしたけど、リングは身に着けてないからカバンに入れてある。それを取り出すと、レイドさんがひったくるように私の手から奪い去った。

 「ど、どうしたんですか?」

 「考えてたんだけど、さっきみたいに女神に体を乗っ取られるような事態は危ないんじゃないかと思ってね……。確かに手がかりとして女神の封印は解きたいけど、身に着けてルーナちゃんが女神に乗っ取られるような危ない目に合わせたいわけじゃない。だから女神のアイテムをうっかり身に着けないよう俺が預かろうと思ったんだけどいいかな?」

 レイドさんのあの時見た顔は「悩んでいる」顔だったんだ……。
 さっきの出来事を考えると素直に嬉しい。

 「は、はい。私はそれでも大丈夫です、でも迷惑じゃないですか?」

 「はは、大丈夫だよ。俺が身に着けても意味は無さそうだし……ほら!」
 レイドさんは何度かリングを指につけたり外したりしていたけど取れなくなるということはなかった。
 
 「それじゃあわたしはさっきの十字架を預かりましょうか? 分けて持っていた方がいいかもしれませんし」

 フレーレはお茶目な動きをするレイドさんを見て、ジャンナさんから出た勇気のクロスを預かると言いだした。
 
 「うーん、フレーレは女の子だし狙われたりしないかなあ……」

 「首飾りみたいになっていたから下げて胸元に隠しておきますよ、危ないのはルーナも同じじゃないですか!」
 ニコっと笑い、手を出すフレーレ。

 「……いつもごめんね、ありがとう」
 カバンから十字架を取り出し、フレーレに手渡すと、そのまま首へかけてぎゅっと握った。

 「いいんですよ、それに……い、いえ、何でもありません!」
 フレーレが何かを言おうとしたが、途中でやめた。何だったんだろう?

 「きゅん!」「きゅーん!」
 
 レイドさんとフレーレに手渡したのを見て、自分たちも何か出せと袖を引っ張ったり手を甘噛みしてくる。

 「はいはい、隠し通路見つけたもんね、あなた達も。……何かあったかな……?」

 カバンを探したが、おチビ二匹にあげられそうなものは何も無かった……。

 「町に戻ったら、何か買ってあげるから! ほら、今日はこの毛布にくるまって寝なさい」

 シルバに肉柄の毛布を出し、シロップにも花柄の毛布を出すと、咥えてはしゃぎ始めた。とりあえず今日はこれでいいかな? あらら、毛布に丸まっちゃってる……。

 <チビ達はともかく、女神のアイテムをルーナ以外が持つのは賛成じゃ、アルモニアの力は強大じゃが何を企んでおるか分かったもんじゃないからのう。主はそれで振り回わされておったし……>

 その時の事を知っているのか、チェイシャがぷんすかしながら二本足で立って腕を組んでいた。
 
 「とりあえず血も手に入ったし、明日は早い所下山しよう。ルーナちゃんの魔力も戻ったことだし、補助魔法で移動速度を上げたらすぐ戻れると思う」

 私達はレイドさんの言葉に頷き、遅めの夕飯を終える。
 
 次の日、フェンリルアクセラレータを使って下山し、夜中に村へ着いた。
 騎士団がすでに来ており、騎士の統率を取っている人はライノスさんの友達と紹介された。

 そして……。

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