パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その69 説明

 <まずはデッドエンドからかのう>

 チェイシャが寝そべり、どこを見るわけでも無く呟いた。デッドエンド……詳細がついに分かるのね。

 「エクソリア様が作ったって言ってたけど、まずはそこからかしら?」

 <そうじゃな。といってもわらわも少し聞いた話じゃからそこまで詳しくは無いが……元々恩恵の失敗作だったそうじゃ>

 「へ?」

 「恩恵って、あの5歳になったら貰えるアレですか?」

 まだ目は赤いが、フレーレも会話に参加できるほどには回復していた。
 その言葉にチェイシャは頷く。

 <うむ。アルモニアと我が主がその昔、世界の発展を願って人々に恩恵を授けるようになったのじゃが、その中で作られた一つが”デッドエンド”で、失敗作の理由は使った後は魔力が0になり、身体能力が落ちてしまう事じゃな>

 「うん、それは使った私は分かるけど、代わりに5分はほぼ最強になれるじゃない?」

 <まあ、一時的な戦いとかならな。継戦能力には乏しかろう? 勇者の恩恵を改造して強力にしようとした慣れの果てじゃと思え>

 「勇者の恩恵、か」

 レイドさんが手の平を見てチェイシャの言葉を噛みしめる。勇者の力は徐々に成長していくけど、デッドエンドはそれを飛び越そうとした……?

 <勇者の力を一瞬で上げるための恩恵として実験的に与えたらしいのじゃ。しかし、知っての通り魔力は無くなるわ、効果は短いわで殆ど役に立たん事が判明した。しかし主はこれはこれで面白いと、そのままにしていたんじゃ。主はイタズラ好きじゃから……>

 「そ、そうなのね……じゃあこれを知らない人ばかりなのは?」

 <その恩恵は一つしか作らなかった。そして死んだら別の誰かに移るようにしていたから、受け継がれるのは必ず一人しか居ないのが真相でな。今はお主が持っているから、前の持ち主が死んだ、ということになる>

 そっか……じゃあ今は私しか……え、ちょっと待って!?

 「いつ私に渡ったのか分からないけど、レイドさんの妹さんは使っていたって!」

 「……ああ、俺が魔王城から転送されるとき、確かに見た。ブラックドラゴンと戦った時にも使っていたから間違いない……死んだら引き継がれるならやはりセイラは死んでいる……?」

 <何と、レイドの妹も使い手じゃったか……。妙なめぐりあわせじゃのう……ルーナのパパ上が嘘をついているとも思えんが、わらわの知っているデッドエンドは『死ねば誰かに受け継がれる』ものじゃったよ>

 チェイシャが念をおすようにレイドさんへと告げる。

 「俺は……ルーナちゃんのお父さんを信じてみるよ。女神の力を集めればまた現れるみたいだし、その時聞いてもいいと思うんだ」

 レイドさんは落ち込んだ様子も無く、まっすぐにチェイシャへ目を向けて話していた。ウチのパパが惑わすような事を言ってごめんなさい!!

 <後、もう一つ秘密があってな。魔力0になるのは主に魔力を吸われているからなのじゃ>

 「ふえ!? そうなの!?」

 <うむ。代わりに得られる身体能力あるじゃろ? あれは主の力を間借りしているんじゃよ。だからあれほど強くなれるんじゃ。等価交換というヤツじゃのう>

 なるほど……ある意味アレも女神の力な訳ね。

 <(まあ、デッドエンドがあるからといってアルモニアに支配されない理由にはならんのじゃが……確かめるために、ルーナの持っている寛容のリングと、ジャンナの持つ力も装備してほしいもんじゃが、無理は言えんしな……)>


 「じゃあデッドエンドは『魔力と引き換え』に『エクソリアの力』を使わせてもらう、ってことですね。そして死んだら別の誰かに移る、そういうことですね?」

 フレーレがまとめ、チェイシャが頷く。正体不明の魔法から女神の力という事が発覚したならかなり躍進したんじゃないかしら? というか私に女神の力集まり過ぎじゃない?

 「デッドエンドはこれくらいか? なら次は……」

 「きゅーん……」「きゅん……」

 目を覚まさないレジナの顔を舐めた後、私の懐へ二匹が飛び込んでくる。ごめんね……私のせいで……。

 「あなた達、怒ってないの?」
 おチビ達の代わりにチェイシャが答えてくれた。

 <怒ってはおらんよ、元々レジナはこういうこともあり得るとチビ達に教え込んでいたようじゃから>

 「……死ぬことがあるかも、ということですか?」

 <うむ……レジナはただの狼じゃが、前世は別の世界の狼でな>

 「ええ!?」

 <別の世界に魔の森という、魔物達にとっては楽園のような所があったらしい。そんな場所なのに住みついた変わり者の魔法使いと一緒に住んでいたそうじゃ>

 「……俺もあちこち旅をしてきたけど、魔の森は聞いたことないな、やはり別世界だからか……」

 <その森では≪幻狼≫という種族の魔物じゃったらしい。そこでも子供を身ごもっておったのじゃが、ある時、散歩をしていると、赤子を連れた人間達の一団が現れた。そこにばったり出くわした所、驚いたそやつらに狩られたんじゃと。普段なら逃げたり戦ったりできたのじゃが、身重でもうすぐ産まれる予定のところまで腹が育っていたから逃げ切れんかったそうじゃ>

 「そんな……」

 <騒ぎを聞きつけた雄の狼と魔法使いが駆けつけた時には遅く、回復魔法も間に合わずそのまま……死ぬ直前に見た魔法使いの爺さんは大泣きしておったそうじゃ>

 きっと魔法使いさんは優しい人だったのだろう。私もレジナが死んだらと思うと胸が痛い。

 <死んだ後はまた狼として産まれたいと願った結果、この世界に記憶を持ったまま産まれてきたという話じゃった。子供を産むことができなかった事を悔やんでいたとな。前世でも子狼の頃、魔法使いにご飯で助けられていてな? ルーナにご飯で助けられた時、ルーナに着いて行こうと決めたんじゃと>

 「そうだったんだ……じゃあ、おチビ達も前世のお腹の中に居た子なのかな?」

 <いや、魂になったのはレジナだけじゃったらしい。魂が消えてしまったか、もう産まれる予定だったから奇跡的に魔法使いが助けたのか……それは分からん>

 「助かっていたらいいですね! シルバやシロップみたいに元気に森を走り回ってますよきっと!」

 「きゅん!」

 シルバが尻尾を振ってフレーレに同意する。
 でも、命をかけるまでして欲しくないかな……私もお爺さんみたいに大泣きしたくないし!

 <前世が魔物で、記憶を引き継いでいるからか分からんが、ある程度は人の喋っている事は分かるみたいでな。わらわは両方喋れるから、ルーナの故郷へ行った時に色々話してたんじゃあ>

 「なるほど、だからあなた達仲がいいのね」

 <同じ雌じゃしの>

 その理屈はあまり分からないけど……。

 「でもこのままだと、レジナはまた……」

 フレーレの言うように、さっきからまったく目を覚まさないレジナはかなり心配だった。
 自分の回復魔法が完全なら、と唇を噛んでまた俯いてしまった。
 
 「……レイドさん、明日から霊峰へ行きませんか?」

 「……ルーナちゃんはデッドエンドを使ったから、身体能力は素人以下だ。危険すぎる……。それはレジナのためかい?」

 レイドさんは分かっているようで、逆に聞き返してきた。私は頷いて続ける。

 「ええ、不死鳥の血をレジナにも飲ませればきっと元気になると思うんです。女神の力を手に入れるには私が必要でしょう? 足手まといなのは承知しています、でも急がないとレジナが……」

 目を瞑って聞いていたレイドさんが目を開けてため息を吐きながら話し始めた。

 「仕方ない、レジナの為だからな? ……今から村長へ頼んで、早朝から登れるよう手配してもらおう。レジナも見てもらえないか聞くのも必要だな」

 「レイドさん……! うん!」
 
 言うが早いか、私とレイドさんダラムさんの元へと向かう。
 フレーレにはレジナとおチビ達の面倒をお願いした。

 予定は変えないわ! もう色々頭が痛いけど、必ずみんな助けるんだからね!!







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 リー……リー……



 ルーナとレイドさんが村長さんの所へ行き、静かになる。

 ベッドの上のレジナはスースーと寝息を立てているが起きる気配はない。

 シルバとシロップがレジナに寄り添いうとうとし始めたところでわたしはレジナに巻かれた包帯に手を当てる。

 <フレーレ! お主何を!?>
 
 「≪シニ……ア……ヒ≫ う……! げほ! げほ!」

 傷口を見なければ大丈夫かな、と思ったけどやっぱりダメだった。

 回復魔法を口にするだけで、アントンの傷が広がったあの光景がフラッシュバックされてしまう……。

 「はあ……はあ……わ、わたしは……どうすれば……」

 <フレーレ……>

 改善の糸口を見つけられないまま、わたしは霊峰へと向かう。

 わたしに必要なものは……なんだろう……。

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