パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その62 追跡

 「着いたー!!」


 「きゅんきゅん!」「きゅーん!」


 ようやく馬車が村に着き、おチビ達がここぞとばかりに荷台から飛び出し、体をぶるぶると震わす。
 レジナはたまに外に出ていたけどチビ達は馬車についていけないからずっと馬車の中だったしね。


 「とりあえず宿を取ろうか。村なら厩舎とかありそうだし」


 レイドさんがブルルとアップルを引きながら、近くの村人へと声をかける。


 「……外からきなすったか、お疲れさんだで。宿はあの大きい建物がそうだぁ。最近は冒険者も……いや、何でもねぇ。ゆっくりしていきな」


 宿の場所を教えてくれたけど、ボソボソと喋っており何だか元気が無い様に見えた。


 「……何だか表情も声も暗い人ですね」


 「よそ者を歓迎しない、って感じじゃなさそうだけど何だろうね」


 「まあ、俺達はそんなに長居することは無いし、あまり気にしないでもいいんじゃないかな?」


 レイドさんの言うとおり、ここは山へ登るための入り口ということで来た村なのだ。
 村からすぐ出ればいい、かな?


 <不死鳥を求めて冒険者が来ると行商が言っておったじゃろ。良くも悪くも影響があるんじゃろうのう>


 「ウチの村はそんなことなかったけど?」


 <お主の村は冒険者や旅人が来たら温泉がメインになるから癒しに最適じゃ、争いなどはおこるまい。対してこっちは不死鳥という分かりやすい一攫千金目当ての人間が多いじゃろうからな、冒険者同士の足の引っ張りや、いざこざがあったとしても不思議ではない。それに村人が巻き込まれたことがあってもおかしくなかろうて>


 チェイシャがレジナ達と一緒に歩きながらそんな事を言っていた。


 「何となく分かりますけど、それじゃあ村の人が可哀相ですよね」


 <ま、代わりに村が潤えばそれはそれ、というところじゃろ。宿の大きさからもうかがえるとは思わんか?>


 確かに、村にしては不釣り合いな大きさの宿だと私も思う。逆に言えば不死鳥が居なくなったらこの村の名物というか客寄せが無くなるから寂れる一方かも……。


 そんな話をしている内に、宿へ到着。レイドさんの思惑通り厩舎があったので、二頭と荷台を預けて宿の中へ入ると、私達の前に部屋を取ろうとしている人が居た。あれ? あの人……。


 「霊峰へ登るのかい? 物好きなことだ」


 宿屋の主人がその人へ声をかけ、宿帳へ記入していた人が顔をあげて答える。


 「野盗がこの辺を荒らしまわっていると聞いて討伐依頼を受けたんだ。どこかにアジトがあると思うんだが、道中では出くわさなかったから霊峰側が怪しいと思って……」


 上げた顔に見覚えがあった! やっぱり!


 「ライノスさん!」


 「え? ルーナさん! それにレイドさんとフレーレさんも!」


 ガンマの町のダンジョンで一緒に戦ったライノスさんだった!


 「久しぶりだな、一人か?」


 「え、ええ。ビューリックへ戻ったと思ったらギルドで討伐依頼ですよ……パーティになってくれる人が居なくて結局一人ですよ、ははは。一応、騎士団も援護で来てくれるそうなので斥候みたいな感じなんです」


 「今、野盗を討伐って言ってましたけど、わたし達途中で会いましたよ? 馬車の中に捕えた人が4人いますけど……」


 フレーレがライノスさんの言葉を聞いていたようで、何か役に立てるかと野盗と戦った出来事を話す。


 「なんだって!? やはりこの近辺にアジトが……?」


 「とりあえず、チェックインした後に村長にでも引き渡そうと思ったから、その時に尋問でもするといい」


 「は、はい。ありがとうございます! では荷物を置いたらここに戻ってきますので、良かったらご一緒させてください」


 レイドさんの言葉で仕事が捗ると思ったのか、嬉々として部屋へと戻って行く。


 「……あんたらは、どうするんだい? 全員同じ部屋かい? 羨ましいねぇ可愛い子を二人も連れて」


 宿屋のおじさんがからかうようにレイドさんへ言葉をかけ、慌てて反論をしていた。


 「そ、そういう間柄じゃない! ……部屋は別で頼む。できれば何かあった時に対処できるよう隣がいいんだが、あるかな?」


 「ああ、ちょうどいい部屋があるよ。そら、鍵だ。ゆっくりして行ってくれ……ゆっくりな……」


 「それじゃ行きましょうか。あ、動物は一緒に部屋へ行っても構いませんか?」


 「わふ!!」「きゅん!」「きゅきゅん!」


 <こ、こんこん……>


 相変わらずチェイシャは雑だが、レジナ達がうまくフォローしてくれていた。それをみたおじさんが動物達を目を細めてみながら私達に告げる。


 「んー……まあいいだろ、トイレの世話だけはキチンと頼むぞ? もし粗相をしたら厩舎で寝てもらうからな! 毛皮にするぞ! なんてな!」


 おじさんがチビ達に大声をかけると、びっくりして私の後ろへ隠れてしまった。


 「「きゅーん……」」


 「ははは、まあホントに気を付けてくれよ?」


 私達はおじさんの声を後ろに聞きながら部屋へと向かう。


 「じゃ、フレーレと私はこっちね! レイドさん、また後で!」


 「ああ、また後で」


 隣の部屋へ入るのを見届けて私達も部屋へ入る。


 まさかライノスさんとまた会うとは思わなかったなぁ。一人でこんな山奥まで野盗退治とか大変だよね。










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 「何とか会う事は出来た、か」


 ライノスは部屋で一人呟く。ルーナ達と出会ったのは勿論偶然ではない。


 魔剣を持たされたあとアルファの町へと向かったライノスは、ルーナを探していたのだが故郷へ帰っているルーナを発見することが出来なかった。


 しばらく滞在してルーナの情報を探っていたところ、アントンを背負ったレイドを見かけたのでその後をつけていたのだった。
 霊峰へ行く情報を得たので、必ず通るこの村へ先回りし、偶然を装ってルーナ達に近づこうという計画だった。


 ただ、ビューリックでは野盗自体も問題になっており、カモフラージュのために一応ギルドで依頼を受けて来ていたので嘘は無い。この村に冒険者が寄り付かなくなったのも野盗のせいだという事だろう。




 「気は進まないが……父さんとエレナのためだ……」


 野盗も気になるが、ライノスの目的はあくまでもルーナを誘拐し国王へと届けること。その目的の為にライノスは手段を選んではいられなかった。


 しかし、必ずレイドが阻むだろう。あの魔王と対峙した勇者相手に勝てるだろうか?
 魔剣を握り冷や汗を流すライノス。


 「戦わずして攫う方法を考える必要があるな……幸いパーティを組んだことがあるから油断しているだろう……」


 まだその時ではないと、魔剣を部屋に置いてライノスはルーナ達と合流すべく宿屋の入り口へと向かった。

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