パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その57 何故

 
 ギルドを出た私とレイドさんは霊峰へ行くために、ショッピングへ。


 行くのであれば早めにした方がいいと、レイドさんが準備を進め始めたのだ。
 遺体もそんなに長く放置はできないだろうということもあるとのことだった。


 私達が来た雑貨屋さんは広くて品ぞろえがいい。武器とか薬とかは専門店がいいんだけど、値段も安くてかゆいところに手が届くお店なのでまずはここい来る人が多かったりする。




 フレーレはまた後で誘ってみようと思うんだけど、今回はギルドの依頼ではないのでお金は現地調達……お金が欲しいフレーレはそう言った意味でも誘いにくいのは確かだ。落ち込んでるし、今回は二人かなあ……。


 <防寒具は要るぞ、わらわは大丈夫じゃがチビ達はちと寒いかもしれん>


 「きゅん!」「きゅーん!!」


 「わふん」


 <何? 大丈夫じゃと?>


 チェイシャがレジナの背中で、山についてこんこんと話をしていた。ペットショップに行けば犬用の服とかあるけど、あれってどうなんだろうね? 狼って寒い所は強いイメージあるけどなあ、北の森も冬は寒いし。


 「よし、これでいいか」


 「何を買うんですか?」


 「収納カバンだよ、リュックサック型のがあったからそれにしようと思って。ルーナちゃんの里帰りした時、大荷物だったろ? やっぱ欲しいなって」


 品切れだったのが入荷されたとかでレイドさんがご機嫌だった。私は肩から下げるタイプなんだよね。容量はリュック型の方が多いからちょっとうらやましい……。


 「テントと寝袋……後は食料と防寒具……」


 幸いダンジョンで稼いだお金と、パパの仕送りする分が無くなったので余裕はある。パパに送った分は貯めていたらしく、手紙と一緒に皮袋に残されていた。こうなることを見越していたのかしら?


 「これ、どうです? 可愛くないですか?」


 ピンクのフード付ポンチョがあったので試着してみた。真ん中のリボンがオシャレ!


 「暖かそう? だったら似合ってるからいいと思うよ」


 すると近くにいた店員さんがレイドさんへ何かごにょごにょと言っていた。
 レイドさんが顔を赤くして「い、いや違う」とか言ってたけどなんだろう?


 「る、ルーナちゃん! そのポンチョ、か、可愛いよ!」


 「え!? ど、どうしたんですか急に!」


 「初々しいでございますねえ……」


 眼鏡の店員さんが何か呟きながら去って行った。レイドさん、あの人に何か吹き込まれたのね……。


 「そ、それじゃあ買う物も買ったし行こうか」


 「はい!」


 金貨3枚……冒険にはお金がかかる……とほー。


 続いてペットショップ。チェイシャが騒ぐので一応来てみたけど……。


 「シルバ、服……」


 着せようとすると、いやいやをして着てくれない。動きにくくなるのが嫌みたい。


 「きゅーん」


 シロップはレイドさんの背中によじ登ろうと必死だった。うーん、あまり嫌がってるのを着せても仕方ないか。


 「じゃあ、寝るときの毛布だけね。それはあったほうがいいでしょ」


 <そうじゃな、それくらいは欲しい。チビ達、毛布を選ぶのじゃ>


 「きゅんー♪」


 シルバがそれを聞いて凄い早さでどこかへ行き帰ってくる。
 毛布をくわえているので欲しいものはあったらしい。


 「……骨付きの肉の絵柄……」


 「きゅん!」


 ……毛布をはむはむしてダメにする未来しか見えないんだけど、かなり欲しそうだったのでシルバはこれにした。


 「シロップは?」


 「きゅーん♪」


 おや、女の子っぽい花柄の毛布……ここは兄妹で差が出たか……。


 「わふ」


 レジナは普通の青い毛布だった。でも私は知っている、シルバの肉柄毛布をチラチラ見ていたのを。


 毛布を購入し、帰宅することになった。
 ここでレイドさんが、一度妹さんのお墓へ行くと言いだした。


 「すぐ戻るよ。今後の事を考えると”デストラクション”は必要になると思うしね。妹が……セイラが生きているなら、墓に置いておく必要もないから」


 隻眼ベアの時に持っていたあの蒼い剣を持ってくると言う。普通の剣でも強いのに、あの剣を持ったレイドさんのレベルはいくつになるのか……。


 レイドさんと別れて、レジナ達と歩いているとフレーレを発見した。


 うーんまだ暗いなあ……。


 そんな気を知ってか知らずか、チビ達がフレーレの元へ駆けて行った。


 「きゅーん♪」「きゅんきゅん!」


 足元でぐるぐる回る二匹を見て驚くが、すぐにチビ達だと分かってしゃがみこんだ。


 「シルバにシロップちゃん。どうしたの?」


 フレーレが微笑みながらチビ達を撫でていたので、私から声をかける。


 「ちょっと買い物にね」


 「あ、ルーナ。買い物? ……大荷物ですね」


 フレーレは私がどこへ行くか見当がついているのだろう、荷物を見て少し声のトーンが下がった。


 「……うん、霊峰フジミナへ行ってくるわ」


 「そう、ですか……」


 「うん……」


 お互い黙ってしまい、気まずい空気が流れる。何て声をかけようかと思ったら、フレーレから声をかけてきた。


 「どうして……」


 「ん?」


 「どうしてルーナは、そんなに強いんですか? ……お父様は失踪、女神の力を手に入れさせられて……今度は危険な霊峰……」


 どうして、か。私自身馬鹿だからあまり考えたことが無かったなあ……。


 「別に強くなんかないよ……実家でパパが居なくなった時、私泣いてたじゃない。あはは……本当は怖いよ。このまま女神の力を手に入れていったらどうなるかも分からないし、もしかしたら死んじゃうかもしれないし……」


 「……だったら! 逃げてもいいじゃないですか! 誰も知らないところで、のんびりとレジナ達と暮らして……!」


 言葉は強いが、フレーレはすでに泣いていた。私を心配してくれているのは痛いほど分かる。けど……


 「そうだよね、逃げたら楽なんだよねきっと。でも、私のせいで他の人が傷ついたり死んじゃったりするのはもっと嫌なんだ。アントンがあの男の狙いは私だってハッキリ言っていたの。だから逃げ続けていたらまた誰かが同じ目に逢う気がするの」


 「でもルーナばっかり酷い目に合うなんて……」


 「ま、それは私もちょっと……って思うし、運命なんて言いたくないけど、私に出来る事があるならやるって決めたの! 今回だってアントンとメルティちゃんを助けられるかもしれないし、パパの手がかりも見つかるかもしれない。あの男が出てくるならとっつかまえてもいいかもね!」


 私はフレーレを安心させようと出来る限り明るく、大声で言い放った。言った事に嘘は無い。怖いのも本当……でも、レイドさんもチェイシャも、レジナ達も居るからね!


 「ちゃんと戻ってくるから、帰ってきたら何か奢ってよね? それじゃあ!」


 「あ……!」


 「わふ!」「きゅんー!」「きゅんきゅん」


 <……>




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 一人残されたフレーレがルーナの背中を見ながら立ち尽くす。




 「私より年下のルーナが……あんなに頑張っているのに……わたしは……」


 (私にできることがあったらやるって決めたの!)


 (回復魔法使いを馬鹿にしているわね……見つけたら始末してやるから)


 「わたしは……」


 顔をあげて寺院へと走り出すフレーレ。






 「すいません! ケガをしている人はいませんか!」


 勢いよく寺院の扉を開けて、フレーレが


 「おお、なんじゃい藪から棒に……大怪我をした人は今日は来ておらんぞい。ケガ人なら病院の方が居るんじゃないかのう」


 寺院は毒や呪いの治療、そして蘇生を生業としている。ケガを治すなら病院が普通だ。ただし、死に至るケガなどは病院では治せないので回復魔法を使うため寺院へ駆けこむ人が多い。料金はそれなりにするが。


 「そう、ですか……」


 何か考えがあってのことだったのだろう、フレーレは肩を落とす。
 するとお茶を飲んでいた僧侶のおじさんが、ほれ、とフレーレにお茶を出す。


 「まあ落ち着いてお茶でも飲みなさい。何をそんなに焦っているのじゃ?」


 「焦る? わたしがですか?」


 コクリと頷く。


 「お前さん、余裕が無い顔をしておるよ? そうじゃなあ……自分だけ置いていかれた、そんな感じかのう」


 「……」


 「何があったかは知らんが、一度落ち着いてみることじゃ。そして己を客観的に見てみると、何か分かるかもしれんのう。お嬢さんは何に困っているんじゃ? それとも何かに腹が立っておるのか?」


 フレーレは僧侶のおじさんの話を黙って聞いていた。


 考える……自分はどうしたいのか……わたしはどうしたいのか、と。
 腹が立つ? それは自分にだろう。困っている? そんなの……いつものことじゃないかしら。






 「お茶、ありがとうございます!」


 フレーレは急に立ち上がり僧侶へお礼を言うと、急いで教会へと走って行った。


 「良い顔つきになったじゃないか。頑張るんじゃよ」


 ずずず、とお茶を飲む僧侶だけが寺院に残されたのだった。

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