パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その56 相談

 <揃ったか>


 ご飯を食べた後、私は教会までフレーレを呼びに行き連れてきた。
 レイドさんは山の宴で食べていたので、すぐ捕まえる事が出来た。




 「話って何?」


 <うむ、今後のことじゃ……ルーナよ、これからどうするつもりじゃ?>


 チェイシャは私に質問を投げかけるが、要点が無いので話が大きいと思った。
 恐らくは女神関連だと思うけど……。


 「……女神の封印は、怖いからあまり触れたくないんだけど……」


 <わらわとしても封印を解かれるのは勘弁して欲しいが……パパ上とのことはどうするのじゃ?>




 「それもあるんだけどね……で、でもほらパパは自由にしていいって……」


 ここでレイドさんも助け船を出してくれる。


 「そうだな、わざわざ危ない橋を渡る必要は無いからそれでもいいと思う。それより、チェイシャ、そんなことをお前がわざわざ言う理由は何だ?」


 確かにチェイシャが言うのは違和感がある。私に何かをさせたいような感じがするけど……?




 <いや、集める気が無いならそれでいいんじゃ。すまなかったな、夜分に……>


 歯切れの悪い締めなので、やはり気になる。意を決して聞いてみる事にした。


 「何か知っているんじゃないの? 例えば私が女神の力を集めるとどうなるか、とかね」


 <……どうなるかは分からん。が、集めていればその内、我が主に会えるのでは、と思ってな。わらわ達は封印した顛末しか聞いておらんから『どうしてルーナなのか』を聞いてみたいと思うんじゃあ。後は、さっき死んでしもうた二人のことじゃの>




 「アントンとメルティちゃんがどうして?」


 <霊峰フジミナは女神の封印がある山じゃ。ここまで言えば察すると思うが、守護者はフェニックス……つまり不死鳥じゃ。”怠惰のジャンナ”という>


 「ということは……二人が生き返る可能性があるってこと!?」


 <わらわ達は他の封印された場所は分かるから、不死鳥の血は手に入るじゃろうな。でも行かないんじゃろ?>


 「う、ううん……行ったら面倒な事になりそうだし……でも私を誘拐しようとしていたあの男のとばっちりでメルティちゃんが死んだと思うと……レイドさん、フレーレ、どう思う?」


 「俺は行くならついていくよ。妹の件もあるからね。女神の封印の場所へ行くためにチェイシャは俺が借りようと思っていたくらいだし」


 <え!?>


 レイドさんの容赦ない言葉に驚くチェイシャ。


 「……わたしは……行けません。ごめんなさい……」


 「え?」


 フレーレはおじぎをして部屋を出て行った。やはり帰ってきて……というよりアントンに魔法をかけた後から様子がおかしい。


 <元気のいい娘じゃったのにのう>




 パーティを正式に組んでいるわけじゃないから行かないと言われればそれまでだ。それはいい。
 フレーレに何があったのか、心配で仕方なかった。




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 とぼとぼと教会へと戻るフレーレ。


 先ほどの出来事が頭から離れないのだ。




 (き、傷が広がっていく……!?)


 「……わたしの使った回復魔法で……傷つくなんて……」




 フレーレは攻撃魔法も使うので「傷つける」という行為自体に抵抗は無い。むしろ倒さなければこちらがやられるという冒険者としての心得もあるくらいだ。


 だが、回復魔法で死に至る、という事は初めてだった。結果アントンは死んでしまい助ける事はできなかった。
 もしあそこで回復魔法を使わず、病院なり寺院なりへ運んだのであれば変わっていたかもしれないとずっと思いつめていたのだった。


 ゲルス曰く、回復魔法以外はどうなるか分からないのでもしかしたらという事はあったかもしれないが、大怪我の中、あそこで回復魔法を使わない者は居ないだろう。


 「ルーナ達がもしあんなことになったら……」


 今度は霊峰へ行くかもしれないと言う。
 そこであの男が出たら……考えて身震いするフレーレ。


 そんな事を思いながらそろそろ教会に着く、というところでフレーレはシルキーと遭遇する。


 「あら、フレーレじゃない。今帰り?」


 「は、はい……」


 この人も回復魔法でメルティのケガを悪化させたと聞いていたフレーレはシルキーへと尋ねてみる。


 「あ、あの……昼間……その、メルティちゃんって女の子に回復魔法をかけたって……」


 シルキーはそれを聞いて少し困った顔をして答えた。


 「あー……うん、そうなの。リザレクションを使ったらあっという間に傷が広がってね……そのまま……」


 「やっぱり……わたしも、同じ事がありました……」


 するとシルキーは目を見開いてフレーレの肩を揺する。


 「ホントに!? だ、誰! ううん、そうじゃなくて……その、回復魔法を効かなくするヤツに会ったりした!?」


 早口でまくしたてながら、ぶんぶんと揺すられ、フレーレは目を回していた。


 「あああ、あの!? は、はい! ほっほって笑う灰色の髪をしたやけに肩幅の広いおじさんでした!真っ黒いローブを着てました!!」


 逃げる直前、アントンに魔法をかけ、こちらを挑発して逃げた男の特徴を話すと、シルキーは鼻息を荒くしてフレーレを放す。


 「そう、ありがとう。そいつは見つけたら……必ず始末してやるわ……よくもまあくだらない魔法を使ってくれたもんだわ。私達回復魔法使いをバカにしてるわね」


 シルキーはメルティの死でショックを受けていた。だが、それと同時にこんな魔法を使ったヤツを恨んでいたのだ。


 「あ、あの?」


 「私達は回復魔法の使い手よ、それをバカにされて黙っていられないわ。生存する可能性があるのにそれをつぶされたのよ? こういうのを増やさないためにも、必ず見つけ出して制裁する必要がある!」


 見かけはすごい美人なのだが、一度火がつくと止めらない熱血なシルキー嬢だった。


 「フレーレもショックを受けたと思うけど、負けちゃだめよ? その男、見つけたら私にも教えてね!」


 それじゃ、とシルキーは上機嫌で去っていく。仇の詳細を聞けて満足したからだろうか。


 「……わたしは……」


 フレーレはまた教会へと歩き出す。シルキーのおかげで何か掴めそうだったが、吹っ切れるには何かきっかけが必要だった。




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 翌日、私とレイドさんは昨日の顛末をファロスさんとイルズさんに話すことにした。




 「……アントンが鉱山から出てきている、か。しかも死亡……」


 イルズさんは難しい顔をしていた。鉱山に送られたらしばらくは戻ってこれない。
 更正したと判断されるか、保釈金が必要だからだ。
 更正の可能性は否定できないが、早すぎるとイルズさんは言う。


 「で、謎の男に殺された……。曰くがあるなんてものじゃないね。できればアントンに事情を聴きたい所だけど、まさに死人に口なしだ。多分それも狙いだったんだろうけど」


 ファロスさんも肩を竦めて首を振る。


 「そのことなんですが……もしかしたら何とかなるかもしれません」


 「どうしてだい?」


 これを、とアントンのメモを渡す。


 「……伝説みたいな話に食いつこうって? あそこはかなり危険な山らしいから止めといた方がいい」


 ファロスさんが呆れた感じでレイドさんにメモを返す。


 「一応、確信があっていくつもりです。ただ、生き返った後、彼の身に危険が及ぶ可能性があるので、心配なのはむしろそっち……」


 「そうだな……生き返った後で考えるとしようか。アントンの話を聞いてみないと判断がつかんからな。命の危険があるならギルドだと難しい。それこそ王都で匿ってもらうくらいは必要かもしれんし」


 イルズさんが生き返るならな、と続けた。


 「分かりました! 行くときはまた声をかけます。レイドさん、行きましょう」


 「ああ。準備もしないと行けないしな」




 レイドさんと話をして、霊峰へ向かう事はほぼ決定していた。


 アントンはあの時「こいつの狙いはお前だ」と言っていたのを思い出したからだ。
 あの男が私を狙う理由を恐らく知っている。


 女神の力とパパ、そして私を狙った男。


 もしかすると、一つに繋がっているのでは、と私は思う。


 ならば、女神の力を囮に出来るのでは? 
 そして二人を助けて話を聞く。そのために霊峰フジミナへ向かう事を決意したのだった。

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