パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その55 遺体

 
 「町が見えてきたか……すまないね、荷物を持ってもらって」


 レイドさんはすまなさそうに言うが、アントンを背負ってここまで歩いて来たのだ。それは言いっこ無しである。


 「大丈夫ですよ! とりあえずどうします?」


 「遺体は寺院に持って行って埋葬するのが基本だ。身内が居ないならこの町で墓を作る事になると思うよ」


 アントンを背負い直し、再び歩きはじめる。鎧を着こんだままだからかなり重いと思うんだけど……レイドさんすごいなあ。


 「……」


 「フレーレ? どうしたの、行くわよ?」


 「あ、はい……」


 「大丈夫? 顔色が悪いけど……」


 「だ、大丈夫ですよ! ほら! 行きましょう! あ!?」
 「きゅんきゅん!」


 レイドさんを追いかけるが、つまづいて転んでしまったフレーレ。
 大丈夫かなあ……。




 寺院に行くと、小さい子供を連れた母親が先に居た。こちらを見て会釈をする。
 棺の中に入っている子のお母さんのようだ。


 そのお母さんがレイドさんの背中に居るアントンを見て、目を見開く。


 「そ、その鎧と剣は……ノートナさんじゃありませんか!?」


 レイドさんは女性を一旦制止し、寺院の僧侶が用意した棺にアントンを入れ装備を外していく。
 竜の羽を象った装飾の剣を見て、女性は間違いないと呟いた。


 「あの……この人はアントンと言う冒険者なんですけど、ご存じなんですか?」


 「髪の色が違うのと、仮面が無いので、私があった時と容姿が違いますが、この人はノートナさんと名乗っていました。ウチでこの子……メルティの面倒を見てくれていたんです……」


 メルティ。最後にアントンが口にしていた気がする、とすると……。


 「あなたがソフィアさんですか?」


 「え、ええ……そうです」


 「アントンがこれをあなたに、と」


 お金の入った皮袋をソフィアさんの手に渡すと……。


 「死んでしまっては意味が無いのに……」


 ソフィアさんが皮袋を抱きしめて泣いていた。


 「……失礼、お子さんの蘇生はなさらないのですか?」


 レイドさんが聞きにくそうに尋ねる。


 「ええ、お金もかかりますし……何よりこの子はあまり長く生きられないので……ノートナ……アントンさんは?」


 「アントンは身内も居ないですし……何より回復魔法を使うと傷が広がる魔法を受けてしまったので……」


 「そう、ですか……この子も回復魔法をかけてもらったんですけど、傷が広がりました。同じ魔法でしょうね」


 「……! か、回復魔法を! だ、誰ですか! 誰がかけたんですか!?」


 落ち込んでいたフレーレがソフィアさんに食い入るように質問する。
 泣いていたソフィアさんもびっくりしていた。


 「た、確かシルキーさん、とおっしゃったかしら? さっきまで病院にいたんですけど、どこかへ帰られましたね。悔しいと呟いていました……関係ない私達に魔法を使ってくれて感謝です……」


 「シルキーさんでも……」


 レイドさんと僧侶さんがアントンの装備を外し、私が血を拭い取る。アコライトでもあるフレーレは、手伝いで死に装束をアントンへ着せていた。


 「ん? これは……?」


 レイドさんがアントンの遺体から一冊の手帳を発見する。
 その中からメモ紙が一枚、ハラリと落ちてきたのだ。


 「なんだろう? ……霊峰フジミナ? 不死鳥の血があればどんな病気も治り、死者さえも蘇生できる……こっちは霊薬について書いてる? どうしてこんなものを……」


 ソフィアさんは心当たりがあるようで、メモを見ながらポツリ呟いた。


 「恐らくメルティの為です。この子は生きていても後2、3年で死ぬ予定だったのですが、霊薬か不死鳥の血があれば治せると思ったのでしょう……この子が死ぬ間際にも持ってくるという事を叫んでいたので……」


 今までのアントンを知る私達からすると、そんな馬鹿なとしか言えない話だが、この子はもしかしたらアントンに何かを与えたのかもしれない。だから必死で仇を討ちたかった、そんな気がした。


 「レイドさん、不死鳥って会ったことある?」


 「……いや、流石に無いな……フジミナは容易に近づく事が難しい、険しい山なんだ」


 <……霊峰か……>


 チェイシャが何か呟いたが、僧侶さんの言葉で私達は解散することになった。


 「特殊な薬草で腐敗を防いでいるから当分は大丈夫だ。蘇生するかどうか決まったらまた声をかけてくれ。おっと、埋葬の時でも同じだからな?」


 「メルティはもう埋葬手続きを取ろうかと思いますけど、アントンさんは?」


 「うーん、私達で決めていいものか……とりあえず考えます。もし埋葬ならメルティちゃんと一緒の方がいい気がするんで待ってもらってもいいですか?」


 「ええ、そうしてもらった方がメルティも喜びます。アントンさんの装備は私が持って帰っていいんですか?」


 「はい、その方がアントンも嬉しいでしょうし……それでは」


 寺院の前でソフィアさんの家を教えてもらい、私は山の宴へと戻った。
 レイドさんは後で食事に来るみたいだけど、フレーレは……。


 「わたし、ちょっと用事を思い出したから教会へ戻ったら用事を済ませます。だから、また……」


 そう言い残し、足早にその場を離れて行った。




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 「おかえりルーナちゃん、どうだった里帰りは?」


 「……うーん、楽しかったんですけど……」


 「……歯切れが悪いな? どうした? ……おお、チビ達元気だったか?」


 「きゅん!」「きゅんきゅん!」
 「わふ!」


 マスターの足元をぐるぐる回る狼達は、早速お客さんに可愛がられていた。
 ただ、山の宴は飲食店なので外へと出され、連れだってお客さん(女性ばかり)が裏庭へとぞろぞろ出て行った。


 <(わらわは部屋へ戻るぞ? 後で話がある。できればあの男と……フレーレとやらも聞いて欲しいが……)>


 「(ん、レイドさんはこっちに来るから部屋へ呼ぶね。フレーレは、大丈夫かな……)」


 <(少し思いつめておったのが気になるのう。ほら、ファウダーも行くぞ)>


 <(お、おう……喋ると解剖……喋ると解剖……)>


 チェイシャは走って、ファウダーは飛んで私の部屋へ戻る。それをみたおかみさんが。


 「……また増えたのかい? ありゃなんだい? 空飛んでたけど」


 「ええっと……ド、ドラゴン、です」


 おかみさんとマスターが顔を見合わせた後部屋の方へ続く通路を見た。


 「また変なのを拾ってきたねぇ……」


 「……ドラゴンか……まだ食った事が無いな……」


 あ、ファウダーが危ない。


 とりあえず私も一度休息のため、部屋へ戻ることにした。




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 ここは廃城。


 赤い絨毯の通路を歩き、謁見の間に男が入っていく。


 「……戻ったぞ」


 「お前か、どうだった?」


 「一応仕込は終わった、後はルーナ次第ってとこだな」


 「回りくどいな、お前のやり方は。いっそすべてを話して連れて来たらどうだ?」


 「考えたけどなあ……でも真実は残酷だ。それで心が壊れたら終わりだ」


 「女神の問題か、それだったらやっぱり……まあいいか、任せる。で、ゲルスの行方は?」


 「そっちは全然だ、神出鬼没だからな。まったく面倒なこった」


 「あいつは必ず女神の力を手に入れようとするだろうから、ルーナを張っていようか?」


 「そうだな、頼めるかベルダー? こっそりでいい」


 「ここに居ても退屈だしな。飯も作れる奴が居ないし……」


 「俺は作れるぞ」


 「勇者様は何でもできるからな」


 ベルダーが皮肉たっぷりに言い、それを聞いた男が玉座をみながら呟く。


 「……そう万能でもねえよ……」




 「悪い」


 二人は玉座に座る白骨を見てそんな会話を呟くのだった。

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