パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その53 クズは星屑となって

 「ぐあああああ!」


 グオオオオオオン!!




 「ふう……ふう……ま、まだだ……」


 すでに満身創痍だがアントンはドラゴンと対峙する。後ろに居るゲルスを倒すために。
 ドラゴンに自然回復能力が無いので、徐々にダメージを与えてはいたが決定的に何かが足りない。


 「はあ……面倒くさいですねぇ。どうしてそう諦めが悪いのでしょうか、クズはクズらしくさっさと死ねばいいんですよ」


 「(ここで野郎が介入したら流石に無理だ……)」




 グオオオオ!!


 ドラゴンの噛みつきがアントンを襲う!


 ザッ!!


 身を翻して回避し、首へとドラゴンスレイヤーを振り降ろす。


 「頼む! 効いてくれ!」


 ドッ!!


 丸太を斬ったような手ごたえがアントンの手に伝わる。
 少しめり込んだが斬りおとす程では無かった。


 ギャウ!?


 驚いて首を振るドラゴン。アントンは再び投げ飛ばされ地面へと落下する。




 「痛っ!? 何度も飛ばされてりゃ着地もうまくなるってか!」


 すぐに起き上がり、剣を構える。額の出血も無視できないくらい顔を真っ赤に染めている。
 ついにゲルスが苛立ったようにドラゴンへ怒号を浴びせる。


 「何をしている! 死にぞこないも殺せないのかお前は!!」


 ゲルスの目が怪しく光ると、ドラゴンは呻き口から泡を吹きながらアントンへと突進していく。


 「(そうか、お前もゲルスに……なら……)」


 「俺が楽にしてやるよぉ!!!」


 ガキン! カンカン! ザシュ! 


 ドラゴンの猛攻を剣で弾きながら攻撃を加えていく。一刀、また一刀と斬り、ドラゴンもおびただしい出血をしていた。


 「うおおおおおおお!!!」


 ズシュ!


 ギュオオオオオン!?


 アントンの捨て身の攻撃で、怯むドラゴン。チャンスと見たアントンが追い打ちをかける!


 「まだだ! 倒れろ……! ぐう!?」


 「いやいや、ここまでやるとは思いませんでした。時間が無いのでもう終わりにしましょうね? 実験材料としては中々面白かったですよ」


 あと一息の所でゲルスが魔力光線でアントンを貫き、アントンは膝をつく。


 「ち、ちくしょ……」


 これ以上は体が動かない……アントンはゲルスを睨みつけると、ゲルスはニヤリと笑った。
 そこへ青白い狐が乱入してくる!


 <やはりファウダー! わらわじゃ! チェイシャじゃ!>


 グオオオオオオオン!


 尚もファウダーと呼ばれたドラゴンは泡を吹きながら、暴れ出す!


 「ほっほ……! どういうことですかこれは! 暴走している?」


 グオオ! ギュオオオオオオ!!


 <操られておるのか!>


 「人語を解する狐……あなたは女神の力を封印していたガーディアンですね? このドラゴンと同じ」


 <貴様か! ファウダーを操っておるのは!>


 チェイシャの尻尾から出す魔力弾がゲルスを襲う。回避できないと悟ったゲルスは同じく魔力弾で相殺をしていく。


 「ぐ、た、助かったぜ……わ、悪いがそいつを頼む……俺はこのドラゴンを殺る!」


 <……仕方あるまい、わらわと同じでその肉体を壊されてもまだ生き残るじゃろう……小僧! 首じゃ! 一撃で跳ねろ!>


 「無茶言ってくれるぜ……」


 体はもう限界だが気力で動いているアントン。しかし不思議と疲労感は無かった。


 「ド、ドラゴンスレイヤーならちったあ協力してくれよ……! 俺は……あいつを倒すまで死ぬわけにゃいかねぇんだよ!!」


 グッとドラゴンスレイヤーを握りこむアントン。その言葉を聞いたのか、その時、不思議な事が起こった!
 なんと、ドラゴンスレイヤーの刀身が鈍く光り出したのだ!
 それと同時にアントンの体に力が沸き起こる!


 ブウウウゥン……


 「な、これは! 力が……勇者の力が戻っているというのですか!?」
 ゲルスがチェイシャと戦いながらも様子を伺っていた。そして戦いが始まって初めて困惑の声を上げる。


 ドラゴンスレイヤーが共振を始め、アントンは引き寄せられるようにドラゴンへと向かう!


 グオオオオオオオオオオ!!!


 ドラゴンの剛腕が、アントンへと振り降ろされ……。




 スパン!




 ギャアアアアア!?


 さっきまで傷しか負わせられなかったドラゴンの腕を……肘の所から真っ二つに切り裂いたのだ。




 「す、すげぇ……これが俺の力……!? いや、ドラゴンスレイヤーの力でもあるのか!」


 ドラゴンスレイヤーとアントンの赴くまま腹を薙ぎ、足を斬り、眉間を突き刺す。


 「だあああああ!!」


 ドラゴンの頭が下がって来た所で、アントンは飛び上がり首を狙う!!




 「終わりだぁぁぁぁぁ!!」


 ドラゴンの首へスレイヤーを振り降ろす!


 ギャアアアアアアア!!?


 「クソ! 骨に引っかかってるか!」


 その時アントンは思い出す、父と過ごしていたあの時の事を。


 「(いいか? 斬る時の角度がな、重要なんだよ。そしたらドラゴンの固い鱗でも斬れるんだぞ?)」


 「……! こうか!!」


 ゴキン……!


 剣の角度を変えて剣を振り抜くと、熱したナイフでバターを切るように、ドラゴンの首が地面に落ちた。


 グ、グ、グオオオオオン……。




 本体の首からおびただしい血を出しながら、ドラゴンはピクリとも動かなくなった。


 「何と!? アントン如きクズにやられるとは! やはり操った魔物ではこの程度ですか」


 <抜かせ! こっちは援軍がきた、貴様も後を追うんじゃな!>


 仲間を殺されたチェイシャがゲルスに牙を向く。そしてルーナ達が到着した!


 「わふ!!」


 「チェイシャ! な、何!? ドラゴン?」


 「ほっほ!! ドラゴンは失いましたがまだ私の有利は変わらないようですね!」


 ゲルスがルーナへと襲いかかろうとしていた! 


 「逃げろルーナ! こいつの狙いはお前だ!」


 「え、アントン!? なんであんたがここに!?」


 「話は後だ! こいつを始末しねぇといけねぇんだ!!」


 「その身体でできますかねぇ?」


 <お前の相手はわらわじゃろう!>


 ゲルスとルーナの間に立ち、魔法弾を発射する!




 「チッ、クソ畜生が! これでも喰らえ!」


 五本の指から魔力光線を発射するゲルス。回避するで手一杯だ!


 <くう! 尻尾があれば……!!>


 「チェイシャ! ≪フェンリルアクセラレート≫!」


 「ぬお!?」


 補助魔法で早くなり、チェイシャを回収してアントンの元へ。


 「ふう、ふう……た、助かったぜ……」


 「あんたがここに居るのは後から聞くわ、元凶はアイツ。それでいいのね?」


 「ああ、頼めた義理じゃねぇが親父や母さんの……仇でな、さっきも一人犠牲になった」


 「……分かった。ここで嘘をつくとは……というより、その傷で逃げ出さないところを見ると本当でしょうね」


 「チッ、どうせ……ん!?」


 「上位の補助魔法を全部かけたわ、これで戦えるでしょ。すぐにレイドさんとフレーレが来るわ、せめて持ちこたえられれば!」


 「(これがこいつの補助魔法……すげぇな、デッドリーベアが簡単に倒せたわけだぜ……)」


 以前パーティを組んでいた時は侮っていたが、今はその力がどれほどのものか理解できていた。


 「これなら! 死ね! ゲルス!!」


 「何と!? うおおおおおおお!?」


 アントンは一瞬でゲルスの前に行き、ドラゴンスレイヤーを振り降ろす。
 突然の事でガードが間に合わず、ゲルスが左肩から袈裟がけに斬られ血が噴き出す。


 「がああああ!? 馬鹿な!? こんなクズにこの私がぁぁぁぁぁ!!」


 ドサリ……。


 ゲルスは前のめりに倒れる。


 「た、倒した……? 倒した、のか」


 倒れるゲルスの体からジワリと血が滲んでいく。
 アントンがそれを見てため息をつく。


 「は、はは……こ、殺した……ようやくこいつを殺すことが出来た!!」


 そこにレイドとフレーレが追いついてくる。


 「ルーナちゃん! これは!?」


 「ド、ドラゴン!? ……死んでる?」


 ルーナとチェイシャ、狼親子が二人に近づき、状況を説明する。
 歩いてくるアントンをみて、フレーレが呟く。


 「アントンが、何故ここに居るんですか?」


 「……訳ありでな……事情は説明する、恐らく俺は罰を受けるだろうが……」


 その時、アントンの胸を魔力光線が貫いた。


 「ぐあ!?」


 「ア、アントン!」


 レイドが支えると、先程斬られたゲルスがむくりと立ち上がり首を鳴らしていた。


 「甘い、甘いですねえ!! まさかここまでやられるとは思いませんでした! だが! しかし! とどめを、確実に死んだことを確認もせず離れるとは! 私の防御障壁は無くなっていましたからねえ。心臓に剣を突きたてられていたらアウトでした。いやはや馬鹿で助かりました、自己再生でもう復活! ぎゃはははは残念だったなあ!! クズがあああ!」


 「う、げほ!」


 「今回復を! 傷を塞げば……<シニアヒール>」


 「うがああああ!?」


 「え!? な、何で傷口が広がってるんですか!?」
 フレーレが回復魔法を使うと、出血が酷くなったのだ。


 「ほっほっほ、私のとっておきと言うヤツでしてね? 回復魔法をかけると傷が広がる効果を先ほどの攻撃に付与していたのですよ。そういえばその状態でどうやって傷を回復するのか調査していませんでしたねえ」


 「クソ野郎、が……げほ……」


 「先ほどの小娘と同じ方法で死ぬ……中々に泣かせるじゃありませんか。それでは、私はこれで……」


 「待て! ……消えた! おい、しっかりしろ!」


 「く、そ……た、倒したと思ったんだけどなあ……やっぱりクズはクズのままなのか、ね……」


 「喋っちゃダメよ! チェイシャ、何か知らない?」


 <こんなおかしな攻撃をしてくる奴など聞いた事ないわい……>


 「町へ、町へ戻って止血だけでも……!」


 「……俺のことはここに捨てて行け……どうせ、罪人だ……それより、こ、この金を……ソフィアって女に渡してく、れ……俺のせいで、娘が……し、死んじまってな……せめて、これくらいは……」


 「じ、自分で渡しに行きなさいよ! レイドさん、運ぶのを手伝って!」


 「勿論だ、そら!」


 「しっかりしてください! きっと助かりますから! 諦めないで!」


 「う、げほ……フ、フレーレか……み、見ろよあのドラゴン……お、俺が倒したんだぜ……も、もうデッドリーベアなんざ……て、敵じゃねぇよ……あ、あの時は悪かったな……」


 「いいから! 傷が広がるからもう喋らないで!!」


 フレーレが泣きながらアントンへ怒鳴りつけるがアントンは喋るのを止めなかった。




 「……なあ、レイド、さんよ……勇者って、何なんだろうな……ごぼ……」


 「……俺にも、分からん……だが、誰かの……自分の大切なものの為に、力を使うのが勇者だと、俺は思って戦ってきた」


 「へ、へへ……な、なら……俺も最後に勇者になれたのかねぇ……」


 「喋るな……出血が酷くなる!」


 虚ろな目をしたまま、うわ言のようにアントンは言葉を続けていた。


 「そ、そういや……ディーザにも……フィ、フィオナにも、ちゃ、ちゃんと謝って無かった、な……ゆ、勇者失格、だなあ……もう、俺ぁ強くなったから……逃げ出したりしねぇ……あ、謝ったら……また一緒にパーティ、組んでくれ、る、かなあ……」


 「ちゃんと謝ったら許してくれますよ! だから……!」


 「そ、そうか……? だ、だったら、う、嬉しい、ぜ……メルティを連れてってやったら、よ、ろこ、ぶ、かなあ……」


 「! アントン!? アントン!」


 ずるりと、支えていた体から力が抜けアントンは地面へと崩れ落ちた。


 「ああ……あああ!」


 フレーレがその場で膝をつき、両手で顔を覆って大声で泣く。
 感情が伝わったのか、狼達も尻尾を下げて項垂れていた。




 「満足そうな顔してんじゃないわよ……死んだら……なんにも、ならないじゃない……」


































































 お兄ちゃんってそんな顔してたんだねー


 何か文句でもあんのか?


 ……ううん、かっこいいよ! それより何して遊ぶ? わたしはねえ、キノコを採りにいきたいなあ。


 何して遊ぶとか言いながらもう決めてんじゃねぇか……だからガキは……まあ、いいか……。

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