パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その52 意地

 「ああ……メルティ……」


 長女を抱きしめたまま泣き崩れるソフィア。


 「お母さん、お姉ちゃんどうしたの? またどこか痛いの?」


 状況が分かっていない妹のメアリの言葉がその場にいる全員の胸に突き刺さった。




 「お、俺のせいだ……俺がこんな仕事を受けなければ……」


 アントンは床に膝をついて涙を流す。
 それに気づいたソフィアが、メルティをそっとベッドへ横たえアントンへ話し始める。


 「……ノートナさん、あなたが何をしに町へ来たのか。そして何故メルティがこんなことになったかは、分かりません……ですが、あなたが必死にこの子の為に人を連れて来たりして手を尽くしてくれたことは分かります」


 「だ、だが……俺に会わなければ……森についてこなければ……まだ生きていられたんだぞ!」


 ゆっくりを首を振ってソフィアはアントンを抱きしめる。


 「あの子はあなたに会えてうれしかったんですよ。だから、そんな事を言わないでください。遅かれ早かれこの子は亡くなる事は決まっていました。最後は笑っていたじゃありませんか……もし、あなたのせいだとしても……恨んだとしても、この子が生き帰る訳じゃありません。だから……もういいんですよ……」


 過去パーティに属していた頃、何か不測の事態があった場合は、アントンのせいだと擦り付けられていた。
 その時は擦り付けたヤツを別の方法で陥れ、溜飲を下げてきた。


 しかし、娘を半ば殺された形になるというのに、ソフィアは自分を許すといっているのだ。
 抱きしめられたアントンは、罵倒され蔑まれた方が楽だと、歯が割れんばかりに食いしばっていた。


 「う、うう……! うおおおおお!!!!」


 「あ! ノートナさん!!」


 アントンは病院を飛び出し、走る。その目は怒りに満ちていた。




 「俺は確かにクズだ、ガキを巻き添えにして死なせるなんてクズもいいところ……死んで当然だ。だがな……」


 傷は回復したが体力は回復していない。それでも、いつもより早く町の出口が見えてきた。


 目指すべき標的は……。




 「ゲルス、てめぇはそれ以下だ! 絶対に許すわけにはいかねぇ!」




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 「ゲルス!! 出てこい! 俺が殺してやる!!」


 森の中へ足を運び、先程戦闘をしたところより奥へと走り、アントンは叫ぶ。
 ドラゴンを連れての移動だ、そう遠くへは行っていないはず。




 「ほっほっほ、わざわざ死にに戻ってくるとはよっぽど頭が悪いみたいですねぇ? あのまま町から出ていれば追いかけなかったんですが?」


 案の定、まだ近くに居たゲルスが木陰から姿をあらわす。ドラゴンは見えない。


 「てめぇがそんなヤツかよ、ルーナが戻ってきたらドラゴンをけしかけるつもりだったろうが?」


 「ほっほ! まあまあ悪くない予想ですね、あなたが町に居ようが居まいが、ルーナが戻った時点でドラゴンを放しますよ。まあドラゴンなど無くてもいいのですが、ルーナにはいっぱい人が死ぬ様を見せつけないといけませんからねぇ」


 面倒くさいが、と付け加えて首を振るゲルス。目的はルーナの誘拐だけではないのか? アントンは考えるが、今はどうでもいいことだと思考を切り替える。どうやってこいつを殺すか、へと。




 「てめぇの企みなんざ知ったこっちゃねぇ。お前は死ね、すぐにでもな!」


 剣を抜き、即座に斬りかかるアントン。


 「ほっほ、出来ないことは口にするものではないと何度言わせれば分かるのですかね!」


 馬鹿の一つ覚えだと蔑むが、今回は先ほどと違いアントンの攻撃が全て当たらないという事は無く、防御をさせる事ができていた。
 武器を持っているような感じではないが、服の中に何か仕込んでいるのだろう、腕を振るうたびに金属音があたりに響く。


 「いける! これなら……!!」


 「ほっほっほ、あの小娘は死にましたか? まああの傷ではそうでしょうねぇ。私のとっておきである『反転術式』を使ってあげましたが、いかがでしたか? 回復魔法で傷が広がる様は面白かったでしょう?」




 「やっぱりてめぇが……! 」


 メルティの事を言われカッとなる。そこに隙が産まれてしまった。


 「ええ、ええ! その顔を見るだけで分かりますとも! ほら、剣筋が鈍りましたよ?」


 「うが!?」


 ゲルスに蹴りを入れられ咳き込む。


 「ほっほっほ。まあ少しはマシになりましたが、力を発揮できないあなたならそんなものでしょうよ。おいでなさい」


 ゲルスが指を鳴らすとドラゴンがゆっくりと姿を現す。


 「クソが……!」


 グルルルルル……!


 ドラゴンがアントンを見据え、唸りを上げる。


 「もう飽きたので死んでください。ああ、抵抗されても面倒なので……」


 ゲルスの目が怪しく光ると、アントンの仮面が光り出す。


 「うがああああああああ!? あ、頭が! 割れる!」


 「裏切った時の為に仕込んでおいた代物ですよ。もう外せないので、ご了承ください。さ、痛めつけてから殺しなさい」




 ギャォォォォォォン!!!


 身動きができないアントンをドラゴンが襲う!
 幸い鎧はまともなものだったらしく、引っ掻きなどのダメージは無い。
 しかし単純な力での攻撃は徐々に鎧をへこませ、軋みをあげていた。


 「うぐ……がは……!? く、くそったれが!?」


 ザシュ!


 剣を振るうと、ちょうど振りかぶってきた指にヒットした。


 ギャォォォン!!


 「やった! ……うがああああ!」


 斬られたことに怒り、ドラゴンがアントンを蹴り飛ばす。
 3メートル近い巨体に蹴られ地面をゴロゴロと転がり、木にぶつかってようやく止まる。


 「はあ……はあ……こ、このままじゃ、ダメだ……。仮面を仮面をなんとかしねぇと!」


 ドシンドシンと迫ってくるドラゴン。


 アントンは意を決して、剣を……仮面へとぶつけはじめた。




 ガンガンガン!!


 「壊れろ! 壊れろぉぉ!! 俺は#まだ__・__#死ぬわけにはいかねぇ! 仇を、親父と母さんと、メルティの仇を取るまでは死ぬわけにはいかねぇんだ!!」


 「ふあーあ……ほっほ、無駄ですよ。そう簡単に壊せるわけがありま……おや」


 ガツ! ガン! バキン!! ザシュ……!


 何度も何度も剣を仮面に打ち付け、ついに仮面が真っ二つに割れる!
 しかし反動で剣が眉間を切裂いてしまい、眉間付近から血が流れ始める。


 「へ、へへ……どうだ……これで頭痛はもうねぇ……まずはてめぇからだな!」


 グルオオオオオン!!


 ドラゴンの爪がアントンの頭部目がけて振り降ろされるが、それを見越して振り降ろした方の腕側へ回り込み、腕へ斬撃を繰り出す。


 カィン!


 「か、てぇ!」


 指と違い、強固な鱗の鎧を纏った腕は硬く、簡単に弾かれてしまう。
 振り払うように動かした腕をアントンはバックステップで避ける。 




 「何か……方法はねぇのか……!?」


 「ほっほっほ、しぶといですねぇ……」


 戦闘力がほぼ上がらないアントンにとってこの戦いは99%勝てる要素など無い。
 だが倒さねばならない、今まで逃げ続けた人生だが、今度ばかりは逃げるわけにはいかないのだ。








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 ゴトゴト……




 「そろそろ到着しますよー」


 御者さんが近隣の森付近で声をかけてくれる。
 私も落ち着いて来て、チビ達を撫でてあげていた。


 「きゅーん」「きゅん! きゅん!」


 「町に帰ったらどうします? まずは山の宴でご飯ですかね?」


 到着まであと一息だが、どうも雲行きが怪しい。
 レイドさんも思ったのか呟くように私達に言う。


 「こりゃ一雨来そうだな……到着したら荷物を置いてからビールとからあげを食べたいね。からあげもいいけど、あのデスクラブは絶品だったなあ……」


 へらりと珍しく顔を緩ませている。ふふ、私もおかみさん達に挨拶しないといけないし、山の宴で決まりかな?


 <……!? この気配は!>


 「チェイシャ、どうしたんですか?」


 近隣の森へ入った途端、寝そべっていたチェイシャがむくりと起き上がり叫びだす。


 <わらわの仲間が近くに居るようじゃ! しかしどうしてこんなところに? この気配は……”憤怒のファウダー”か! ちょっと行ってくる!>




 「あ!? ちょっとチェイシャ! ぎょ、御者さんすいません! 私も降ります、追いかけないと!」


 「え、ええ? わしゃ料金をもらってるから構わんけど……いいのかい? わしは町へ戻るよ?」


 「はい!」


 チェイシャを追って森の奥へと駆け出す。レジナとチビ達も一緒について来ていた。


 「わたしも降りますね!」


 「俺もだ! 荷物が多いな……装備して追うか」


 レイドさんとフレーレは先に行っててくれと荷物から装備を取り出していた。
 私は頷き、チェイシャを再び追うのだった。

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