パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その50 真実

 「さて、彼は頑張ってくれると思うかね?」


 「ほっほっほ、期待してはいけません。アレは正真正銘のクズですからね」


 「ほう? では何故彼を?」


 「クズはクズらしく役に立ってもらうのですよ。ご安心を、あなた様を裏切る度胸などありますまい……ほっほっほ……」


 「まあ何でもいい。俺は女神の力が手に入ればいいからな。お前の言う通りなら、国は安泰だ」


 「ご安心ください、研究の成果は出ております故……ほっほっほ」














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 <霊峰:フジミナ>


 不死鳥が生息するという険しい山。
 登るのであれば相応の装備が無いとまず遭難するので、素人は絶対に登らないこと。
 不死鳥の血を飲めばあらゆる病を治し、死者さえも蘇生することができるという。
 しかし、噂が独り歩きしているという線も否めない。


 血を手に入れる方法は二つあると言われている。
 戦って倒すか、人語を解せるので説得して分けてもらうか、である。


 その他───────────────










 「こりゃダメだな……。博打過ぎるぜ」


 二度寝をしようと思ったが、図書館で適当に暇でも潰すかと思い直し、不死鳥と霊薬について調べていた。
 不死鳥については先ほどの記述どおりで、他の本を見てもほとんど変わらなかった。


 ちなみに霊薬『アクア・ウィタエ』の方は死者蘇生まではいかないが、病は治るという薬らしい。
 ただし、手に入る確率は不死鳥を見つけるよりマシという程度で、入手の難易度はさほど変わらない。
 作り方は書いていたが、錬金の恩恵でも無い限りは成功しないであろうというシロモノだった。




 こんなもんだよな、と本を閉じて図書館を後にする。




 「ルーナが帰るまで適当に過ごすか。金はあるしな……そういや、黒い卵を町で使えとか言ってたっけか?」


 何となくポーチから例の卵を取り出す。禍々しい感じが周囲を包んでいる気がした。


 「……ギルドにであって、町に復讐したいわけじゃねぇんだけどな」


 ポツリと呟きながらポーチへ卵を仕舞うと、広場にメルティが居るのを遠目から見つける。
 アントンに近づかないよう母親に言われたので落ち込んでいるようだ。


 「(俺が10歳の頃は……もう放浪してたな……)」


 10歳まで虐げられて育ったアントン。母親と妹と一緒に暮らせているが、その内死んでしまうメルティ。
 どっちの人生が良いのか、それは本人にしか分からない。


 アントンがそんな事を思いながら、メルティを見ているとふと目が合う。
 一瞬笑顔になるが、すぐに目を逸らす。かなりソフィアに絞られているのかもしれない。


 「(ちゃんという事を聞けるんじゃねぇか……)」


 卵を町で使うとどうなるか……それを考えたアントンは、近隣の森へと歩き出す。
















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 ゴトゴト……




 ひとしきり泣いた私は家を片づけて馬車へ乗り込んだ。
 アルファの町へ戻るためだけど……。


 「……」






 「やっぱり元気がありませんね……」


 <仕方あるまい、パパ上が急に失踪してしかも女神の力を回収しろときた。ショックは大きいじゃろう。……むしろそれが狙いか……?>


 「きゅーん」「きゅきゅん……」


 「わふ」


 「俺はアルファに戻ったら、妹を探す事にする。あの手紙が本当とは限らないが、#あの__・__#ディクラインさんであれば魔王を倒した時に何かあったのかもしれない」


 そっか……レイドさんは旅に出ちゃうのか……。私は……。


 「寂しくなりますね、わたしはまたビショップに戻るための修行に戻ります。冒険者の仕事もしないといけませんし」


 ここでパーティはお別れかな……? レジナ達と遠くへ行ってもいいかもね。だーれも知らない土地で暮らすのも……。




 「……」


 「ル、ルーナちゃんはどうするんだい? お父さんを探しに行くのかな?」




 <(ば、馬鹿者!? お前ここでその話を出すか!? 落ち込んでいる理由はさっきわらわが言ったじゃろう! 蒸し返す奴があるか!)>


 「(ええ!? だ、ダメだったかな……? う、うーんよくセイラにはデリカシーが無いって怒られてたけどこういうことだったのか?)>


 「(間違いないですよ!? 話しかけるにしてもそのチョイスはありません!)」


 「きゅん!!」「きゅーん!!」
 「がるる!」


 「お、お前達まで……!?」


 小声で話しているけど、丸聞こえなんだよね。


 「ふ、ふふ……」


 「ル、ルーナ?」


 チェイシャがレイドさんに噛みつくのを抑えていたフレーレが私へと向き直る。


 「あっははははは! もう! レイドさん、酷い! 私が落ち込んでるのに追い打ちをかけるなんて!」


 「ご、ごめん……」
 何故か荷台で立ち上がってぺこりと頭を下げるレイドさん。もう、真面目だなあ。


 「なんて、嘘ですよ。悩んでも仕方ないですし、パパが何考えてるか分からないけど、私は私の思うとおりにしようと思います」


 女神の力を探す手がかりは……ある。
 チェイシャが場所を知っているハズなのだ。


 後は私にその覚悟があるか。それだけだった。10年前の事、言われてみれば確かに思い出せない。
 何となく良い思い出では無い気がするけど……。




 「そうか……俺にできることがあれば言ってくれ。協力させてもらうよ」


 「わたしもです! 寺院にもお客さんは来ますからね。情報をそれとなく聞いてみますよ!」


 <……>


 チェイシャだけは複雑な顔をしていたが、女神の力を解放されたくないのでそれも仕方ないかな。


 「とりあえず町へ戻ってから考えようかな。旅に出るなら……レジナ達は置いていかないといけないかもしれないしね。その時はフレーレにお願いするかも」


 「「きゅん!?」」


 「わ、わふ!?」


 思いがけない私の発言に、おチビ達が私の膝へと乗ってくる。今度はダンジョンと違ってどこにいくかわからないからね……。




 みんなで複雑な表情をしながらも、ゴトゴトと馬車はアルファの町へを目指していた。




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 「……ここら辺でいいか?」


 辺りに人の気配が無い事を確認し、アントンは森へ向かって言葉を放つ。


 「……おい! 俺を監視しているヤツ、居るんだろ? 出てこい」


 アントンが目だけを動かしてキョロキョロと見渡すと、どこからか声が聞こえてきた。


 「どうしましたかな? 何か困った事でも?」


 「……なあに、簡単な話だ。俺はこの話を降りる事にしたぜ」


 「……どうしてです? ちょっと女の子を攫うだけですよ? 怖気づいたのですか?」


 「(この声……どっかで……?)ああ、それでいい。ルーナは帰ってこねぇし、ギルドに対しても別にどうでも良くなってな。やっぱ万が一失敗したらって考えたらやべぇよなー。だから鉱山へ戻してくれ」


 卵を割ると魔物が出る。
 そんなことをしたら町に被害が出るのは明白。そこまでして復讐などしたいと思わない。確かに自分はクズだが、無関係な人間を巻き込むのは本意ではなかったからだ。


 すると監視者がアントンの前に姿を現した。


 「ほっほっほ、やはりクズはいつまでたってもクズですか。まさか卵一つ割れないとは、やれやれ……」


 出てきた男を見て、アントンは目を見開く。


 「て、てめぇは……!?」


 「おや、覚えていましたか? 馬鹿の割には物覚えがいい。あの時からまるで変わっていませんね」


 影から出てきた男は……当時5歳のアントンを攫った男……ゲルスだった。


 「クソ野郎が……てめぇは俺の手で殺してやる!!」


 「出来もしないことを口にしない方がいいと思いますがねぇ? ほっほっほ」


 「その笑いをやめねぇか!!」


 咄嗟に剣を抜いてゲルスへと斬りかかる。大振りで振る剣はのらりくらりと避けられてしまう。


 「くそ……!! てめぇは……てめぇだけは!」


 「かすりもしませんねぇ? まあ、仕方ありません。あなたの勇者としての力は私が封じていますからね。いやあ滑稽滑稽!!」


 「ど、どういうこった……?」


 するとゲルスが先ほどまでの態度と変わり、乱暴な物言いでアントンへ告げる。


 「ああん? やっぱり馬鹿だなお前は! 言ったとおりだよ、俺がお前の恩恵を封じたんだ! 俺ぁ、女神の研究をしていてな? その一つに恩恵システムについても研究していたんだよ。勇者のサンプルはすくねぇから困っていたんだが、いいところでお前が授かったって訳だ! いやあ、毎日お祈りはしとくもんだな、ぎゃははははははははは!!」


 「じゃ、じゃあ俺が強くなれないのは……まさか……!?」


 「ほっほ……そうですよ。研究結果として、恩恵は封じる事ができると判明しました。もちろんその逆もできますけどね? 恩恵の力を伸ばす事もできますよ? まあ、とりあえずお前は勇者としての力は発揮できませんから、恩恵を持たない戦士と同じですね。まあ戦士どころか何者にもなれないんですけど。ははは」


 アントンを攫って人生を狂わせたあげく、恩恵まで消し去ったとゲルスは言う。
 一瞬目の前が真っ暗になるが、それよりも怒りがアントンを突き動かした!


 「てめぇみたいなのが居たらまた誰かが犠牲になる! 今ここで死ねぇぇぇ!!」


 アントンの絶叫が森の中で響いた。

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