パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その48 焦燥

 
 (……ッチ、なんだよ使えねぇな……弱すぎるヤツに用はねぇんだよ!)


 (う、うわあ!? お、お前が囮になれ! ゆ、勇者なんだろ!?)




 (仲間を見捨てて逃げるとはクズだな……今回はみんな助かったから罰金だけで許してやろう……へへ、ほら出すんだよ……)




 (おら、出ていけ。もうパーティにお前は必要ないんだよ!)




 「(クソ共が……!)」








 (アントン、てめぇ裏切りやがったな!?)


 「(騙される方が悪いんだろ? ははは!)」




 (アントン……!? 野郎逃げやがったな! クズ野郎が!)








 「(男はダメだな。女を仲間にした方がいいか……)」












 (あら、あなたが勇者? 私はディーザよ、好みの顔だからパーティを組んであげる)


 (あたし? んー、まあパーティに入るのは構わないぜ? フィオナだ、よろしくな勇者さんよ!)


 (フ、フレーレです……か、回復には自信があります!)


 (ルーナって言います! 補助魔法で皆の能力をあげて頑張っちゃいますね!)










 (ま、待ってくれよ! アタシを置いていかないでくれよーーー!)






 「(う、うわああ!? 隻眼ベア!? お、お前が狙われてるんだろ? 俺達が逃げる間にお前が襲われていれば時間稼ぎになるからな!)」












 「(……やってたことはあいつらと同じ……か……)」




 夢の中だと反射的に気付く。なるほど、周りから見ればどれほど滑稽で馬鹿な奴だったかアントンは理解していた。
 それともとっくに分かっていたのか……それは本人にしか分からない。










 (優しいお兄ちゃんがね! 助けてくれたんだよ!)








 「(……)」




 (後2,3年しか生きられないんですよ)






 「(…………)」






 「(だから……どうしたってんだ……)」






 
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 「パパ……大丈夫?……」


 「きゅーん……」


 シロップがパパの顔を心配そうにぺろぺろと舐めていた。


 「お、おお……ありがとうな……すまん。大丈夫だと思ったんだが……」


 「ヘルニアは治ったようでクセになりやすいですからね。しばらく安静にしておいた方がいいと思います」


 フレーレがベッドへ寝転がっているパパに、何となくヒールを腰に使っていた。


 あの後、レジナ達が戻ってくるまで解体作業を行い、村へ帰る時は私が全員に補助魔法をかけてレイドさんがパパを背負いながらてくてくと歩いて戻った。


 ちなみに狩りも順調だったようで、レジナの背に乗ったチェイシャが


 <チビ達が頑張って獲ったんじゃ>


 と、チビ達を褒めていた。チェイシャってお母さんならぬお姉さんみたいなポジションかしら?
 結構凶暴な”グレイトタスク”というイノシシを二匹で狩ったそうだ。私も見たかったなあ。


 「きゅんきゅん♪」


 「きゅーん♪」


 二匹が褒めて褒めてと頭をぐりぐりしてくるので抱きしめて頬ずりしてあげると、尻尾がバッサバッサと大きく振られていた。


 「と、とりあえず俺が夕飯の準備をしておくから、お前達は温泉にでも入ってこい。馬車での旅は結構疲れるからな」


 うんうんと、フレーレのヒールが効いたのか、よっこいせと立ち上がるパパ。


 「俺も手伝いますよ」


 「うんにゃ、レイド君もお客様だ! ゆっくりしていくといい」


 「は、はあ……」


 「それじゃ行きましょうか! レジナ達も狩りで汚れたから洗ってあげるわね。チェイシャも来るでしょ?」


 <むろんじゃ。わらわの尻尾をケアしてもらわねばならんからの>


 「わ、わふ……」「きゅん……」「きゅきゅん……」


 「ほら、チェイシャは行くって言ってるわよ? 狩りもいいけど、たまには洗わせてね?」


 チェイシャが行くというのに触発されたのか、狼達はとぼとぼと一緒に歩きはじめる。
 そんなに嫌なのかしら? うーん、何とかお風呂好きにしないと……。


 温泉までみんなで歩いていると、おばさんが話しかけてきた。


 「あら、ルーナちゃん! 帰ってきてたのかい!」


 「マサラさん、お久しぶりです! ちょっとだけパパの顔を見に。えへへ……」


 「そりゃパパさんも喜んだでしょう! ……いや、変ないたずらをしそうね……」


 流石に村の人間は分かっているのか、予想を当ててくる。


 「(それより、いい男を連れてるじゃないか? どっちの彼氏なんだい?)」


 「?」


 レイドさんを見ながら耳打ちしてくるマサラさん。……え!? 彼氏!?


 「(そ、そういうのじゃないですよお。レイドさんも私みたいなの相手にしないですって)」


 「(どうかね? まあ頑張りなさいよ!)」


 マサラさんは無責任な事を言って立ち去って行った。も、もお……チラリとレイドさんを見ると、不思議そうな顔をして微笑んでいた。


 うう……そんなこと言われたら意識しちゃうじゃないの……。




 「そ、それじゃ男湯はあっちなんで……」


 「分かったよ。それじゃ、また後で!」


 行ってらっしゃいーなんてね!


 「おんせんっおんせん♪」


 「張り切ってるわねぇ」


 「もちろんですよ! アルファの町にある本屋さんでガイドブックを読みましたけど、お肌つやつやになるそうじゃないですか!」


 「そうなんだ? 私はずっとここに居たから……痛っ」


 『ずっとっていつからいつまで? うふふ……』


 「どうしました?」


 誰かにささやかれたような気がしたけど……。


 「ううん、何でも無い! さ、ゆっくり入りましょ。出たら豪華な夕飯よ!」


 「わふ!!」「きゅんーーー!」「きゅん♪」


 <楽しみじゃわい♪>


 「ねー♪ おんっせんおんせん♪ みんなと一緒にはいルーナ♪」


 「……(まだ、懲りていないみたいね……)」


 とりあえず言えることは……フレーレは歌がへたくそだということだった。






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 「……また変な夢を見たな……」


 アントンは目を覚ますと同時に一言呟いた。




 「そうか、昨日は宿屋へ泊まったんだっけな」


 山の宴に行ったもののやはりルーナには会えず、仕方なく宿屋へ泊まった。


 今日はギルドへ行ってイルズへ尋ねてみるつもりで、朝食もそこそこに宿を出るアントン。




 「……ん?」


 ギルドへ入ると、イルズと誰かが言い争っていた。
 アントンは見たことなかったが、侯爵のフォルティスであった。


 「ルーナはどこの村出身なんだ? お前なら知ってるだろう?」


 「おま……流石に侯爵様でもそれはダメだ。本人から聞いたならいいけどな」


 「もういい……帰ってくるのを待つとしよう」


 イケメンの貴族様がルーナの故郷を聞きたがっている意味が分からんとアントンは首を傾げていた。
 そんな中、別の冒険者がイルズに話しかける。


 「ルーナちゃん里帰りなんだろ? レイドとフレーレちゃんも一緒に」


 「ああ。まさかフォルティスがあんなにルーナちゃんに入れ込んでるとは思わなかったよ……。パリヤッソのヤツが『決して居場所を話さないでください!』と懇願してきたくらいだ」


 「へえ『疾風の死神』がねぇ。よほど苦労してるな、はははは!」


 「違いない! フォルティスには悪いが、守秘義務があるからな。ルーナちゃんとしっかり仲良くなれってことだな」


 「それ魔王を倒すより難しいんじゃ───────────────」




 そこまで聞いてアントンはギルドを後にした。ルーナは里帰りをしている情報は大きい収穫だ。どうりで見ない訳だとアントンはため息をつく。


 そしてふと思う。となると、しばらく帰ってこないのではないか?


 「まいったな。まあこの町から出て行ったわけじゃなくていいが……このまま待っていいもんなのかね?」


 監視はついていると言っていたが今の所そいつが姿を現す様子は無い。
 ルーナの故郷が分かっていたらそっちに向かわせるだろうから、恐らく知らないのだろう。


 「まあ、適当に暇をつぶすしかねぇな」


 アントンは二度寝でもするかと宿へ向かおうとして……とある建物から見慣れた親子が出て行くのを発見する。


 「あれは……病院か?」




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 カランカラン


 ドアを開けると、来客を告げるベルが鳴り響く。構わずアントンは奥へと進む。


 「なんじゃい、今日はもうお終いじゃ、また明日来てくれんかのう。って元気そうじゃし、仮面が怪しい……」


 白髪眼鏡の、おじいさんと呼んで差し支えない医者がアントンの方を振り返って目を細める。


 「……ちょっと聞きたいことがあるだけだ。さっき出て行った親子……娘が病気だったと思うが本当に治らないのか?


 「ん? お主の知り合いか? ……事情は知っておるようじゃから省くぞ? そして残念じゃがワシらでは無理じゃ」




 「そうか……ちょっと待て『ワシらでは』ってことは方法はあるのか?」


 アントンは食いつくが、医者は頭を振ってそれを制す。


 「無いわけではない……が、霊峰に居るという不死鳥の血か、命の水と呼ばれる霊薬の『アクア・ウィタエ』しかない。前者は見つける事が出来ても倒せるとは限らんし、霊薬はどこにあるかもわからん。それも含めてワシらでは無理だというのじゃ。それでもあの子はワシの薬で後3年は生きられるじゃろうて」


 「確かにそれは……」


 「可哀相じゃがな。万が一闇オークション等そういった類の物があったとしても手が出せる金額ではあるまいよ。さ、分かったら帰った帰った」


 「お、おい話はまだ……!」


 医者のくせに妙に力強い押しによりアントンは外へ追い出される。ご丁寧に「クローズ」の看板も出ていた。
 「……ルーナが帰ってくるまで何をするかね」


 やっぱ二度寝かと宿屋へと戻るアントンだった。

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