パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その46 停滞

 「ふんふんふふんーん♪」


 メルティがのんきに鼻歌を歌いながら森の中を歩いていた。
 しかし目指すのは水辺なので森の中に用は無い。


 「そっちじゃねぇ、こっちだ」


 「キノコはそっちには無いよ?」


 「俺は俺の用事があるんだよ。キノコが欲しいなら一人で行け」


 逐一一緒に居るように言われてはいないのでアントンは水辺……以前ルーナがレジナ達と出会った辺りへと向かう。釣りをするには最適なスポットだとパーティを組んでいる時に聞いたことがあったからだ。


 「ぶー。キノコも採りに行こうねー」


 「気が向いたらな」


 メルティがマントを掴もうとするのを防ぎながら森を出る。屈強な釣り人が何人か見受けられるがルーナの姿は無い。


 「(ここもハズレか……もう町を出たとかじゃねぇだろうな?)」


 流石に二日連続で見つけきれないとなるとアントンにも焦りが出始める。依頼で鉱山を免れているとはいえ、あまり長居したい町ではない。


 「わーい! 海だー!」


 「あ、おい走ると……」


 一人考えているとメルティが湖へダッシュする。それを見て咄嗟に注意するが……。


 ズベシャ!!


 案の定頭から砂浜へダイブするメルティ。


 「うえー……ぺっぺ……砂が口にはいっちゃった」


 「ここは湖だからな? それと忠告する前に走るからだ。ほら、これで口を洗え」


 指先からチョロチョロと水魔法を出し、口の中と顔を洗わせる。


 「がらがら……ぺえ! ありがとうお兄ちゃん! ここでお魚を釣るの?」


 「いや……もうここに用は無いから戻るぞ」


 「そうなんだ……ちょっと水に入ってもいい?」


 こうなっては誰かに聞くしかないと思っていたアントンはもう色々と面倒くさくなっていた。
 好きにしろと砂浜に腰を降ろしてメルティを見送った。


 「わ、冷たいー!! 貝がいっぱい落ちてるー」


 横で釣竿を持ったハゲたおじさんがそんなメルティを微笑ましそうに見て話しかけていた。


 「お嬢ちゃん、楽しそうだね。お兄ちゃんと遊びに来たのかい? ……仮面? 何て怪しいんだ……」


 ゴクリと唾を飲みこむが、メルティが元気に話していたのでおじさんも気にしなくなる。この子が懐いているんだから大丈夫だろうと。


 「うん! 後でキノコも採りに行くんだー」


 「ほう、そうかい。じゃあ元気な嬢ちゃんにはこれもやろう。さっきとれた”オツカレイ”だ。煮つけにすると美味しいぞ」


 「大きいー。おじちゃんありがとう! お兄ちゃん見てみて、もらっちゃった!」


 「良かったな……」


 「兄ちゃんは元気がねぇな? ちゃんと飯食わないとダメだぞー!」


 はっはっは! と豪快にハゲたおじさんは町の方へと歩き出していた。


 「そろそろキノコ採りに行こう?」


 「そうだな……もう疲れたから帰りたいんだけどな……」


 まったく聞こえていないメルティが元気よく森へと歩き出していった。








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 「キノコいっぱいだねー!」


 持ってきたカバンにパンパンになるまでキノコを採り、ご満悦の表情だった。
 対するオツカレイを持ったアントンの表情は暗い。


 「(俺は何をやってるんだ? ガキのおもりをしに帰ってきたわけじゃねぇだろ……)」


 「~♪ ……ごほ……~♪ ごほ、ごほ……」


 鼻歌を歌いながら前を歩くメルティの様子がおかしい。さっきまで元気だったのに、咳が止まらなくなっていた。


 「おいガキどうした?」


 「ん、んーん! 何でも無いよ! ごほ! ごほ……」


 よく見ると顔が青くなっており、息苦しそうだ。


 「何の病気なんだお前? 元気だったと思ったら急に咳しだすなんてよ」


 「……わかんない。お母さんは『大丈夫』って言ってたから大丈夫だよきっと」


 しばらくそんな話をしていたが、いよいよメルティが歩けなくなったのでアントンは背負うことにした。軽いな、と思いながらまた歩き出す。


 「ごめんなさい……」


 「ホントだぜ。これに懲りたら出歩くのを止めるんだな……おい、聞いてるのか?」


 「すー……」


 メルティはアントンに背負われたまま眠ってしまった。はしゃぎ過ぎて疲れたのか病気のせいかは分からない。


 「ガキはこれだから嫌いなんだ……」


 手には”オツカレイ”の桶。背中にはメルティと、何だか情けなくなってきたアントンはソフィアの家へと戻っていくのであった。


 魔物に会わなかったので剣を抜くことも無かった。






 「(明日はイルズのヤツにでも聞いてみるか……)」




 ふと桶を見ると、どこを見ているか分からないオツカレイと目が合ったような気がして、アントンはため息を吐くのであった。










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 「本当に申し訳ない」


 フレーレに一撃を貰い、昏倒したパパが復帰。開口一番、頭を下げて謝罪をする。


 隣に座る私もフレーレに謝る。ちなみにあの赤い液体はケチャップだった。


 ちょうど村の入り口に居る私を見つけて、慌てて仕込んだそうなのだ。
 まさかパーティメンバーを連れてくるとは思っておらず、近づくのは私だと確信して抱きついたのだそうだ。
 抱きついたのがレイドさんだったら大参事だったに違いない。


 「ごめんね……驚かせちゃって……」 


 「い、いえこちらこそ殴ったりしてすいませんでした……」


 フレーレも頭を下げると、パパが調子に乗り始めた。


 「そういって頂けると助かりますよ! いやあ、抱きしめた時の柔らかい感触! ありがとう!」


 ゴトリ……。


 フレーレが笑顔のままメイスをテーブルの上に置くとようやくパパが状況を理解したらしく、冷や汗をたらしつつ、咳払いをして挨拶をする。


 「ようこそ、アラギ村へ! 私がルーナのパパです」


 「え、あ、はあ……フレーレと言います。一時的ですがルーナとパーティを組ませてもらっています!」


 「俺はレイドと言います。同じく、ルーナちゃ……さんとパーティを組ませてもらっています。よろしくお願いします」


 「わふ!!」


 「きゅんー♪」「きゅきゅん!」


 <コ、コンコン……>


 パパの足元にレジナ達が来て頭をぐりぐりと押し付ける。チェイシャには喋るなと言っておいたので、ちゃんと動物っぽいけど、雑な鳴き声だった。狐はコンコンと鳴かないんだよね……。


 「お二人はカップルなのかな? それでソロのルーナとパーティを組んでくれたのかな? それなら俺も安心できる!」


 「い、いえ……わたし達はそういうのじゃありません」


 「俺達はソロでルーナさんと行動を共にしています。ルーナさん達にはいつもお世話になっていますよ、ありがたいことです」


 レイドさんがにっこりと笑うと、さきほどまでにこやかだったパパの態度が急変する。


 「何? それじゃあ君は女の子二人とパーティを組んでいると。……どっちだ! どっちが本命なんだ!? ルーナか? ルーナだったら許さんぞ! ハッ!? ま、まさかお前、二人共……しかもいつもお世話になっているってなんだ!? 夜のお世話じゃないだろうな!?」


 パパの悪い癖……私に男の子の影があるといっつもこうなのよね……。パーティを組んでいるから大丈夫だと思ったけどダメだったか……。


 気が付くとフレーレが真っ赤になって俯いていて、パパがレイドさんの首を絞めていた。ああ!? 止めないと!


 「パパ、パパ!! レイドさんはそう言う人じゃないから! 同じ勇者でもアントンとは違うからー!」


 「なんてうらやま……本当か?」


 レイドさんがコクコクと頷くと、ようやく首から手を離した。


 「いやあ、すまなかったね! いつもルーナがお世話になっています! ……で、アントンという男は何者だ……?」


 しまった、余計な情報を与えてしまった!


 「アントンは以前、わたしとルーナも組んでいたパーティのリーダーで勇者だった人なんですけど……その、ルーナにちょっかいをかけたりしてまして……」


 「……ほう」


 パパの目が鋭く光る。これはアントンを見つけたら殺すという目だ。


 「だ、大丈夫よ! アントンは犯罪奴隷になって鉱山送りになったからもう会う事もないから!」


 「そうか、なら安心だな! おっと、すまない。お茶をまだ出していなかったね! (鉱山か……)」


 「ヒッ!?」


 横を通る時に何やらボソッと呟いたのをフレーレが聞き、何かに怯えていた。


 「きゅーん……」「きゅん……」


 チビ達も怯えてしまい、私の膝を乗っかってくる始末だ。シロップには甘噛みをさせて落ち着かせる。
 しかしようやく落ち着いたのか、パパがお茶を持ってきてからは話が弾むようになってきた。


 私がわざわざ来てくれた二人におもてなしでデスクラブを出したいと言うと、パパが張り切って答えてくれた。


 「デスクラブか、ありゃ確かに美味いし、この辺じゃないとあまり生息していないしな。よし、皆で獲りに行くとするか!」




 「腰は大丈夫なの?」


 「お前の送ってくれたお金でボチボチ病院には通ってるから派手に動かなければ大丈夫だよ」


 私の頭をしゃかしゃかと撫で、ニカっと笑う。


 さて、それじゃあデスクラブを狩りに行きますか!

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