パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その45 親子

 
「さ、じゃあ早速私の家へ行きましょうか!」


 私達は村の広場で荷台を降り、御者のおじさんが物資を村長さんへ届けに行くのを見送った。
 帰りはまたこの村に立ち寄った際乗せて行ってもらう事になっている。


 「のんびりしてそうですねー。わたしは孤児院育ちなのでわくわくしますよ!」


 <そうじゃなー何か美味しい物でもあると嬉しいんじゃがのう>


 「美味しい物……そうだ! 近くの川に”デスクラブ”っていう沢蟹が居るんだけど、あれを茹でて食べたら美味しいのよ! 荷物を置いたら後で獲りにいきましょう!」


 「蟹ですか、美味しそう……」


 「きゅんきゅん」


 「わふ」


 フレーレが涎を出してアコライトとは思えぬ顔でうっとりしていると、レジナ達が足元に寄ってくる。
 どうしたのかな? 中腰になってシロップの頭を撫でていると頭の上から声がかかる。


 <狩りに行きたいようじゃな。蟹もええが、肉も欲しいから川へ行くついでに狩りもすりゃええじゃろ>


 私の頭に乗っているチェイシャが尻尾へ掴みかかろうとするシルバをぶんぶんと振り払いながらそんな事を言う。


 「元気ねー。とりあえずは家へ行きましょ! あの赤い屋根の家が私の家よ」


 私が歩き出すと、後ろから皆がついてくる。まだ馬車酔いでフラフラのレイドさんも何とか追いついているようだ。




 懐かしの我が家の前に立ち、変わっていないなと感慨深く思う。


 「ただいまー! パパ元気だった?」


 笑顔でドアを開けるが返事は無く、明かりが灯っていなかった。
 そして妙に静かなのだ。


 「……薄暗いですね? お父様は出かけてるんでしょうか?」


 「玄関の鍵は開いていたからそれは無いと思うけど……パパー! どこに隠れてるの?」


 「ふんふん」


 「きゅん?」「きゅーん?」


 レジナが何か匂いを嗅いでいるが、チビ達は知らない家に興味深々だ。


 「パパー? え!?」


 リビングへ行くとそこにはテーブルに突っ伏している男の姿があった。テーブルには赤い液体が散らばっていた。あれは……パパ!


 「だ、大丈夫ですか!?」


 フレーレがプリースト的献身が働き、テーブルの男へ駆け寄る。
 いけない! 私の予想が正しければ……!!




 「しっかりしてください! ≪ヒー……≫」


 「ダメ! 離れて!」


 フレーレが近づいて回復魔法をかけようとしたその時、男ががばりと起き上がりフレーレを抱きしめる!


 遅かったか!?








 「ルーナァァァァ! おかえりー! パパ寂しかったよぉぉぉぉぉぉ!!」


 「きゃあああああああああああ!?」


 顔中を真っ赤に染めた男が、フレーレへ頬ずりを始める。


 「もう毎日退屈で退屈で……あれ? 君誰?」


 「いやああああ!」


 感極まったフレーレの右が……パパの左頬へ炸裂した。




 <脇がしっかり締まっておるのう。いいパンチじゃ>


 チェイシャがどうでもいい解説をし、パパは再びテーブルへ突っ伏した。








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 「(今日もどこにも居ねぇ……どうなってんだ?)」




 メルティの家を出てすぐにギルドへ向かったが、朝イチでもルーナは現れなかった。
 昼は山の宴でランチを食べに行くもやはり働いている様子は見られなかった。


 「山の宴には夜も行ってみるとすっかな。ああ、そうだあいつは釣りが趣味だったっけか。一応水辺も見に行くかな……と、その前に」


 アントンがぴたりと立ちどまり、先程から後ろにある家の影でチラチラしている人影に声をかける。


 「おい、居るのは分かってるんだ! とっとと家へ帰れ! また変なのに絡まれたいのか?」


 「ば、ばれてた!?」


 ひょこっとメルティが顔を出す。何でばれたんだろうと困惑顔である。 


 「朝からずっとついてきてたろ? ガキの尾行なんざお見通しなんだよ。いいから帰れ、また倒れるぞ」


 ほら、と背中を押すがメルティは「んー!」と抵抗する。


 「(……昨日助けたのは失敗だったか……普段やらねぇことをするとこうなるっていい見本だな)」


 「どこに行くの?」


 メルティがふいにアントンの行き先を聞いてきた。少し思案し、これならビビるだろうと答えてやることにした。


 「ちょっと町の外まで行くんだよ。お前なんか魔物にすぐ食われちまうだろうなあ?」


 イヒヒと意地の悪い声で笑うが、メルティは逆に張り切っていた。


 「そうなんだ! わたしもお母さんとキノコを採りに森に行くよ! 魔物さんが出ない森の入り口だけどね!」


 えへへ、すごいでしょとはにかむがアントンはうんざりする。


 「そうかそうかすごいなー……じゃあな」


 もう置いていった方が早い。今度何かあっても助けまいと心に誓い、メルティを置いて歩き出すと、またマントを引っ張られ首が締まる。


 「ぐえ!? お前それやめろ!? 地味に効くんだぞ!?」


 「お兄ちゃん武器が無いのに森に行くの?」


 「お、おお……」


 メルティに言われて気づく。そういえば武器は貰えなかったんだ、と。


 弱いホーンドラビットのような魔物であれば武器無しでも何とかなるだろう(それでもこっちから攻撃すると首を狙ってくる)が、中級レベルの魔物に出くわしたら危険だった。


 「そうだな。今から買いに行くところだったんだ」


 実は持っていなかったのを忘れていたなどこの子供に悟られるのは恥ずかしい。何となく強がってしまった。
 しかしメルティはそれを聞いて満面の笑みでアントンの手を引っ張る。


 「そうなんだ! じゃあわたしのお父さんが使っていた剣があるからそれを取りに行って森へいこう!」


 「はあ? いや、いらねぇよ。買に行きゃいいだろうが。お前だけ帰れよ」


 「んー!」


 今度は頬を膨らませて、アントンの手をぎゅっと掴み抵抗する。昨日の咳と倒れたのは何だったのかと思うくらい元気だ。


 結局手を離さないので、ずるずると引っ張りながら武器屋へ向かうため通りを歩いていたが、周りの人がひそひそし始めたのでアントンは仕方なく折れる事にした。


 「……分かった。お前の家に行くから手を離せ……目立って仕事にならなくなる……」


 「ほんと! やったぁ!」


 手を離したので一瞬逃げ出そうとしたが、明日以降もこの町でルーナを探さなければならないのだ。
 メルティが探しに来たら困ると思い、ついて行くことにした。




 「ただいまー! お母さん、お父さんの剣ある?」


 「おかえりなさい。あら、ノートナさんも」


 「……不本意だがな」


 「ねえねえおかあさんー!」
 ぴょんぴょんとソフィアへ飛びつくメルティを見て、やはり病気には見えないとアントンは思う。
 はいはい、と言いながら奥の部屋へ剣を取りに行く。


 ほどなくして戻ってきたその手には一振りのロングソードがあった。




 「どうぞお持ちくださいな。亡くなった主人のものですけど、確かドラゴンスレイヤーとかいう剣らしいですよ」


 剣の鍔にあたる部分はドラゴンの羽を模したような細工になっている。そう言われれば何となく雰囲気のある県のような気がした。


 「俺はくれるなら何でも貰うが、大事なものなんじゃないか?」


 「いいんですよ、主人が『ドラゴンスレイヤーを手に入れたぞ!』とか言って買ってきたんですけど、鑑定してもらったら普通の剣と言われて酷く落ち込んだ物なので……形見の品は他にもありますし、もらってください」


 うふふと笑うが、体よく在庫処分をさせられた気がする。
 しかし、鞘から抜いてみると剣そのものの切れ味は良さそうだった。
 少なくとも以前自分の持っていた鋼で出来た剣よりは強そうだと感じている。


 「ならありがたく貰っていくぞ。邪魔したな」


 アントンが腰に剣を下げて家から出て行こうとすると、メルティが元気よく声をあげる。


 「いってきまーす!」


 「気を付けてね。ノートナさん、夕飯までには帰ってきてくださいね?」


 「まてまて、どうしてお前がついてくるんだ。後、俺がこの家に帰ってくる前提で話を進めるな」


 「え? 剣をあげる代わりにウチの子の面倒を見てくれるのでは?」


 ソフィアが首を傾げてさも不思議そうに言う。


 「お兄ちゃん行こう? キノコ採ってもいいかなあ」


 剣を貰った手前逃げるわけにもいかず、かといって剣を突っ返すとメルティが泣くのは目に見えていた。


 「……今日だけだからな」


 この子はなんで俺に執着するんだ? 帰ったらソフィアに聞こうと思い、何とかそれだけ言う事ができた。

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