パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その43 到着

 「村へ帰る?」


 フレーレと私の村へ帰ることに決まったので、次の日ギルドでレイドさんにも告げる。
 ちょうどギルドへ来たばかりらしく、眠そうな顔をしていたが、私の一言で目が覚めたようだった。


 「うん。ちょっとパパの顔を見に! フレーレも温泉に入りたいって言うから一緒に行く事になったの」


 「へえ、温泉か……いいなあ」


 レイドさんも温泉と聞いてちょっと顔がゆるむ。


 「レイドさんも行きます? 一時的なパーティですけど、紹介したいなって思ってるんだけど……」


 「いいのかい? 俺も今はイルズの依頼も無いから暇だし、ルーナちゃんがいいなら行きたいなあ」


 「じゃあ決まり! 明日のお昼前に出発するから用意しておいてくださいー!」


 私はレイドさんにそれだけ言うと、フレーレにも伝えるためギルドを飛び出す。
 ふふふ、皆で行ったらパパ驚くだろうなあ♪ 私は元気でやってますって言わないとね!






 そして翌朝!


 「お待たせしましたー!」


 白いブラウスに緑のスカートを着た、普段着のフレーレがでかいリュックサックを背負って通りの向こうから走ってくる。


 うん、ちょっと大きすぎないかな、アレ。
 すると、こっちも普段着で青いジーンズに鼠色のトレーナーを着たレイドさんが、これまたでかいリュックサックを背負ってやってくる。


 あれ? 二人ともどうして?


 「あふ……まだ眠いな……お、フレーレちゃんもそのリュックサックを?」


 「はい! これならいっぱい入りますしね!」


 「二人とも何が入っているのそれ?」
 何だか意思疎通が出来ている二人を悔しく思いながら、中身を聞いてみると……。


 「ああ、食料と装備だよ。流石にガチャガチャと鎧を着て旅行はしたくないけど、いざというとき無いと困るからね。ルーナちゃんの村まで、途中町もあるけど念の為にね。アラギ村って山奥だし……」


 「そうですよー。わたし達はルーナみたいにマジックバッグなんて高価なものは持ってないんですからこうなるんです! わたしは装備と着替えと温泉を汲むための瓶が入ってますけど……」


 なるほど……そういえば私はマジックバッグだから携帯品に困ったことが無い……。


 「きゅん!」
 「きゅーん♪」


 そうそうこの子達もチェイシャの通訳でバッグが欲しいとねだっていると聞いたので、おチビには干し肉を風呂敷に包んで首に巻いてあげた。


 尻尾をぶんぶん振って私に体当たりを仕掛けてくるところを見ると喜んでいるらしい。私のお手製なんだけどね!


 「揃ったかい? それじゃあ行くよー」


 御者さんが馬に鞭を使い、ゆっくりと歩き出したところで遠くから声が聞こえてくる。
 この声は……?


 「おおーい! わ、私も! 私も連れて行ってくれぇ!」


 げ!? 侯爵様だ!? どこで聞きつけて来たんだろ!
 その後ろにも人影があり、侯爵様を引き止めているようだった。


 「フォ、フォルティス様! 流石に仕事放棄は見過ごせませんよ! 今日も裁判だけで3件あるんですからね!?」


 「ええい、離せパリヤッソ! レイドのヤツが行けて私が行けないなど酷過ぎるではないか!」


 どうも、内緒で着いて来ようとしたみたいね。私は御者さんに声をかける。


 「御者さん、急いでください! 後ろの二人に追いつかれないようお願いします!」


 「ほう、追われているのかい? 分かったよ! ……それ! ハイヤー!」


 ノリのいい御者さんで良かった。みるみるうちに侯爵様の姿が小さくなり見えなくなる。
 でも帰ったら帰ったでまた何か言われそうだよね……。


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 アントンは道中トラブルも無くアルファの町に到着した。


 五日はかかると思っていたが、馬車の足が速かったこともあり四日で辿り着いていた。
 馬車の窓からアントンに向けて声がかかる。


 「……お前は運が良かったな。もう鉱山に戻ってくるんじゃないぞ?」


 あの夜からここまで、ずっと一緒についてきた衛兵がここで別れる。
 特に返事をせず、アントンは馬車を見送った。




 「ふん、運が良かった、か。どうなるか分からんけどな。とりあえず久々の町を歩いてみるか」


 アントンの格好は例の仮面に、赤いマント。鎧は銀のプレートメイルという格好をしており、以前の装備とは格段に良い物なのでこれだけでもアントンと気付くものは居ないと思われた。


 途中リンゴを買って、それを齧りながら町を歩く。
 周りを見ながらポツポツと呟いていた。


 「まあ長い事離れていた訳じゃねぇし、それほどかわらねぇな。とりあえずルーナを探さないと……」


 1ヶ月だけだったが一緒にパーティを組んだこともあるし、言い寄るために待ち伏せをしたこともあった。
 なので、いつもどこに居るのか把握は出来ていたのだ。


 「まずは山の宴か。今の時間ならランチってとこか」




 「いらっしゃい! カウンターが空いているよ!」


 おかみさんが通してくれ、カウンターへ座る。
 キョロキョロ見渡すが、ルーナの姿は見えなかった。


 「お客さんこの町は初めてかい? ここらじゃ見ない顔だね。って言っても仮面をつけてるからわかんないけどねー!」


 おかみさんがお冷を置きながらそんなことを言う。
 アントンがルーナに言い寄っていた時にマジギレされ、塩をまかれたこともあるのでアントンにとっては苦手な人物だったりする。


 「(俺だって知ったらまた怒鳴られるんだろうなあ……)」


 食事を終えて、2時間ほどコーヒーを飲んで待ってみるがルーナは現れなかった。


 「(とすると依頼か?)」


 次に足を運んだのはギルドだった。


 「はいよ、いらっしゃい……ってまた怪しいヤツが来たもんだな! はっはっは!」


 受付にいたのは勿論イルズだ。別に本気で言っている訳でも無く、初対面の相手に冗談を交える癖があるのをアントンは知っていた。


 「(俺ん時はなんだったけな)」


 「おい、聞いてるのか? 用件は何だ?」


 「あ、ああ。この町に来たのは初めてなんだが。ちょっとどんな依頼があるのか見たくて……」


 とっさに出た嘘にしては上出来だとアントンは思っていた。
 それを聞いたイルズは。


 「おう、そうか。ギルドカードは持っているか? あればいつでも受けられるが、レベルには気をつけろよ?パーティレベルとソロレベルじゃ難易度は大きく変わるからな。何かあったら声をかけてくれ」


 「(そういやあの時もレベルについて話していたな……。)」


 ルーナが抜けた後のやりとりを思い出す。あれがある意味全ての始まりだったのだと。








 「帰ってこないな……」


 夕方までギルドで過ごしたがルーナは現れなかった。
 一体どこをほっつき歩いているんだ? と、苛立ちながらアントンはギルドを後にした。




 「どういうこった? あいつどこ行きやがった?」


 しばらくルーナが立ち寄りそうな店などを散策するが影も形も無かった。
 人に聞いても良かったが、こんな怪しい格好をした男が女を探しているなどと噂が立てば動きにくくなると考え、人に聞くのは止めたのだった。


 「時間はあるから……あるよな? また明日にするか。とりあえず宿に行くかね」


 アルファの町に一つだけある公園。そこのベンチから立ち上がり、歩こうとしたところで、路地裏に汚いおっさん二人と女の子が見えた。どうやら女の子を脅かしているか何かしているらしい。




 (へ、この屑野郎が!)
 (アントンはホントにつかえねぇなあ)
 (ほら、お前前に出ろよ、盾くらいにしかならねぇんだからよ!)






 何となく、過去の事が頭をよぎる。


 「(……弱いヤツはああなっちまうんだよなあ。弱いヤツは逃げるしかねえんだ。あのガキは逃げ切れなかった。運が悪かったなとしか言えねぇなあ)」




 よくあることだと、アントンは宿へと向かう。






 女の子とおっさんのいる道を通って。






 おっさんたちの姿が近づいてくると、汚いおっさんの汚い声がアントンの耳に入ってくる。


 「へへ、お嬢ちゃんが足を踏んづけたせいでこっちのおじさんの足にヒビが入っちまったんだ……。寺院にいかねぇといけないんだけどお嬢ちゃんがやったんだからお金はお嬢ちゃんが出すんだよ?」


 「いてーいてーよー」


 「お、お金……ないよ……わたしそんなに強く踏んでないもん……」


 「おほー! 口答えしましたよ! 親の顔が見てみてぇぜ! お金がねぇならお嬢ちゃんの家へ行こうか。お母さんなら持っているだろう?」


 ほら、と女の子の肩を掴むと女の子が激しく暴れ出す。


 「いやー!」


 「こ、こら、暴れるんじゃねぇ! もう面倒だ、このままこいつを売り飛ばそうぜ」


 演技をしていた男が立ち上がってコクリと頷くと口を塞がれた女の子に喋りかける。


 「諦めなー。もうお母さんに会えないけど、お嬢ちゃんの運が悪かったってことだ。俺達を倒せるくらい強かったら良かったのにな!」


 ぎゃっはっは! と笑うおっさん二人の言葉を聞いて泣きはじめる女の子。お母さんに会えないというのが堪えたようだった。


 「……そうだな。弱いヤツが悪い。まったくその通りだよなあ」


 素通りしようとしたアントンが足を止めておっさん達の後ろに立っていた。


 「ヒッ!? 何だてめぇは! 今の聞かれていたのか……? へ、へへ。見逃してくれよ……こいつを売った金はお前にもやるからよ……口止め料ってやつだ……」


 「んー! んんー!!」


 「そうだなー。それでもいいんだけどな? お前等をぶっ倒してその子を手に入れたら金は全部俺のものだ。そっちの方がいいと思わねぇか?」


 きょとんとした顔をしてアントンの顔を見る。そして言葉の意味を理解した女の子を捕まえていない方のおっさんがアントンへ殴りかかってきた。


 「弱いヤツが悪い。ああ、まったく同感だな!」


 おっさんの拳をかわして、鼻面にパンチを決めるとおっさんは鼻血を出しながら地面へ転がる。
 そのまま女の子を捕まえているおっさんに近づいていく。


 「く、来るな!? こいつがどうなっても……」


 バキッ!


 「そいつがどうなろうと俺が知るか、知り合いでもなんでもねぇしな」


 「ひ、ひいい!? 覚えてやがれ!」


 「ま、待ってくれよう!」


 おっさんは二人して鼻血を出しながら逃げ去っていった。




 「ふん。雑魚が」


 冒険者基準だとそれほど強くないアントンだが、一般人に比べればやはり強かった。
 何となく気分が晴れて、アントンは再び宿へと向かおうとしたが、マントをグイっと引っ張られる。


 「ぐえ!?」


 「あ、あの……ありがとう……」


 さっきの女の子がはにかみながらアントンにお礼を言っていた。だいたい10歳くらいかな? とアントンは女の子を見て考えていた。


 「ああん? 俺の気まぐれだ、弱いヤツがペラペラとむかつくことを言ってたからな。俺はガキが嫌いなんだ、気が変わらねぇうちに、ほら、もう帰れよ」


 マントから手を離させて再び歩き出そうとしたところで「ぐう」とお腹が鳴る。


 そういえばもう暗くなるか……宿で食事をするかと歩き出すが、またもマントを引っ張られる。


 「ぐえ!?」


 「お腹すいてるの? う、うちに……ごほ……食べに……ごほ……」


 女の子が家に来いと言いながら、ごほごほと咳をする。


 「風邪か? 俺のことは気にすんな。早く家へ……」


 と言い終わる間もなく、女の子はパタリと地面に倒れた。


 「……だからガキは嫌いなんだよ……」


 女の子を背負いながら、アントンは誰にともなく呟いていた。

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