パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その42 追う者と追われる者

 
 アントンが連れてこられた場所は、鉱山の監視者が寝泊りする建物だった。


 ローテーションで何日かに一度、人が入れ代わるようになっているが、鉱山の周りには何もないので寝泊りする場所くらいはと、建物はそれなりに豪華にしていたりする。


 三階建ての建物で、個人の私室は二階にあり、一階は娯楽室やトレーニング部屋などが設置されていて、それを横目で見ながらアントンが悪態をつく。


 「へっ、いいご身分だな。俺達が汗水たらして石を掘ってるのにカードゲームたあな」


 「……貴様は犯罪者だろうが。お前達が罪を犯さなければ俺達とてこんな所に来る必要は無いんだがな?」


 嫌味を嫌味で返され、アントンは黙る。
 何か言ってやろうかと考えていたが、三階にある事務所へ到着しその機会を失った。


 「連れてきました。中に入っても?」


 衛兵がドアをノックし声をかけると厳かな声で「入れ」と告げられ衛兵はドアを開ける。


 「よく来たな……ああ、ご苦労。こやつだけでいい」


 「は、しかし……」


 「よいと言っている」


 声色に怒気がはらみ、衛兵が震えて無言で部屋を出る。
 空気の読めないアントンが今の様子を見ても大して気にせず、気軽に男へと話しかける。


 「で? 俺に用があるんだって?」


 「うむ。お主、勇者の恩恵を持っておるな? しかし、犯罪奴隷となってこの鉱山へ送られた」


 「……ッチ。そうだよ、まあちっとばっかし俺が悪かった気もするしな。真面目にしてりゃ本来の刑期より短くなる可能性もあるみたいだからボチボチやってるよ。どうせ身内も仲間もいねぇから、ここを出ても面白くねぇしな……」


 「なるほどな。話は変わるが、アルファの町のギルド連中に復讐したくはないか?」


 アントンはぎょっとして男を見る。フードから目だけが見えるが、その目はニタリと嫌な笑みをしているように見えた。


 「したくない……と言えば嘘になるな。ギルドの連中にここに送られたようなもんだからな。でも、復讐が失敗したら今度は流石に処刑されるだろ? 危ない橋は渡れねぇよ」


 すると男は大声で笑う。


 「はっはっは!! 馬鹿な勇者だと聞いていたが、意外に食いつかんな。ふふ……安心しろ、ちゃんと安全は確保している」


 ……ジャラ


 男が懐から金の鎖のついたメダリオンをアントンに見せる。


 「そ、その刻印は……アンタ……こ、こくお……」


 「おっと。その先は内緒だ……。この条件ならどうだ?」


 暗くて気づかなかったが、アントンが男の正体を口にしようとしたところで部屋の隅に蠢く影が見えた。
 恐らく護衛だろう。少し焦ったが、アントンは心臓をドキドキさせながら話を続ける。 


 「俺は復讐のために。それはいい、だがアンタ……あなたのメリットは何だ?」


 「そうだな……あの町にルーナという娘が居るのは知っているか?」


 アントンの耳がピクッと動き、一瞬考える。


 「……いや、知らないな……」


 男の目が細くなり、何か探るように見てくるがアントンは動じなかった。


 「……まあいい。私はその子を手に入れる必要があるのだ。事情は聞くな? そしてお前の復讐とルーナを手に入れる事が出来る画期的な手が……これだ」


 そこまで懐から真っ黒な卵を取り出して机に置く。ニワトリの卵より少し大きいようなそれは、何となく禍々しい気配が漂っている気がするとアントンは感じていた。


 「これを割ると中から魔物が出てくる。そして町が混乱している内に、ルーナをさらってきてほしいのだ」


 「……なるほどな。俺がその魔物にやられる危険は?」


 「無いとは言えん。だからルーナが近くに居る時に割り、速やかに行動する必要がある。勇者である君なら出来ると思っての頼みだ」


 腕を組んでアントンは考える。とりあえず自分が断れば別の誰かに頼むのだろう。
 それならヤツラに一泡吹かせるため、自分がやった方がいいと思っていた。
 また、失敗しても保証はある(ハズ)と考えるなら、外に出られるチャンスと言える。




 「分かった。その話受ける」


 「お前ならそう言ってくれると思っていたよ! 今後の事だが───────────────」




 男は嬉々としてアントンに予定を告げる。


 一つ窮屈なのは顔が割れているため、顔の上半分を覆った仮面をつけて行動しろとのだった。
 装備すると、髪の色と声色まで変わる仮面で、これならアルファの町でもアントンだと気付くものはいない。


 続けてマントや服、防具などをマジックバッグから次々と取り出しアントンへ渡していく。


 武器だけは持たせてもらえなかった。恐らくここで暴れるのを防ぐためだろう。


 そしてお金も白金貨三枚に金貨十枚を手渡され、金額の大きさに驚く。


 「この金を持ち逃げするかもしれんぞ?」


 「なあに、こっちには優秀な魔法使いが居てな? お前の場所は仮面で分かるようにしてある」


 仮面がその役割を果たしていると、あっさり告白してきた。よほど自信があるのだろう。


 「話はこれで終わりだ。ルーナを引き渡す人間は用意している。お前はさらうことだけを考えておけ。ああ、顔は火傷をしたとか傷があって見せられないとかで外さないよう、言い訳を考えておけよ」




 それだけ言って男は出て行くと部屋の隅に居た者も移動したようだ。


 「……さて、俺も行くか……」


 真っ黒な卵を腰のポーチに入れ、全てを装備し終えた後、入れ替わりに入って来た衛兵と出口へ向かうのだった。


 目指すはアルファの町、ルーナだ。


 ここからだと五日はかかるなと思いながら、アントンは馬車で眠りについた。












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 「え? 村へ帰るんですかルーナ?」


 フレーレが東方より伝わりし、忙しい人の為に作られたという「牛丼」を食べながら私に話しかける。


 ちなみに昨日何故かレイドさんと揉めた、侯爵様との食事はバイトが終わるのが夜遅くなるからとお断りしたんだけど、侯爵様が待つと言うので仕方なく行く事に……で、「パーティだから一緒に行かないとな」と強引に、レイドさんがフレーレを巻き込んでついて来てしまった。最初侯爵様は明らかにお怒りだったんだけど、話している内に諦めたようだ。


 嬉しそうに私に話しかけてくる侯爵様は他の貴族と違って気さくなんだけど、どうも高級感があるので恐れ多い。


 それはともかく村へ帰る話ね。


 「お金、結構入ったでしょ? フレーレは教会の修繕で使っちゃったけど、私は今の所使い道が無いから一度パパのところへ戻ろうと思って。そろそろ三ヶ月経つし寂しがってそうなんだよね」


 「ああ、ヘルニアだと激しい動きはできないですし、寝たきりだと寂しいと言いますよね」


 粉末のトウガラシを少し牛丼にかけながらまた食べる。意外と辛い物が好きなのよねフレーレ。


 「うんうん。しばらく冒険者稼業しなくてもいいし、のんびりしようかと! 村には温泉もあるしね」


 「もぐもぐ……温泉……温泉!? 温泉ってあの疲労回復、病気やケガの治療促進、老化を防ぎ、お肌つやつやで栄養満点のあの温泉ですか!?」


 最後のは違う気がするけど……。


 「そ、そうよ。その温泉よ。村の真ん中に浴場があってね。誰でも入れるのよ。パパも毎日腰を治すのに入ってたわねえ」


 「……わたしも着いて行っていいですか?」


 「ふえ!? いいけど、温泉以外何も無いわよ?」


 私の村……アラギは特産品も無いくらい普通の村なのだ。面白い事はないと思うけど。


 「温泉があるじゃないですか! 幸いわたしもお金はまだあります! ダンジョンを攻略したんだから休養は必要ですよね!」


 目がキラキラしているフレーレの力説にたじろぐ私。まあ、一人より楽しいからいいけどね!
 パパにフレーレとレジナ達を紹介しようっと!


 「はいはい、おしゃべりが長いんじゃないかい? 仕事仕事!」


 「はーい、ごめんなさい!」




 バイトが終わり、部屋へ戻るとチェイシャが飯を出せと催促してくる。レジナ達と同じ小屋はプライドが許さんと私の部屋で寝泊りしているのだった。


 <ほう、親の元へ帰るか。いいんじゃないかえ? わらわは女神の力の封印を解いて欲しくないからのーのんびり暮らしてくれた方がありがたいわい。ムグムグ……この、あぶらげのピザとやら、美味じゃのう>


 ふむ、やはり狐にはあぶらげか……。声色に変化はないけど、尻尾がぶんぶんと喜びを表しているわね。


 「明日までバイトがあるから、出るのは明後日かな? チェイシャはどうする?」


 <わらわも行くわい。ここに一人残されても困るわ!>


 決まりね。 後はレイドさんにも村に帰ることを言っておかないと!

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