パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その39 謎

 フォルティス侯爵より依頼を受けて、パリヤッソは伯爵について調べていた。


 伯爵……名をウィルと言うが、古物収集という趣味以外は良くも悪くも普通の貴族で、領民からの支持も悪くない。


 パリヤッソが調べた結果、宿泊させた女性冒険者を襲うというのはここ2ヶ月くらいから出た話で、それまでそんなことは無かったと色々な冒険者から聞くことが出来た。


 「問題は、冒険者が襲われたという事実はあるが、事に及んだのは「同意の元で」だけらしい……しかし、フォルティス様の想い人は確かに襲われたと。一体どういうことだろうな……?」


 結局の所本人に聞くのが一番早いであろうと、伯爵邸へと足を運んでいた。




 「……? ずいぶん静かだな。すまない! 侯爵より派遣されたものだが、誰か居ないか!」


 庭へ回るも人影は無し。外から見る屋敷は全てカーテンがかかっており、様子は伺えない。
 ノックをするも誰も出てこないため、パリヤッソは屋敷へ入ることを決意した。




 「本当にここは伯爵邸か? 呪われた館では無いだろうな?」


 パリヤッソは若い頃、優れたシーフとして仕事をしていたこともある。中にはそういった屋敷があり、レイスやグールなどに苦戦したものだが、その雰囲気に似ていると感じていた。


 応接間、風呂、洗面所、使用人達の部屋……一階を調べ尽くすが、人どころかネズミ一匹出てこない。


 「後は……二階か……さて……」


 主に書斎や寝室がある階へと足を運ぶ。


 「書斎……異常なし……」


 一つずつ部屋を開けていくが手がかりは無し。最後に残された寝室の前で奇妙な気配を感じる。


 「ここが?」


 ギィ……。


 薄暗い廊下から寝室の扉を少し開けて中を覗くとそこには……。




 「……!? ウ、ウィル伯爵か!?」


 ベッドに倒れ込む人影を見たパリヤッソが人影に近づく。


 「しっかりしてください! 何があったんですか!」


 「う……うう……だ、誰だ?」


 「俺はフォルティス様から派遣された者です。何でまた使用人も居ない屋敷に一人で……?」


 「使用人が……? それはともかく、私が聞きたいくらいだ……2ヶ月くらい前に、部屋で骨董品を眺めていたら突然部屋に賊が現れてな。気付いたら狭い部屋の一室に監禁されていたのだ……。信じてもらえるかは分からんが……」


 2ヶ月くらい前。怪しげな噂が立つ頃と一致する……。入れ代わっていたということか?


 「ここ最近、伯爵が泊めた女性冒険者を襲うという噂が立っていたんですが、身に覚えはありますか?」


 「何をバカな……確かに宿泊はさせるが、そんなことをしたら骨董品を運んでもらうのが難しくなるだろうが! だから冒険者には食事とベッドを用意しているのだ。次も運んでもらうえるようにとな。遠い東の地から取り寄せるモノなど冒険者以外に誰が運んでくれるというのだ!」


 本気で怒っている所を見ると、恐らくは白か?


 もう少し話を聞く必要はあるだろうが、この様子では大した情報は持っていまい。


 「お話は分かりました、とりあえず安全と分かるまで侯爵邸へ行きましょう。こちらへ……」


 青い顔をした伯爵を連れて屋敷を出て、侯爵邸へと向かう。 


 しかし謎は残る。


 一体何の為に伯爵へ成り代わり、女性冒険者を襲う真似をしていたのか。
 伯爵の名声を下げるためという事も考えられるが、それならばもっと直接的なやり方はあるのではないかと、パリヤッソは思っていた。


 ともあれ、油断はしない方がいいだろう。


 パリヤッソは馬車の中でフォルティスへの報告を考えていた。




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 ピチョーン……。








 「いい湯ですね……」


 「そうね……」


 私とフレーレはお風呂でまったりしていた。


 レジナ達は私がお風呂に入る気配を察したのかみんなベッドの上に居るチェイシャと一緒にタヌキ寝入りを始めたのだ。あの子達はお風呂が嫌いなので、よく逃げるのだ。


 「どっちにしても宿のお風呂で洗うわけにもいかないんだけどね……」


 「あの子達、ルーナの事大好きだけどこういうところはちゃんと逃げるんですね」


 「そうなのよ、予防接種に行った時のテンションの落ち方は凄かったわ。来年はどうやって連れて行こうかと……」


 そんな他愛ない話をしていたが、ふとフレーレが真顔になり、私の腕輪を見て呟く。


 「その腕輪。女神様……アルモニア様の力が封じられていたらしいですけど、大丈夫なんですかね。わたしはあのベルダーという人を信用できません……。チェイシャちゃんが『女神の力』と言うので女神様の力なら危険は無いと思いますけど、どうなるか分かりませんし……」


 当の私より悲痛な顔をして腕輪を触るフレーレ。


 「まあ起こっちゃったことは仕方ないしねー。パパだったら『根性で何とかするんだ』とか言いそうだけど……」


 「面白い方なんですね、お父さん。……あれ? ルーナの胸……」


 「な、何よ、小さいって言いたいの……? そりゃフレーレに比べたら全然……」


 自分で言ってて落ち込んだが、言いたいのはそこじゃなかったようだ。


 「いえ、胸に傷があるなと思って……。結構大きい傷ですけど、聞いても大丈夫ですか?」


 「これ? 子供の頃、大怪我したことがあるってパパが言ってたわね。小さかったから私は全然覚えてないんだけど」


 言われてみれば確かに大きい傷な気がする。こういうものだと思ってるから気にしてなかったけど。


 「フレーレも背中の傷、消えないわよね」


 「あはは、隻眼ベアの恨みがこもってるとか言われてますしね。身体に異常はないし、大丈夫ですよ!」


 冒険者って生傷が絶えないから仕方ないよねーみたいな話をしながらベッドへと戻った。






 だが、私のベッドは狼親子とチェイシャによってかなり狭くなっていた……。




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 薄暗い場所……廃城のような場所をベルダーは歩いていた。




 「戻ったのかベルダー」


 暗くて顔は見えないが、かつての仲間の声でベルダーは足を止める。


 「ああ、エクソリアのダンジョンに行ってきた。女神の力を一つ解放してきたよ」


 「仕事が早いな」


 「他の連中は?」


 「それこそ女神の封印を解きに行っている所だ。まあ今日の所はゆっくり休め」


 「……そうさせてもおう。そうそう、女神の力はルーナに託してきたぞ」


 「……そうか。なら引き続き……っつってもあの子は自由だからなあ、女神の力とか探しに行かないって考えそうだな。はは」


 「その時は誘導すればいいではないか。まあ、ダンジョンに居た魔神がルーナと同行するようだから嫌でも封印された地域へ足を運びそうだがな……」


 「いずれ運命は変えられん、か。ああ、そうそう、ルーナを狙っているヤツが居るみたいだ。ベタの町の伯爵に成り代わっていて、伯爵んトコに宿泊したルーナが襲われて、その後誘拐されかかったらしい」


 「ほう、どうしてルーナが標的だと分かった?」


 「女性冒険者を夜這いしていたそうだが、服を脱がして胸元をみていたらしい」


 「服を……ということはあの傷について知っている人間か?」


 「……どうかねえ? 少なくともどこかでルーナの秘密を知ったんだろう。ただ、回りくどいやり方しているから、確証はなかったんだろうな? さって、俺も仕込んでくるかなー」


 「どこへ行くつもりだ?」


 「ナイショ♪ しっかり休めよー」


 軽い感じで喋る男は片手を上げてベルダーを見送る。食えない男だと、ベルダーはため息をつき部屋を目指そうとしたところで


 「ああ、一つ言い忘れていた。エクソリア本人にも会ったぞ、仕留め損ねたが」


 「マジか!? できれば生かして連れてきて欲しいんだが……今度見つけたら俺を呼んでくれ。またな!」


 一瞬で目の前で話していた男の気配が消える。


 「転移魔法か。一度行った場所にしか行けないらしいが便利なものだ。エクソリアもそれで逃げたんだったな……」




 ベルダーは歩きながら「そういえば誰も居ないのか、飯はどうしよう」と思いながら廃城の謁見の間へ足を運ぶのだった。
 

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