パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その36 思惑

 『(チッ、やつら全滅したか! しかも一人は秘密をバラそうとして自滅とか!? 最後まであまり役に立たなかったが、祭壇の位置を見つけた事だけは褒めてやる。だが!)』


 カカカカカカカ!!


 ダガーと光の刃が高速で打ち合う音が部屋に響き渡る。


 「まだ力が完全じゃないようだな? このまま滅させてもらうとしよう」


 致命傷は避けていたが、少女の体はすでに傷だらけであちこちから血が噴き出していた。
 手にした光の刃も弱々しく光っている。


 『ふ、ふふん。いたいけな女の子を傷つけるなんてそれが男のすることかい? ハァハァ……』


 強がっているがこのままでジリ貧。消滅させられるのは時間の問題だ。
 するとベイダーは攻撃を止めて、少女へ言葉を向ける。


 「……本当に弱っているようだな。お前を消すのは胸も痛まないが、弁明くらいは聞いてやるぞ?」


 『……』


 「それには答えないのか」


 『そもそも』


 「む?」


 『お前達は女神を復活させてどうするつもりだ? ボクはやっとの思いでアレを封じたんだ。正直、アレを解放されたくはないんだけど?』


 少女は体力と魔力の回復を優先させるため、ベイダーの話に乗ることにした。


 「ふむ。女神を封印した、その件については感服するよ。よくぞ封印できた、とな。で、封印を解いて何をするのか、という質問だがそれはな────」


 その言葉を聞いて少女の目が大きく見開かれ、驚愕する。


 『バカな事を!? あの女神は人間がどうにかできる代物じゃないぞ!』


 驚きつつも、魔力の回復を感じこっそりと転移の魔法を編み始める少女。


 「何、準備は整ったこの計画は成功させるさ。ちょうど今からあの子が腕輪を手に入れるところが見られるかもしれないな……そろそろお別れだ……お前も同罪だからな。潔く、死ね」


 クリムゾンサクリファイスを半身で構えて、最後の一撃を繰り出そうと力を込めるベイダー。
 鈍く光っていた刀身が輝きを増す。


 『(勇者たちの目的は分かったが、#ボクよりタチが悪い__・__#計画だぞ! くそ! 間に合うか!?)』


 「さらばだ……できそこないの女神、エクソリアよ……」


 言うが早いか、ベルダーは一瞬で少女の前に踏み込み、的確に心臓へとダガーをつきだしていた!


 『……!!! <トランジション>!!』


 「む!」


 チクリと先端が触れたと同時に、エクソリアの姿が掻き消える。
 手ごたえは……無かった。


 「遊びが過ぎたか。しかし、あのケガではそう簡単に動けまい。その間に女神の力は解放させてもらうとしようか」


 再び光を失ったダガーを腰のケースに納刀し、部屋を出て行く。






 カツカツカツ……


 ベイダーの足跡が聞こえなくなったところで、エクソリアが姿を現す。
 転移したと見せかけて実は、姿を消しながら部屋の済に移動しただけだったのだ。




 『……ぶはあ……!? 行ったか……まったく、か弱い乙女に酷い事をするもんだ。元勇者パーティが聞いてあきれるよ! ……とりあえずここの封印は解かれるかな……一応予防はしてるけど、造り変えられてるからどうかなあ。仕方ない、ここは捨てて別のところを回収しに行こう……とほほ……何でボクがこんな目に……ボクが封印していなかったらとっくに……まあ言っても仕方ないか……』


 今度こそエクソリアはトランジションでダンジョンから脱出するのだった。




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 「レイドさん、ありがとうございます!」


 私はレイドさんにペコリと頭を下げてお礼を言う。
 や、皆にもお礼は言ったんだけど、レイドさんが主導で助けに来てくれたことをフレーレに聞いたので改めてお礼を言いたかったのだ。


 「……いや、無事で良かったよ。一人にしてすまなかった。そうじゃなければ危ない目に合わずに済んだかもしれないからな」


 「いえいえ、どちらかと言えば私が像を持ってからおかしなことになったんで自業自得ですよ、あははー……」


 「わふわふ!」
 「きゅんー!」
 「きゅんきゅん」


 さっきから狼親子が私にくっついたまま離れてくれない。
 どうも離れたらまたどこかに行くと思われているようだ……。かわいい。


 「ホント、心配しましたよ? ルーナは目を離したらいけませんね!」


 何故かドヤ顔でフレーレが腰に手を当て、胸を反らしながらそんな事を言う。いつもはぶかぶかのローブで目立たない大きな胸が揺れていた。


 「でもぉ、無事で良かったわぁ! じゃあ戻りましょうか~」


 アイビスが私に抱きつき、良かった良かったと背中を叩いてくれる。
 心配かけちゃったなぁ……今日は私がレストランで奢ろう! 生姜焼き!


 そんな事を考えていたら、レイドさんが魔方陣を調べると言い出す。慎重なレイドさんにしては珍しい。


 「このまま探索を続けよう。この魔方陣、さっきは調べないで帰ったけど今はルーナちゃんも居るし、また操られるよりは先に進んだ方がいい気がするんだ」


 「確かに……またルーナさんが夜中に抜け出してしまう可能性が無くもないですしね」


 「う……そう言われると申し訳ない……」


 体が操られているといってもおかしくないので、シュンとしてしまう……。抱いていたシロップが顔をぺろぺろと舐めて慰めてくれた。よしよし。


 「じゃあ改めて魔方陣を調べましょうか」


 フレーレの言葉に全員で頷き、魔方陣へと近づいた。








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 「私はここの階段下に導かれてから目が覚めたんですよね。だから何かあると思うんだけど……」


 恐る恐る魔方陣を調べたけど特に何も起こらず、手詰まり状態だった。
 うーん、思い切って踏んでみる?


 「私、魔方陣に乗ってもいいですか?」


 レイドさんが難色を示すが、このままだと何も手がかりが無いので考えているようだ。


 「じゃあ俺と一緒に乗ってくれ。転移系の魔方陣なら万がいち一緒に飛ばされても何とかなるだろう」


 「あ! それいいですね! じゃあお願いしますー♪」


 魔方陣は三人くらいは乗れる大きさで、私とレイドさん、そしてレジナ達が乗っていた。


 「……別に手を繋がなくてもいいんじゃないか……?」


 「まあまあ、はぐれない様に一応ってことで!」


 「わふわふ」


 魔方陣に乗って1分程経ったころ、描かれていた文字が怪しく光出した!


 「当たりか。さてどうな……」


 レイドさんは最後まで言えず、私とレジナと共に魔方陣から姿が掻き消えていた。






 「あ! ルーナとレイドさんが!? ……わたし達も行きましょう!」


 魔方陣はそのまま光を放ち続けていた。
 このまま一緒に転移できそうなので、フレーレは二人に声をかけると、ライノスが前へ出てくれた。


 「オレが先に入ろう、二人は後で着いて来てくれ!」
 「うん~!」




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 「っと、何かくらくらするわねー」


 転移が終わりちょっと乗り物酔いしたような感覚に襲われつつ、辺りを見回すと、レイドさんとレジナ達の姿が見えた。


 さっきの祭壇があった部屋より、かなり広い……奥には何か台座のようなものがある。
 近づこうと歩き出したところで、後ろからどさどさと何かが出てくる音がしてきた。


 「うわわ……!? き”も”ち”わるいです……」


 「私も~……」


 「だ、大丈夫かい?」


 フレーレ達も無事転移できたようだ。後はあの台座を調べるだけ……。


 「きゅんきゅん!」


 シルバが台座に飛び乗り、鼻をふんふんしながら私を呼ぶ。んーどうしたのかな?
 危険も無いようなので、近づいてみるとシルバの顔の前にあった何かを乗せられそうな……そう、丁度ワイングラスを逆さにしたような形のオブジェがあり、中央にくぼみがあった。


 「レイドさーん! ここ、穴が開いてますよ! 像から出てきた水晶、試してみませんか?」


 「どれ? お、ホントだ。大きさも丁度いいんじゃないか……」




 カチリ




 水晶はキレイにハマり……。




 <女神の封印を解かんとするものに死を>


 部屋に物騒な声が響き渡る。


 あちゃー……罠だったかな……?

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コメント

  • AZAMI

    これもう神作w

    これからも楽しみにしてます!

    お互い頑張りましょうね♪

    あともし宜しければ僕の作品もよろしくお願いします!

    1
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