パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その35 戦闘

 階段から上がってきたのは……レイドさん達ではない冒険者三人組だった。


 先頭に立つ男が私を見てから嫌らしい声を出してきた。


「女の子一人歩きは危ないぜ? 街まで送ってやるから一緒に行こうぜ?」


 この人達……夢でレイドさん達と戦っていた三人組じゃない!? 逃げたんじゃなかったの!?
 えーっと……確かヴァンパイアにされているって言ってたっけ……?


 「い、いえ結構です……あ、私そろそろ帰らないと……へへ……」


 少しずつ距離を詰めてくる三人から離れつつ壁沿いに階段を目指すが、コレルと呼ばれていたシーフに道を塞がれてしまう。


 「……諦めるんだな。外はもう夜になる。この時間になるとダンジョンから撤退するパーティが多いだろうから助けは期待できないだろうな? こんなところで一人何をしていたか分からんが、美味しく頂くとしよう」


 コレルがニヤリと笑い、口の端から牙が見える。
 うう、このままじゃあーんなことやこーんなことされた上に食べられちゃう!? 


 こうなったら!


 ≪フェンリルアクセラレート≫≪パワフル・オブ・ベヒモス≫≪ドラゴニックアーマー≫




 私は心の中で補助魔法を呟き……。






 「あ! レイドさん!」






 階段を指差しながら大声をあげる!


 「「「なに!?」」」


 案の定びっくりして階段の方を振り向く三人、うまくいった!


 シュラン……! 剣を抜きその隙をつく。


 まずモスと呼ばれていた男の手首を狙い、剣を叩き落とし遠くへ蹴り飛ばす。
 手首もボトリと落ち、傷口から血が噴き出す。


 「ぐぎゃ!? こ、こいつ! があああああいてぇぇぇぇ」


 「モス!? おのれ小娘が!」


 バックと呼ばれていた男が背負ったクレイモアを構えようとするが、がら空きになった鳩尾に剣の柄で一撃を叩きこむ! 


 「ぐえ!? その細腕のどこにそんな力が……!?」


 膝から崩れ落ちて胃の中のものを吐き出すバック。


 レベルの低い私でもこの威力! 上級補助魔法の威力見たか!


 後は……!


 「どうした? 俺はここだぞ?」


 シーフのコレルは攻撃をされるのを避けるため、そしてルーナを逃がさないために階段側へ後退していた。
 抜け目の無さと頭の回転の良さ、恐らくこいつが一番強い!


 「悪いけど通してもらうわよ?」


 走りつつ腰のバッグからトウガラシ爆弾を二個取り出し、一つをコレルの足元へ投げつけ、意識がそっちに向いた瞬間コレルの顔へもう一発を投げる!


 「む!? これはトウガラシの粉末!? げほっ……味な真似を……」


 まともに顔面に受けたのを確認して、階段へ向かう私!


 しかし……。




 「少し甘かったな!」


 「嘘!? 強化している私に追いつくの!?」


 「ヴァンパイアにされてから身体が軽くてな……お前のその早さと力がどういうカラクリか分からんが、お前より早いぞ?」


 あっという間に前に回り込まれ、コレルが私に蹴りを放ってくる。


 急に止まれないのよ!?


 ゴッ! パリィィン!


 「む?」


 ドラゴニックアーマーのおかげで身体は無事だったけど、大きく後退させられてしまい、アーマーが全部破られていた。アーマー無しで食らっていたら骨の1本どころか命すら危うかった威力だ。


 「く……」


 「惜しかったな。奇襲自体は成功だったと思うが、相手が悪かったな?」


 「いてて……やっとくっついたぜ……」


 「胃の中のものが全部出た……これはちゃんと補充しないとなあ?」


 振り向くとダメージを与えた二人がもう回復していた。
 このままだと挟み撃ちに合う!?


 「たあああ!」


 私は全力でコレルに斬りかかるが素早さはコレルが言っていたように向こうが上だった。
 剣を振り回すけど全然当たらない!?


 「そら」


 力を上げていても、当たらない攻撃は意味が無く、私はお腹に膝蹴りを受けて倒れんでしまった。


 「う……女の子のお腹を蹴るなんて……最っ低ね……げほ……」


 コレルを睨みつけると、私の髪を掴んで無理矢理立ち上がらされた。


 「ふん、よく吠える。だが、嫌いじゃないな。ヴァンパイア化して俺が飼ってやろう」


 「お、捕まえたか! でかしたぞコレル!」


 モスとバックも合流し、私はその二人に両脇で抱えられる形になった。


 「お前等は何にもしてない上に、ただやられただけだろうが……。こいつは俺一人で頂くからな……」


 「お、おいそりゃねぇよ!?」


 三人が私をどうするか騒ぐ中で、少し痛みが引いてきた私はもう一度呟く。








 「……あ……レイド……さん……」








 「またその手か……そんな手に何度も引っかかる訳……っが!?」


 階段側を背にしていたコレルの腹から剣が飛び出ていた。


 そして大声で私の名前呼ぶその人は……。






 「無事かルーナちゃん!? 今助けるからな!」


 
 レイドさんだった! 嘘から出た何とやら! そして!




 「ガウゥゥゥゥ!!」


 「うわ!? こいつらさっきの!」


 レジナが私がさっき斬りおとしたモスの腕へ噛みつき、再度落ちる手首!


 「きゅんきゅん!」
 「きゅーん!」


 「あ、こら!? 俺の手首を持っていくんじゃねぇ!?」


 シルバが手首を咥えて、シロップと一緒に奥へと持って行ってしまった。




 「回復したみたいですね! すいません、ライノスさん足止めを!」




 「分かった! アイビス、援護を頼む!」


 「貴様等!? どうしてここへ!? 帰ったのではなかったのかぁ!」


 突然の奇襲に焦るバック。しかし、一度剣を抜けばその攻撃は脅威の一言! ライノスさんも一時押していたが、力負けし始める


 そこでアイビスの属性魔法がバックへ向かって飛んでいく。


 「はぁい! ライノスさん、下がってください! ≪フレイムストライク≫! よーく狙ってぇ……発射ぁ!」


 「その魔法はさっき避けた……何と!?」


 確かにさっきは避けられた。が、今度は大きさと早さが違った!


 一足で避けきれず、半身に直撃を許すバック。


 「うおお!」


 ライノスさんの一撃がバックを袈裟掛けに切り裂く。


 「ぐう! 貴様ぁ!」


 負けじとバックもクレイモアで接近していたライノスさんを弾き飛ばしていた。


 「くっ……やるな……!」


 そこで、フレーレの神聖魔法が完成していた。


 「<生者と死者、その境に生きる者に安らかな眠りを与える……その遺言に異を唱える事まかりならん……≪エグゼキューター≫!」


 カッ!




 足元から光の奔流が発生し、バックを包み込み始める。


 「な、何だこの光は!? ディスペルではない!? 暖かい光がぁぁ……消える……消えてしまうううううう!? 」


 バックを完全に包み込んだ後、その光が消えるとバックの姿は消滅していた。跡形も残さず……。
 フレーレ……凄い魔法持ってたのね……。


 「はあ、はあ……やりました……」






 「バック!? おのれおのれおのれぇぇぇ!」


 レイドさんと交戦していたコレルが仇とばかりにフレーレに狙いを定め、ダガーを振りかぶりながら肉薄する! 
 しかし、コレルより遅いとは言え私はフェンリルアクセラレーターを使っているのだ。間に合わない訳がない。


 「ぐふ……!? し、しまった……!」


 突然目の前に現れた私に驚き、止まろうとするもそれができずに私の剣を腹に受けてしまう。


 「俺の仲間を傷つける事は許さん! その首貰う!」


 ザシュ!


 「ば、馬鹿な……あ、主よ復活を……」


 首を斬り落とされた後、コレルの体は頭も体も灰となって崩れ落ちた。


 残るは……。




 「お、おいチビ達よ……それを返してくれ……」


 「きゅん」


 「きゅーん」


 モスは祭壇の隙間に手首を持って逃げ込んだシルバとシロップを追っていたが、レジナに襲われていた。


 「ガウ!」


 「く、くそ!? 慣れない手じゃ剣が振れない……!」


 頭と腕から血を流しながら、情けない声でレジナを剣で追い払っていたが……。


 「そこまでだ。お前たちの目的は何だ? どうしてここに居る?」


 レイドさんがモスに近づき、首筋に剣を当てて質問していた。あれ? ちょっと怒ってる?


 「ひ、ひぃ!? バックもコレルもやられちまったのかよ!? く、くそ……何でこんな目に……お、俺達はダンジョンに逃げ込んでいたんだが、その時変な女に会ってな……襲おうとしたところで返り討ちにあってこんな体になっちまった……。こ、ここへ来たのはそいつに「腕輪」をさがががががががが!?」


 「な、何だ!?」


 突然泡を吹いてもがきだしたモスに驚きながらもその様子を見るレイドさん。


 やがて糸が切れた人形のように倒れ……。


 ボヒュ……。


 灰となって崩れた。


 「……口を封じられたか……」


 先程までモスだった灰の前で私達は立ち尽くしていた。

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