パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その34 愚か者どもは闇に踊る

 「? ……誰も居ない?」


 階段を登り、祭壇のある部屋へ辿り着くが部屋には誰も居なかった。
 レジナの時もそうだったけど、どうもあの夢で見ていた事と現実では違う結末を辿るようだ。


 「ここで戻るとまたすれ違いになるかもしれないわね。ちょっと怖いけど、探しに来てくれるのを待った方がいいかな。レイドさんとフレーレなら昨日の変な私を知っているから気付いてくれるはず……」


 辺りは静か過ぎて怖い。


 視界を明るくしなくても祭壇付近は明るいのでその点は心配ないけれど……。




 「最近誰かと一緒の事が多かったから、ちょっと寂しいなあ……。せめてレジナ達でも居ればなあ……。ま、言っても仕方ないか! 魔方陣とか調べて待っていようっと!」


 、鈍く光る魔方陣を調べ始める。


 ここに何かあるのは間違いない。


 しばらく待っていると階段から人の気配がしてきた。








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 「え? 出て行った?」


 宿へ戻ると、宿屋のおかみさんにルーナが出て行ったことを告げられる。


 あれほど言っておいたのに……と少々ご立腹のレイド。
 しかし、おかみさんの話を聞く限りどうやら昨日と同じ状態になったらしい。


 「いくら声をかけてもね、返事が無いんだよ。虚ろな目をして何かぶつぶつと呟いていたけど……祭壇がどうのって」


 「レイドさん、やっぱり……」


 フレーレも昨日の事を思いだして、レイドへと声をかける。


 「一人にしておくのは失敗だったか……俺のせいだ……。恐らくルーナちゃんは祭壇へ向かったんだと思う。今から迎えに行ってくるよ。多分だけど、動かないで待っている気がするんだ。三人はここで待っていてくれるかい?」


 ルーナの予想は当たり、レイドが迎えに行くと告げる。ルーナは自分に置き換えて考えていたのだ。仲間が行方不明になったら、一日置いて探しには行かないだろうと。


 「いえ、わたしも行きます! 何かあってからじゃ遅いですからね。もしかしたらケガをしているかもしれないじゃないですか?」


 「わふ! わふ!」


 「きゅん」「きゅーん!」


 「オレも行きます。アイビスは残っててもいいんだぞ?」


 「私もぉ、行きますよぉ! ルーナさん、無茶しそうですし~」
 うふふ、とアイビスが笑うとレイドが苦笑しながら「違いない」と言っていた。


 「よし、すまないがもう一度ダンジョンへアタックする。目指すは祭壇だ!」


 三人と三匹が宿を飛び出し薄暗くなってきた道をレイド達が走る!


 「(間に合ってくれよ!)」






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 「うう……いてぇ……か、顔が溶けちまう……」


 ディスペルをまともに食らったバックが、コレルの肩を借りてずるずると歩く。
 それなりに鍛えていた甲斐があり、一撃で滅されなかったのは幸いだった。


 「……もう少しで主の元へ着く。そこで治してもらえ」


 「あのライノスのパーティ、金髪野郎とプリーストは結構やるな……」


 モスがレイドと剣を交えていたことを思い出す。手加減はしていないが、モスがやや劣勢だったのは間違いない。


 「ベイダーという男も一筋縄ではいかんぞ。俺はかなり苦戦した」


 「まあ、主殿なら余裕だろうさ。目的の祭壇はあったんだ、早い所報告しようぜ」


 バックを交代で肩を貸し、ようやく地下4階のある部屋へと戻ってくる。




 「……主殿……戻りましたぜ?」


 モスの声を聞いて、部屋の奥にいた少女が振り返る。


 『ああ、君達か。どうだった? 目的のモノはあった?』


 「地下2階に隠し扉があって、その奥に階段を見つけたんだ。その階段を登った先の部屋に祭壇があったぜ。それよりもバックがこの通りやられちまったんだ! 治してもらえねぇか?」


 『やれやれ、手ひどくやられてるねぇ。その辺の冒険者でも「食えば」すぐ治るけど、今回は仕方ないか』


 バックに手をかざすと、傷がみるみる内に塞がって行った。


 『君達の体は魔物と同じく、魔力で生成されているから魔力を与えればこの通りだよ? エナジードレインは魔力と生命力を吸い取っているから傷が治るんだけど……』


 と、少女が説明していたが、治療で喜んでいる冒険者共は話を聞いていないようなので、少女は顎に手を当てて祭壇のことを考える。


 『(地下1階……確かにボクを欺くにはいきなり1階に置いた方が探しにくいのは事実。大事なものは地下深くっていうのがダンジョンのセオリーだからね……ボク以外の誰かがこのダンジョンに手を加えたのは間違いないけど、ここまでのことが出来るのは……)』


 そこまで考えたところで三人以外の気配を感じ扉へと目線を向ける。うまく気配を消しているが……。


 『まったく、情報はありがたいけど余計なものまで連れてこないで欲しいよ? ……つけられたね、君達』


 扉に向かって魔力の塊を放つと、扉に当たる寸前で霧散し、スッとベルダーが出てくる。


 「お、お前は……!?」


 「……つけられていたか……気配がしないので油断していたな」


 『君は誰だい? あいにくボクは忙しくてね、構っている暇はないんだけど?』




 「……お前に無くても俺にはあるのだ。”元魔王討伐メンバーの一人”として、女神の力を解き放つためにな」


 ベルダーが真っ赤な刀身をしたダガーを腰から抜き身がまえる。


 『……なるほどなるほど……そういうことか……となると……』






  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………






 何かに気付いた少女が答え合わせをしようとしたところで、ダンジョンが大きく揺れた。


 「どうやら成功したようだな。祭壇は起動した、ここの力は解放させてもらう。さらにここでお前を倒せれば御の字というものだ」


 『(さてどうする? こいつの力は本物だ……特にあのダガーはヤバイ。今のボクじゃあ死にはしないだろうけど勝てもしない……)』


 やるべきことを頭に思い描いた少女は三人に指示を出しながら、手から出した光の刃でベルダーへ攻撃を仕掛けた!


 キィィィンと金属が激しくぶつかる音が部屋に響く。


 『そこの三人! もう一度祭壇へ行って「腕輪」を探してこい!! 手に入れたら全力で逃げろ! いいか! 腕輪を持ったまま戦うなよ? 必ず逃げるんだ!』


 「わ、分かった!? 主は大丈夫なのか?」


 「行くぞ! 猶予は無さそうだ!」


 すでに外に出ていたコレルを追ってモスとバックもその後を追う。
 この少女が探せと言うからには、恐らく腕輪が女神の力の一つなのだろう。させまいとベルダーも後を追おうとする。


 「逃がすか……!」


 『おっと、折角来たんだ、ちょっと遊んでいってよ?』


 口調は軽いが、少女はダガーをチラチラと見ながら冷や汗を流していた。近くに迫り、ダガーの正体を見極めたからだ。


 『(クリムゾンサクリファイス(神殺しの短剣)か、流石にあれを食らったらボクでもいつ蘇れるか分かったもんじゃない……うう、怖いよう……)』


 「……滅せよ……!」


 光の刃と紅の短剣が決定打を出せないまま幾度となく交錯していた。










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 カツカツカツ……!




 「!」


 少し眠りかけていたルーナが、階段を走ってくる足音に気付きハッと目を覚ます。
 魔方陣を調べていたが、やはり踏まないとその効果は不明だったので、飽きて祭壇に腰掛けていたのだ。


 「誰か来る? 足音は複数……? レイドさん達!」


 やっぱり探しに来てくれたのだ! 良かった……動かないで待ってて……。


 ルーナが立ち上がり、階段の方を見ていると登ってきた人物が姿を現す。




 「結構早かったんじゃねぇか? 大丈夫かねえ主様……」


 「主が死ぬと我々も死ぬのかなやっぱり? ん? 誰かいるぞ!」


 「……女のようだな。冒険者か?」


 先に祭壇へ辿り着いたのは、モス達三人であった。

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