パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その33 起動

 ガン! ガイン! ガキィィィィン!


 「ちっ、やるじゃねぇか」


 「お前等のような奴らにやられる訳にはいかんからな!」


 レイドとモスの激しい斬り合いが続く。


 一方で、ライノスとアイビスがバックを相手に苦戦をしていた。


 「≪ファイアニードル≫ですぅ!」


 「こんな初級魔法が効くか! でえい!」


 「お前の相手はこっちだ!!」


 魔法を放つアイビスへ狙いを定めたが、ライノスが横から割り込んでくる。
 二人がかりでやっと戦えるくらいバックは強かった。






 「……助けに行かなくていいのか?」


 コレルが目の前のベルダーへ声をかけるが、ベルダーは微動だにしない。


 「別に仲間でも無いしな。これくらいでやられるようなら、それはそれだ。お前を動かすと後が厄介そうなんでこうやって牽制させてもらっている」


 喋りながらベルダーが徒手空拳でコレルを攻撃するが、致命打は与えられていなかった。
 またコレルのダガー捌きも鮮やかだったが、のらりくらりとベルダーがかわし、コレルは苛立たしげに舌打ちをする。


 現在、戦闘はシーフ同士がお互いを睨みあう事で拮抗を保っていた。


 数の上ではレイド達が有利だが、モス達の戦闘力が予想よりかなり高く、苦戦を強いられていた。




 「何て強さだ!? これならあの時ファイヤーフライを倒せたんじゃないか? 手を抜いていたのか!」


 キィン ガキィィィン! 


 ライノスが徐々に押され始めたところにアイビスの魔法が再度炸裂する!


 「これならぁ、どう? ≪フレイムストライク≫ぅ!」


 アイビスがディーザも使っていた中級魔法でバックを攻撃するが、それをたやすく避けるバック。


 「憐れな事だ……。あの時死んでおけば再び痛い目を見ずに済んだのになあ!」


 「こっちにも居ますよ!」


 尚も苛烈な攻撃を仕掛けてくるバックを、フレーレが死角から攻撃するがそれすらもあっさりと躱す。




 「そんな!?」




 手を止めてコレルを警戒しつつ、ベルダーは戦闘の様子を横目で見ていた。


 「(妙だな……いくらなんでもタフすぎる上に反応がいい……。あのモスとか言う男もレイド相手によく持つ……む?)」


 「ひゃっはあ! くたばれえぇぇぇ!」


 「むう!? 何て力だ!?」


 レイドがモスの渾身の一撃を受けると、反動で後ろに数歩下がらされていた。


 それを見たベルダーが全員へ声をかける。


 「! 気をつけろ! そいつらは全員ヴァンパイアになっている!」


 モスが笑った時、口の端から牙が見え隠れしていることに気付いたのだ。


 
 「「「え!?」」」


 ベルダーが叫んだと同時に、コレルがフレーレへと前進する!


 「む! 早い!」


 ベルダーが回り込もうとするも、スルリと脇を抜けるコレルがダガーを抜きながら感情の無い声で呟く。 


 「意外と気づかれるのが早かったな。となれば、まずはお前からだ」


 「は、早い!」


 フレーレはモス達からプリーストだと思われている。ヴァンパイアはいわばアンデットなので、聖なる力やディスペル浄化を使われるとあっという間に体が朽ちてしまうため、フレーレを始末しようとコレルが動いた。


 「フレーレちゃん! くっ、こいつ……!」


 「行かせるかよぉ♪ コレル! 殺すなよ? 後で楽しみが減るからな!」


 モスが、駆けつけようとしたレイドの足止めを行い、ひゃははと嫌な笑い声が部屋に響く。


 そんなことよりここを切り抜けるのが先だとコレルは思いながら後一歩でフレーレに肉薄するというところで……。


 「ガウ!!」


 「きゅーん!」


 「な!? こいつらどこから!? ぐうう……」


 フレーレの背中を飛び越えてレジナがコレルの喉へ噛みつき、真っ赤な血が噴き出す。
 動けないように足はシルバがしっかりと噛みついていた。
 レジナ達はフレーレの後ろでじっと気配を隠し、機会を伺っていたのだった!


 「コレル!? これは計算外だ、モス! 一旦引くぞ!」


 ガキン!


 コレルのダメージを見てバックがライノスを吹き飛ばし、救出に向かうがそこへフレーレが立ちふさがった。


 「今のわたしはアコライトですが……覚えた技までは忘れてませんよ! よく見たら顔も青白いですね……≪ディスペル≫!」


 魔法を使った瞬間、白い光がバックを包み込んだ。


 「がああああああ!? と、溶けるぅ!?」


 シュウシュウと煙を全身から出し、片膝をつくバック。


 「バック! チッ、離せクソ犬が!」


 「ギャウン!」


 「きゃん!?」


 レジナとシルバを振りほどき、バックを抱えて階段を目指すコレル。モスもヤバイと感じ、レイドを蹴飛ばしながら後退して行った。


 「覚えていろよ! 夜、眠れない恐怖を与えてやるぜ……!」


 捨て台詞を残し三人は逃走、祭壇の部屋は再び静寂を取り戻していた。


 「……逃げたか……これで祭壇を動かすことができるな」
 剣を鞘に収めつつ、レイドはベルダーへ言葉の意味を尋ねる。


 「動かすとはどういうことだ? この鍵が関係しているのか?」


 「……ビンゴだ。無駄に時間を食ったが急いで起動しろ。できればあの黒髪の子が居た方が良かったが……。まあいい、像のあった所に鍵穴がある……任せたぞ? 俺はヤツらを追う。生きていたらまた会おう」


 言い終わるが早いか、とても追いつけるとは思えない速度でベルダーは駆けだしていた。


 「あ! おい! ルーナちゃんが居たらってどういうことなんだ!」






 「……気になりますね。昨日のこともありますし、ルーナが何か関係しているんでしょうか?」


 「そもそも『起動』という意味が分からない。仕掛けがあるんだろうけど……」


 フレーレとライノスはベルダーの言葉の意味を量りかねていた。どちらにせよ、やることは一つしかない。
 レイド達は無言で祭壇へと赴いていた。 






 「ここか……確かに鍵穴があるな。引き返すなら今だぞ? ここからは何が起こるか分からない」


 レイドの言葉に全員「問題ない」と残ることを決意。




 カチリ


 ……


 …………


 ………………


 ……………………


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………




 地響きのような音と共に、祭壇が右と左の二つに分かれていく。


 そして真ん中に、見た事の無い魔方陣が描かれていた。


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 私は目が覚める。どれくらい眠っていたのだろうか? 


 「……また夢? 祭壇が開いて魔方陣があるなんて……ってここどこ?」


 目を覚ました場所はベッドの上ではなく、薄暗いダンジョンの中だった。




 「予知夢の次は夢遊病……? ここまで来た記憶が全然無いんだけど、私どうしちゃったのかしら……?」






 『後少しだからお願いね』






 「誰!?」


 どこからか声が聞こえてきたが周りには誰も居ない。この声、前にもどこかで……?


 後少しって何のこと? と思ったところで、ここが隠し扉の前だと言うことに気付く。


 思い切ってレイドさん達と合流しよう、そう思ったところで地響きが起こる。どうやら先ほどの夢は、やはり夢ではなかったらしい。


 声のことといい、薄気味悪いが今は進むしかない。またレイドさんに怒られるのかな……私……。

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