パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その30 探索

 
 「なんだか騒がしいですね?」


 フレーレの言うとおり、ギルド内は騒然としていた。
 とはいえ、全員がバタバタしている訳でも無く職員さんと一部の冒険者が慌ただしく動いていた。


 「どうかしたんですか?」


 丁度近くを通りかかった眼鏡の職員さんへ聞いてみると、忙しいながらも答えてくれた。


 「ああ、ダンジョンで死亡者が出てその手続きに追われているんだよ。流石に地下3階ともなると魔物も強いみたいでね……。レベルの低い冒険者がその餌食になったって訳だ。まあ危険はつきものだが、こういうのを目の当たりにするとやるせないよな」


 それだけ言い「それじゃあ」とまた仕事に戻っていった。先ほど慌ただしかった冒険者の一団は亡くなった人のパーティだったのかもしれない。


 「……俺達も油断すればああいうことになりかねない。注意して探索を続けよう」


 私が落ち込んでいたように見えたのか、レイドさんが私の頭をくしゃりと撫でて素材の清算を済ませていた。
 そんな中でフレーレがぽつりと悲しそうな顔でつぶやく。


 「蘇生の魔法はありますけど持っている人はほんの一握りですからね。寺院でも復活は受けていますけど成功率は半々ですし、料金も高いんですよね……」


 寺院で働くフレーレは実情が分かっているのでこういうのは辛いのだろう。
 そしてライノスさんが口を開いていた。


 「地下3階は厳しそうだね。明日もまた地下2階を探索することになりそうかな?」


 「地下1階のマッピングできていない所があるんですけど、同じ座標の地下2階部分を調べる事になりそうですね!」


 「ファイヤーフライだけはぁ出て欲しくないですねー」


 あれはもう嫌だと顔を顰めて手を振るアイビス。今日は出なかったけど明日も出ないとは限らない。
 注意して進むに越したことは無いかな。


 「お待たせ。今日は一人金貨1枚と銀貨8枚になるよ。はい、君達もこれを」


 「ええ!? いいんですか……?」


 「正式じゃないとはいえ、パーティはパーティだ。気にしないでいいよ」


 「ありがとぅございますー!」
 ライノスさんとアイビスはレイドさんにお礼を言いながらお金を受け取っていた。


 「昨日と今日で金貨5枚くらい……一ヶ月で……」
 お金を受け取ったフレーレはぶつぶつと計算をしているようだ。私もパパに送らないといけないし、少しずつ貯めとこうっと! レジナ達の食費も私が払うし!


 しかし死者が出たのは怖いなあ、明日も気をつけなくちゃ!










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 地下2階。


 今日はマッピングしていない右下を探索し始めていた。


 ダンジョンの壁や通路、部屋の作りは地下1階一緒だけど、出てくる魔物がガラリと変わるので結構厄介だったりする。


 「私が行きますね!」


 地下2階から登場した”ジャイアントスネイル”にフレーレのメイスが炸裂する!
 この魔物、体がぬるぬるしていて剣だとイマイチ効果が無い。そこでフレーレのメイスが大活躍していた。


 ジャイアントスネイルは動きが早くないので、足を絡めてくる口からの粘液さえ躱してしまえば後は回り込んで頭に一撃加えるだけなのだ。アイビスの火魔法でもいいけど、魔力は使わないにこしたことはないので、もっぱらフレーレが倒す係みたいになっていた。


 ぶちゅ! 


 嫌な音と共に頭が潰れ、お金に変わる。こいつは魔法で作られた魔物だったようね。


 「ありがとうフレーレ! ……あ、そろそろ地下1階のマッピングできなかった場所ですよ? ここも壁かあ」


 「どこかに隠し扉があるかもしれないから手分けして探してみよう。まあ、シーフの技能がある訳じゃないから見つからなくても気にしなくていいからね」


 「わかりましたぁー」


 どことなく楽しそうなアイビスとフレーレが一緒に探し、レイドさんとライノスさんはそれぞれ一人で、私はレジナ達と壁を調べる事になった。


 「わふわふ」


 「きゅんきゅん……」


 「きゅん」


 狼達は何をすればいいか分かっていないと思うんだけど、匂いを嗅いだり壁を引っ掻いたりしていた。
 ダンジョン内なのに癒されるなあ……。


 「では早速私も……」


 剣の柄で壁をコツコツと叩きながら歩く。


 ゴンゴン ゴンゴン コンコン 


 「おや?」


 しばらく移動しながら叩いていると、一か所だけ音が軽いところが見つかった。


 コンコン


 うん、やっぱり軽い。


 「レイドさーん!! ここ、何か怪しいですよー!」


 ぐるりと反対側を見ていたレイドさんが皆を引き連れてこちらへ合流した。


 「確かにここだけ音が違うな……ふん!」


 力いっぱい押してみるも反応がない。


 「ええーい!!」


 するとフレーレがメイスで思いっきり壁を壊そうと振りかぶった!








 「……手がジンジンします……」


 手をフーフーしながら、涙目のフレーレが出来上がっただけだった。うーん、音が違うってことは壁は薄いはずだし、いけそうだったんだけどなあ……。


 「オレがルーナさんの補助魔法をかけてもらってメイスでぶっ叩きましょうか?」


 「どうかなあ。パワフル・オブ・ベヒモスならいけるかもしれないけど、他に方法は無いかしら?」


 みんなで頭を抱えていると、アイビスが鼻歌交じりに壁を触り始めた。


 「~♪ あ、もしかしてぇ」


 アイビスが何かに気づき、壁をぐっと押しながら左へスライドさせる動作をすると「ゴゴゴ……」と壁が動き、通路が出てきた。


 「あ! アイビス凄い!」


 「えへへ~♪ お役にたてましたねー!」


 「きゅんきゅん!」
 「きゅーんきゅーん!」


 「シルバとシロップも凄いって言ってるわね!」


 「ありがとぅー」


 二匹の頭を撫でているアイビスを見ながら、レイドさんがお礼を言いつつ指示を出す。


 「助かったよ、こういう柔軟な発想は見習うべきだな……先へ進んでみよう」


 「マップを見る限り広そうでしたけど、通路が直線ですね……あ、登り階段……」


 私が魔法板とにらめっこしながら進んでいると、1階へ続く階段が見えてきた。
 それにしても……。


 「他のパーティもマッピングしているはずなのに何でここは調べられてないんですかね? めちゃくちゃ怪しいのに……」


 「お宝が優先だろうから、まずは降りれるところまで降りるんだと思うよ。俺は調査がメインだから、こういう怪しい所の方を先に調べたいけどね……っと、どうやら1階へ来たらしい。ライノス、俺と一緒に上がってくれるか、何かあっても俺達なら何とかなる」


 「はい!」


 私と入れ替わりにライノスさんが前へ出る。魔法板は首から下げ、私も剣を抜いて慎重に登っていく。


 「わふわふ!」


 「え? 先に行くって?」


 「わふ!」


 私のブーツに噛みついて引っ張るレジナ。どうやら自分が先に行って役に立ちたいようだ。


 「気を付けてよねー」


 「相変わらず賢いですよね、レジナ」
 フレーレがシルバを、アイビスがシロップを抱っこして追いついてくる。


 「まあその分、この町まで私を追いかけてきたりするから悩みもあるけどね……」


 「きゅん!」
 「きゅーん!」
 言葉が解ったのか、二匹が抗議の鳴き声をあげ始めていた。


 「あはは、最初から置いていくなって言ってますよ多分♪」


 「……だったらちゃんとした首輪でもつけた方がいいかなあ……」


 「それでしたらぁ、いいお店がありますよぉー」


 女の子三人で喋りながらゆっくり階段を登りきると、そこは大きな部屋になっていた。
 奥に祭壇のようなものがあり、レイドさんがぐるぐると調べまわっている最中だ。レジナがその横でくんくんと匂いを嗅いでいた。


 祭壇……気になる!


 「レイドさーん! どうですか? 危なくないですかー?」


 「ああー! 大丈夫そうだからこっちにおいでー!」


 チビ達を床に降ろし、ぞろぞろと祭壇までやってくる。祭壇自体は大きくないけど……。


 「……これは……像……?」


 中央には女性を象ったかたどった白い像がぽつんと置かれていた。

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