パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その29 代償

 『あれ!? 何だこれ!? ここに部屋があったはずなのに階段になってる……!?』


 ここはガンマの町にあるダンジョンの地下3階。そして地下4階へと下る階段の前なのだが様子がおかしい。


 『誰がこんなことを……? ここまでは間違いなくボクが作ったダンジョンだけど、地下4階なんて作ってないぞ……。知らない間に余計な事をしてくれるじゃないか……まさかこの下に部屋を移動したってのか? ……おや?』


 自分の作ったダンジョンが勝手に変えられている。そんな独り言を呟きながら思案していたところに、どこからか声が響いてきた。






 「一体どこまで行くつもりなんだ! もう地下3階だぞ! いくらなんでもこれ以上進むのは危険すぎる!」


 クレイモアを携えた戦士が、ずんずんと前を歩いていく男に話し……いや怒鳴りつけていた。
 すると前を歩く男は足を止めて喋りはじめる。


 「ヤツらが生きてやがった……俺達が置いて逃げた事をギルドマスターにチクりやがったみたいでな。何らかの処罰をすると……」


 苦々しい顔で悪態をついたその男は、ライノスとアイビスを置いて逃げたパーティのリーダー、モスだった。


 その意味に気付き、戦士は黙り込む。


 続いてシーフの男が口を開く。


 「そのことか……置いて逃げたの間違いないから、生きていたのなら処罰は当然だろうな。しかしあの二人を勝手に追い出したのはお前だろう? それは流石に責任持てんぞ」


 小さく呟いた「だからどさくさに紛れて殺しておけば」という言葉は二人には聞こえなかった。


 「パーティなんだから一蓮托生だろうがよ! いや、それは……まあいい……ここまで来た理由はあれだ、なにか手柄を立てればお目こぼししてもらえるんじゃないかと思ってだな……ほら、新しい通路とか階段とかな……」


 「そういうことか……しかし、ここまでは強力な魔物に会わずに来れたからいいが本格的に探索をするなら準備が足りないぞ」


 戦士の男が言うのも尤もで、ギルドへ出向いたモスが慌てて戻ってきたと思ったら即ダンジョンへ駆けこんだからだ。
 朝が早かったこともあり、すぐダンジョンへ入れたので気にせず進んだが、地下2階のファイヤーフライに苦戦したのはつい昨日の事だったため、まさか地下3階まで降りるとは思っていなかったのだ。


 「ふん、俺は戻るぞ? そしてパーティは抜けさせてもらう。昔のよしみで組んでいたが流石にもう無理だ。アホなリーダーにはついていけん」


 「な、なんだと! お前───────────────」


 尚も言い争いが続く冒険者を影から見ていたのはあの人影だった。




 『(おーおー醜いねぇ♪ 人間はこうでなくっちゃ面白くない! さて、地下4階はボクにとっても未知の領域。……そしてダンジョンの改変はボクを知っているヤツの仕業の可能性が高い。となると、が無いとも限らないから手駒は必要だよね?)』


 そう決めた瞬間、その人影はロングヘアの女の子の姿になっていた。
 そして息を吸って、角を飛び出す。


 『きゃあぁぁぁぁぁ! 誰か! あ! そ、そこのお兄さん達! た、助けてください!』


 叫びながら冒険者達の所へ走り、モスに抱きつく。


 「お、おお!? 女の子……こんなダンジョンに……?」


 訝しむモス。しかし女の子は涙を流しながら話しだす。


 『わ、私……無理矢理ここに連れてこられたんです……その、乱暴目的だったみたいで……』


 ひっくひっくと嗚咽を流しながら経緯を聞く。なるほど、少し胸は小さいが確かに顔立ちは整っている。


 「で、どうやって逃げて来たんだ?」


 『は、はい……ここまで来ればとか言いながら部屋へ連れ込まれたんですが、そこに魔物が居まして……連れてきた人がやられている間に逃げてきました……』


 「それは災難だったな。俺達は一度町へ戻るから一緒に来るといい」


 『え! 本当ですか! ありがとうございます!』


 と、モスは言うが頭の中ではこの女の子を襲おうと考えていた。


 「じゃあ行こうぜ」


 『え? 通路はこっちですよ?」


 「……こっちの方が近道なんだよ、ほら行くぞ!」


 『あ、ちょっと待……』


 モスが女の子の手を引っ張り部屋へ連れ込む。


 この部屋はさっきモスたちがルームガーダーを倒したので魔物は居ない。
 続いて戦士とシーフも「好きだねぇまったく」などと言いながら一緒に部屋へ入っていく。


 さっきまでいがみ合っていたのにこういう時は心が通じていた。




 バタン!




 扉が乱暴に閉じられ……。
















 『ごちそうさまー♪』






 女の子ののんきな声が部屋から聞こえてきた。








 ……わざわざこんな地下へ女の子を乱暴目的で連れてくるはずがない。


 少し考えればわかりそうなものだが、悲しいかな、モスたちは選択を間違えたのだった。












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 「んー! いい天気! 絶好のダンジョン日和ね!」


 「え!? ダンジョンは潜るから天気は関係ないですよね!?」


 朝から私の冗談を真に受けるフレーレはさておき、私達は今日もダンジョンを目指す!


 ……でもんなに天気がいいと釣りがしたくなるわね……。






 そんな個人的趣味はどうでもいいとして、昨日の収入は何と金貨3枚近くになった!


 ゆがんだ鉄板や、チャージホースのたてがみ、ヴァンパイアバットの羽などの素材が意外に高く売れたのだ。


 いつもうまくいくとは限らないけど、降りれば降りるほどいい物が手に入るなら……うふふ……とよこしまなことを考えていると後ろからシロップを抱っこしたアイビスが歩いてくる。


 「うふふーシロップちゃんはふわふわしていいですねー♪」


 「きゅーん……」


 昨日から可愛がられすぎてシロップはちょっと疲れていた。
 後で回収してあげないとと思っていたら、フレーレがやんわりとシロップを取り上げていた。


 「もう、シロップちゃんが困っていますよ! レジナさんにもかまってあげて下さい!」


 「わふ」


 「ああーごめんなさいねー♪」


 「もうちょっと気を引きした方がいいんじゃ……」


 今度はレジナを撫でまわしているアイビスさんを見ながらライノスさんが心配する。




 そうそう、ライノスさんとアイビスさんには昨晩レストランでご飯をご馳走してもらったんだけど、その時話を聞いているとどうもアイビスさんは家出してきたみたいなの。


 お父さんを見返してやるためにダンジョンに来たと言っていたけど、魔法を使える以外はからっきし世間知らずで、ギルドでキョロキョロして居る所に声をかけられ、何となくパーティに入っていただけらしい。


 ライノスさんはもっと南にある”ビューリック国”出身で、修行のためにダンジョンに来たそうだ。


 ビューリック国は私達の居る”エクセレティコ王国”とは同盟国なので、往来が簡単なのも理由なんだって。


 で、私達もある意味修行中だし一緒にどう? と提案したら「是非お願いしたい」ということで、本日は一緒に来ている。


 「今日はギルドにも言ってあるけど、お試しみたいなもんだ。合えば一時加入してくれればいいし、ダメだったら別に探してくれ」


 レイドさんは地下1階への階段を降りながら前を向いたまま言う。


 「はい、ありがとうございます! まさか勇者であるレイド殿と一緒に戦えるとは思っていませんでした! 勉強させていただきます!」


 有名人だけあってレイドさんの事を知ると、目を輝かせて色々質問していた。


 「よしてくれ、俺は強くなんかないよ……。魔王は倒せなかったんだからな」


 「でも……ふふ」


 「ん? どうしたんだい?」


 「いえ、昨日の『俺は大したやつじゃないよ』の昔話を思い出して! ルームガーダーを倒した後、部屋から外に出ると死体がキレイに無くなるあの話、面白かったです!」


 「ああ……」


 ダンジョンのルームガーダーは倒した後、扉を閉めてまた中へ入ると忽然と死体が消えるのだ。
 若い頃のレイドさんは、その秘密を知りたいと、ルームガーダーを倒した後その部屋でずっと死体が消えるのを待っていたことがあるそうだ。


 「結局見ている間は死体が消えなくて、三日ほど粘った所でセイラに見つかって怒られたんだよな……」


 「昔のレイドさん、可愛いところあったんですねー! 意地になっちゃって♪」


 「それ、妹にも言われたよ……まさかまた聞くことになるとは……」


 とほほ、と珍しくがっくりしているのも何となく親しみやすいと感じたのだった。




 「今日は地下2階! ファイヤーフライは怖いけど、頑張ろうね!」


 「きゅん!」
 「きゅーん♪」
 「わふわふ!」
 「はい!」












 その日は順調に探索を終え帰路に着くことができた。


 ファイヤーフライにも遭遇せず、マッピングも好調。
 そしてライノスさんとアイビスが今日の戦いの感触が良かったのか一時加入してくれることになり、早速ギルドへ!




 しかし到着したギルド内は酷くざわついていた。どうしたんだろう?
 

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