パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その27 救出

 


 「レジナ!?」


 私はお布団を跳ね除けながら飛び起きた。


 酷い汗を掻き、ドクンドクンと激しく脈を打つ心臓の音が部屋中に響いているような錯覚に陥る。


 「はあ、はあ……夢……? 良かったあ……」


 ベッドへ大の字になって倒れこむ。いい夢をと願って眠りについたのになあ……。


 レジナがトラばさみにかかってしまい、狩人に皮を剥がされ、シロップはいずこかへ連れて行かれるという、悪夢としか言えない夢を見てしまった。夢の中のレジナの諦めた瞳が脳裏に浮かび頭、を振る。


 「あーあ……汗びっしょり……着替えないと……」


 カリカリ……カリカリ 


 キューン……


 「シルバ? どうしたの?」 


 「! きゅん! きゅん!」


 物音がすると思ったら、シルバがドアを爪でカリカリしていた。トイレは部屋の中に作っているし……どうしたんだろう?


 「きゅん!」


 焦っているのか、急にドアに体当たりをするシルバを見てただ事ではないと直感が告げる。それと同時に、さっき見ていた夢を思い出す。


 「まさか……」


 私とシルバは着の身着のままで宿を抜け出した。


 シルバはふんふんと鼻をならし、様子を探る。


 「もし……もし夢と同じならこっち……!」




 私はアルファの町に繋がる街道の方向へと走り、町を出ると近くの林の中へ入る。
 暗いのでナイトビジョンを使って辺りを探す。


 「レジナ、シロップ……居るなら返事をして……」


 「きゅーん!」


 追いついてきたシルバを抱えて林を探索する。
 夢ではここにトラばさみがいくつかあったはずなのでシルバがかかってしまう可能性があるからだ。






 しばらく歩いていると少し左からか細い声が聞こえてきた。


 「───ん……きゅーん……」


 「わふ……わふ……」


 ガチャガチャとトラばさみを必死で外そうとするレジナとシロップを見つけた!


 夢じゃなかったんだ!


 「待ってて、今助けるからね!」


 「!! きゅーん♪」


 シロップが私の姿を見つけて歓喜の声をあげる。レジナは申し訳なさそうに鳴いた。


 「クゥゥン……」


 「シルバもだけど、あれだけ言ったのに来ちゃうから……≪ストレングスアップ≫……ぃよいしょ……っと!」


 ギギギギギ……


 力任せにトラばさみをこじ開け、レジナを助け出すと、かがんでいた私の胸に頭をすり寄せてきて鳴いていた。
 シロップはずっと手を甘噛みしたまま離そうとしない。


 「よしよし、怖かったわね。もう大丈夫だから宿へ帰りましょ!」
 「わふ」


 歩き出そうとしたところで、ガサガサと足音が近づき、さらに話し声が聞こえてきたのでチビ達を胸に抱え、レジナと一緒に木の後ろに隠れた。音のする方をチラっと見ると、たいまつの火が少しずつ近づいてくる。






 「うーん、今日はハズレだな……ここもかかってないぜ」


 「ですねえ……あ、でも血の跡がありますよ。逃げられたのかもしれませんね」


 「ホントだ。力任せにこじ開けてやがる、よっぽどの怪力をした魔物か動物だなこりゃ。実はゴリラとかな!」


 「ははは、この辺にゴリラはいませんって! もう少し奥に仕掛けてますし、そっちも見ておきましょう。イノシシか鹿でも取れてないかなあ……」


 「おう、しかしこう獲物が取れないんじゃ商売あがったりだ……俺も冒険者になるかねえ……」


 「おやっさんじゃ魔物の相手は無理ですよ……そういえば今日はどこかのパーティが噂のダンジョンを地下3階まで降りて、ギルドからごちそうを振る舞われたらしいですよ。羨ましいなあ」


 「まったくだ。ま、仕方ねぇ俺達は俺達のできることをするしかねぇやな………」


 おじさんと若者の二人組はぶつぶつと文句を言いながら林の奥へ消えて行った。






 「(あの人達……夢でレジナの皮を剥いだ人達だ……!? 間に合わなかったらあの夢の通りに……?)」


 何だかうすら寒くなり、レジナの首をぎゅっと抱きしめて暖かい感触を確かめた後、ケガをしているレジナを背負い、おチビ二匹は胸元へ入れて歩き出す。 


 「それじゃ、行きましょうか! ……というかゴリラとは何よゴリラとは!?」


 安心したらなんだか腹が立ってきて、ぷんすかしながら宿へと戻って行ったのだった。


 でも正夢にならなくてホントに良かった。








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 「で、今日からその親子も連れて行くのか」


 翌朝、朝食の場で昨晩の事を説明すると、レイドさんが困ったような呆れたような顔でコーヒーを飲みながら私に聞いてくる。


 「え、ええ。今は町に戻ってくれないと思いますし、かといって置いていくと昨日みたいな目にあったり、町の人に追い出されたりするんじゃないかと思って……。ダメですか……?」


 「はい、レジナさんはこれで大丈夫ですよー」


 フレーレがレジナの足にヒールをかけてレジナの頭を撫でていた。


 「まあシルバも頑張っていたし、大丈夫かな? ただし、何かあっても自己責任だからな!」


 「わふ!」
 「きゅん! きゅん!」


 後からきた二匹は尻尾を振って大喜びだ。レイドさんも口では厳しいけど、やれやれと言いいながらも目は優しかった。余裕がある大人ってかっこいいなあ。


 「今日はどうするんですか? まだ1階を探索しますか?」
 フレーレが朝食の目玉焼きを食べながらレイドさんへ尋ねていた。今日はシンプルなハムエッグにサラダと食パンだ。


 仕事とはいえ、美味しい朝食を用意してくれる上に、レジナ達を見ても「仕方ないねぇ」と招き入れてくれた宿屋のおばさんには頭が上がらない。なにかお土産を買って来よう。


 「そうだね。まだ地図の東側はあまり埋まっていないから今日はそっちかな。もし埋められたら明日は地下2階へ降りてみよう」


 「じゃあ頑張らないと! 昨日3階まで行ったパーティも居るみたいですよ」


 「みたいだな。早い者勝ちではあるけど、急いで危ない目に合っても仕方ないし、俺達は俺達のペースで行こう。お前達にも期待しているからな?」


 そう言いながらレイドさんは狼親子の頭を撫でていた。何だかんだで動物が好きなんだと思った。




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 「これで1階の東側もほとんど回りましたよ! 2階の階段も一番右上にありましたし、分かりやすいところでいいですね」


 朝食後、相変わらず長蛇の列を並び、ダンジョンに降りてから数時間。ついに私達は2階への階段を発見したのだ! 
 今はその階段の近くで、改めてマップを見ている最中だった。


 「よく見ると、真ん中から少し右下は、ぽっかり穴が開いたみたいになっていますね?」


 フレーレが私の持っている魔法板を見て呟く。気になるところだけど、ここは壁を調べても何もなかったのだ。


 「そういうこともあるよ? もしかしたら下の階から上がって入れる部屋になっている可能性もあるから覚えておいて損はないかな。地下2階に降りた時、座標を見ながらその付近を調べると思わぬ収穫があったりするからマッピングは大事なんだよ」


 「そうなんですね、勉強になります! でも今日も順調に進んでよかったですよね」


 「レジナさんたちも頑張ってくれたし、ルーナも調子が良かったんじゃないですか?」


 フレーレの言うとおり私は絶好調だった。


 馬型の魔物”チャージホース”と戦った時は一撃で急所を狙い撃ちにできたり、ヴァンパイアバットを正面から剣で叩き落としたりと勘が冴えまくっていた。


 「わふ!」
 「きゅんきゅん!」
 「きゅーん♪」


 「よしよし、可愛い可愛い! 宝箱を代わりに開けてくれて助かるよー」


 レジナ達は宝箱を開ける役割をしてくれていた。


 今日は宝箱を開けるとたまに矢が飛んで来たりしたがシルバ達は小さいし、レジナでも姿勢が低いので矢が当たることは無かった。


 レイドさんが言うには、宝箱に化けた魔物だったり、毒ガスがかかっている罠もあるという。
 危ないから地下2階以降は自分が開けると言ってくれた。優しい。


 「じゃあ今日はそろそろ帰ろうか。明日は地下2階へ行くから解毒ポーションみたいなアイテムを……」


 明日の確認をしながら町へ戻ろうとした時、階段から人影が現れた!


 「おお、人が……! 助かった! あ、あんた達……ポーションを持ってないか? 連れが酷いケガを負ったんだ……」


 歳は20歳前後だろうか? 階段を登りきったその男性は少し疲れた声を出しながら、背負っていた女性を降ろし私達に助けを求めていた。

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