パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その26 罠

 今日は大きめの鹿を獲ってご機嫌のレジナが町をテクテクと歩く。


 命の恩人が寝床にしている家の庭に小屋を建ててもらい、そこで今は生活をしているのだ。


 獲物を持って裏口で吠えると、小屋を作ってくれた人間が出てきて解体してくれることを最近覚え、今日も早速小屋へ戻った。


 しかしそこで異変に気付く。


 「きゅーん……」


 「わふ?」


 命の恩人が「シロップ」と名付けてくれた子しか小屋に居なかった。
 シロップが寂しそうに鳴いているので、小屋に入り顔を舐めると少し元気になったが、やはり尻尾は下がったまま。


 そして周りを見てもシルバと名付けられた子はどこにも居ない。


 少し待ってみたが、戻ってこないので心配になり、散歩道を歩いて回ったが見当たらなかった。


 「わふ……」


 一体どこへ行ってしまったのか。まさか連れ去られたか、別の魔物に襲われたののでは……項垂れてとぼとぼと戻ると、小屋を作ってくれた人間が鹿を解体しているところだった。


 「…お、帰ってきたのか……。青い布のチビが昼間出て行ったけど、大丈夫なのか……?」


 レジナは言っていることがあまり理解できなかったが、シルバがどこかへ行ったことは分かった。


 そこで命の恩人の言葉を思い出す。


 「(これからしばらく戻ってこれないけど、付いてきちゃダメだからね? 違う町だとあなたたちも勝手に歩けないと思うし……)」


 シルバは命の恩人を追ったのだと気付いた。


 こうしてはいられない。もう夜になるが、早く後を追わなければ。


 「お、おい。どこへ行くんだ! もう暗くなるぞ!」


 マスターが声をかけるも、レジナはシロップを背中に乗せ、匂いを頼りに町を出て行った。








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 「ゴクリ……」


 宝箱を前にして、私は思わず唾を飲みこむ。
 人生初のダンジョン宝箱だ、緊張せずにはいられない……。


 「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。多分罠もかかってないから開けて大丈夫だ。あ、でも念のため後ろから開けてくれるかい?」


 「わたしもダンジョンの宝箱を開けるのは初めてですし、ちょっと緊張しますね」


 フレーレが一緒に開けようと隣に来る。


 「じゃあ……開けるよ?」


 「はい!」


 ギィィィィ……


 少し錆びついた#蝶番__ちょうつがい__#の擦れる金属音が響き、宝箱蓋が開く。


 そして中に入っていたのは……!










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 「あーあ、銀貨三枚かあ……」


 「残念でしたね! でも楽しかったです♪」


 「きゅんきゅん!」




 開けた宝箱に罠はかかっていなかった。しかし、入っていたのは底の方に銀貨3枚だけという何とも切ない報酬だった……。くすん。


 「はは、最初の階層ならこんなもんだよ。下の階に降りる度にいいものが入っていたりするから、今後のお楽しみってところかな? でも罠が仕掛けられていることが多いからシーフの技能が無いと中々開けられないけどね」


 俺はむりやり開けるけど、と何故かドヤ顔をするレイドさんを尻目に、私達は今日の探索を終えて、昼間にシアという子が居るレストランで早めの夕食を取っていた。


 レストランに動物は……と思ったが、シルバは膝の上から動かさないという約束で何とか入れてもらえた。


 「結構疲れましたね」


 まだまだ体力はあると思っていたが、緊張のせいもあり、時間の感覚が分からなくなるので油断できない。


 実際、ダンジョンから出てきた時には五時間が経っていた。




 「稼いだお金は一人銀貨が8枚……山の宴で一日バイトするよりはいいかな? 階層が下になれば稼ぎもよくなるんですよね?」


 商店に曲がった鉄や、折れた剣などを売り、魔物から手に入れたお金を合わせると


 「そうだな。でも他の冒険者から情報は基本出回らないし、地道に探索することになると思うけどね」


 レイドさんは銀貨1枚のハンバーグにかぶりつきながら、夢の無い話をする。


 「わたしは少しでも稼げればいいので……」


 「でもフレーレが一番お金が必要よね? 一ヶ月でどれくらい稼げるか分からないけど、諦めないでいきましょう!」


 「ルーナは前向きですね、わたしも見習わないと!」


 そう言って銅貨8枚のパスタを食べ始めるフレーレ。


 私も負けじと、銅貨7枚のとんかつ定食を食べていると、思い出しかのようにレイドさんが私に問いかけてくる。


 「そういえばルーナちゃんは「狩人」なんだよね?」


 「そうですよ、パパと同じジョブですね!」


 「ずっと気になっていたんだけど、どうして弓を使わないんだい? 持ってない訳じゃないんだろう?」


 う、ついにその質問が来たか……恥ずかしいのであまり言いたくなかったんだけど……。


 「あー、その……パパは弓を扱うのがとても下手で……教えてもらえなかったんですよ。実際、独学で使えるようにはなりましたけど……」


 「弓が下手って……どうやって狩りをしていたんですか? お父さんは狩人なんですよね?」


 フレーレの言う事も分かる。実際、私もあんな狩人を見たことが無い。


 「獲物を見つけたら一気に近づいて剣でザクリ! これだけなの……鹿みたいに逃げるのを追うのは苦手で、魔物みたいにこっちに近づいてくる獲物はかなり得意だったわ。『どうせソロだと弓は最初の一撃だけなんだから、剣を覚えろ! 剣を!』って無理矢理やらされた感はあるかも……」


 「……それは本当に狩人なんだろうか……」


 レイドさんが呆れた感じでハンバーグをフォークに刺しながら言う。私もどうかなとは思うんだけどねえ……。


 「ま、まあ、今は療養中なんで大目に見てあげてもらえると助かります! そういう訳で私は剣を使ってるんですよ。今日はレイドさんとフレーレがいたからか特に調子が良かったですね」


 「ふーん、ルーナちゃんの剣技は悪くかったから不思議に思っていたけど、そういうことだったのか。じゃあ、たまには弓の練習をしてもいいよ? 地下2、3階までなら多分大丈夫だろうし」


 最後にスープを飲み干し、ごちそうさまと、レイドさんは食事を終えていた。


 「わたしもメイスで前衛ができますから、弓を使ってもいいと思います! あ、早く食べないと……」


 フレーレも今日の探索は楽しかったようで、自分から前衛をやると言いだした。


 三人だけど、やっぱりパーティは楽しいよね。


 夕飯が終わった後はレイドさんは一人部屋へ。


 私達は同室なので、疲れを取るため、一緒にお風呂へ入ったり、お互いをマッサージしあうなどをして旅行気分を味わっていたが、明日に備えて今日は早めに寝る事にした。




 いい夢でも見れるといいんだけど……そんな事を思いながら目を閉じると、眠気はすぐに訪れた。














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 シルバと命の恩人を探すためにレジナは走っていた。


 アルファの町から、街道沿いに続いて匂いが残っており、そこを辿ることで見つかると思ったからだ。


 途中、冒険者や人間とすれ違う事があったが、レジナの足が速いことと、首にスカーフが巻いてあるおかげでどこかの飼い犬だろうと、捕獲や攻撃をされなかったのは僥倖であった。




 いよいよ匂いが近くなり、町の近くまで来た頃にはすでに日が暮れていた。


 「きゅーん……」


 お腹を空かせたシロップが背中で小さく鳴く。


 もう少しで到着するので我慢してもらおうと思ったが、休憩をしながらとは言え、一日半ほど走り続けているのでレジナも空腹と疲労が溜まっていた。


 町の入り口はすぐそこだが、すぐに命の恩人が見つかるとは思えないと考え、何か獲物が無いか近くの林へ入ったのだが、これがいけなかった。
 ここは自分たちの良く知らない場所ということを疲労で考えていなかったからだ。




 ガチャン!!




 「キャイン!?」


 少し林の中へ歩いた所で、レジナは狐罠……いわゆるトラばさみに引っかかってしまった。
 この辺りは狩人が仕掛けた罠がある狩場だったのだ。


 「きゅん!?」


 ぽろっと背中から落ちたシロップがレジナの足から出ている血をぺろぺろと舐める。


 レジナは何とか脱出しようとするが、がっちり挟まってしまい逃げる事が出来なかった。




 そして……




 「お、何かかかってるぜ?」


 「こりゃあ……シルバーウルフじゃねぇか!? 北の森にしかいないのがどうしてこんなところに……」


 「きゅん! きゅん!」


 「ガウウゥゥゥ!!」


 「ほう、子供も一緒か……こっちの大きい方は毛皮も肉も高く売れるし、子供の狼も貴族の道楽者がペットとして買ってくれるな……へへ、今日は儲けたな!」


 尚も鳴き続けるシロップを一人が抱え上げる。


 「いや、待て何か首に巻いているぞ、飼われているんじゃないか?」


 「取っちまえばわからねえよ! ほら、そっちの大きいのを早く絞めちまえよ」


 男が急かすように言うと、もう一人がナイフを片手にレジナへ近づく。


 「……すまんな、こっちも生活がかかってるんだ」

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