パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その25 入口

 『マズイ』


 少年にも少女にも見えるその人影は椅子に座って一人呟いた。


 『分けて封印した女神の力が解けかかっている。ボク自らが封印を施した〝女神の水晶”が無いと完全復活は無理だけど。それにしても見つからないなぁ……。ボクが探知できないなんてよっぽどだよ?』


 立ち上がり、部屋をウロウロし考えるがまとまらない。
 ひとしきり唸った後、ぴたりと止まり、またも一人呟いていた。


 『女神の水晶以外は、手元に置いておくと勝手に復活しそうだったからあちこちに分けて封印したけど、これじゃ本末転倒だね……』


 やれやれと大げさに手を広げてため息をついた後、最後に一言……。


 『……どちらにせよ女神の力は誰の手にも渡すわけにもいかないし、仕方ない……』




 人影は闇に紛れるかのようにスゥ……と姿を消した。




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 「はい、確かに許可証を確認しました。お通りいただいて結構です」


 「や、やっと入れるのね……」


 「レイドさんが1階しか無理だと言っていた意味が分かりましたぁ……」


 私達はようやくダンジョンへ入ることができた。


 というのも、最近できたこのダンジョンは勿論私達だけが知っている訳ではない。
 お宝が眠っているというダンジョンに一攫千金を求めてくる冒険者はたくさんいる、そう言う事なのだろう。


 そして入り口はそれほど広くないので、我先にと入ろうとしてケガ人が出てしまったことがあり、混雑を避けるため、ギルドの人がここでのような事をしてくれているというのだ。




 「これでも早く入れた方だよ? 後の人が待っているから行こう」


 レイドさんに連れられて、私達はついにダンジョンへ入る。
 入り口は狭かったが中は広く、通路は三人横並びで歩けるくらいの幅があった。


 「ふわあー広いですねー」


 「きゅんきゅん」


 私がマッピングを担当するので、フレーレにシルバをだっこしてもらっている。
 何度か散歩にも行ったことがあるので、フレーレに慣れているのはありがたい。




 私はというと、ガラスのような透明な魔法板を使いマッピングを開始する。
 通った所には色がつき、マーカーも設定できるのでかなり便利だ。


 レイドさんが持っていたお古だそうだけど、全然そんな感じはしない。


 「天井の高さ……壁の質……ここは間違いなくダンジョンだな」


 「どういうことですか?」


 「ん? ああ、ダンジョンと言っても色々あってね、自然にできたものを俺達は『洞窟』と呼んでいる。こうして人口的に手が加わっているものは迷宮……ダンジョンと呼んでいるんだ」


 「分かるような分からないような……」


 結局は一緒じゃないの? と思って聞いていたが、レイドさんの補足が入る。


 「洞窟ってのは、何かしらの要因で出来た穴を人が掘ったり、魔物がねぐらにしたりと何となく広がっているだけの事が多いんだが……ダンジョンってのは『設計者』が居て、そこには設計者の『意図』がなにかしら込められていることがある。それこそ財宝を隠したりとかね」


 「なるほど、ならここは確かに“ダンジョン“ですね。中は広いし、壁もきれいですもんね」


 「そういうことだ。さ、少し進もうか」


 私達は整然とした通路を進む。


 ほんのり明るいのでナイトビジョンを使う必要は無いけど、数歩先はあまり見えないのが嫌らしい造りだと感じた。


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 「はあ!」


 レイドさんの剣がアイアンスパイダーの足を切り裂くと、動作が鈍くなる。
 そこに補助魔法をかけた私の剣が頭へ突き刺さると、緑の血を吹き出しながら動かなくなった。


 「やったぁ! お金、お金♪」


 何度かダンジョンの魔物を倒したんだけど、何故かお金が出ることがあった。


 レイドさんに聞いてみると、ダンジョンの魔物は設計者がダンジョンのお宝等を守るために『造る』ことがあるらしく、その触媒にお金を使う事も。銀貨や金貨は魔力が良く通るので、造りやすいんだとか。


 もちろん天然の魔物も徘徊しているし、どうでもいいガラクタを触媒にしていることもあるので外れた時のガッカリ感はすごい……。


 それにしてもレイドさんは物知りだなあ、流石は魔王まで辿り着いた勇者様……。


 「あ、フレーレちゃん。そのミディアムラットは爪に病原菌があるから気を付けてね」


 「は、はい! えい!」


 ちょっと大きめのネズミを粉砕したフレーレはゆがんだ鉄板を手に入れていた。


 「うーん、お金じゃなかったですね……」


 レイドさんは私達の練習にと、メインの戦闘を任されていた。階層が浅い間に戦い慣れて欲しいとも言っていた。


 T字路や十字路をとりあえず適当に進み、マップを埋めていたが、そこでふと気づく。


 「そう言えば全然他の冒険者に会いませんね?」


 「ああ、まだここは浅いからね。もう2階まで行く階段は殆どの人が分かっているんじゃないかな? だからこの辺でウロウロするのは初めて入った俺達くらいなもんだよ」


 ははは、と壁を調べながらゆっくりと進むレイドさん。
 興味があるのか、いつの間にかシルバがレイドさんと一緒に鼻をふんふん鳴らしながら歩いていた。


 「じゃあ、もう少し歩く感じですね」


 そこでフレーレから質問があがる。


 「そういえばいくつか扉がありましたけど入らなくていいんですか?」


 確かに言われれば通りに扉があったけど、レイドさんはそれを無視してずんずん歩いていた。


 「うん、とりあえず道をマッピングして、後で部屋を開けて行くんだ。俺はいつも通路をまず埋めてから部屋を開ける。理由はあるんだけど、今回はルーナちゃん達も初めてだしそろそろいいかな?」


 スタート地点からだいたい2時間経過しただろうか? 近くにあった扉の前でレイドさんがそんな事を言う。


 いよいよ扉を開けてみるみたいね!


 「ダンジョンの部屋は特殊でね、何もない部屋が殆どなんだけどたまに『ルームガーダー』という魔物が居る部屋があってね。逃げられないことは無いけど、面倒だから後回しにしていたんだよ」


 旅の経験からか、スラスラと説明が出てくるのがすごいよね。私もいろんなところへ旅をしてみたいなぁ。


 そんなことを考えていると、レイドさんが「じゃ、開けるよ」と言って扉を蹴破っていた。
 ええ、そんなに乱暴に開けるの!?


 中に入ると、ギラリと魔物達の目が一斉にこちらに向く。


 「行くよ!」


 「は、はいー!」


 「行きますー!!」


 中に居たのは、さっきも倒したアイアンスパイダーが三匹に、初めて見るコウモリの魔物が二匹だった!


 「ヴァンパイアバットか! そいつは吸血コウモリだ! 特に女の子の血が好物だから気を付けて!」


 「分かりました! えい!」


 レイドさんが二匹相手にし、私が一匹のアイアンスパイダーを相手にしながらヴァンパイアバットを警戒していると、今だと思ったのかバットが急降下してきた!


 「きゃあ! 二匹ともこっちに来ましたよ!」


 「……」


 何故かヴァンパイアバットは近くに居た私をスルーし、二匹ともフレーレを狙った。腑に落ちない。


 「きゅん! きゅん!」


 メイスだと当てにくいのかフレーレの攻撃は空振りが多発。


 シルバがジャンプしてバットを追い払っていたので、私はアイアンスパイダーを倒してこちらを見ていないバットを斬って倒す。


 「きゅん!」


 シルバがもう一匹のバットを捉え、爪で羽を引き裂き、地面に叩き落としていた。そこにフレーレのメイスが命中し、バットは潰れて息絶えた。あ、こっちはお金になった。


 「び、びっくりしましたー」


 「こっちも終わったよ。シルバも頑張ったな」


 「きゅん♪」


 レイドさんに撫でられ尻尾をぶんぶん振るシルバ。
 意外とこの子も戦力になっているようだった。


 もう魔物が居ないことを確認するため周りを見渡すと、部屋の隅に宝箱があった。


 「あ! 宝箱!」


 「そうそう、ルームガーダーが居る部屋に宝箱やアイテムが落ちている事があるんだ。良いのが入っているといいけど、浅い階層だとだいたいお金か何も入っていない事が多いね」


 私とフレーレは初の宝箱を前に目をキラキラさせていた。
 大したものは入っていないかもしれないが、私達の初報酬みたいな感じなのでやはり嬉しい!


 さて開けてみますか……。

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