パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その23 仲間

 私は今日もいつものように、臨時パーティの一員として行動していた。


 今回のパーティは二日契約で、昨日は魔物の討伐。今日は運搬の護衛という依頼で、商人さんの馬車でのんびりと移動していた。


 「昨日はすごかったなあ……俺達が”クレイジーゴート”を倒せるとは思わなかったよ。これもルーナちゃんの補助のおかげだな」


 リーダーのキールさんが興奮冷めやらぬと言った感じで皆と話す。昨日はエルダーフロッグを倒しに行ったんだけど、途中でクレイジーゴートというヤギに似た魔物と遭遇してしまったのだ。


 ちょうど川へ水を飲みに来ていたみたいなんだけど、縄張りに入ったと勘違いされたのかこっちに向かってきたのよね。キールさんくらいだと、中級の補助をかければ倒せない相手では無いので事なきを得た。


 「いやあ~私もお金になりましたしね! 私一人じゃ絶対倒せないんで、みなさんのおかげですよ!」


 「私の魔法も強化してくれたし、助かったわよ? ずっと居ていいからね?」


 ソーサラーのライラさんも絶賛してくれた。うんうん、パーティってこうじゃなきゃね。


 「それにしても平和ですね。ベタの町までどれくらいなんですか? 私、行くのは初めてなんですよね」


 「もうすぐだよ。向こうで一泊することになるけどね。そういえば伯爵様が泊めてくれるって言ってましたけど大丈夫なんですか?」


 キールさんが御者台にいる商人さんへ聞くと、チラっとこっちを見ながら答えてくれた。


 「大丈夫だよ、今日は魔物も出ないしあんた達ラッキーだったねぇ。少し前は隻眼ベアだっけ? それに襲われる人達も居たからねえ」


 ベタの町は北の森を抜けた先にあるので、街道があるとはいえ通過せざるを得ない。


 森は広いのでそうそう魔物が街道まで出てくることは無いみたいだけど、腹を減らした魔物などがたまに出てくるそうだ。


 そんな雑談をしながら夕方に差し掛かった頃、ベタの町へ到着した。 
 商人さんの依頼を完了させるべく、早速伯爵邸へ向かうと伯爵様も待っていたのかすぐに応接間へ通してくれた。




 「おお、遠路ご苦労であったな。どれ早速……」


 伯爵様が自ら商品を一つ一つ検品を始めた。ちなみに中身はキレイなガラスで出来たコップと銀細工だった。


 「ふむ、問題なかろう。今日はゆっくり休んでくれ! おい、部屋へ案内してやれ……くれぐれも丁重にな?」


 ご機嫌の伯爵様がメイドへ指示を出し、私達を部屋へ案内してくれたんだけど……。


 「すごく豪華な部屋ね……この部屋だけで私が下宿している部屋二つ分はあるわね」


 天蓋付ベッドに鏡付きの化粧台……お姫様にでもなったかのような見事な部屋を用意してくれた。


 出された食事も何のお肉を使っているの!? と言いたくなるようなじゅーしぃなステーキに、採れたてコーンを使ったスープと、ふかふかのパン! 


 お腹いっぱいになり、お風呂までいただいた私達はキールさん達と「今回の依頼最高!」とか言いながら就寝し、笑顔でベッドへ。




 そして夜……。




 ガチャリ……


 扉の開く音で私は目を覚ます。


 「(ふえ……? 今、何か音が……)」


 ヒタヒタ……


 「(!? 気のせいじゃない……だ、誰か来る……? まさか幽霊……?)」


 怖いけど意を決して起き上がろうとしたところで、何かが覆いかぶさってきた!


 「きゃ……!」


 声を上げようとしたところで口を塞がれもごもごする。


 「(なんなのー!?)」


 暴れるも、組み伏せられ思うように動けない!


 そしてパジャマのボタンに手をかけられたところで、ようやく私は襲われているんだという事を認識し、補助魔法をかけて抵抗する。


 「ふぬう!!」


 「うわ!?」


 ストレングスアップを使い覆いかぶさってきた影を跳ね飛ばし、無防備になった顔をひっかくと「くそ!」とか言いながら尚も襲いかかってくる賊!


 「だ、誰か!? 助けてー!! むぐ!?」


 大声で助けを呼ぼうとするとまた口を塞がれる。しかし今は魔法のおかげで身動きが取れないと言うことは無い!
 身をよじっていると私の膝が、ある場所へクリーンヒット。


 「お、おが……!?」


 影は前かがみになりながら慌てて逃げて行った。


 入れ違いに来てくれたキールさんに事情を話していると、さらに後からきたメイドさんに「賊に注意しましょう」ということで解散となった。






 怖くてその夜は眠れず、結局朝まで警戒し、メイドさんが起こしに来てくれたので着替えて階下へ行くと……。


 「おはよう諸君、朝食を準備したから是非食べて帰ってくれたまえ!」


 出てきたのは顔にひっかき傷を負って、少し前かがみになっている伯爵様……。


 私が「ひっ!?」と小さく漏らしたのが伝わったのか、キールさん達も複雑な表情をしながら味が分からなくなってしまった朝食を食べてベタの町を後にしました……。


 アルファの町へ戻ってから、キールさん達がベタの町の伯爵様について情報を集めた結果、あの伯爵はいつも依頼後に宿泊をさせてくれるが、女性冒険者が居た場合夜這いをするということが分かった。


 冒険者の方が強いことが多いのでほとんど返り討ちに合うそうだけど……。


 後、伯爵ということと、ことがアレなので被害者が黙秘しているから見逃されているけど、私達のような女性冒険者には迷惑極まりない。


 「ルーナちゃんが居なかったら私が……ホント良かったわ……」
 非力なソーサラーであるライラさんが狙われていたらアウトだっただろう。襲われた私が言うのも何だけど。
 一応、イルズさんにはそのことを報告しておいた。今後、被害者が出なければと思ったからだ。


 そしてキールさんのパーティを離れた翌日からおかしな事が起こり出す。


 海で釣りをしていると誘拐されそうになる(レジナが助けてくれた)
 町で急に因縁をつけられる(たまたま通りかかったレイドさんが追い返してくれた)などである。


 極めつけは例の伯爵様からメイドをしてくれという指名依頼まで来る始末。


 「これは冒険者がやる仕事じゃないからダメだよ」


 イルズさんが依頼を持ってきた執事さんを追い返してくれたが、明らかに狙われている……。


 しばらくそんな日が続き、噂を知ってかパーティに入れてもらえないことが増えたのだ。
 ルーナは伯爵に狙われている。関わるともしかしたら自分たちにまで……そう考える人は少なくないだろうから仕方ないんだけど。


 証拠が無いので、伯爵様へ問い詰める事も出来ず悶々とした日々の中で私は疲れてしまっていた。


 「はあ……」


 おかしい。短期的にパーティに入って稼いだあと、今頃は村へパパに顔を見せに戻っているはずだったのに……。


 「きゅーん?」


 「何でもないのよ、ほら帰ってご飯にしよ?」


 「きゅーん♪」


 一緒に狩りへ行っていたシロップを抱き上げ山の宴へ戻ろうとした時、私と同じくため息をつく人影に出会った。


 「はあ……」


 フレーレだ。


 「どうしたの? 元気が無いみたいだけど」


 「あ、ルーナ。困ったことがありまして……」


 フレーレは孤児院出身らしく、冒険者として活動を始めてから、お世話になった孤児院にお金を寄付していたそうだ。
 アントン達と組んだばかりの時は無茶をせずそこそこ稼げていて、私が加入した時期は実入りが良かったのでかなり寄付できていたそうだが……。


 「経営がうまく回ってないの?」


 「子供が多いのもあるんですけど古い建物だから修繕費がかさむみたいです。神父さんやシスターは無理しなくていいと言ってくれるんですけど、この前帰った時、聖堂の天井に大穴が開いてまして……」


 何とかしたいという訳だ。


 私に手伝えることは無いかな…………あ、そうだ!


 「ねえ、最近話題になっている、ガンマの町へ行かない? あそこのダンジョン、まだ出現したばかりだからお宝があるかも! 実は私、今あまりこの町に居たくなくてね、良かったら一緒に行かない?」


 レイドさんが話していたダンジョン話を思い出し、フレーレへ提案する。
 そうよ! パーティに入れないなら自分で集めればいいじゃない!
 この町で危険に脅かされるよりよっぽどいいわ!


 「いいんですか? ルーナが居れば採集ばっかりの毎日はおさらばできますけど……」


 不憫な子だよう……。


 「じゃあ決まり! 明日ギルドへ行ってパーティ申請しましょう」






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 「ルーナちゃんとフレーレちゃんはこれで同じパーティだ、手続きは終わった」


 翌日、イルズさんに登録申請を行ってもらい、晴れてパーティを組むことが出来た。


 「依頼をするのかい? 今ならブルホーンがあるけど」


 「あ、いいですね! ダンジョンに行く前に少し狩って準備しないとね」


 「ダンジョンってガンマの町のか? 二人で?」


 「ええ、浅い階層なら大丈夫かなって! 一応剣も使えますし、フレーレが回復もできますしね」
 イルズさんが眉をひそめて「大丈夫かなぁ……」と呟きながら、ギルドを送り出してくれた。




 そしてブルホーンは結構あっさり倒すことが出来た。
 私の魔法もだけど、フレーレの武器であるメイスも結構エグい。
 かなり重そうなんだけど、補助をかける前からそれなりに振り回すので、小さい体のどこにそんな力があるのか気になって仕方ない。


 ストレングスアップをしてメイスで脳天を直撃。返り血を浴びて「えへへ」と笑う彼女は、アントンとパーティを組んでいた時のことは吹っ切れたようだった。


 報酬を貰い、フレーレと別れた後、フン・ダックル商店で武器の手入れをお願いする。


 「お、ルーナちゃん。丁度いいところに!」


 店へ入るとフントさんに呼び止められた。防具は買えないよ?


 「どうしたんですか?」


 「この前倒した隻眼ベアの素材! あれを加工して防具を作ったんだよ。ギルドマスターがルーナちゃんへプレゼントしてくれって言ってたから渡しに行く予定だったんだが、都合が良かったな」


 「この前お肉を食べたんですけど、素材まで……」


 「おう、内臓以外捨てる所がねぇな! ほらこれだ」


 フントさんがゴトリとカウンターに置いたのは、ガントレットとブレストプレートだった。
 色はコバルトブルーでキレイな色をしている。


 「背中の毛皮と皮を使ったんだが、普通の個体より固くてな。色も死んでから段々とその色になったんだよ。頭も良かったみたいだし、亜種だったのかもしれないな」


 「大きかったのは確かですけどね。 でも本当に良いんですか?」


 「ああ、お代はギルドマスターの旦那から貰っているし、それはルーナちゃん用だ。ベルトで自分にいいように合わせてくれ。後は、装着して内側にぐっと握りこんでみてくれ」


 「? こう? わ!?」


 シャキン! と、爪が二本飛びだしてきた。


 「いいだろ? それも隻眼ベアの爪だ。いざってときに使うといいぜ! 耐久はそんなにないかもしれないけどな」


 ダンジョン行きの前にいいものを貰った……! ブレストプレートも装着すると何か強くなった気がした。
 これなら行けるだろうと思ったその時、商店にレイドさんが入ってくる。


 「お、ルーナちゃん。ここに居たのか、ダンジョンに行くって聞いたけど?」


 「あら、耳が早いですね? イルズさんからですか? フレーレと一緒に行くんですよ!」


 「そのことなんだけど、俺も一緒に行っていいかい?」


 「え? レイドさんも? そ、それはもう! レイドさんみたいな勇者が居れば踏破できるかも……!」


 「はは、そんなに簡単には行かないよ。二人だと危ないってのもあるんだけど、ダンジョンの調査を依頼されてね。ルーナちゃんの魔法があれば俺も調査で助かるし、顔も知ってるから丁度いいかなって思ってさ」


 レイドさんはあの騒動以降、少し明るくなった気がする。
 前はパーティなんて絶対組まない! というオーラを出していたけど、何かふっきれたのかもしれない。


 「じゃあ、明日フレーレと買い物に行くので聞いておきますね! よろしくお願いします!」


 こうして、私は町からの脱出、フレーレは孤児院のため、レイドさんは調査のためというチグハグなパーティが誕生したのであった。

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