パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その24 許可

 「はあ……」


 「どうしたんですか? 急にため息をついて?」


 フレーレにたたき起こされ、朝食を取った私達はまずガンマの町のギルドを目指していた。


 ダンジョンに入るためにはギルドの発行する許可証が必要だからだ。


 「いや、アルファの町に戻ったらまた騒ぎがあるかも、と思うとね……」


 「ああ、例の?」
 フレーレがあれですね、という感じで納得したところにレイドさんが口を挟む。


 「実際、何だっけ……メイドの依頼以外は証拠も無いんだろ?」


 「そうなんですけどね。でも、あの日以降なのでほぼ間違いないと思うんですよ? 後は証拠かー……」


 誘拐犯はレジナが噛みついたらあっと言う間に逃げたし、言いがかりをかけてきた男もレイドさんにあっさり撃退……。次は私が囮になって捕まえようかしら?


 段々腹が立ってきたところでギルドへ到着。
 レイドさんを先頭に受付へと真っ直ぐ進む。周りの冒険者達がチラチラとこちらを伺っているようだ。


 「いらっしゃい、用件は?」


 小太り(失礼!)で髭のおじさんがぶっきらぼうにレイドさんへ尋ねる。
 後ろに居る私達を含めて値踏みしているような目つきだね。


 「アルファの町から調査を依頼されてね、最近現れたダンジョンへ行く許可を申請しに来たんだ」


 「あの町からか……ダンジョンな。で、その二人もか?」


 「ああ、パーティを組んでいる」


 すると周りから笑い声が上がっていた。


 「おいおい、ダンジョンてな危険な所なんだぜ? お嬢ちゃん達にはちょーっとキツイんじゃねぇかな?」


 「レベルはいくつなんだよ? お兄さんもおもりが大変だ! 同情するよ! ププ……」


 彼らは口を開くと、嘲笑と馬鹿にしたセリフばかりを吐く。
 アルファの町だと初めて登録した時でもみんな優しかったけど、町が変わると人も変わるのね……。


 「うるっせぃ! てめぇら! 黙ってろ! ……悪いなウチの冒険者中がよ……全員カードを出してくんな」


 おじさんに言われて私達はカードを手渡すと、カードを魔法でスキャンし始めた。


 「……!? おめえさんがあの……。他の二人もレベルは低いが……なるほど……この能力なら問題あるまい、このままカードに許可を刻印してやる」


 おじさんの言葉を聞いて冒険者達がざわざわし始める。


 即決した理由は私達の能力……特に魔法がレベルに比例しないものを持っているからだ。


 魔法は火水土風の属性を操る「属性魔法」に、単純な魔力をぶつける「攻撃魔法」と回復やアンデッドに対抗できる魔法が使える「神聖魔法」。そして私の使う「補助魔法」があるけど、私は補助魔法を上級まで使えて、フレーレは神聖魔法と攻撃魔法が使えるからレベルが低くても戦力としてみなされたに違いない。


 ちなみに属性魔法は習熟すれば攻撃にも転じれるけど、ディーザのように恩恵が無ければ何年もかかってしまうので属性の攻撃魔法は難しい。私は火をおこすくらいなら……。


 攻撃魔法は魔力をぶつけるイメージがあればできるらしいけど……フレーレから教えてもらっても私にはできなかった……。あれ? 私って補助以外のセンスが無い!?


 そ、それはともかく、レイドさんは高レベルの勇者、フレーレは2種の魔法を使えるし、私の補助は最高ランクなので、たとえ三人でもパーティのレベルはかなり高い。


 ……私とフレーレのレベルは低いですけどね……。そ、それでも隻眼ベアを倒して上がったんだから!




 「話が早くて助かるよ」


 「気にするな、調査ってんなら早い方がいい。まだ地下2階までしか行けたヤツが居ないからな。マップでも作ってくれれば町も潤うだろ。ああ、俺の名前はハダスだ。一応ここのギルドマスターをしている」


 「ありがとう。それじゃ行こうか」


 「はい!」


 困惑顔の冒険者をよそに、私達は鼻歌気分でギルドを後にした。








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 「ハダスさん、あいつら何者だったんですか?」


 若い冒険者が、小太りのおじさんことギルドマスター・ハダスに質問を投げかける。
 最初の戦士風の男はともかく、残り二人の女の子はどう考えてもレベルは低いと思っていたからだ。


 「……あの男は10年前魔王と戦った、勇者レイドだった」


 その言葉に聞き耳を立てていた冒険者達がざわつく。


 「ふん、魔王に敗北してからパーティを組むことを避けてきたって聞いたけど、女の子は別ってことかね?」


 一人の冒険者が軽蔑したような言い方をするが、ハダスは首を振ってそれを否定する。


 「守秘義務があるから詳しい事は言えんが、遊び半分であのパーティにちょっかいはかけない方がいいとだけ言っておくぞ? 手痛い目に合うぞ」


 真面目な顔で冒険者達に告げるギルドマスターを見て、周りに居たものはゴクリと喉を鳴らしていた。


 ギルドに居た冒険者達は三人が出て行った扉を見ながら「世の中わかんねぇもんだな」と誰ともなく呟いた。




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 「スッキリしましたね!」


 「何がだい?」


 「ええっと……多分ギルドに入った時は下に見られていましたけど、ギルドマスターさんに認められたからだと思います……」


 「ああ……」
 何故かレイドさんとフレーレが疲れた顔をしていた。ダンジョンは今からなのにもう疲れてるのかしら?


 「でもこれでダンジョンへ潜れますね。まずは1階からですか?」


 「そうだね、2階までは行ってるみたいだけど俺達はこのダンジョンは初めてだし、まずはマップを作って行こうか」


 「じゃあ私マッピングしますね!」


 「だ、大丈夫?」


 「森とかで方向感覚は養われているから、大丈夫……だと思う」


 「そこはルーナちゃんに任せるよ。とりあえず今日はどういった感じか見るだけだから、食料とかは軽くでいいか……」


 レイドさんが計画をぶつぶつと呟いながら歩いているのを横で聞いていると、どこからか鳴き声が聞こえてくる。


 「────ゅん……」


 「ん? この声どこかで……」
 さらに女性の声が聞こえてくる。


 「やだ、可愛い! スカーフを巻いてるってことは飼われているのかな? おチビちゃんはごこから来たのかな~?」


 「きゅん! きゅん!」


 あ!? もしかして……。


 声のする方へ行ってみると、私を見つけたシルバが突進してくる! ええー、危ないからって着いて来ないように言っておいたのにー。


 「あら、あなたが飼い主さん?」


 「ええ、まあ……」


 「きゅん♪」
 女性は私の足元をぐるぐる回っていたシルバを撫でながら喋っていた。


 「よく懐いてるわねー、ウチはお父さんがアレルギーで飼えないのよね……羨ましいわ……。あ、私はシア。そこのレストラン”サプライズ”で働いているの。気が向いたら、その子をまた撫でさせて! それじゃ!」


 シアさんはセミロングの赤い髪をなびかせながらレストランへと入って行った。帰ってきたらレストランに行ってみようかな?


 そこにフレーレが追いついてくる。


 「どうしたんですかルーナ? あ!? おチビちゃん……どうしてここに……?」


 「うーん……匂いを辿って追いかけてきたみたい。帰らせるわけにもいかないし、連れて行くしかないかな」


 「大丈夫、ですかね?」


 すると、レイドさんもこちらへ歩いて来て私達に話しかける。


 「階層が浅ければ多分大丈夫だよ。よっぽどルーナちゃんのことが好きなんだねえ」


 「きゅん! きゅん!」
 レイドさんに言われ、はしゃぐシルバ。


 「レジナとシロップちゃんは居ないみたいですね。一匹で来たの?」


 「きゅーん!」


 どうやらそうらしい。母と妹を置いてやってきたようだ。


 「はは、ここまでの道を一匹で来るなんてたのもしいじゃないか。それじゃあダンジョンへ行こうか」

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