パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その20 結末

 
 惨劇の夜から一週間が経ち、町も近隣の森も落ち着きを取り戻していた。


 私の髪も徐々に黒くなり、今は首から上は黒でそれ以外は白という半々な状態になっている。


 完全に黒髪になるまで魔法が使えないため、私はおかみさんの所でアルバイトの日々。
 加速できないし、体力も普通だからきついけどお金は稼がないとね!


 そうそう、あの日重傷を負ったアントンとディーザは何とか一命を取り留めた。


 シルキーというリザレクションを使える人が近くに居たおかげで応急処置が間に合い、寺院で治療を受けている最中だ。


 治療が終わればアントンは犯罪奴隷として強制労働施設の鉱山へ行くことが決定。この施設は反省が見られても一五年は出てくることができないので、女好きのアントンには地獄だろう。だが自業自得なので仕方ない。


 勇者の恩恵は無くならないが「どの能力も伸ばす事が可能」なため、きっと鉱山に必要な能力を手に入れるに違いない。


 しかしのちにアントンは「あの時死んでくれていれば」……と思うような事件を再び起こし、私もそれに巻き込まれるのだが、この時の私はそれを知る由もない。


 ディーザは何かと口にしていた実家へ戻ることになった。


 最初、知らせを聞いて駆けつけてきた時「お父様」は憤慨していたが、事の経緯とファロスさんの剣幕に青ざめてすごすごとディーザを連れて帰って行った。いかに権力者であろうと人道的かどうかの判断はできたらしい。


 なお、ディーザの顔は何針も縫うケガで放心状態が続き、感情があまり出なくなってしまったそうだ。もう冒険者としてやっていくことは不可能だとみんなは言う。お金の力で犯罪奴隷にならなかったのは色々揉めたようだ。


 冒険者として活動が不可能になったと言えばフィオナも同様だった。


 あの時は感情をむき出しにして二人を襲ったが、その後は憑き物が落ちたみたいに大人しくなり、ベッドでボーっとしている日々を送っているそうだ。犯罪奴隷になるかどうかは情状酌量の余地があるとして、検討中だとイルズさんから聞いた。






 そして重傷を負ったフレーレは……。












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 「こんにちはー……」


 「いらっしゃい、今日もランチ? 生姜焼きがオススメよ?」


 「また生姜焼きですか!? ルーナは自分が好きだからって生姜焼きを推しすぎですよ!?」








 フレーレもまた、一命を取り留めていた。


 リザレクションの処置が早かったのと、フレーレ自身の自然治癒能力が高かったので、傷は深かったものの治りはあの二人より早かった。


 騒動を起こしたパーティの一人なので、ビショップの資格を剥奪され、今はアコライトとして寺院でまた一から修行中だとか。


 自分たちのしたことをきちんとギルドに報告し、私を庇ってケガをしたり、町が脅威になったときギルドで回復魔法を使い続けたり等の行動が認められ、少し罪が軽くなり、強制労働施設送りや犯罪奴隷にまで落ちることは無かったが降格と罰金はかなり痛い処罰となった。




 「そういえば背中の傷、残るみたいね……」


 「……いいんですよ、アントン達を止められなかった罰ですから。あの時ちゃんと止めていれば、こんなことにはならなかったと思いますしね。ルーナを追い出したりもしましたし……この傷は戒めの為に残しておくべきかなと」


 どんな魔法をかけてもフレーレの傷は消えなかった。恨み傷だとか、呪いだとか言われていたけど真相は結局だれにも分からなかったのだ。


 「そういえばルーナはお昼からギルドへ行かないと行けないんじゃ?」


 「あ!? そうだった! じゃあごゆっくり! おかみさん、ちょっと行ってきますー!」


 「あいよ、慌ただしいねぇ」


 呆れたおかみさんがため息をつき、フレーレが苦笑しているのを見ながら私は山の宴を後にする。






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 「きゅーん♪」
 「きゅんきゅん!」


 「あ、シルバ達どうしたの? 散歩?」


 「わふ」


 赤・青・黄のスカーフを巻いた狼達はそのままこの町に居着いてしまった。


 私の為に隻眼ベアの足止めをしたり、森で助けてくれたという話がどこからか町のみんなに伝わり、誰も追い出そうとしなかった。


 この親子が大人しく、人に危害を加えないのも受け入れられた要因の一つだ。
 最近は森へ出かけ、獲物を持って我が物顔で町を歩いている姿をよく見るらしい。


 子狼達はいわずもがな、マスコットとして可愛がられている。
 みんなが餌を与えるから、最初に会ったころよりかなりふっくらしてきたかな? コロコロしてかわいいけど、ちょっと肥満が心配だ。


 私の近くから離れないため、山の宴の裏庭にマスターが狼達の小屋を建ててくれたりもした。
 勝手に散歩に行くけど、今の所問題になっていない。私が飼っている事になっているせいもあるけど……。


 一応、犬の病気にもかかる可能性があるので注射をしてもらったが、散歩だと思って尻尾を振っていた三匹が注射を受けた後は尻尾が垂れ下がりしばらく私のところへ来なかったのは寂しかったなあ……。






 「私はギルドに行くけど、一緒に行く?」


 「きゅん!」


 「わふ!」


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 「こんにちわ! 遅くなりました!!」


 「ああ、大丈夫だよ。そこまで重要な話って訳でも無いしな」


 新聞をたたみながら私へ向き直ると、受付から出てきた。


 「それじゃギルドマスターを呼ぶかな。あとレイドが来るはずだけど……ちょっとそっちのテーブルで待っててくれるかい?」


 奥の執務室へ行ってしまったので、私はシルバ達と遊びながら人が揃うのを待つ。


 しばらく遊んでいるとレイドさんがやってきた。


 「久しぶりだね。まだ髪は完全じゃないんだね」




 隻眼ベアを倒した次の日、レイドさんは蒼剣:”ディストラクション”を妹さんのお墓へ戻してきたそうだ。亡骸はないけどお墓は作ったそうだ。


 後から聞いた話だと、レイドさんのパーティは全滅したものの、それまでの攻撃とセイラさんの捨て身で使ったデッドエンドで魔王もかなり弱っていたらしい。


 レイドさんが傷を回復している間に、勇者の恩恵を持った別のパーティが魔王をあっさり倒した。


 けれどその勇者は「あなた達のパーティが先に来てくれていたおかげで倒せたんだ」と、場に残されていた剣を回収してレイドさんの元へ持ってきてくれたそうだ。その勇者パーティは「自分たちはたまたま倒せただけだ」といい残し、王都での歓迎会や褒美を拒否してまたいずこかへ去ってしまったのだという。


 「そういえばレイドさんはどうして私を気にかけるんですか?」


 「ああ、その……ルーナちゃんは妹に似てるんだよ。髪の色とか顔つき何かは違うんだけど、雰囲気とか笑い方とかね。セイラが生きているようなそんな気になるんだよ……ルーナちゃんみたいに無茶をする子だったしね」


 ははは、と笑いながら懐かしそうに目を細める。そんなに無茶するかな、私?


 「今回、ルーナちゃんを助ける事が出来て本当に良かった。魔王との戦いでは何もできなかったからね……あ、そうだ。ルーナちゃんが最後に使った補助魔法って≪デッド・エンド≫かい?」


 「え? ええ、そうですね。妹さんも使ったんですよね?」


 「うん……俺は魔王戦以外では、黒煌竜と戦った時にセイラが一度だけ使ったのを見たことがあるんだけど、セイラは気になってさ。身体能力が上がるのと魔力を全部使うというのは一緒みたいだけど……」


 ドクンと私の心臓が跳ね上がる。


 「ま、まあ使える人がそもそも居ないですから、研究の余地がある魔法なんじゃないですかね?」
 レイドさんの言葉は気になったが今の所私以外に使える人が居ないのでそれを確かめる術がない。前に使った時も同じだったし……。








 『本当に?』










 「え?」


 「ん? どうかしたかい?」


 「い、いえ。今、本当にって言いませんでしたか?」


 「いや、言ってないけど……?」


 何だったんだろう? 空耳、かな……?


 怖くなったので、話題を変えることにする。


 「今回の件、私の補助魔法でアントン達が増長してあんなことになっちゃって、ちょっとショックなんですよね。使うと増長されたりするけど、使わないと何もできないお荷物……パーティに向いていないのかなって……」


 「おいおい、そりゃ考えすぎだな。補助魔法は強敵相手には必要なもんなんだぞ。あいつらは自分の力と勘違いして自滅したけど、そんなやつばかりじゃない。あの夜、冒険者達にかけて回った時を思い出せ」


 あの日……


 「(おお、すげぇ!? なんだこれ、補助魔法ってこんなにすげぇのか!)」


 「(ルーナちゃんの補助魔法は一級品だな……これならパイロンヒドラ相手でもいける!)」


 「(血がこんなに早く止まるなんて!? あなたの魔法のおかげ? すごいわね!?)」


 そうだ……私がかけた魔法を褒めてくれていたよね。




 「そう、ですね! ちゃんと私を見てくれる人も居ますよね!」


 「ああ。それにほら親父さんのためにお金、稼がないといけないんだろ? だったらパーティに入って稼がないとな?」


 「……はい!」




 「そういえば、南の方にある大都市で未開のダンジョンが見つかったって───────────────」
















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 ”───────────────ということがありました! もうちょっとで死ぬかと思いましたが、何とか生きてます!
 補助魔法なんて地味だなと思っていた時期もあったけど、頑張って冒険者を続けてお金を稼ぐから、パパも病気をちゃんと治してくださいね!
 後、今回は隻眼のデッドリーベアを倒したからということでギルドマスターからいっぱいお金をもらいました。だからいつもより多めに送ります。もう少し稼いだら一度家へ帰ると思うから待っててください!


 ……それにしてもパーティを追い出されたのに、逆にお金を稼ぐことになるとは思いませんでした……。


 今回はパーティを追い出されましたがむしろ好都合でした! 


 なんちゃって♪ それじゃあまたねパパ! 
                                      ルーナからパパへ”


 




 「これでよし、と! さあ今日も一日がんばりますか!!」


















































































                       ……?
























 『……なるほどなるほど、ボクがちょっと寝ている間に色々と変わったみたいだねえ? たった100年だけど、割と変わるもんだね。それにしても……ププ……【女神の抱擁】だなんて大層な名前つけてくれちゃってさ!! ボクが恩恵システムの中に仕込んだイレギュラーがまさかこんなことになってるなんてお笑いじゃないか? そもそもあれはワンオフの魔法だから「他に使える人が居ない」のは当然なんだけどねえ? 使い手が死んだら別の人間に移るように設定しているからね……』


 ガチャリ……


 『……そろそろ勇者と魔王を争わせるのも潮時かな? あれも最初は面白いと思ったんだけどなあ。とりあえず新しい遊びを考えなくちゃ……。女神はボクの手の内だし、世界が壊れるまで遊ばせてもらうよ…………』


 キィ……




 『あれ!? 水晶に封じていた女神が……いなくなっている!? 寝ていたとしてもボクが気づかないはずが……いや、そ、それより早く女神を回収しないと……いったいどうやって逃げることができたんだ……?』


























                                     to be continued……?

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