パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その16 反撃

 「西の門が見えた!」


 私はギルドを飛び出し、真っ直ぐ西の門を目指す。
 イルズさんにはギルドに居るよう言われたが、隻眼ベアが私を狙っているなら一カ所に留まるのは良くないと思ったからだ。


 万が一、防衛網を抜けたあのベアがギルドへ押し入ってきた場合、回復魔法がメインの冒険者と、負傷者では太刀打ちが出来ない。その辺りを考えても戦闘に参加した方が有利になるはずと考えたのだ。


 「……まあ、怒られるだろうけど……」
 怒りのイルズさんの顔を思い浮かべてブルっと体が震える。


 最悪、私がやられている間に後ろからバッサリやってもらう事もできるため、は結構あると思うんだよね……怖いけど……。


 メインの門は閉じているが、横にある緊急避難用として設置された小さい勝手口のような扉を抜けると、荒ぶる“クレイジーフォックス”と冒険者パーティが押し返している所に出くわす。


 「くううう! 俺達じゃキツイか!?」


 「リーダー!?」


 剣を噛みつかれ、押し合いになっているリーダーと呼ばれた人へ私は補助魔法をかける。
 魔力はまだある! 今は出し惜しみなしだ!


 「≪パワフル・オブ・ベヒモス≫! ≪ドラゴニックアーマー≫! ≪フェンリルアクセラレート≫!」


 「お? おお!?」


 押し合いになっていたリーダーと呼ばれた冒険者の剣がフォックスの顔を切断する。
 悲鳴を上げながら暴れだし、そのまま剣を振り抜かれ上顎と下顎はお別れをする羽目になった。


 キュオオオオオン!?


 倒れたフォックスの脳天へ剣を突き刺し、絶命を確認した冒険者が一息をついた。


 「ありがとう、助かったよ。しかし、凄い魔法だな……」


 「一応、上級魔法をかけましたので、一時間は持続します! 他の人にもかけないといけないのでリーダーさんだけですけど……」


 「いや、十分だよ。まったく歯が立たなかったクレイジーフォックスを相手にしてこんな簡単に勝てるなら、俺を軸にして戦略を立てるさ。君も気を付けて!」


 もう一度ありがとうと言い、次の標的と戦うため体勢を立て直していた。この西の門を防衛しているらしい。


 私は次のパーティを探す為、再び走りだす。


 「冒険者の数に対して、魔物の数が多いのね……。抜けてきている魔物が強力だわ」


 クレイジーフォックスも北の森で見かける魔物である。デッドリーベアとは対称的に、素早さを活かした多角的な攻撃をしてくる厄介な相手だ。素早いだけに町まで冒険者を抜いてここまできたのだろう。


 急がないと町に侵入する魔物も出てくるかも!


 「次はあそこね!」


 自分にも上級補助をかけて、戦場の中へと入っていく。




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 「くそ! ここから出しやがれ!!」




 「外が騒がしいわね、一体何があったのかしら? 教えなさい」




 「静かにしろ! ……森の魔物が一斉に町へ襲いかかってきたらしい。今、ギルドに残っている全員で迎撃に出ているところだ。お前等が中途半端に攻撃したデッドリーベアが関わっている可能性があるらしいぞ」


 「ふん、そんなことか……せいぜい頑張ってくれよ? 俺はまだ死にたくないからな」


 「早く終わらせて欲しいわね、ここから出たらお父様へあんたたちが私達にしたことを絞ってもらうんだから」


 アントンが壁を背に座り込みながら悪態をつく。
 ディーザが寄り添うように、その横へ一緒に座っていた。


 それを聞いた見張りの冒険者が、二人へ怒鳴りつける


 「貴様等がデッドリーベアを傷つけたりしなければこんなことにはならなかったんだ! 正直俺はお前等を餌にしてやりたいとさえ思っている! しかしギルドマスターの顔に泥を塗る訳にはいかないからな。この騒ぎが終わったら、警護団へ引き渡し公平に捌いてもらう! 覚悟しておけ!」


 そういうと、また無言で牢屋の前で待機する。


 「(そうなるとチャンスはあるか)」


 アントン達は急ぎ牢屋へ入れられたため、魔法を封じる処置などを施された牢ではない場所へ入れられていた。
 そのためディーザの魔法があれば脱出は可能だったのだ。 


 見張りは高レベル冒険者なので、丸腰のアントンではまず勝てない。
 ディーザの魔法はあるが、牢屋の中では使う前に制圧されるだろう。
 見張りさえいなければ……と、そのチャンスを狙っていたのだ。


 「(お父様へ連絡さえ取れれば逃げ切ることができるのに……)」


 「(まだ時間はある。隙ができれば……頼むぞ?)」


 「(ええ、任せて頂戴)」


 懲りない二人が保身のためだけに虎視眈々と逃げる計画を立てていた。


 しかしここが人生の明暗を分ける最後のチャンスだった。


 そのことを二人が知るのはもう少し先の話。






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 「これで!」


 「ありがとうルーナちゃん!! 魔物の勢いもかなり減って来たし、これなら大丈夫だよ!」


 ルーナが各パーティが居るところを周り、恐らく今の女性冒険者のパーティで全パーティのリーダーへ上級補助をかけることができていた。


 ちなみに西の門の防衛にはレイドさんが居て、心配だからと着いて来てくれたので魔物からは攻撃を受けることが無かった。代わりにめちゃくちゃ怒られたけど……。


 「よし、じゃあルーナちゃんは町の中へ戻るんだ。まだ隻眼ベアは姿を見せていないからな」


 レイドさんが私の手を引っ張りながら、西の門へ戻る。


 「わわ……!? だ、大丈夫ですよ! レイドさんも居ますし!」


 「まったく君は……」
 レイドさんが私へ説教をしようと口を開いた時、さっきは見かけなかったパーティの一団が姿を現す。


 「おお!? レイドさんか!? 女の子と手を繋いで歩いてるたぁ珍しいもんを見たぜ」


 「お前、クラウスか! 戻っていたんだな」


 「カッ、ギルドマスター自ら招集をかけるたぁただごとじゃねぇからな。急いで戻ったぜ。で、そっちの子は? レイドさんのパーティの子か?


 私を見てクラウスと呼ばれた黒衣の剣士がレイドさんに尋ねる。


 「あ、私ルーナって言います! 今、レイドさんに助けられて町へ戻る所なんです」


 「ルーナ……? お前さんがイルズの言っていた隻眼ベアに狙われているって子か! なるほど可愛いじゃねぇか、熊野郎も襲いたくなるか!」


 か、可愛いって……緊張感が無い人だなあ。


 「茶化すな。お前たちはどこから来たんだ?」


 「門の右からぐるっと回ってきたな、大型の魔物はあらかた片づけたから向こうはほぼ制圧できたな。例の隻眼ベアはみてねぇがな」


 じゃあな、と言い残しクラウスさんは別の場所へ移動を始めた。
 念のため補助魔法をかけたら「こりゃすげぇ、終わったらデートしてくれ!」と言っていたのは聞こえなかったことにした。




 それにしてもまだ出てきていないんだ……。他の魔物を倒しても、あの隻眼ベアを倒さないとこの悪夢は終わらない気がする。
 それでも魔物の数は減ってきたみたいだし、とりあえずは良かったの、かな?


 「やっぱり私、町に居ない方が……」


 「なら俺も一緒に戻るよ。町の被害を出さないようにしたかったんだろ? でもルーナちゃんが犠牲になることはないんだ。いざとなればこの剣を使う……」


 私達が町へ戻るため緊急扉を潜ろうとしたその時、それは起こった。




 
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 ルーナがギルドを飛び出す少し前。


 町をある程度見渡せる高台から隻眼ベアが様子を見ていた。


 匂いが町の中へと続いていることを確認した隻眼ベアは、人間の少ない場所を自然と探していた。


 あの人間が出たり入ったりしている所は目立ちすぎる。あそこへ行けばきっと囲まれて殺されてしまうだろうと思い、別の場所が無いか町をじっくり見ているのだ。


 幸い自分が追い回した魔物が思いのほか多く、人間も手を焼いているようだとも考えていた。


 人間が集まっているので餌を見つけた場合、その場で食べず咥えて逃げるつもりだった。
 せっかく美味しい獲物を手に入れて殺されてはたまらないからである。




 しばらくウロウロしていたが、隙が無く町へ近づけない。


 そんな時、隻眼ベアの目がルーナの姿を捉える。


 グルゥゥゥゥ……。


 隻眼ベアは歓喜した。向こうから出てきてくれるとは、と。


 しかしまだ早い……人間が少なくなった時を狙わなければならない……。






 我慢を重ねた隻眼ベアはついにそのチャンスを掴む。


 餌の人間と、もう一人しか居ないという状況に出くわす。


 今しかない。隻眼ベアは全力で走り始める。

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