パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その15 強襲

「西の門だ! 急げ!」


「おい、起きろ! 緊急事態だ!」


「装備が整ったヤツから遊撃だ! 俺達のパーティは先に行くぞ!」


 ギルドが騒然となり、次々と冒険者達が出て行く。


 北の森の高レベルの魔物から、近隣の森、深淵の森とそれぞれの魔物がこの町へ向かっているらしい。


 なので、自分達に合った魔物と戦うつもりだと、全員が戦いに赴いた。


 「私達も行かないと!」


 補助魔法が使えるので、援護をしようと立ち上がるがイルズさんに引き止められる。


 「ルーナちゃんはダメだ。隻眼ベアに狙われている可能性を考えると自殺行為に等しい。すまないがここで待っていてくれ」


 「じゃ、じゃあわたしが……」


 「フレーレもダメだ。そもそも一人で戦えるレベルじゃない。負傷者は必ず出るだろうから、ここで回復を優先してくれないか」


 役に立てない自分を恨めしく思いながら、私とフレーレは大人しく待つことにする。


 「そういえばフィオナは? あの子のとこに行く可能性もあるんじゃない?」


 「大丈夫だ、寺院で安静にしてもらっている。あそこなら結界があるから、匂いも遮断できるはずだ」


 「ルーナもそこに居たらどうですか?」
 フレーレが提案してくれるが、私は首を振る。


 「皆が戦ってるのに、私だけ逃げられないよ。もしかしたら逆に囮になれるかもしれないしね? あ、マジックアップで回復の効果あげておきますね!」


 周りに待機している戦闘向きでない僧侶さんやビショップさんにマジックアップをかけておく。
 無いよりはきっとマシのはずだ。


 「今戻ったぞ! 一体どうしたんだこの騒ぎは!」


 ドアを蹴破るようにレイドさんがギルドへ入って来た。そういえば姿が見えないと思ったけど……。


 「レイドか! いいところに戻ってきてくれた! 森の魔物が町へ向かって来ている、それで迎撃をしているところだ」


 「森の魔物が……予想とは少し違うが、結果的には一緒になったか。分かった、なら俺も行ってくるとしよう」


 「例の物は?」


 「……持って帰ってきた。出来れば使いたくはないが……」


 「そう言わないでくれ。悪いが期待させてもらうぞ「勇者」よ」


 「…………」


 なんだか難しいやりとりをしていたと思ったけど、イルズさんがレイドさんの事を「勇者」と呼んだ後、レイドさんは無言で私の頭を撫でてギルドを立ち去った。


 「ふう、これでやる気を出してくれればいいんだけどな……俺も準備するか……リーブルとレイド、俺にマスターが居れば北の森の魔物は何とかなるか……?」


 イルズさんがぶつぶつと何かを言いながら、クレイモアを担ぎ上げる。普段インテリっぽい受付なのにこのギャップはすごい。


 「それじゃ行ってくる」と言い残し、レイドさんの後を追った。


 みんな無事で帰ってきてね……。




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 「はあ!!」


 ずぶりとマンティスブレイドの頭に槍の一撃が刺さり絶命する。
 ファロスが先陣を切って北の森の魔物を引き受けていたのだ。


 「これじゃスタンピードと変わらんな、数が多すぎるか!?」


 「マスター! 後ろ!」


 レイドが声をかけながら迫っていた魔物の首を斬りおとす。


 「レイドじゃないか、戻ってきたんだな」


 「ええ、まさかこんなことになっているとは思いませんでしたが……」


 「タイミングは完璧だ。魔物の群れが町へ向かっているが、恐らく本命は例の隻眼ベアだ。ルーナちゃんが狙われているみたいだから警戒しろ。僕はまだそいつを見ていない」


 ファロスの予想は当たっており、隻眼ベアがパイロンスネークを倒した後、深淵の森付近の魔物を襲いだしたのだ。
 その結果、強襲された魔物たちは一種の恐慌状態に陥り、戦わずして追い立てられていた。


 もちろん中には隻眼ベアより強い個体も少なからず居るが、そういった魔物は不意打ちで隻眼ベアが真っ先に狙い撃ちするという狡猾さを見せ、魔物たちは撤退を余儀なくされていた。




 「もしこれが隻眼ベアの思い通りだとしたら奴さんかなり賢いな! キリがないけどやるしかない。これから僕は門から右側へ行く。レイドは西の門付近を頼む」


 「分かりました。気を付けて……とは言いませんよ、あなたがこの程度の魔物に負けるとは思えませんし」
 別の魔物を斬りながらファロスに言い放つ。


 「ははは、言うじゃないか。少しは調子が戻ってきたか? 妹に似てるルーナちゃんのためか? ま、それはいいか……ではまた会おう」
 ファロスは近場のエルダーフロッグをバラバラにしながら走って行った。
 やれやれ、もう50歳に近いというのに若い時のままとは恐ろしいとレイドは考えていた。
 それとまさか、妹の事をここで言われるとは、とも。


 レイドは気を取り直して、西の門防衛へ移る。










 一方そのころ西の門から左方面の防衛はイルズと、若い冒険者が北の森に住む魔物“フォレストセンチピード”という大ムカデと戦っていた。


 「尻尾の毒は警戒しろ! 顎の力も強いから、捕まったらアウトだぞ! 半分にぶった斬っても動くから動かなくなるまで絶対に油断するな」


 イルズの指示で冒険者たちは固い部分を避けて関節や足を狙うが、中々絶命しない。
 体を半分に切られても逃げることができるムカデの生命力は侮れない。そこに乱入する影があった。




 「カッカッカ!! 面白ぇ祭りが始まってるじゃねぇか! 俺も混ぜろよ!」


 突然現れた黒衣の男がフォレストセンチピードを縦に真っ二つにする。
今まで苦戦していたのが嘘のようにあっさりとと、黄色い液体を吐き出しながら息絶えた。


 「クラウスか! 早かったな、よく戻ってきてくれた!」


 「おう、“ブラックブレード”一同、ただいま参上ってやつだ!」


 クラウスと呼ばれた男の後ろに回復魔法と攻撃魔法、そしてシーフの恩恵を受けたメンバーが立ち並んでいた。


 「助かる。北の森から魔物が来ているのは知っているな? それが町へ向かってきている。素材は残念だが、殲滅戦で頼む」


 「OKだ、ちっとばっか数が多いが、何とかなるだろ」


 クラウスは言葉使いが少しばかり乱暴だが、信頼できる。それこそパーティメンバーが病に倒れた時、 ドラゴンの爪でしか治せないことを聞いてたった一人で討伐に向かったくらいである。そのあとファロスにしこたま怒られていたのだが。


 「この中に隻眼のデッドリーベアが居たら優先して倒してくれ。ルーナという女の子が狙われている」


 「ほう、その子は可愛いのかい?」
 おどけた感じでイルズに問うと、少し迷って答える。


 「……そうだな、好みはあると思うが、一般的にはそうなんじゃないか?」


 「カッ! それは森の熊さんも追いかけたくなるかあ! 任せろ、見つけたら確実に始末してやる」
 それじゃ行くぞみんな、とクラウスの号令で魔物の群れへ突撃していく。


 こっちには手練れのリーブルと、元とは言え勇者の恩恵があるレイドも居る、これで何とかなりそうだとイルズは思っていた。


 懸念は一つ。隻眼ベアの姿がどこにも見えないということが気がかりだった。


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 「怪我人が増えて来たわね……」


 「きゅーん……」


 ギルドで待機しているが、レベルの低い冒険者の帰還率が目立ってきたように思う。


 「あいたたた!? もうちょっと優しくしてくれよ」


 「大したケガじゃないわよ! ほら次の人!」


 「つ、次の人どうぞ……!」


 回復ができるということでとりあえずフレーレも治癒部隊に参加していた。
 でもこのままじゃ、いつか犠牲者がでてもおかしくない……。


 「やっぱり私、行ってくるわ」


 「ええ!? 隻眼ベアが出てきたら危ないですよ!」


 「それはあるけど……私が狙われているし、みんなに補助魔法をかけてあげれば事態も収束しやすいんじゃないかと思って。それにケガをしている人をこれ以上増えるのも見たくないしね! じゃあチビちゃん達を頼むわね!」




 「あ! ルーナ!」


 ギルドを飛び出し私は西の門へ向かって走り出した。

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