パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その13 断罪

 アントンとディーザがそそくさとギルドを後にしようとしたその時、入り口の扉が力強く開け放たれた。
 ボロボロのローブをまとったフレーレである。


 実を言うとフレーレはギルドにアントン達が居ることに気付いていた。
 彼らがどういった話をするのか聞き耳を立てていたのだ。ルーナの事は心配だったが、この二人を逃がさないのもフレーレにとっては重要だったからだ。


 結果は散々なもので、自分たちは勇敢に戦った、フィオナとフレーレは残念ながら助けられなかったという吐き気がするほどの嘘だった。


 そこまでアントンに言わせてから、フレーレはギルドへ乗り込む。これで、アントン達は逃げられない。わたしも共犯だが後悔は無いと覚悟を決めていた。


 「フ、フレーレか! 生きていたんだな! 無事とはいかないだろうが良かったな……」
 イルズが本当に良かったと安堵の表情でフレーレを出迎えてくれた。


 「はい、ありがとうございます。フィオナも大怪我をしていますが生きています」


 その言葉を聞いた、アントンとディーザの顔がさっと青ざめる。
 逆にイルズはフィオナも無事だったことを喜んでいた。


 「本当か!? デッドリーベアに襲われて命があっただけでも良かったと思おう。しかしどうやって逃げ出したんだ?」


 「その前に……わたしは、わたし達のパーティは皆さんに謝らないといけません……」


 「お、おい!? やめろフレーレ!」
 アントンが必死に叫ぶが、フレーレは止まらない。


 「あの隻眼ベアは……以前、北の森でわたし達が傷つけた個体なんです……あの時は何とか片目と口を攻撃して逃げることができました」


 「な、何だと……!? お前達、俺があれほど言ったのに倒しに行ったのか! それで倒せずに逃げてきたと!」


 イルズは激怒しアントン達を睨みつけ、やがてハッと気付く。


 「……! もしかしてその時、誰かが餌とみなされたんじゃ……」


 「多分ですけど……フィオナだと思います……。さっきも執拗に狙われていましたし……。そして、そこにいる二人はフィオナが狙われている間に逃げ出したんです。まだ生きているにも関わらず!!」


 ギルド内に「なんてこった」「タチが悪いぜ……」といった声でざわめきはじめる。
 その声をかき消すように、アントンが怒鳴り散らし始めた。


 「くそ……くそくそ! 何で生きてるんだ!? フィオナもだと? あいつは腕も折れてロクに戦えなかったはずだ!? で、俺達が逃げただと? それを言うならお前は真っ先に逃げただろうが!!!!」


 「そうよ! 自分だけいい子ぶろうったってそうはいかないわ! イルズさん、こんなことを言っていますがこの子は一番最初に逃げたんですよ?」


 「わ、わたしは助けを呼びに……」


 「ふん、どうだか……」


 そのやり取りを聞いていたイルズがまたも激高する。


 「いいかげんにせんか貴様等! フレーレよ、お前がここに帰れた経緯を聞かせろ。それで判断してやる。嘘はすぐ分かるからな? そのつもりで話せ」


 いつもの調子ではなく、冒険者時代の口調で三人を黙らせてからフレーレに事の経緯を問う。
 その迫力に怯えながらも、フレーレは意を決して語り出す。


 「あの時わたしは助けを呼びに行き、そこでルーナに会いました。ルーナは迷いなくわたしと一緒に現場に戻り、フィオナを助けてくれました。その時、フィオナからアントン達が逃げたと聞かされたんです」


 「チッ……」


 「なるほどな……ルーナちゃんの補助魔法ならいけるか……ならルーナちゃんはどうした? それにフィオナが狙われているなら町に隻眼ベアが迫っているんじゃないのか!?」


 「そ、そうでした! 先にルーナの事を言わないといけなかったんですよ!? ルーナはわたし達の代わりに隻眼ベアを森の奥へ引っ張るため囮になったんです! は、早く助けに行かないと!!!」


 「何だと!? それを先に言わんか!! それはどれくらい前の話なんだ!?」


 「もう一時間は経ってます! ああ、どうしよう……わたしのせいで……」


 「ええい、時間が惜しい! アントンとディーザは後で尋問するから縛り上げて牢に入れておけ! 絶対に逃がすんじゃないぞ? 手負いのデッドリーベアを相手にできるのは……」


 イルズが焦りながらも指示を飛ばす。アントンとディーザは近くに居た冒険者と職員に武装を剥がされ、鎖で両手を縛り上げられていた。


 「俺は勇者だぞ! こんなことをしてタダで済むと思うな!?」


 「離しなさい! 汚い手で触らないで頂戴!」


 なおも暴れる二人だったが、すぐに地下牢へと旅立って行った。


 「うるさい馬鹿どもが……。奴等の処遇は後回しだ。だが、死んだ方がマシだったと思えるくらいの処罰は覚悟してもらわないとな。もちろんフレーレ、君もな」


 「はい……」


 「よし、時間が惜しい。フレーレはどのあたりでルーナちゃんと別れたか教えてくれ。流石に今のメンバーで、手負いのベアと戦える人間は少ないし、町も心配だ。だから俺がルーナちゃんを助けに行く……」


 「その役目は僕に任せてくれないかい?」


 「ギ、ギルドマスター……!?」


 執務室から完全武装のファロスが現れた。












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「(やられる! ……パパ、ごめんなさい……)」


 私は隻眼ベアの攻撃を見て目を瞑った。このまま頭をザクロのようにされて死んでしまうのだと。
 ディフェンスアップは使っているものの、重い一撃に耐えられるとは思えない。




 「(?)」


 しかしその腕が振り降ろされることは無かった。目を開けてみると……。




 ガルルルルルル!!!!!!


 グオォォォォォン!?


 なんとあの母狼が隻眼ベアの鼻骨あたりに食らいついていたのだ!


 「きゅーん!」
 「きゅん!!」


 いつの間に近づいてきたのか、チビちゃん達が私の袖を咥えて引っ張ろうとしている。
 でも隻眼ベアが怖いのだろう、尻尾は垂れ下がっていて少し震えていた。
 もうこの子達ったら……。


 私は急いで立ち上がり、チビちゃん達を抱きかかえる。


 カバンから私のを取り出し、隻眼ベアへ向き直った。
 よく見るとパイロンスネークも速度を上げてきた!? 急がないと!!


 ピューイ!!


 私が口笛を吹くと、母狼がこちらをチラっと見て隻眼ベアを蹴りながら離脱するのが見えた。


 「今だ!!」


 私が投げたボール状の塊が隻眼ベアの顔で爆発する。


 グオオオオオオオ!!!


 辺りに赤い粉末が飛び散る。みたか必殺トウガラシ爆弾!
 目が痛いのは勿論、トウガラシには嗅覚を麻痺させる効果があるので、すぐには追ってこられないハズだ!


 「逃げるわよ! 痛っ!?」


 めちゃくちゃに暴れまわっているベアの爪が私の頬をかすめていく。顔に爪痕が出来、血が滲む。幸い深手じゃない。


 「きゅーん……」
 ペロペロと傷を舐めてくれるチビちゃん。


 「大丈夫、行くわよ!」


 母狼と私は一気にその場を離れた。




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 痛い!?


 トウガラシ爆弾を食らった隻眼ベアは目と鼻がやられていた。


 また、人間の匂いがしなくなり焦る隻眼ベア。


 闇雲に振った腕が、ルーナの顔へヒットしたが手ごたえが無かったので逃げられたと直感が告げていた。
 仕方なく爪の先についたルーナの血を舐めた隻眼ベアの動きが止まる。




 なんだこれは、この血のうまさはなんだ! と、歓喜に震える。


 最初に齧った人間も美味かったが、先程の人間はたったこれだけの血でこれほど美味しいとは!
 では肉はどれほど美味いのだろう? 隻眼ベアは涎がこぼれるのを抑えきれなかった。
 早く追わないと、あの獲物は俺のものだと。


 そこで背中に衝撃を感じる。


 一部始終を見ていたパイロンスネークが隻眼ベアに攻撃を仕掛けたのだ。


 基本的に魔物は自分の縄張りに入った別の魔物を許さない。
 倒すか倒されるまでやりあうのだ。


 パイロンスネークの毒の牙が背中を攻撃するが、固い毛皮に阻まれて突き立てる事が出来ない。


 シャァァァァァァ!!


 吠えるパイロンスネークに対し隻眼ベアも叫ぶ。


 グオォォォォォッォ!!


 邪魔をするなと赤い瞳が光る。あの人間のステーキと血のジュースを手に入れるため、隻眼ベアはまず目の前の敵を排除することに決めた。

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