パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その4 次の日の事

契約破棄を報告した私は、”山の宴”に戻りランチの手伝いをしていた。
昨日の今日で冒険者稼業をやる気にはならなかったからである。しかし、おかみさんのところに厄介になった今は宿代がかからないため、一日二日冒険者稼業をやらなくても心配がないくらいの蓄えはある!貯金LOVE!


 さて、この山の宴。
 夜は酒場、昼は定食屋として機能しており、稼ぎの少ない冒険者でも満足できる人気のお店なのだ!


 人気過ぎてピーク時は配膳が回らないので、そんな時は補助魔法の≪ムーブアシスト≫を使い、自身の速度を上げて対応していたりする。おかみさんにかけた時は壁にぶつかってめちゃくちゃ叱られたけど……。


 そしてついたあだ名が「高速のウェイトレス」うん……嬉しくないんですけど!?


 本業は冒険者ですからね! ウェイトレスじゃありませんよ!




 ん、こほん・・・取り乱しました。


 そんなこんなでピークも終わり、空いたテーブルを拭いているといつも夜に来る常連さんが入って来た。


「こんにちわレイドさん! いつもの席空いてますよ!」


「ん、ルーナちゃんか。いつも元気だね、それじゃお邪魔するよ」
 少しくすんだ金髪に、無精ひげを生やしたこの人はソロで活動する冒険者さんレイドさん。
 夜にビールとからあげを食べて行くんですよね。


「珍しいですね、お昼に来るのは初めて見たかも」


「ああ、ちょっと徹夜で魔物退治をしていてね。さっき戻って来た所なんだよ。ビールとからあげもらえるかな?」
 いつものセットを注文されたので、旦那さんへオーダーを通しているとおかみさんから声がかかる。


「お客さんが減ってきたから今のうちルーナちゃんもお昼にしな。何でも好きなのを食べていいからね」


「ありがとうございます! それじゃあ生姜焼き定食を! レイドさんにビールとからあげ持っていきますね」




「お待ちどう様でした! ビールとからあげになりますー! 私もお昼休憩になったんですけど、隣いいですか?」


「はは、俺みたいなおっさんの横でいいのかい? 面白くないと思うけど。ほら、ルーナちゃんのパーティの勇者とかの方がいいんじゃないかい? デッドリーベアを倒したらしいじゃないか?」


「おっさんって……レイドさん30歳じゃなかったでしたっけ? というか私あのパーティとは契約破棄したのでもう何も関係ありません! それにデッドリーベアも本当は戦いたく無かったんですよ? 案の定すごく疲れたし。もうあのエロ勇者の話なんてしたくないですよう」


 思わぬところから蒸し返され、語気が強くなってしまったがレイドさんに「はは、すまなかったね」とやんわり宥められてしまった。大人だなあ。


「まあ、何があったかは知らないけどパーティは合う合わないがあるからね。ルーナちゃんにはまたいい所がみつかるさ、焦ることは無いよ……やっぱここのからあげは美味いな。もも肉だよなからあげは。胸肉のからあげはダメなんだよ……」


 からあげに舌鼓をうつレイドさんを見ていると、私の生姜焼き定食が到着した。
 うーん、この刻み生姜に少量のにんにくが食欲をそそるわ……モグモグと生姜焼きを食べながら、レイドさんに気になっていたことを聞いてみる。


「レイドさんって何でソロなんですか?」
 するとビールを飲むのを止めて、何やら難しい顔になってしまった。
 あれ? 悪い事聞いちゃったかな……まさか、ボッチ……


「いや、まあ、なんだ。俺みたいなおっさんとパーティを組んでくれるヤツなんて居ないんだよ。ほら、俺より強いヤツなんていっぱいいるしさ……それより、ルーナちゃんは何でこの町に来たんだい? 女の子の冒険者は珍しくないけど、親とか反対しなかったのかい?」


 強引に話を変えられたが、何か言いたくない事情があるのかもしれない。
 ここはレイドさんの話に乗っておくのがいいかな。


「ええっとですね、パパ……お父さんが病気で……」


「そうか……容体は大丈夫なのかい?」


「あ、はい。ヘルニアなので命に関わるとかそういったのではないので……」
ずっこけるレイドさんだが、無理もないと思う。言った私も恥ずかしい。


「パ……お父さんは木こりと狩人をしてお金を稼いでいました。私は補助魔法を使えるので、朝魔法をかけて送り出すんですけど、ある朝私が寝坊した時に、補助魔法がかかっていないのに無理をしたらしくて、コキャっと……」


「コキャっと……」


「ええ、コキャっと腰をやっちゃったんです」


「失礼だけどお母さんは?」


「お母さんは私が小さい時に……」


「そうか……」


「浮気して蒸発したんです」
レイドさんはまたずっこける。すいませんホント……。


「そ、そうなんだ、何か悪い事聞いちゃったかな」


「い、いえこちらこそすいません……で、でもやっぱりレイドさんがソロは勿体ないですよ! パーティならほら、私が組みますよー! な、なんちゃって……」
気恥ずかしくなったので話題を変えようとしたが、チョイスをミスった。それに気づいた時にはもう遅く、レイドさんは少し困った顔をした後、喋らなくなってしまった。


私も喋るタイミングを逃し、もくもくと生姜焼きを食べていると、ビールとから揚げを平らげたレイドさんが店を出て行ってしまった。気を使ってくれたのか席を立った時に「またね」と言ってくれたけど……。


「……気にするな、ルーナのせいじゃない……。あいつは「元」勇者だったんだが、魔王討伐に失敗してな。その時パーティメンバーが全員死亡。それからあんなになっちまったらしい」


「レイドさん勇者、だったんですね……」




 私達は五歳になると、王都で<恩恵>の確認をする義務がある。
<恩恵>は誰でも授かるものだが、もらう恩恵は人によって違い、私は補助魔法の恩恵をもらった。


 そもそも、補助魔法や回復魔法、攻撃魔法は勉強すれば誰でも使えるんだけど、恩恵を受けた場合はその能力を十全に使えるようになり、効果が数十倍に跳ね上がるため、みんなその長所を伸ばす事になる。


 私の補助魔法も恩恵のおかげで、力を上げる≪スレングスアップ≫や≪ムーブアシスト≫など、普通の人が使うよりも格段に性能が高い。だからこそ、低レベルのアントン達のパーティでもデッドリーベアが倒せたりしたのだ。
正直あの四人がそれほど強くなかったから結構苦労した……。ずっと並列で使い続けるのは消耗が激しいんだもん……。事前に実力を知っていたらパーティに入らなかったんだけどなあ。勇者だってことで舞い上がってた、反省。


で、<恩恵>の中に「勇者」があり、これを授かると経験の蓄積が普通の人よりも高くなる。
簡単に言うと「何をやってもスペシャリストになれる」というある意味、夢のような能力と言えば早いか。


商人のようにお金を稼ぐことも出来るし、魔法も攻撃魔法の恩恵を受けた人と同じくらい強力なものを放つこともできるらしい。ただし、各恩恵を受けた人よりはスペシャリストになるまでは時間がかかる。


しかし、この勇者。一つだけ、それも究極の欠点があり、それが「魔王討伐の義務」である。
今の所、魔王がどこかの国を滅ぼした、みたいな話は聞かないが、過去には人間を皆殺しにしようとする魔王も居たそうなので油断が出来ない。
ちなみに国が勇者を管理しているという話もあるようだ。何故なら<恩恵>を授かった時に、バレますからね……。


そして勇者は一人ではなく、何人も存在する。だからアントンとレイドさんが同時に勇者であっても不思議ではなかったりする。
複数存在する理由は謎に包まれているが、一説によると神様が力を合わせて倒せるように力を授けていると考えられている。


スペシャリストになれるからって言っても魔王討伐が義務づけられているとか呪いにしか見えないよね?


私がそんな事を考えていると、お客さん達の声が聞こえてきた。


「アントン達のパーティ、デッドリーベアの依頼をギルドから断られたらしいぜ?」


「ああ、聞いた聞いた。一回まぐれで倒せたのに何を勘違いしてるんだって話だ」




そういえば今日はデッドリーベアをもう一回倒そうということになっていたのを思い出す。
イルズさんが無理だと判断し却下したようだ。私の補助魔法を知っているからねあの人。だから前回は渋々許可してくれたんだけど……。


ま、彼らはこれで収入が減るだろうから、私としては追放されたお返しにはなるかな、と考えていた。






しかし、彼らはこの日とんでもないことをしでかす。それが発覚した時にはすでに手遅れになっており……。



「パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く