パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神

その3 勇者パーティ

「ふああ・・・酒を飲み過ぎたか・・まだ眠いな・・今日は北の森に出たっていうデッドリーベアを倒すんだっけ?」


昨日の騒動など露程も知らない、勇者アントンが朝食の場に現れる。


朝食は毎朝宿で出されており、夕食も出るようになっていて、酒も酒場まで行く必要が無いくらい貯蔵があったりする。


この”ダンデライオン”という宿は冒険者にとっては少しお高い宿屋なのだが、ルーナ加入後に高レベルの魔物を倒せるようになり、収入が増えたのでふかふかベッドで寝たいという三人に促され、アントンも行為をする時にベッドが柔らかいといいなーと何も考えず決めてしまったのだった。




それはさておき、三人娘はルーナを追い出した後に喧嘩を始めてしまいそのまま徹夜で言い争いをしていたが・・


「そうね・・・でも今日は止めにしない・・?」


「アタシも賛成ー」


「フレーレもですぅ、今日はお休みしたいです・・」


その結果がこれである。


「アントンを自分だけのものにしたい」という欲求は全員持っているので、ちょっとした発言で喧嘩になるのだ。
ルーナが居た頃はまあまあと仲裁に入ることがあったが、ストッパーが居なくなればいつまでも終わらないのであった。


「そういう訳にはいかねぇだろ、飯のタネなんだからよ・・・あれ? ルーナはどうしたんだ、まだ寝てるとは仕方ないヤツだな」


食パンにバターをつけながら、ルーナの部屋へ行く口実が出来たとほくそ笑むアントンだが、次に三人娘の言葉で愕然とする。


「あー・・・あの子なら昨日の夜出て行ったわよー・・・役立たずだって言ったら泣いて出て行っちゃったわ♪ これで取り分が増えるから今日くらいはいいじゃない」


本当は笑顔で出て行ったのだが、泣いて出て行ったと言う方が自分が格上になった気がするので嘘をついた。
一緒に居た二人もそれは同様のようで、特に言及したりはしなかった。


「け、契約書は? 契約書にサインしないとパーティから離脱はできないだろう?」


「ああ、アタシがやっておいたよ。本パーティの人間なら誰でもいいみたいだったからサラっとね! ははは!」


「せいせいしたですよー、何もできないのに報酬は山分けだなんて許せないです」
あっさりとしたフィオナに、ぷうと頬を膨らませるフレーレを見て、あちゃーと手で顔を覆う。


この三人が自分の事にベタ惚れしていることは承知していた。ハーレムみたいで悪くないと、ギルドで自慢をするくらいに。


そして三か月前、ルーナに出会ったのだが、アントンの好みにドストライクだったのである。
長い絹のような黒髪に少しツリ目がちの目をしていて、それなりに膨らんでいる胸。
見た瞬間「欲しい」と本能が告げていた。


一時加入名簿を見たり、ギルド職員を捕まえて色々聞き、ようやくパーティに引き入れていたのだ。


しかし、ここに居る三人とは違い、まるで自分になびく素振りが無くうまく躱されていた。
三カ月経ち、焦りも出てきたアントンは夜這いでもするかと考えていたのだが、この追放騒ぎである。がっかりするのも無理はない。ギルドには仲介料も払っているのだ。


「(こいつらがここまでするとは思わなかったな・・・早く手を出しておくべきだったか? 残念だが仕方ないか・・・戦力としては期待できなかったし・・まあこの町に居るならまだチャンスはある、か)」


アントンはルーナを戦力としては期待せず、快楽を得るために勧誘しただけだった。補助魔法など大したことは無い、とタカをくくっていた。


だが、アントン達の羽振りが良くなったのはルーナが加入してからなのだ。


ルーナの補助魔法のおかげで一ランク、果ては二ランク上の魔物を倒せるようになっていたが、それを自分たちの実力と勘違いしてしまっており、今から倒しに行くと言うデッドリーベアも一昨日瞬殺したので軽く考えている。しかしルーナ抜きでは、倒せないとまでは言わないが、かなり厳しい戦いになるだろう。




「朝飯食ったら行くぞ、デッドリーベアを倒したら今日は酒場にでも行こうぜ」
ルーナが抜けた事に少し機嫌が悪くなったアントンが強い口調で三人に依頼の決行を促す。


アントンに嫌われたくない徹夜明けの三人は、仕方なく返事をするのであった。

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