ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

4-3 ざわめく3人


 4-3 ざわめく3人




「武闘大会か、面白い」

 枯れた木々が転々と存在する大地に一人の男が立っていた。

 ボロボロの鎧に身を包み、独りでに呟いて笑った男の鮮やかな金髪はユラユラと風に吹かれて揺れている。

「彼に負けてから約一ヶ月。さて、私自身の腕がどれ程まで上がったか試すにはいい機会だ」

 腕をまくると鍛え上げられた筋肉が現れる。

 ある程度武芸を嗜んできた人間なら一目で分かるだろう。ただ筋肉を付けた訳ではない。自分の技術必要な動きをするために調整したものだということに。

 たった一ヶ月で男は以前とは比べ物にならないほど変わっていた。

 そう、まるで別人レベルまで。

「なあ竜殺し。あんたは何故そこまでして強さを追い求めるんだ?」
「ノームか。さあ。私自身にも答えが出せないな。ただ、敢えて言うなら、私にとって強くなりたいと思うことは普通のことだからだ」

 男に尋ねたのはノームと呼ばれた小さな男の子。枯れた木に腰をかけプラプラと足を動かしている。

「ふぅん、そっか」

 ノームは男の回答がよく分からなかったが、見栄を張る為に分かったフリをして首を傾げた。

 ただ、男のその答えは限りになく真実に近かった。事実男は生まれてから強さだけを求めて生きていた。

 強くなりたい。強くありたい。

 幾度の戦場を歩み、万を超える屍を築き、強さこそが全てだと悟っていた。

 だから男はこれまで修行なんてものはしていない。敢えて言うならば命を懸けた実戦が男にとっての修行だった。

 だが、男は生まれて今日まで初めて一心になって剣を振った。

 何故なら男にとって初めて敗北は少なからず大きな影響を与えていたから。

「でも凄いな。こんなに強い竜殺しに勝つ奴がいるなんて。そいつ人間か?」
「れっきとした人間だよ。しかも私より年下だから驚かされる」
「マジ!? すっげー!」

 ややオーバーリアクション気味に目を丸くして驚くノーム。男の強さを間近で見ていたからこその反応だった。

「お前も行くか? ノーム」
「うーん、行きたいのは山々だけどオイラはこの土地を統べる精霊なんだ」
「すまない。そうだったな」
「いいっていいって。行けないオイラの代わりに土産話を持ってきて欲しいよ」

 残念そうな顔をしたが、すぐにノームはいつもの表情を取り戻し言い繕った。

「それにオイラは知っていた。竜殺しはそろそろ居なくなるってことぐらい」
「.......」
「あんたはふらっと現れてはふらっと消えていく。そんな人間だと最初から分かっていた」
「そう、かもしれないな.......。どうやら私はその手の人種だったみたいだ」

 空を見上げた男はふっと笑うとノームの顔を見て笑いかけた。

「世話になったな」
「なに、世話になったのはオイラの方さ。行ってこい。竜殺し」
「ああ、そうするよ」

 そうして男は去っていく。雑踏を歩き、ノームの前から姿を消した。

「武闘大会、オイラも見たかったな」

 男が去った後、ノームは独り言を漏らす。

「でも、結果ぐらいオイラでも予想できる。それで我慢するよ」

 地には無数の剣がそびえ立ち、魔物の死体が無惨に散らばっていた。

 後に土の精霊が統べるこの土地には「魔物達の墓場」と呼ばれる魔境になる。
 その中には、この土地を荒らしていた脅威度Sクラスの竜の亡骸も含まれていたという。



 ◆◇◆



 馬車がガタゴトと揺れている。

 昼を過ぎた正午時。積荷を引くランドホースはブルりと身体を震わせ一層走る速度を上げた。

 積荷の中では一組の男女が話し合いをはじめようとしていた。

「あの~.......団長?」
「なんだねドレム」
「なんで私たち仕事放り出して馬車に乗ってるんですか? というか何処に向かってるんですか?」

 団長と呼ばれ年相応の髭を生やした中年男の名はロイド=ツェペリ。彼の住むエルクセム王都では小さな娘さんのいる家庭ではその名を知る者はいない有名人であり、更に第三騎士団の席に座る大物もであった。

 一方眼鏡と黒ローブを身に付ける女は第三騎士団の副団長を務めるドレム。騎士団長最弱の有力候補にして最低高度の貧乳を誇る女傑である。

 ロイドは質問をしてきたドレムを一瞥すると鼻で笑い、こう答える。

「ふっ、とんだ愚問だね。聖都に決まっているではないか。それぐらいおじさんと長年付き添ってるドレムなら分かって当然だろう?」
「全く分からないんですけど」
「おじさんはね、聖都でやるべきことが出来てしまったんだ。今からその責務を果たしにいかなければならない」
「どうせ幼女を観察するんでしょ」
「チッチッチッ。それもある。だが、それだけではないのだよ」 

 見ていて妙にイラつく仕草をしながら身を乗り出したロイドはやけに得意気な顔である。

「まあよく聴いたまえドレム。まずおじさんは幼女が好きだ」
「そんなことは百も承知ですけど控えめに言って死んでください」
「そこでだ。好きな人間とは普通に考えて一緒に過ごしたいと考えるだろう」
「その考えには理解を示せますが死んでください」
「結論を言うとおじさんは幼女と結婚したい」
「今すぐ頭から地面に飛び降りましょ?」

 ドレムは愛用の魔法杖を構えて上級魔法の「サンダーボルト」を目の前にいるロリコンに唱えようかと本気で考えた。  

 しかしロイドにとってドレムに魔法をぶつけられるのは半ば日常と化しており、魔法杖を向けられた程度では何も思わなくなっている。

 厄介なことにこのロリコンには脅しが一切効かないのだ。

「おじさんはもう何百回も告白してきたんだ。その恋の数は夜空の星に負けず劣らないが、残念ながら一度足りともおじさんの恋は実ったことがない」
「でしょうね」
「このまま恋を探し続けてもおじさんはいいと思ってる。だけどね、おじさんはもう歳なんだ。この先長くはないんだよ」
「もう何言っても聞く耳持たないですね団長」
「だからドレム。おじさんは禁じ手に踏み切ることにしたよ」

 力強く拳を振り上げロイドが決意を示す。

「団長の禁じ手ってそもそも何か分からないんですけど。盗撮も誘拐もしてる貴方に禁じ手も糞もないでしょう」
「ふふ、愚かなドレムよ聞いて驚くがいい!」
「もうダメだこの人」 

 真昼間の草原道。ロイドは声を高らかに宣言する。

「おじさんは武闘大会で優勝する! 優勝して国王の娘であるマリアンヌちゃんと結婚するんだ!」
「............................は???」



◆◇◆



「雑魚だ雑魚。雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚。どいつもこいつも弱っちっこくて骨がねぇ」

 深夜の峡谷。

 一人の若い女と付き添うように執事服を身にまとった男性が立っていた。

 辺りには血と壊れた武具が乱雑に散らばっており、重症を負った複数の冒険者が呻き声をあげて倒れている。

「セバスチャン。こいつら本当にAランクの冒険者なのか? Fランクの間違いなんじゃねえのか?」
「お言葉ですがお嬢様。今足下に這いつくばっている方達は正真正銘、Aランク冒険者のパーティでございます」
「おいおい。冗談は良してくれよ」

 若い女は血で汚れた赤いハイヒールで倒れていた冒険者の足を踏み付ける。ぐちゃりと赤い果肉が地面に吐き出され、肉と手の甲が潰れる音が聞こえた。

「ば、化け物め.......」

 苦痛と屈辱を味わいながら冒険者は声を捻り出した。

 今、手を踏み潰されている男は冒険者のパーティをまとめあげるリーダーだった。

 Aランク冒険者のパーティ「フェノミナル」。脅威度Bクラスの魔物の複数体討伐に成功してきた実力者が集まったパーティだったが、そんな強者揃いのパーティは一夜にして崩壊した。

 Sランク冒険者。ブラム=ローザの手によって。

「ほーん。リーダーとか言ってたお前。まだなんか奥の手とか隠し持ってんだろ。待ってやるから早く使って見せてみろよ」
「そ、そんなものはない.......! もう充分だろ! 冒険者同士で争うなんて間違ってる! 金ならやる! 俺たちとは二度と関わらないでくれ!」
「.......あ゙?」
「あっ」

 ローザからブチッと何かが切れた。執事の顔が青ざめ、体の芯まで凍える殺気が放たれる。

「泣きごと言ってんじゃねぇぞ! お前は魔物に殺されそうになった時命乞いするのか? 馬鹿か! するわけねえだろうが!」
「.......ひっ!?」

 胴元を掴みローザはパーティのリーダーを吊るし上げる。

「戦え! 戦うんだよ! 体力も魔力も限界ギリギリまで絞り尽くして戦え! 戦って戦って死にやがれ! 戦って死ねば敗者で負け犬! だがな、自分から首を差し出す奴はそれ未満のゴミクズだ!」

 一通り怒鳴り散らしたローザであったが、あまりの剣幕の殺気でリーダーは既に気を失っていた。
 ジョボジョボとズボンから尿が流れ落ち、白目を向いて泡を吹いている。

「はっ、これでAランクか。聞いて呆れる」

 手を離すと事切れたように崩れ落ちる。

 完全に興味がなくなったローザは執事の手を引き、踵を返すと闇夜へと消えていく。

「なあセバスチャン。次の強いやつはどこにいる?」
「お嬢様。それなら朗報がございますよ」
「言ってみろ。くだらねえことだったら殺すかけどよ」
「ご安心を。どうやら聖都で武闘大会が開かれるようですから」

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