ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-60 固有属性の力



 3-60 固有属性の力


 風狂黒金と闇魔法の剣がぶつかり合い振動の波紋が乱れ飛んだ。地面に裂け目が走り、開かれた割れ目から水が流れ込む。

 剣と剣が打ち鳴り合う。水上で激しい戦闘が繰り広げられ、互いの人間離れした技術が衝突し、様々な手法が入れ乱れる組手が始まった。

「こいッ!」

 体術。闇魔法。固有属性。

 どれもこれもが常識の範疇を越えたもの。それらがぶつかり合い、地形が変わる程の戦闘へと発展していく。

「だぁッ!」

 箭疾歩せんしっぽで速度をあげ、勢いを抑えぬままニゲルに突っ込む。肉を押し縮ませる感覚。乾いた音と共にニゲルの腹を膝で蹴りあげ、天井に飛ばした。

「ぐ、がっ.......!? よくもやってくれたなッ!!」

 鍾乳石を壊し、肺の空気が抜けたニゲルはすぐさま下に向かって闇魔法を放つ。

 使ったのは氷と闇の複合魔法。パキパキと水に霜が走って凍り、瞬く間に剣山を思わせる黒水晶が出来上がった。

「.......ぬぐ?」

 捉えたと思っていたのか、ニゲルは目を動かして下を見つめる。だけど僕はもう下にはいなかった。

 そして僕を探そうと横を向いた時、やや後方から人影が前に移った。

 轟轟と唸る拳を携えた人影が。

「遅い」

 僕は既に壁を蹴ってニゲルの横にいた。例え闇魔法を使おうとしても避けようとしても遅い。拳はニゲルの頬に吸い込まれていく。

「気掌拳!」

 水源一帯に響く振動音。

 膨大な空気を含んだ拳がニゲルの頬に入り込み、爆発した気圧が解き放たれた。

 衝撃波が斜め下に広がり、水と石片を飛ばしながら土の上に叩き落とす。

「おのれぇ!!」

 地面を滑りながら足を踏ん張り、吹き飛ばされることから耐えたニゲルが反撃を行う。手から真っ黒な炎が溢れ出しドクロをまいて僕に飛んできた。

 黒焔くろほむら。王城の通路で前に使ってきた複合魔法だった。

 軌道は独特だが飛び方は知っている。天井を蹴った僕は風狂黒金を構えて水平に振るう。

「ブレードブロック」

 魔力干渉のコツを掴んだお陰なのか風狂黒金で簡単に打払える。真っ二つに切られた黒い炎はチリチリと火の粉を散らしながら消え去った。

「その程度かよ、ニゲル。王城で確かに僕は一度負けた。だがな、あの時はエマやメルロッテを守りながら、しかも剣聖まで相手しながらの戦いだったんだ。けど今回は違う。僕とお前のタイマンだ」
「強がりか? 攻撃を当てられただけでいい気になるな!」
「強がり? 違うな。ニゲル、お前、弱いだろ?」
「な、にぃッ.......!?」

 顔を思い切り歪めてニゲルの顔が憤怒の形相に染まる。

「取り柄が魔法しかないんだよ、お前は。接近戦はてんでダメ。つまりだ、」

 口元を曲げ、風狂黒金をクルリと回して刃を向けた。

「僕のカモってことだよ」

 臨界超越エクシードプラディウスを発動。薄い青色の燐光が僕の体を覆い、体がふらついて姿を消した。

 次にニゲルが見たものは反転した地面。僕の腕が腹に食い込み足が宙に浮いて離れている。助走を付けて撃ち込まれた殴打はニゲルを飛ばし、遥か後方へと吹き飛ばした。

「遊びは終わりだぜ、ニゲルッ!」

 走るだけでニゲルが飛ぶ速さを上回り衝突点に先に着く。踵を振り上げて背中を蹴飛ばし、動きが止まった所に三段構えの気掌拳を叩き込む。

 一発目で上方に跳ね上げ、二発目で垂直に飛ばし、三発目で大きな岩に激突し、水しぶきと砂煙を大きくあげた。

「こ、この.......この俺が.......俺がこんなやつにいいいぃぃぃ!!!」

 可視化された闇の魔力が高まる。虚空の空間に数百をこえる魔法陣が現れ、その中から闇魔法の槍が雨あられと飛んでくる。

「言っただろ、だからお前は魔法しか取り柄がないんだよ」

 限界突破リミットブレイクを発動。身体のリミッターも外れるこの技能は脳のリミッターを外す。

 見える。降り掛かる槍の軌道がスローモーションで目に映る。

 ひとつひとつの威力は高いが所詮は弾幕みたいなもの。ニゲルはしっかりとした狙いを付けて魔法を使っていない。

 避ける。弾く。打ち消す。

 走りながら僕に当たる槍だけを見定めて迎撃を行う。途中で何個は皮膚を掠めたが、精神のステータスが高い僕にとってはさほどのダメージにすらならなかった。

「当たれ! 当たれッ! 当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれぇぇぇッッッ!!!」
「下手な鉄砲数打ちゃ当たるってか? 悪いな。その諺はどうやら間違いみたいだ」

 近づく。

 僕は大きく飛び上がった。箭疾歩と足のバネを組み込んだ跳躍。一瞬で加速して距離を詰める。

 撃ち落とさんとニゲルは闇魔法で巨大な大剣を作り上げる。振り下ろされる僕からしてみれば大剣と言うよりかは大きすぎる斬首台の斧みたいだった。

「死ねええええええええええええええええええええええええええええッ!」

 手を突き出す。自ら手を突っ込み、漆黒の大剣を魔力干渉を使って簡単に打ち払った。

「次は全力!」

 足を着く寸前に超越暴走オーバードライブを発動。紅色のオーラが体を這って力が溢れるのを感じる。

 足を踏む込みブレーキをかけた。手の平に空気を集めて握る。近くにいるだけで強風に煽られる暴風圧が僕とニゲルの間に吹き荒れた。

 臨界超越。限界突破。超過暴走。

 全てを合わせた文字通り僕の全力を込めた一撃をニゲルに、放つ。

「気掌拳!」

 風が唸る。腹に拳が捩じ込まれ、轟音と共にニゲルは岩を壊して瓦礫に埋もれた。

「くそっ、ちくしょうが! 俺にこんなことをしてただでは済むと思うなよッ!」

 瓦礫を跳ね除けて起き上がったニゲルから、雷鳴が轟く音が響いた。

 僕を取り囲むように複数の魔法陣が展開されている。いや、ニゲルは予め僕に近付かれて殴られることを保険に入れて設置していたに違いない。

 魔法陣からは黒い電気がバチバチと迸った。エキューデがよく使うアビスライトニング。それらがジグザグと変則的に動きながら僕に向かって降り注ぐ。

 ――まずい。

 黒い稲妻が落ちてくる。この角度、この体勢では避けられない――!

 ピシャッ! ズガガガガガガガッ!

 暗闇に雷光が走り電撃が弾ける炸裂音が反響した。雷火が広がり、黄色い火柱が燃え上がる。

「ふははははははははははっ! ビンゴだ! ざまあみろ、黒焦げになったか!」

 僕に直撃したことを確信してニゲルは口元を釣り上げる。しかし、炎と煙が晴れると同時に今度は驚愕の表情を浮かべた。

「なにぃ.......ッ!?」

 無傷。周りの地面は焼けて焦げ臭い匂いが立ち込めているが、僕には軽い火傷の跡もなくへっちゃらだった。

 精神のステータスが高くともニゲルの魔法を喰らえば無事では済まない。それなのに、こうして立っていられるのは別の理由があった。

「これは.......」

 僕を中心に薄黒色の魔力が渦巻いている。ニゲルのではない。僕の魔力が無意識に守ってくれていた。

 紛れもない黒の魔力回路。前は魔力量が少な過ぎて満足に扱えなかったが、今の僕なら普通に使える量まで達していた。

 手の平を畳む。固有属性が蝋燭の火のように燃え上がり、仄かに立ちのぼる。

「舐めやがって! 黒氷波!」

 パキパキと流れている水が急速に凍り、黒い氷の波が僕を飲み込もうと押し寄せた。

 まるで黒水晶の剣山が牙を剥いているようだ。さっきまでとは魔法の規模が違う。避けて躱すことは難しい。

 避けて躱すのは・・・・・・・・、だが。
 
 風狂黒金を突き出して僕は魔力を込めた。

 いける――!

 黒の境界に来てから僕の固有属性はどういうわけか強さとコントールの制御があがっている。その証拠に魔力が高まり、見たことがない薄黒色の魔力が色濃く映し出される。

「歪風!」

 眩い閃光が一際大きく光を放ち、風遁術とは別物の風が通り抜けた。

 氷が割れ、砕かれてバラバラに崩れ落ちる。貫通した黒い歪風はニゲルに命中し、体に複数の傷が出来上がっていた。

「ぐっ、がぁっ.......!? 馬鹿な、魔法を使えなかったはずではないのか!?」
「いつ、僕が魔法を使えないと言っていた?」

 風狂黒金が黒い魔力を纏って吐き出している。

 放ったのは固有属性の一撃。攻撃に転換し、イメージしていたのはよく使っていた歪風。

 ただ、明確に歪風と違うのは魔力が滞留することだった。

 クラウディオに使った燐光疾傷のようにニゲルの体からは裂傷によって血が吹き出して止まらない。何も無い場所から鎌鼬が発生して肌を擦り、皮膚を喰らい破る。

 言わば喰らうと同時に体を蝕む歪風。

 名付けて、

「裏歪風」







 次の日曜日の更新はリアル私情が重なった為にお休みします。
 次回の更新は来週の火曜日、20日を予定してます。気長にお待ちください。
 

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