ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-57 オウカの極意


 

 3-57 オウカの極意


 一転攻勢。オウカによる怒涛の反撃が始まった。

 斬る。斬る。斬る。斬る。斬る。

 斬られる。斬られる。斬られる。

 斬り、斬られ、斬られて、斬られる。

 防御しようとしても筋肉と筋肉の薄い隙間を狙われ簡単に斬られてしまう。

 剣速は増す。それはまさしく剣斬の旋風。刃音は鳴り止まなず、オウカは刀と一体化しているような動きを見せていく。

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

 剣聖はオウカを殴った。殴ったら腕が飛んでいた。

 剣聖はオウカを蹴り飛ばした。蹴ったら脚がえぐれてだらんと垂れていた。

 当たらない。掴めない。そして、斬られる。

 両腕を固めガードしてもこじ開けられるかのように切り裂かれる。

 避けようとしてもこちらの動きを予測しているのか先回りされ斬撃を浴びせられる。

 再生された腕を振るい、倒そうとしてもすぐさま容易く斬り裂かれる。

「拙者は決めたのだッ! もう迷わないとッ! お師匠様を止めてみせるとッ!」

 足を踏み出す力が強くなる。勢いは更に増し、剣聖が有利だった戦況が覆されていく。

 例え斬られようが剣聖の肉体は再生する。だが、今のオウカの剣の舞いは剣聖の再生能力を上回っていく。そればかりか徐々に教えこんだ剣術が動きに練り込まれていき、追い付かなくなる。

「この愚弟如きがあああぁぁぁ!!!」

 剣聖渾身の殴打。それをオウカは刀を横に構え、斬り込んでくる剣聖の拳を踏み替えて躱し、一閃を見舞った。

「ぐがっ!!」

 血が飛び、斬られて初めて気付く。それは剣聖が初めにオウカに教えた技だった。

 一の太刀、虎振とらぶり

 見事に弧を描く刀の尾。後方を向く刀がまるで虎の尾のようにみえることから付いた技である。

 体勢を崩した剣聖の斜め背後を取り、オウカは身を縮ませてた。

 突きの姿勢。

 バネのように体を屈み込み、一点突破の剣術を放つ。

「ずはあっ!?」

 二の太刀、剣突。

 剣術に置いて突きとはシンプルながら致命傷を負わせるもの。刀は本来斬るための用途が主流だが、実戦にでは突きとして使っても刀の本領は発揮される。

 しかしオウカの刃先は折れている。それでは何のダメージは与えられない。つまり、オウカの狙いは別にあった。

 そう、全力の突きは剣聖の体を穿いて宙に浮かせたことに。

「つっあっ!!」

 刀が不規則に動き、オウカの気迫がより一層高まるともに剣筋がブレた。

 三の太刀、散華さんか

 その名の通り短い間に何十もの斬撃を叩き込む技。剣聖は質より量を重視する複数敵への技だと教えこんでいた。それをオウカは精密動作をもってして単一特化の技へと作り替え剣聖を切り刻む。

「ぬおおおおおおおおぉぉぉッ!?!?」

 止まない。止まらない。止められない。

 息継ぐ暇もなく斬撃が剣聖を襲う。

 四の太刀、燕返し。

 五の太刀、帰燕きえん

 六の太刀、流隼ながれはやぶさ

 七の太刀、白波。

 八の太刀、八重桜。

 肉が斬られる。血が飛び散る。これらの技は全て、全て剣聖が目の前にいるオウカに教えた技であった。

「このおおぉ!!」

 反撃を行うがそれすらも呆気なく腕を切り落とされて失敗する。

「なぜ、なぜだぁぁぁ!!!」

 切り落とした本人であるオウカは意識が飛びかけて目もほとんど見えてないだろう。もっと言えば周りの音も聞こえなくなっていき、感覚も鈍くなっている。

 それでもオウカは止まらない。突き動かしているのはただただ精神力だけだった。

 足は産まれたての小鹿のようにガクガクと震え、息が乱れてフラフラの状態。それなのに勢いは止まらない。

 体が切り刻まれる中で剣聖は考える。

 おかしい。何かがおかしい、と。

 瀕死の中で新たなスキルに目覚めたのか?

 それは違う。覚醒といい、新たなスキルを獲得したならば現れる変化は一目瞭然だ。

 今のオウカの変化は攻撃が全て正確無比に当たれるようになっているだけ。何かの引き金により潜在能力が解放されたのだろうか。

 この考えに至った瞬間、剣聖はハッと気付く。

「まさか.......まさか.......!? 最初に腕を斬ったのも、今斬られているのも、全て、全て! 攻撃は全て極意なのかッ!?」

 にわかには信じ難い話だった。

 本来技能とは目に見えて効果を発揮する。盗賊術の暗視やひと握りの人間にしか扱えない鑑定など、一部の例外も存在がするが大半は何かしらの『技』として使われる。

 攻撃魔法しかり、身体強化しかり。剣術のスキル郡もそうであった。剣聖が使っていた奥義である花楓のような

 そして、極意も技として現れると剣聖は信じて疑わなかった。

 それは違った。

 オウカは『技』として極意を開花させたのではない。無意識の内に『動作』として極意を開花させていた。

 泥縄式の中での極意の習得にも驚いたが、まさかの極意の方向性の違いに、ましてや極意が複数個存在していたことに剣聖は驚く。

 剣聖が辿り着いた極意とは、刀を抜刀し敵を斬り納めるというもの。刀で敵を殺す一連の流れを突き詰めたことが剣の道の終着点であった。

 それ故に生み出された森羅万象は万物全てを斬り裂いて消滅させる。

 この森羅万象こそ剣聖は完成された技能だと思っていた。

 森羅万象は確かに極意足る技能であろう。剣に人生の全てを捧げた人間だけが会得する境地。だからこそ、森羅万象を獲得した剣聖は極意と言うべきものはひとつの技能にひとつしかないと考えていた。

 ただ、答えは半分正解である。剣聖が誤った点でいえば剣術の極意は人によって違うものだった。

 オウカが辿り着いた極意とは流れに身を任せて刀を振るうもの。絶えず変化する戦況下において、最も最適な動作で刀を振るい、最も最適な場所を攻撃を行う。

 技として完成した剣聖とは違い、オウカは動作として極意を完成させていたのだった。

「お師匠様が今の拙者の剣捌きを極意と呼ぶのなら、きっと正解なのだろう」

 刀を振るいながらオウカはそっと答える。

「もう目が見えぬ。耳も聞こえぬ。だがな、拙者の代わりに刀が教えてくれるのだ。どうやって刀を振り、どうやって動けばいいのかと。そして、どうすればお師匠様を止められるのかを」

 死角からの攻撃。背後からの攻撃。後ろ向きからでもオウカは対処し、防いで斬る。

 刀と会話するなど剣聖には到底理解が追い付かなかった。だがしも現実を見せられば認めざるしかなかった。

「覚えてくれているだろうか。今、拙者が振るっている刀はお師匠様、貴方自身から譲り受けたものだ。拙者が始めた最初に手にした刀だ」
「それがどうしたぁ!!」
「まだ分からぬか。この刀と拙者は剣の道を歩んできた。この刀と共に修練や稽古を積んできたのだ。他でもない、お師匠様の下で!」

 突然の気魄のこもった一喝で剣聖は怯む。

 刀を振りながらオウカは思い出す。

 一歩でも近付きたいと厳しい修行に身を費やしてきた。美しき剣が振りたいと一心不乱に刀を振った。剣聖を本当の祖父だと思っていたから剣聖が振るう剣術が好きになっていた。

 だからだろうか。こんなにも必死なのは。

「此の中でも聞こえるのだ! 刀は泣きながら語りかけてくる。絶対にお師匠様を助けると! だからこそ、拙者に力を貸してくれているのだ!」

 力強さを帯びているオウカの目から涙が溢れている。

 泣いている。

 心の底から泣いている。刀と一緒に、オウカは泣いていた。

 泣きながら、かつての師を斬っていた。

 方は止めると。方は助けると。

 共に泣きながら戦っていた。

「拙者は刀と一心同体! 同じ道を歩んだ者同士! ならば、刀と剣の道を進む者が振るう剣が極意となりうるのだろう!」

 愛刀を握りしめてオウカは叫ぶ。

「共に助けてみせるぞ! 剣術極意、」

 オウカの極意。その技能の名は、

「飛花落葉!」

 

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