ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-32 散歩と会話と

 

 3-32 散歩と会話と


 真昼の太陽が眩しい。

 久しぶり、と言っても約一日ぶりなだけなのだが、やはり外の空気は美味しい。みずみずしいと言うか、吸っていて肺の中が浄化される気分だ。

 僕は汗をかきながら半ば足を引き摺るように歩いていた。

 身体は動かせるとはいえ、まだ完全な状態ではない。まあ、この様子では三日経てば元通りに歩けそうなんだけど。 

「よいしょ、よいしょっと」
「もう動けるんだな」

 頑張ってリハビリに励む中、僕の後ろから凛とした女性の声が聞こえてきた。ドキリと背筋を震わせ、振り向くと刀を腰に携えたオウカがいた。

「まあね」

 僕達はお互いに微妙な顔をして、近くの開けた場所に座る。

「僕の見張りはもういいのか?」
「いい。お師匠様から止められてしまったからな。拙者には荷が重すぎる相手だと言われた」
「そっか」

 僕はヒュウと口笛を吹いて頭の後ろで手を組んだ。

 剣聖は僕とオウカとの一戦を見ていて、すんでのところで止めに来た。でも、これが初めてじゃないんだ。メルロッテに手作りのケーキを渡そうとした時から僕のことを見張っていた。

 もしかしたら、剣聖は僕と出会った時は既に僕の能力を見抜いていたのだろうか。

「実際そうだったのかもしれん。こんなにボロボロになりながらとはいえ、単騎で今までとは別格の強力な黒い魔物を倒しているのだから」

 深く息を吐いて、オウカは僕と向き合った。

 僕を見るオウカの目は以前と変わっていた。複雑な感情が絡まっているに違いないだろ。だけど、上手く言い表せないが前の目付きよりは良くなった気がする。

「.......強かったか?」 
「強かった」

 オウカの問いかけにはっきりと僕は即答する。だけど、

「強かったけど、今まで戦ってきた相手の方が何倍も、何十倍も強かったから。あんま実感が湧かないんだよね。死にかけたけど」

 貪食の食人鬼、クラウディオ、そしてユリウス。

 こいつらと比べれば、あの黒い魔物なんて取るに足らない存在だろう。

 だから僕は改めて実感していた。『覚醒』のスキルの強力さを。そして、僕がどれだけ『覚醒』のスキルに頼っていたのかを。

 ウラノスをどうにかしない限り、僕はもう二度と『覚醒』のスキルを使えない。『覚醒』を使えない今の僕は脅威度Bクラスの魔物とタメを貼るのがせいぜいだ。

 もしも、ユリウスと同じような強敵が現れた時は僕は何も出来ないまま殺されてしまうだろう。

 そのことに僕は不安を覚え、頭を悩ませている。

「見た目によらず壮絶な人生を送ってるな」
「そうそう、生まれ育った寒村を飛び出してから散々だよ」

 色んな人と出会えた反面、ろくな目に会っていない。現在進行形で。

「ちょっと気になった事があるんだけど、質問していいか?」  
「拙者の質問も答えてくれるならいいだろう」

 現金なヤツめ。まあいいや。

「オウカはどうして剣聖の弟子になったんだ?」
「深い理由なんてものはないな。拙者は物心ついた時からお師匠様の弟子だった。気付いたら既に師弟の関係を結んでいた。それだけのことだ」

 やけにあっさりと言うか、さっぱりとしている。師弟の関係だけど、この言葉だけで聞いてみたらオウカと剣聖は家族みたいな感じだった。

「ではもう一度問おう。何故、お前はパティシエなんぞやっている?」
「うーん、成り行き?」
「嘘だとしか思えないがな」 
「嘘じゃないよ。僕はパティシエ名乗り始めたのはここに来る直前だっただけのことだ」
「.......呆れた。まるで詐欺師の言い分だな」

 嘘も方便、と言うじゃないか。

「で、本当の職業はなんだ? 考えてみたが、お前の就いている職業には見当もつかぬ」
「そりゃそうよ。だって僕の職業は日常では殆ど使い所がないしさ」
「やはり戦闘職か」
「それも微妙なんだよなー。ダンジョン探索では役に立つけど」

 僕はニヤリと笑い、いつの間にか手に持っていたへんてこな形をした髪飾りをオウカの目の前でチラつかせた。

「ほら、頭に着いてた変なポンポン。大事にしまっとけ」
「なるほどな.......。それが答えか。ちなみにこれは変なポンポンではない。かんざしだ」
「あ、そ。じゃあそろそろ僕は行くよ」

 僕はお尻と膝に付着した砂を手で払うと立ち上がった。

 去り際に僕はあることを思い出すと、何となく尋ねてみた。

「変なこと聞くけど、ここから獣道を歩いて行ける、森の中にある寂れた小屋なんてあったっけ?」
「随分と抽象的だが.......思い当たることはある」
「え、本当に?」 
「本当だ。南に向かってずっと歩いてみるといい。そこにお前の言う通り古く寂れた小屋があるはずだ」



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