ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-25 黒の断片 其ノ壱


 3-25 黒の断片 其ノ壱

 かげの記憶


「ねぇ、あの子よ」
「嫌だわ、妾の子なんて。その上ダークエルフとのハーフよ」

 少し年老いた二人の女性の声が耳に入ってきた。

 窓もドアもない開放的なエルフの王城で、一人の男の子がつまらなそうに積み木で遊んでいる。

 いや、遊んでると言ってもいいのだろうか。

 パチリ、パチリと重ねては崩し、重ねては崩し、ただただ傍目からは時間を潰しているだけのようにしか見えない。

 年齢は五歳くらい。男の子の肌は浅黒く、表情には暗い翳が隠れていた。目は死んだ魚のように何の光もない。その目の視線は、今遊んでいる積み木ではなく、全く関係のない部屋の外へと向けられていた。

 木で作られたの格子の先には、複数人の子ども達が集まって遊んでいた。

 わいわいと無邪気な笑顔と笑い声をあげて楽しそうに遊んでいる。

 何故、一緒に遊ばないのだろう。

 何故、見ているだけで輪の中に入ろうとしないのだろう。

 男の子は積み木を崩しながらじっと見つめているだけだった。

 ふと、あることに気が付いた。男の子は子ども達全員ではなく、ある一人だけしか見ていないことに。

 見つめていたのは輪の中心で明るい笑顔を振り撒いている女の子。

 メルロッテ.......?

 いいや違う。顔も、雰囲気も、周りを照らすような笑顔も、メルロッテによく似ているけど明らかに別人だ。よくよく見れば髪と瞳の色が微違う。まるで黄金と見間違ってしまう程の美しい髪の毛。エメラルドを連想させる緑色の眼。

 一体誰なのだろうか。だけどよく似ている。生き写しとでも言ってもいいように、無関係とは思えなかった。

「何で産まれてきたのかねぇ。あの子だけで充分なのに」
「全くだ、どうせ王家を継ぐ者は一人。妾腹の子どなど邪魔でしかない」

 次の声は妙齢の女性と若い男。メルロッテに似た女の子と、浅黒い肌の男の子を交互に比べるように見ると、疎ましいように、腫れ物でも扱うかのように、その場から立ち去っていく。

 二人が去った後、男の子は懐から母親と思われる小さな絵を取り出すと、指に力をいれて凝然として見る。

「いつも独りで遊んで、友達いないの?」「挨拶も出来ないなんて、情けない子だ。気味が悪い」「お前なんかいなければいいのに」「なんで生きてるの?」「産まれてきたのが間違い」「邪魔」「顔も見たくない」「消えて欲しい」「無価値な子ども」

 ――「あんたなんか、産まなければよかった」

 なんだよ、これ。ドス黒い感情と台詞が直接頭の中に響いてくる。この言葉全部、あの男の子が言われてきた言葉なのか? こんなの、こんなのあんまりだ。生きる意味がないって、価値がないって、そんなの存在を否定されているだけじゃないか。

 男の子は絵を裏返した。後ろに書かれていたのは何かの文字。文字数は七。何が書いてあるのか読めないが、恐らくエルフの言語だろう。

 しばらく見た後、両手を上と下に勢いよく動かして絵を一気に破り捨てた。そのままビリビリに破いて、グシャグシャに丸めて、視界に入らないように投げ捨てる。

「――なんで」

 男の子が口ずさむ。

「――なんで、産まれてきたんだ?」
 


 ◆◇◆



「――――!? 夢.......!? か.......」

 荒い息を吐いて僕は起き上がった。

 まだ外は薄暗く、寒い朝だ。日がほんの少しだけ登った、青白い景色が見える時間だ。

「..............」

 凄く、嫌な夢だった。しかもやけに現実味がある夢だ。

 僕は息を整えながら深呼吸を繰り返した。

 はっきりと覚えている。台詞も、光景も、男の子の顔も。そして、あの絵の裏に書かれていた文字も。

 今まで生きてきた中で、こんなにも夢の内容を覚えていられたのは初めてなのかもしれない。

 だけど、夢と言うよりかは、誰かの記憶を覗いてきた感覚に近い。

「.......まだ早いけど、起きるか」

 もう一度横になって眠れそうにない。目が冴えてしまって、起きている方が楽だった。

 額を拭うと汗がべっとりと腕に付いていた。流れた汗が顎を伝い、水滴のように垂れていく。

 こんなのにも嫌な夢を見るのは久しぶりだ。何か、悪いことが起こりそうな予感だった。

 まだ、あの男の子の顔が脳裏にちらつく。



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