ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-16 村へ向かって


 3-16 村へ向かって


 あの後、三体の魔物を倒した僕達は数時間ほど移動をして少し開けた場所で焚き火をしていた。

 ミナトが取り出す魚を夕食に僕達は円を囲む。

 今日は濃密な一日だった。船を奪ったり、海賊と戦ったり、魔物と戦ったり。かれこれ出発した朝から時間はかなり経っていて、既に太陽が沈む夕方の刻になっていた。

 質素な晩飯を食べる傍らで、リフィアが助け出したエルフの子どもを看病をしている。流石、二度も重症を負った僕の怪我を看病してくれたリフィアだ。

 リフィアが診断すると、命に別状はないらしく、しばらくすれば快復に向かうそうだ。かなり衰弱していたようだが、リフィアお手製の調合薬を飲ませたことで充分に栄養はとっている。今日の夜か明日にでも目を覚ますことだろう。

「小僧、今日はこのまま野宿するのか?」
「そうだね。また探索を始めるのは明日の朝かな。そもそも魔物が活発化する夜の森を歩くのは危険すぎる。エルフの子どもも増えたわけだし、慎重に行かないと」

 僕はエキューデに答えながらヘルメスボアの肉を火で炙る。

 別に夕食はサンマとかいう魚だけじゃない。倒したヘルメスボアはアシュレイの指示の下、地中深くに埋めてきたが、ちょっと勿体なかったので少しばかり肉を切り分けて持ってきたわけだ。

 早速ひと齧り。僕はガブッと勢いよく噛み付いた。

 うげ、硬い。まるで鞣した皮を噛んでるみたいだ。しかも肉汁はギドギトした油で確実に胃もたれする。とてもじゃないが食えたもんじゃない。

「どうした小僧? 我も味が気になるから一口くれ。.......うむ、まずい。こいつにでも食わせるか」

 ガソゴソとエキューデは懐を漁ると不気味な骨付き肉みたいなものを取り出した。エキューデはいつもヘンテコな物を持っている。骨付き肉はいきなり中から割れるとむしゃむしゃとヘルメスボアの肉を食べ始めた。

 骨付き肉と比喩したが肉を貪るその姿はでっかい蛆みたいだ。残飯処理としてはピッタリ。僕は残りの肉もそいつに分け与えた。

「ねぇねぇミナト。サンマ以外の魚は出せないの? 王都からネメッサの街に行くまでの間もサンマ尽くしだったし、たまには別の物が食べたいよ」
「あー、はいはい。明日はヒラメの煮付けでも作っやるから文句言うな」
「朝イチだよ! 朝イチ! 明日の朝もサンマだったら承知しないんだから!」
「ったく、分かったよ。分かったから食べながら喋るなって。口から零れているだろーが」

 ミナトは相変わらず面倒見がいい。ノアの口元をタオルで拭きながら呆れた顔をしている。そんな長閑な夕食の中、僕の側で看病に徹していたリフィアが突然大きな声をあげた。

「意識が戻ったみたいなの!」
「え、本当か!?」

 すぐさま近寄って様子を見てみれば瞼が微かに動いて目を開けた。エルフの子どもは体を震わせながら起き上がると、看病していたリフィアを見て開口一言呟いた。

「う.......子ども.......?」
「失礼なの! リフィアはもう立派な大人なの!」
「やめい! いきなり怪我人に乱暴するな!」
「むー!」

 拳を振り上げるリフィアを後ろから羽交い締めにして引き剥がし、僕は目を覚ましたエルフの子どもに話しかける。

「おい、大丈夫か?」
「普人、族.......? なんでこんなところに.......?」
「僕達が助けたんだ。エントに捕まっていた君を」

 エルフの子どもは辺りをキョロキョロと見渡した。しばらくすると、どうやら自分の置かれていた状況が分かったみたいだ。

 まずは話をしないと。とりあえず、僕達が悪い人間じゃないってことを説明しないといけない気がする。

 そう話しかけようとした矢先、僕はエマに服の裾を引っ張られて小声で耳打ちをされる。

「ちょっと変態」
「なんだよ?」
「上手く誤魔化しなさいよ。正直に変態の目的を言うと怪しまられるかもしれないわ」
「魔力回路を治す方法を探しに来たって、結構まともな理由だとは思うんだけど」
「いいこと? 魔力回路の治療方はエルフの王族が鍵を握っているみたいなのよ。その技術は簡単には口外出来ないものかもしれない。私たちの素性は適当にはぐらかすだけではぐらかして、エルフ側の事情だけもぎ取ってきなさい」

 完全に悪者じゃん。しかし、エマの言葉も一理ある。僕も僕達の事情は出来ればなるべく話さない方がいい。エルフの暮らしている世界において、覚醒者の扱いは分からないけど隠していた方がよさそうだ。

 そうと決まればなんと説明すればいいのだろうか。普通に旅の途中の冒険者を名乗っても良さそうだが。

 いや、まてよ?

 僕は荷物の中ある大量に作ったプリンを思い出す。冒険者なんて名乗らなくても大丈夫じゃないか。それよりも安全な隠れ蓑をエマがあらかじめ作ってくれていたんだから。

「えっと、僕は修行中のパティシエなんだ。今は色んな国を回ってお菓子を作っていてさ。そこで、たまたまエントに捕まっていた君を見つけて助けたんだ」
「そうなの?」
「そうそう。ね、みんな?」

 僕の視線を向けられた一同はそそくさにサッと目を逸らした。

 なんだよ、何がおかしかったんだよ。なんでみんな僕から目を逸らすんだ。てかエマ、このきっかけを作ったお前が微妙な顔して横向いてんじゃない。

 僕はため息を付きながら荷物からプリンを取り出してみんなに配った。パティシエは嘘だがこのプリンは正真正銘、僕が作ったものだ。食べてくれれば信じてくれるかもしれない。

 しばしの間、僕達一同はプリンを頬張った。自分の作った料理はやはり一段と美味しい。気持ちの問題だと思うが美味しいものは美味しいのだ。

 プリンを食べ終えたエルフの子どもはそれで心を開いたのか、はたまた僕の言った嘘を信じてくれたのか、僕の目を見て頷いた。

「うん、分かった。お兄さんが言うなら、私は信じるよ」
「お、おう。それで、少しだけでもいいから君の状況を教えてくれるかな?」

 僕の問い掛けに少し言い淀んだが、ゆっくりとこれまでの事を話し始めた。

「私の村、魔物に襲われちゃって.......」
「魔物って、あのエントとか、ヴェノムセンティピードとかの?」
「ううん、黒い魔物」
「黒い魔物?」
「そう、黒い魔物」

 黒い魔物と言われてもよく分からない。

「最近、他の魔物とは違った魔物が私達の村を襲ってくるの。ううん、私達の村だけじゃない。他の村もあの黒い魔物に襲われているの。そいつらは色んな姿形をしているんだけど、墨でも被ったかのように全身真っ黒で.......」
「そうか。その魔物に村を襲われて逃げてきたんだな?」

 多分、実物を見たことがない僕に説明されても理解が出来ない。早々に話を切り上げて、別の話に切り替えることにした。

「半分合ってる。私は助けを呼びに行ったから」
「助け?」
「そう。剣聖を呼びに。剣聖イアソン。植人族の凄腕の剣の達人で、剣聖はエルフの国で一番強いひとなんだ」
「大体内容は理解した。君が言う、黒い魔物に村が襲われたから剣聖に呼びに行った。その途中にエントに捕まってしまったんだね?」

 こくりとエルフの子どもは頷いた。

「どうするのお兄ちゃん?」

 僕は腕を考えた後、自分が出した回答を述べる。

「そうだな.......出来れば僕達を君の襲われた村に案内して欲しい。僕達を信用しくれるなら、って前提の話だけど。何か力になれるかもしれいしさ」
「それは無理な話ね。幼女好きの変態なんかこれっぽっちも信用出来ないでしょ」
「るっせ!」

 怪しまれないように僕に耳打ちしたり、今度は逆に僕の信用を落としにきたり、一体お前は何がしたいんだ。

「信用、する.......」

 いがみ合う僕とエマの間で、エルフの子どもは確かにそう言ってくれた。

「貴方達は見知らずの私を助けてくれた。怪我の手当もして食事も与えてくれて、それに捕まえて奴隷にしようとしたり、酷いことをしようとしなかった。だから、信用する.......」

 僕はチラリとエマの顔を覗く。こいつ、エルフを捕まえようとしていたよな.......。

「よし、そうと決まれば明日の朝早くに襲われた村に行こう。話によれば魔物の襲撃から結構時間が経ってるみたいだし。他のエルフの安否も心配だ」
 

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