ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

3-4 魔力回路の治し方


 3-4 魔力回路の治し方


「おーい、リフィア。リフィアはいるかー?」

 あの後、エマと別れて僕はリフィア薬草店へと赴いていた。

 僕は店のドアを開けて店内の中へと入り込む。ここの店は部屋中に薬草や薬液の匂いが混じっていて、とても独特な香りが鼻いっぱいに広がる。

 嫌な匂いではない。むしろ嗅いでいるとなんというか、気分が落ち着く不思議な香りだ。

 僕はリフィアの店を訪ねたのは理由がある。

 エマに魔力回路の治し方を聞いたところ、エマはこれも分からないと回答した。
 なんでも、完全に魔力回路が壊れて生きていた人間はいないらしく、ためしがないらしい。

 その上、僕の魔力回路を治すことは、死んだ人間を生き返らせてと言っているのと同じようなものだとエマに言われてしまった。そりゃ無理だ。

 もう他にあてが無くなったので、こうして僕はリフィアの店に来ていた。怪我の治療を行っているリフィアならば、何かしら知っているかもしれない。たとえ何も知らなかったとしても、聞くだけ損はないだろう。

「あ、お兄ちゃん! リフィアに何かようなの?」

 僕が店の奥に入っていくと、トテトテと薬液が入ったフラスコを手に持ちながらリフィアが歩いてきた。どうやら薬の調合をしていたらしい。

「ああ、実はさ.......」

 僕はリフィアに促されるまま、すぐ側の椅子に座りながらさっきの事柄をリフィアに話し始めた。リフィアは僕の話を聞き終えると、難しい顔をしながら口を開いた。

「うーん.......流石にそこまで壊れたお兄ちゃんの魔力回路の治し方はリフィアにも分からないの。だけど、ひとつだけリフィアには心当たりがあるの」
「え、本当なのか?」
「あんまり期待しちゃダメなの。森人族ってお兄ちゃんは知ってる?」

 森人族。別名、エルフと言えば分かりやすいだろうか。長命で顔が整っている人が多く、自然との調和を目指して暮らしている謎が多い種族だ。

 僕が知っているのはこのぐらい。他の人も大体は似たようなイメージだと思う。

「そのエルフが魔力回路を治せるのか?」
「そうなの。眉唾ものな話だけど、なんでもエルフの王族はあらゆる生命の傷を癒す能力を持ってるらしいの」
「その中に魔力回路も含まれるってことか」

 リフィアの話はなんとも不明瞭な話だ。エルフはこことは海を越えて離れた大陸で暮らしていると聞く。早々簡単には会えないし、もし会えたとしても、この話が本当ではない可能性も高そうだ。 

 それに、エルフは他種族と会うのはあまり好まない。しかも相手は王族だ。僕なんかと会ってくれるかどうか、なんとも言えない難しい話だった。

「まあでも、行動しなきゃ始まらないか」

 僕はふーっと深く溜め息を吐いた。

 ここでじっとしていても僕の魔力回路は自然と治る訳でもないし、何かしらの方法が思い浮かんだり舞い込んできたりはしない。不確かな話でも、まずはダメ元でも試してみないといけないと、僕は考えた。

「ありがとうリフィア。ちょっと行ってくるよ」
「あ、待ってお兄ちゃん!」

 僕は一度宿に戻ろうと腰を上げた時、リフィアが僕を呼び止めた。そのまま急いで奥へとリフィアは走っていき、手に青紫色の液体が入った薬品を持ってきた。

「その.......お兄ちゃんって魔力回路も壊れるし結構疲れてたでしょ? これ、リフィアが調合した栄養剤なんだけど、良かったら飲んで欲しいの」

 僕は照れくさそうに指で頬をかいて、リフィアから栄養剤を受け取ろうとした。

 ガッ。

「うわっ!?」 
「きゃっ!?」

 リフィアの元に近寄ろうと歩いた時、僕は床の板と板の間につま先をひっかっけ、前のめりに転んでしまった。

 僕はまるでリフィアを押し倒すように倒れ込み、お互いの吐息が聞こえてしまう程密着した。

 な、何やってんだ僕は! 身体の調子が悪いからって、何リフィアを押し倒してんだよ! 

 前回といい、何かの拍子でロリコンのスキルが暴走したら不味い。またリフィアを襲ってしまう。

 は、早くどかないと.......。

「お兄ちゃん、あのね」

 リフィアから退こうと手を引こうとした時、リフィアの小さい手が僕の腕を掴んでいた。意外にもその力は強く、無理に解くことは出来なかった。

「あの時からずっと、お兄ちゃんのことしか考えられないの。頭から離れなくて、気付いたらお兄ちゃんのことばかり考えているの」

 僕の胸がキュっと締め付けられるようにトクンと波打った。

「リフィアもお兄ちゃんのことが.......好き。お兄ちゃんにしてくれたらリフィアは嬉しい.......。だ、だから」

 リフィアは目をうるうるさせて、僕に言った。

「キスして.......いい?」

 俯き、頬を仄かに桜色に染めるリフィア。優しく僕の肩に両手を添えて、微かに開かれたその小さな口元は、少しずつだが僕の唇に向かっていく。

 そんな、嘘だろ? 確かにリフィアは結構ガンガンくるタイプだったけど、こんなのいいのかよ?

 僕は喉元をごくりと鳴らしながら葛藤する。

 数日前にもっとアウトな事をした僕だけれど、まだ十歳にも満たない女の子とキスするなんて人として最低な事なんじゃないか。そもそも手を出していい相手じゃないだろ。

 リフィアとキスなんてしたら、僕はいよいよロリコンだ。これ以上己の欲望に忠実になって行動してると、悪評が更に広まってどうしようも無くなってしまうだろ!

 -スキル『ロリコン』が発動しました-

 くっ、やっぱりきたか、ロリコンのスキル。

 だけど僕は屈しない。ここで思いとどまれ、ウェルト。欲望に駆られてリフィアに手を出したらいけないんだ!

「.......お兄ちゃん」

 名前を呼ばれるとドキドキして愛おしい。上目遣いでおねだりするように、つぶらな瞳で見つめられるとなんとも言えない感情で胸が痛くなってくる。

 理性が飛んでしまいそうだ。今、自分の中に潜む欲望と言う悪魔と戦ってる僕に向かって、吸い込まれるようにリフィアの小さな唇がゆっくりと距離が縮まっていく。

 身体は正直だ。このままがっついて滅茶苦茶にしたい欲求が抑えきられない。

「大丈夫。今なら誰も見てない、から.......」

 すかさずリフィアも追い討ちをかけるように僕を誘惑する。

 少し薄暗く僕とリフィアだけの店の中。今はまだ日も登って少しの朝方。他の冒険者が店に来るにはまだ早いだろう。それに、ネメッサの街は復興中で冒険者はしばらくはクエストに行っていないと聞く。裏を返せば、薬目的でリフィアの店に来る冒険者は殆どいないだろう。

 そうだ。リフィアの言葉通り、絶対に誰にも見られず声も聞かれない。今ならなんでもできるんじゃないか?

 いや何考えてるんだ僕は! 誰にも見られないとかそんな問題じゃないだろ!

 リフィアに手を出す事に問題があるんだよ!

「お兄ちゃん。リフィア、エッチな悪い子でごめんなさい」

 そこで僕は吹っ切れた。

 ええい、なにびびってるんだ僕は! 前にリフィアともっと凄いキスしたことがあるんだし何躊躇ってんだ!

 もういい、認めてやる! どうせ僕はロリコンだ! 周りの評価なんてどうでもいい! 既に街中でも白い目で見られてるし失うものは何もない!

 リフィアのおっぱいを舐めている場面も見られて、仲間にも全員にロリコンだって認定されたんだ!

 ここでリフィアとキ、キスしなくてどうする! 前回はお預け食らったんだ、次こそちゃんとやらないといけないんだ。リフィアが勇気を振り絞って言ってくれたんだぞ! 漢ウェルト、覚悟を決めろ! 愛に年の差なんて関係ない!

 僕が絶対にリフィアを幸せにしてやる!

 僕はリフィアの頭を掴み抱き寄せて、口付けをしようと.......

「ごめんくださーい!」

 ガチャっと店の扉が開かれて太陽の光が店内に差し込んだ。

 そこに映し出されたのはリフィアを押し倒して顔を近付けていた僕。

「き、君、リフィアちゃんとな、な、な、何をしようとしていたの.......?」

 店のドアを開けたのは、あの時の女性の冒険者だった。

「待ってくれ。言い訳をさせてくれ」

 何も思い付きませんでした。

「衛兵さーん!」
「ですよねええええええええ!!!」

 僕は颯爽と街中へと逃げ出した。
 


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