ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

第2章 エピローグ 【罪科】



 エピローグ


 空に巨大な結晶の塔が浮いていた。キラキラと満天の星空のように輝くそれは、目が眩む程の光を発していた。

 結晶塔の面には複雑な紋様が七重に刻まれており、そこに存在しているだけで幻想的な光景を醸し出している。

 その結晶塔を下から眺めている男が一人。男は足を組み、豪華な王座に座りながらグラスに注がれたワインを優雅に飲み干した。

 その仕草はただならぬ気品が漂っている。金を基調とした黒服を身に包んだ男は、空になったグラスを肘掛けに置くと呟いた。

「妙な胸騒ぎだ。しかし今宵も封塔は変わらぬか。相変わらず封印が解けるのはまだ先のようだ。だが、今日は何かが起こる気がしてならぬな」

 男が頬杖を付いて言葉を言い終えた時、暗がりの通路の中から人影がひとつ現れた。

 通路をカン、カン、と心地良く響く音を立てながら、眼鏡を掛けた若い女性が姿を露わにした。

 女性はただならぬ雰囲気を発していた。額には魔人族の特徴である角が生えており、目は赤と青のオッドアイ。赤を基本とした華やかな衣装を羽織っている。

 女性は男の前で一礼をすると話し掛けた。

「魔王様、先程普人族が暮らす大陸でムニェカ、続いてユリウスの反応が消えました。同時刻で全力のユリウスの魔力量を遥かに凌駕する魔力量を観測しました」

 貴重な部下を二人も失ったのに、男はほう、と感嘆とした声を漏らして口元を緩めていた。

「そうか。倒したのは先代を討った『勇者』か、それとも今まで通り『覚醒者』か。とはいえ、どちらにせよ変わらぬか」

 男は少しの間思案すると、女性に質問を投げ掛けた。

「ムニェカはともかく、ユリウスを倒した人間は気になるな 誰がユリウスを殺った?」

 男の脳裏ではユリウスの顔が思い浮かぶ。ユリウスは自分の部下の中でも一位二位を争う猛者であった筈だ。そう簡単にやられるような男ではない。

「こちらです魔王様」

 女性は独自に開発した魔法を詠唱し、虚空に光の板を映し出した。その中にいたのは悪魔の姿となったユリウスと、一人の少年。

 女性が指を鳴らすと、男の目の前でユリウスの最期の瞬間が流れる。

 黒い曲剣を携えた少年は尋常ならざる白い魔力を纏っていた。対するユリウスは唸り声をあげて剛腕を少年へと振りかぶった。

 ユリウスの拳が届く直前、少年は異質な魔力を込めた一太刀をユリウスへと浴びせる。

 世界が歪む。歪んで、斬り取られる。

 周囲の空間ごとユリウスを斬り裂いた一閃は、確かな終止符をユリウスに与え、戦いを決着へと導いていた。

 そこで映像は止まり、終わりを示した。
 
「中々面白いではないか。しかも固有属性持ちか。この時代、まさかわれの代で中々の逸材が見つかるとはな」
「魔王様、お言葉ですが喜んでいる場合ではないかと。この人間は特に危ない輩です。必ずや魔王様の元へと辿り着く危険因子。そして、この女も」

 女性は場面を変えて損壊した王城を映し出す。そこにいたのはムニェカと、真っ赤に燃える炎のような髪を靡かせる女。

 赤髪の女は重砲を向けると砲身から想像を絶する威力の炎の渦を撃ち出した。画面が紅蓮の炎で塗り尽くされ、ムニェカは断末魔をあげる間もなく灰となって消えていく。

「ほう、先の人間と負けず劣らずやり手のようだ」
「魔王様。調べてみると、この二人はどうやら仲間のようです。『覚醒者』が二人。早急に手を打たねばなりません」

 男は顎を擦り少し考えた後、結論を出した。

「構わん。放っておけ」
「ですが.......!」
「どうせ朕が刺客を送り込まなくても、あいつらの方から自ずとやってくるだろうからな。必ず、な」

 男は頭の中で少年の映像を再生する。手を打っても無意味だろう。女性の言葉通り、あの少年は必ずや自分の元へとやってくる。障害も全て乗り越え、自分の部下を全て倒し、この玉座まで赴くのだろう。 

 確証や理由なんて何も無い。ただ、そんな気がするだけだ。
 
「もう良い。下がれ」
「.......仰せのままに」

 女性は暗闇の影の中へと姿をくらました。再び一人となった男は結晶塔を見上げて眺める。

 結晶に描かれた七つの紋様のうち二つが怪しく光り輝く。男は映像を見た後に感じ取っていた。欠けたピースが確かに嵌ったことに。

「七大罪がふたつ。遂に動き出した、か」

 彼は第八代目魔王。『罪科ざいか』。

 罪を創り、罪を広め、世界に仇なす者。

「まさか、な」

 男は天に聳える結晶を見上げ、その中に閉じ込められている白い髪の少女をずっと見つめていた。



 第二章 完。




※「朕」は音読みで「ちん」とも読みますが、何か格好悪いので作者は訓読みの「われ」と読んでいます。読み方が同じの「我」との違いは、「朕」は実際に偉い方が使う一人称ということです。同じ「我」の一人称を使うエキューデは偉くもなんともないですからね(笑)

これにて第二章完結.......といきたい所ですが、あと三話だけ後の話というか、後日譚を投稿をします。それと並行して改稿作業を行います。

しばらく更新は不定期となりますが、第三章が始まるまで気長にお待ちください。



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