ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-48 灼熱の記憶の欠片 7


 2-48 灼熱の記憶の欠片 7


 筆記試験と実技試験が終わった後日、私達は再び試験会場へと足を運んでいた。

 何を隠そう、一次選考の結果発表を見る為だ。

 試験会場の前には白い布を被り、木材で作られた巨大な板がエルクセム王都の騎士達によって運び出されていた。
 そこには、一次選考を突破した受験者の受験番号が書かれている。所謂いわゆる合格発表板と言ったところか。

「いよいよですねアシュレイさん」
「頼む.......頼むよ.......」

 私の隣でドレムとエドガーが呟いた。ドレムは期待に満ちた声で、エドガーは酷く青ざめた顔で今か今かと時を待っていた。

 いよいよ騎士達は所定の位置に運び込んだようで、合図を掛けると一気に布を捲り返し、一次選考突破の結果を発表した。
 それを皮切りに、布を取られた瞬間周りの受験者達は我先にと一斉に駆け出した。

 それはエドガーとドレムも同じだった。電光石火の速さで砂糖に群がる蟻のように合格発表板に張り付くと、必死に自分の番号を探し始めた。

「39番、39番、39番.......あった! やったぜアシュレイ! 一次選考を突破したぞ!」
「あ! 私の番号もありました! それにほら、私の上にアシュレイさんの番号もありましたよ! これで三人全員一次選考突破ですね!」

 もしかしたら一次選考を突破出来ないかもしれない.......という不安は杞憂に終わってくれたようだ。

 ヴィクトルと取引していたとは言え、試験官を病院送りにしたのは流石に不味かったと、心の中で少しばかり思っていたが無事に突破できて良かった。

 まあ、エドガーなんかは私より酷い有様で、青ざめた顔の上に血眼になって貼り出された紙と睨めっこしていたぐらいだ。とにかく、全員一次選考を突破して一息付けたと言ったところか。

 周りを見渡すと、数多くの受験者達はそれぞれ一喜一憂をしていた。一次選考を突破したの者は全体の二割から三割しかいないだろう。多くの受験者は酷く落胆した表情を顔に浮かべ、重い足取りで立ち去っていく。

 騎士団の入団試験を受ける人間の大半は他方の村や街からの出身が大半だ。騎士になれば手厚い給料を貰え仕事が安定し、身分も保証されるので、人気があり、目指す人が多く後を絶たない。

 しかし、ご存知の通り入団試験は甘くない。他方の村や街と言った環境では、まともな訓練と一般教養が出来ていないのが殆どだ。つまり、王都出身の人間以外の受験者は元々不利な状況だ。王都出身の人間は騎士団訓練プログラムもあるので尚更だ。

 酷な話だが、他方の村や街の出身で入団試験を合格出来るのは本当に一握りしかいない。大半は落とされて元の場所に帰り、それぞれのあった別の職に就いていくのが普通だった。

「よっしゃあ! これで俺は騎士になれるぜ!」
「何言ってんですかエドガーさん。一次選考が通っただけですよ? まだ試験はありますし、次は毎年脱落者が何人も出るサバイバル試験ですよ」

 ドレムの言う通り私達はまだ一次選考を突破しただけに過ぎない。筆記試験と実技試験に続く三つ目の試験。それが、サバイバル試験。

 筆記試験では一般的な物から騎士の心構えまでの知識を試された。実技試験では試験管相手に対人戦闘の実力を試された。

 では、サバイバル試験とは何を試されるのか?

 それは、生き残る術を試される訓練である。

 第三試験まで潜り抜けてきた入団試験者達は、それぞれナイフ一本と鍋一つ、そし各々の武器とバックを背負いエルクセム王都郊外の山、ウラルキア山へと連れて行かれる。そこがサバイバル試験の会場だ。

 ウラルキア山には当然の如く魔物が跋扈している山だ。と言っても、出現する魔物の脅威度はFが精々、稀にEが出現する程度なので、しっかりと訓練していた人間が魔物に殺される心配はないだろう。

 問題は自給自足の生活力である。ウラルキア山での試験日数は三日間。たかが三日目と侮るなかれ、食料も寝床も無い場所で三日目も生きていかなければないらないのである。

 事前の通り、入団試験者に渡される物はナイフ、鍋、バック、そして各々の武器一つずつだけ。食料の持ち込みなぞ当然許されない。

 発覚した瞬間、強制失格と入団試験を永久に受けられない処罰が待っている。
 入団試験者はありとあらゆる知識を持って、このウラルキア山で生き残ることを求められるのだ。

「へへっ、筆記試験に比べれば屁でもないやい。余裕でサバイバル試験も、その次のトーナメント試験も俺は余裕で受かるからな!」
 「凄まじい自信ですね.......」
「まあ、次の二つの試験はエドガーからしてみれば得意な方に入るからな。この様子なのも頷ける」
 
 実質、入団試験でのエドガーの一番の難所は筆記試験だった。それさえクリア出来れば、エドガーにとって残りの試験は気が楽な方なのだろう。

「そうですね。次のサバイバル試験は四日後ですね。皆さんはそれまでの間どうします?」
「自主訓練、そして復習だな」

 どレムの問に私は答える。前回、試験官を倒した時は重砲頼りだった。剣での訓練は怠っていないつもり無かったが、やはりエルクセム騎士団の連中は剣術の技量が段違いだ。私も更に精進しなければないらない。

「俺もアシュレイと同じかな。俺が戦った試験官は相当強かったし、もっともっと強くならないと騎士団長にはなれねぇ。訓練あるのみだぜ!」

 こうして、私達は別れていった。四日後に会う約束を交わして。

 そして四日後。

 サバイバル試験が開始された。


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