ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-40 【悔恨】の能力



 2-40 『悔恨かいこん』の能力


「ねえねえミナト! あそこがドレムが言っていた第二騎士団本部なんじゃないかな!」

 第四騎士団の連中相手にエキューデが殿を務め、先に進んだ俺達は王城の廊下を全速力で走っていた。変わり映えのしない廊下をかなり進み、ノアが指をさした場所には重厚な扉で閉ざされたいかにも偉い人がいらっしゃいそうな部屋だ。

「よっしゃあ! 目標は赤髪の女性と白いエプロンを着た子ども! 突撃ぃ!」

 俺は勢いよく扉を蹴破る。ガゴッ、と扉が力のゴリ押しで外れて倒れ、部屋内の薄暗い光景が俺の目に映った。

「..............」

 一秒後。俺はノックをせずに扉を開けたことを後悔した。

 部屋の中に居たのは麗しき全裸の女性。すっぽんぽんだ、すっぽんぽん。布キレ一枚も纏っていない。女性のアソコも丸見えだ。

 まさか着替え中だとは思わなかった。部屋に入る時はノックが大事だと幼少の頃から教わっていたぞ、俺! それは異世界であっても変わらないだろ! 

 いや、これは事故だ。そう、事故だ。囚われた人間を助けたいが為に部屋を間違えて開けてしまっただけだ。

 目の前に佇むのは美人の女性。この世界の顔面偏差値は非常に高い。海外のモデルさんも裸足で逃げたすレベルの別嬪さんだ。俺はそんな別嬪さんの裸を見ている。謝ればきっと許してくれるに違いない。

 だから、

 一生涯脳内にこの芸術作品を焼き付けろ!

 グギッ!

「ミナト! 部屋の奥!」

 俺はノアに足を踏まれて正気に戻った。視線を男子の欲望を体現した美から部屋の奥に移すと、そこには倒れて気を失っている赤髪の女性と、

 下卑た笑みを浮かべて見下ろす若い男がいた。

「.......! あいつだ、ドレムさんから聞いた特徴からしてあいつが第二騎士団団長のムエル=トランシュだ!」

 ドレムさんからは特殊な性癖を持った変態と噂をされている、と聞いていた。

 噂通りじゃねーか。美人の全裸の女性をスタンバイさせて待たせている羨ま.......なんて卑劣な人間なんだ!

「今日はやけに騒がしいな。なんだ、君達は?」

 ムエルが不機嫌な顔をして俺達に鋭い眼光を向けた。あまりの剣幕に一瞬怯んだ俺だが、すかさず男を睨み返し鑑定を発動。

 表示せたLvは.......ERRORエラー? 実力が未知数なのか、それとも俺とのLv差が激しすぎてLvまでもが鑑定できないのか。とにかく分からないが用心することに越したことはない。

「やれやれ。シャルル、お掃除よろしく」

 ピクッ、とシャルルと呼ばれた全裸の女性の身体に電撃が走ったかのような反応を起こし、こくんと頷いて手を上に掲げた。

 虚空に現れたのは俺の身の丈を越える大きな槍。見ているだけで畏怖され、身体が竦んでしまう。その槍が放つ倒錯的な雰囲気に、辺りの空間が歪んで見える。

「ミナト! その女性洗脳されているよ! しかも神器使いだよ!」

 洗脳? 催眠術みたいなもんか? この男なんて便利な能力持ってんだ羨ま.......この外道め!

 俺は胸裏に怒りも燃やして部屋の中に突っ込んだ。幸い、あまり広くはない室内で長すぎる槍は上手く扱うことが出来なかったようで、俺は簡単に全裸の女性を潜り抜けてムエルの居場所まで向かうことが出来た。

 部屋が薄暗かったせいでよく分からなかったが、近づいたことで部屋の現状が理解出来た。ムエルが見下ろしているのは赤髪の女性。ウェルトからの話通りなら、あの人がアシュレイさんだ。

 ムエルは掌から不気味に光る光彩をアシュレイさんの額に当てている。一体何をしている? いや、変態の行動は理解出来ないし理解したくない。とにかくアシュレイさんを助けなければ!

「その人から手を離せ! オラァッ!」

 アイスダーツを発動。一本の氷矢がヒュンと風切り音を鳴らして飛んで行った。

「全く、邪魔をしないでくれるかな? こっちはお人形さんを作るのに忙しいんだから、ねぇっ!」

 不気味に光る掌を女性の額から離し、ムエルは勢いよく立ち上がった。

 氷矢を裏拳でペシっと弾いて目にも止まらぬ速さで拳を振り上げる。

「あだっ!?」

 頬に走る衝撃。俺は何も出来ないまま不様に吹っ飛んだ。机や椅子を押し倒し、背中から壁に勢いよくぶつかった。

 くそっ、痛てぇ。俺のステータスが低いからか何の反応も出来ないままやられた。

 まじで動きが見えなかった。だけど俺がやるしかねぇ。圧倒的なステータス差があっても、あの糞変態サイコパス野郎は俺がなんとかしなければいけない。

 今、この瞬間、アシュレイさんを助けれる人間は俺しかいないんだから。

 俺は顔を顰めながら殴られた頬を擦りながら立ち上がった。すると突然、眼鏡に靄が掛かったかの様に視界が曇りだし、目に映るもの全てが白に侵されていく.......。

 なんだ、何が起こった? あの不気味な光を食らったからか? 俺は必死に思考を巡らすが、やがて何も考えられなくなっていき視界が暗転した。



 ◆◇◆



 周りの世界がぼやけて輪郭があやふやになる。

 ぐるぐると目が回りに回って、俺の目に映ってきたのは俺だった。

 何を言っているのか俺にもよく分からない。 しかも目の前の俺はピッカピカの学生服を着ている俺だった。理解が出来ない現象に俺はポルナレフ状態に陥った。

 何これ? 新手のスタンド攻撃かよ。

 俺はごしごしと目を摩った。何も起こらない。夢なら覚めて欲しかったんだが。辺りを見回すと、風が穏やかに吹く屋上に、優しく照り付ける太陽の下に二人の男女が立っていた。

 一人は俺だ。目の前にいる女子を見つめて赤い顔でモジモジし、上擦った声で口を開いた。

「お、俺、成瀬さんのことが好きです! 俺と付き合ってくださいっ!」

 いきなり何を口走っている目の前の俺は。

 .......!? はっ、そうか!

 俺はこの瞬間、自分の身に何が起こっているかを全て理解した。

 今の俺には『過去の俺が経験した記憶』を見せられているんだ。

 これは高校一年生の夏休みシーズン直前の出来事だ。俺はクラスの成瀬美穂なるせみほという女子に一目惚れし、「夏休み直前に告ってOK貰ったら最高の青春送れるんじゃね?」という天才的な考えに思い至り、靴箱にラブレターを仕込んで屋上に呼び出すと昔から使われたベター作戦を実行して告ったのだ。

 .......今にして思えば、成瀬さんに告白した過去の俺を助走を付けてぶん殴りたくなる。ぶん殴って地平線の彼方までぶっ飛ばしたくなる。

 俺は本能のままに成瀬さんに告った過去の俺を助走を付けてぶん殴った。そして空振った。

 VRの電子映像には触れないように、俺の手は過去の俺の身体をすり抜けて貫通した。

 過去は変えられないってのか? 使えないスタンドめ。

 俺は奥歯を噛みしめて憤慨し、ポケットに手を突っ込んで過去の俺と成瀬さんを見守る。

 この後の出来事は全て黒歴史だ。正直見たくない。いや、見ない。俺は二人に背を向けて後ろを向いた。

 だが、後ろにも俺と成瀬さんが向き合っていた。驚いて後ろをまた振り向くと、そこにも俺と成瀬さんが向き合っていた。

 喩えるならば前と後ろにテレビが設置がされているみたいだ。強制イベントかよ。

 俺は仕方なく二人を見守る。先に静寂を破って口を開いたのは成瀬さんだった。
 
「えっと、ごめんね? 私はミナト君はバスケも上手いし顔も.......そこそこかっこいいとは思うんだけど、悪いけど恋愛に興味は無いの。ごめんなさい!」

 そう、答えはNoだ。俺はふられた。ふられたのだ。だが問題はそこではない。女子に告ってふられただけでは黒歴史なんかにはならない。

  青春とは甘酸っぱく、ほろ苦いものだ。男子が女子に告白し、砕け散ることは日常茶飯事だ。では、何が問題だったかと言うと.......。

「あ、だけどね、湊君が私のお願い聞いてくれるなら、お遊び感覚で少しだけ付き合ってあげてもいいよ?」
「ほ、ほんとか! で、そのお願いって何だ?」

 やめろ、馬鹿野郎!

 俺は成瀬さんの提案に速攻で乗った愚かな過去の俺を殴った。殴ったけど俺の拳は貫通して空振った。

「私、実は漫画家目指しているんだけど.......最近スランプ地味でさ.......」

 成瀬さんが取り出したのは数枚の紙束。ま、紙束の正体は成瀬さんが書いた漫画なんだけども。それを過去の俺に突き付け、「読んでみて」と催促する。

 俺はそっと顔を横に逸らす。あれは禁断のバイブル。決して見てはいけないもの。しかし、俺が目を逸らした虚空には禁断のバイブルが御丁寧に大画面で表示されていた。

 拷問かよ。

 過去の俺はまずは表紙に目を通した。そこには二人の半裸の男性が抱き合っている姿と、『飲み込んで、俺のゲイボルグ』という常人には理解し難いタイトルが描かれてあった。

「え? なにこれ?」
「いいから」

 過去の俺は一抹の不安、まあ不安しかないが、表紙を捲って一ページ目を読んだ。
 そして、眼球の中に飛び込んできたのは圧倒的すぎる描写の暴力だった。

 一言で説明するならばいきなりクライマックス。とりあえず男と男がHしている。そう説明するしかなかった。

 過去の俺は思わず吐きそうになる。赤くしていた顔を今度は青くして口を抑えている。勿論、大画面で男の尻に男のアレを突っ込まれているところを見せられている俺も吐きそうなる。うへぇ。
 
「私ね、男×男の漫画家を目指しているの。で、そのね? 湊君のバスケ部の部長さんいるでしょ?」
「うおえっ、剛力羅五里男ゴリラゴリオ部長だろ?」

 成瀬さんが赤い顔でモジモジしながら聞いてきた。

 剛力羅五里男。俺の通っている高校の三年生にしてバスケ部の部長。見た目を簡単に説明すると筋骨隆々のゴリラだ。名前だけに。

「その人と湊君に..............やってきて欲しいの.......」
「.......今なんと?」

 声がか細くて聞こえなかった。だが予想は出来ている。考えたくもない予想だ。だけど過去の俺はあえて聞き返す。成瀬さんの言葉を認めたくないから。過去の俺が聞き間違えたと思いたかったから。だから過去の俺は聞き返したんだ。

「だから、その、部長とセ.......」
「聞こえない!」

 過去の俺は両手で耳を塞いで頭をブンブンと振り払った。俺も両耳に指を突っ込み即席で作った耳栓で耳を塞ぐ。それでも無慈悲な事にダイレクトで成瀬さんの声が頭に響いてきた。どうやら無駄らしい。

「部長とセッ.......」
「聞こえない! 聞こえない!」
「ううっ! もうっ!」

 成瀬さんが顔を真っ赤にして、校内放送をも凌ぐ大音量で屋上で叫んだ。

「湊君と! 部長が! ××××しているところを動画に撮って私に見せてくださいッ!」

 ※自主規制

「ふざけんな!」

 過去の俺は吠えた。そりゃあ大声で吠えたさ。 

 好きなった成瀬さんがまさか腐女子だったとは思わなかった。しかも、何が悲しくて男と××××してこいとお願いされているんだ俺は。

 俺は泣いた。俺は泣いて成瀬さんから逃げ出したんだ。



 ◆◇◆



「ふふふ.......。お人形さん作りの邪魔をするからこうなんだよ。哀れな君は失大罪スキル『悔恨』で過去の自分を悔やんでいることだろう。その様子では後悔に呑まれもう二度と目覚めることはな」
「なんてもん見せてくれてんだボケェェェエエ工!」

 俺はムエルの言葉を遮り、顔目掛けて渾身の力を込めてフルスイング。手に伝わる確かな感触。バキりと快音を立てて、ムエルは半捻りして吹っ飛んだ。

「ば、馬鹿な!? 失大罪スキル『悔恨』が効いていないだと!? どうなっている!?」

 ムエルは頬を抑え、驚いた顔で俺を見上げてきた。

「それがテメーの能力か。ふざけんなお前。俺の黒歴史を鮮明に思い出させやがって。許さねぇ、ボッコボッコにしてやる」

 俺は魔法陣を展開してサンマソードを召喚。続けざまにウォーターカッターとアイスダーツを発動し、冷凍秋刀魚刀を造り上げる。

「だあらっしゃぁぁぁぁぁ!!!」

 俺は吠えた。あの時の哀しみと悲しみを思い出し、怒声の中に悲哀の感情を混ぜて吠えた。

 冷凍サンマ刀を上段斬りで叩き付ける。が、立ち上がる途中のムエルは顔を横に逸らしただけで俺の剣撃を躱し、お返しとばかりに俺の腹に正拳突きを打ち込んだ。

「ぐほっ!?」

 痛い! 痛い痛い痛い!

 内蔵が圧迫されて起きる鈍い痛みが俺を襲う。それと同時に、また視界が回って暗転する。

 またかよ。あと弱すぎんだろ俺。一度やられたら耐性とか付くだろ普通。

 そうして、俺はまた過去の記憶黒歴史を見せられるのだった。





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