ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-37 地下道での邂逅



 2-37 地下道での邂逅


 準備運動のいう名の一方的な蹂躙を終えた僕達は、無事に裏切り者のドレムと一緒にエルクセム王城内に侵入していた。

 白磁色の大理石で作られた床。壁に飾ってある豪華な燭台や雅な風景画。天井に吊り下げられているいかにも高価そうなシャンデリア。

 流石王城と呼ばれているだけはある。感想としては超大金持ちボンボンの家と言ったところか。

「ドレム、あの宝石が装飾された燭台ひとつだけパクっていい? 最近僕金欠でさスッカラカンでさ、王都のお土産とか買わなちゃいけないし、ここらで薄い財布を厚くしたいんだよ」

 そう言って僕は少し跳躍し、黄金の宝石が付けられた燭台を壁からもぎ取った。

 光が反射する角度から黄金の宝石は色鮮やかに煌めく。ほほう、これはいい金になりそうだ。

「キラキラに輝いてやがる。300Gぐらいで売れそうだなこれ」

 ※1Gはこの世界では100円の感覚。つまり300Gは30000円。

「たった300Gなわけないでしょ! その燭台ひとつで軽く5000Gはいきますよ! って、ウェルトさんがやってること強盗そのものじゃないですか! 貴方は金目の物を盗む為に王城に潜入したのではなく、リフィアちゃんとアシュレイさんを助けに来たんでしょう!?」 

 僕はドレムの言葉でハッとした。

「そうだ、僕は義賊として王城に潜入したんだ。一刻も早く第一騎士団本部に向かわないと」
「そうですよ。それに、義賊はお金に困っている人々の為に物を盗む者です。私欲に塗れた貴方は義賊とは言いません」
「だって僕もお金に困っている人の一人だし」
「最低ですね貴方」

 と、僕達は呑気に話しているが、正門ぶち破って真昼間から堂々と結構な騒ぎを起こしているので、ドレムと軽口を叩きあっている間は絶えず騎士兵達が襲い掛かってくる。

 僕は後ろから切りかかってきた騎士兵の顔面に裏拳を繰り出して昏倒。ドレムは杖の丸く湾曲した部分で腹パンして昏倒させ無力化する。

「ウェルトさん、そろそろ隠し通路の入り口に辿り着きます。辺りにいる雑魚共をお願いしますね」

 ガッ、とドレムは巧みに杖を操り騎士兵の頭を砕く。噴火の如く頭から血が吹き出して白目を剥いて崩れ落ちる騎士兵を、ドレムは雑に蹴り飛ばして先に急いだ。

「うわぁ.......、一切の躊躇いもないよこの裏切り者」

 僕は通りすがりに出会す騎士兵を腹パンしたり蹴り飛ばしたりしながら、燭台をポケットに仕舞ってドレムの後を駆け足で辿る。

 王城内の通路の角を曲がり、正面を見ると行き止まり。通路は途絶え、先には壁しかない。

 だが、ドレムはキョロキョロと辺りを見渡すかと思うと、不意に壁に飾られている一つの燭台を握り、勢いよく下に下げる。

 ガコンと音がしたかと思えば、突然行き止まりだった筈の壁が回転し、下に続く階段が現れた。

「すっげ、秘密基地みたい。この機能、もし僕の家建てたら付けたいな」
「感心してないで早く行きますよ、ウェルトさん」

 こうして、僕達は複雑な順路を辿り王城内の隠し通路の中に入っていた。



 ◆◇◆



「ブライトライト」

 ドレムが魔法を唱えると、杖の先端に光り輝く光球が現れた。暗闇に包まれた隠し通路を照らすには充分、と言うよりちょっと眩しいくらいだ。

 火をつけなくても松明の代わりになるから、魔法って本当に便利だ。暗視がある僕には不要だけども。

「ここは今や廃れた知るぞ人知る地下道です。第一騎士団本部からは少し回り道になりますが、ここが第一騎士団本部と繋がっているのを知っているのは私を含めて極ひと握りの人しかいません。.......正確には埃臭いし全く掃除されていないので通りたがる人がいないと言った方が正しいです」
「ほんとにな。ネメッサの街で入った地下水路よりも汚いぞここ。ネズミとゴキブリの楽園じゃねえか」

 ドレムが作った光球に脅え、ネズミが耳障りな鳴き声をあげて蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 暗視を発動して見れば、そこらじゅうにネズミとゴキブリが仲良く蠢くようにたむろしている。

 とてもじゃないが、あまり長くは居たくない場所だ。

「ここから一直線に進むだけで第一騎士団本部の真下に付きます。そこからは魔法で天井を爆破するなりして穴を開ければ到着ですよ」
「雑だな」
「う、うるさいですね! こんな場所に長居するのも嫌なので早く行きますよ!」 

 それは僕も同感だったので、大人しくドレムの横を歩いて真っ直ぐに進む。念の為に気配感知と罠感知、方向音痴の僕自身にも信用がないので地図作成マッピングも使って先に進む。

 変わり映えのしない暗い道を数分程歩けば、仄かに明るい光が差し、これまで進んでいた狭い通路とは一変、ネメッサの街の地下水路内で見た浄水炉の場所を彷彿させるとても広い空間に出た。

「ここです。第一騎士団本部は無駄に広くて豪華なので場所を取ります。その分、設計上真下にも何かしらの都合があったらしく、地下道の中でもここだけがただっ広い場所になっているんです」

 それにしても広い。ここにエマの住んでいる豪邸が優に数十個程収まるんじゃないかと思える程広い。自分でも言ってて喩えがよく分からんな。

「よし、盗賊術の穴掘りで突貫工事でもするか。ドレム、少し下がってて」
「あ、はい。それにしても便利ですね盗賊術。魔法がある私もあるとはいえ欲しいです」

 僕は自慢の身軽さで天井に張り付き、穴掘りを発動する。手をスコップ代わりに、堅牢な石で作られた天井を僕は苦もなく掘り進む。

「なんていうか、ウェルトさんってゴキブリみたいですよね。素早さのステータスが高いといい、穴を掘ってる所を見ると、どこにでも入ってくるゴキブリによく似ています。おまけに黒い服を着てますしね」

 なんとも酷い言われようだ。ついでとばかりに僕はゴキブリと同じく生命力が高くてしぶといので、ますますウェルトゴキブリ説が出てきている。

 何か言い返そうと天井からドレムの方を見下げたその時だった。
 
「ッ!?」

 突如気配感知が最大レベルの警鐘を鳴らした。あの時と同じだ、貪食の食人鬼と同レベルの警戒警報。全身に鳥肌が立ち、悪寒をその身に覚える。

 暗視を強く発動し、すぐさま全方向を見渡すと、前方から銀色に光る何かを視界に捉えた。

「ドレム!」
「あ、怒っちゃっいました?」
「違う! そうじゃない! いや、それもあるけども! とにかく頭を下げろ!」
「ふぇ?」

 僕の忠告は時既に遅く、ドレムは飛来した三本の剣に刺され壁に磔にされた。ゆったりとしたローブのみならず、壁までを突き破って刺さった剣からは、黒い茨のような蔦が生え、ドレムの身体を縛り上げる。

「ドレム!」
「ぐうっ、少し皮膚の表面を切られただけなので大丈夫です! それより『奴』が来ます! ウェルトさん気を付けてください!」

 奴? 一体誰のことだろうと考えたが、気配感知が警鐘を更に強め、背筋が逆撫でされるような殺気を感じ、紅花匕首を抜刀して後ろ向きに振り抜いた。

 腕越しに伝わる確かな衝撃。目の前で火花が散り、視界が赤と黄の弾ける色に覆われる。

 僕に向けられたのは鉛色に光る剣。それが紅花匕首と交差し、ジャリジャリと金属音を響かせている。
 
「ほう、反応はとてもいいようだ」

 金髪の精悍な顔立ちをした男が、ほう、と感嘆とした声で呟いた。互いに交差した剣を下ろし、後ろ向きに飛んで対峙する。

 黄金色だと見間違うかのような美しい金髪。機能性を重視して作られた無骨な鎧。そして、手に持つのは相当な大業物だと伺える剣。

 只者ならぬ雰囲気を発するこの人間、なるほど、確かに奴だ。

「第一騎士団の副団長はユリウスだったな。つまり、お前が第一騎士団の団長ってことか」
「その通りだ。私こそが第一騎士団団長の千剣の騎士、クラウディオ=オーギュストだ」

 クラウディオは滑らかに剣を腰に付けられた鞘に納刀し、鋭い眼差しでドレムを見つめた。

「ところで第三騎士団副団長のドレム、こんなところで何をしている?」
 「ドレムなら裏切ったよ」
「気持ちは分かる。ロイド君の性癖を受け止めるのは苦労するだろう。私に免じて今回は見逃そう」
「いや、何勝手に当事者の私置いて話進めているんですか!? 憐れむような視線を向けないでくださいよ!」

 磔にされてもドレムは元気だった。この様子だと問題はなさそうだ。

 

「さて、と。ドレムは見逃せるが.......。残念だが君は見逃せない」

 ドレムから完全に興味が失せたクラウディオは、次は僕に凍て付くような眼光を向ける。獰猛な獣の如く、その表情はとてもギラついていた。

「ですよねー。裏切り者はともかく、王城に不法侵入した盗賊は流石に見逃せませんよね」
「それも一理あるが、私はロイド君を倒し、ユリウスと交戦した君に興味がある。ただ、それだけだ」

 その言葉を皮切りに、僕とクラウディオは同時に臨戦態勢を取った。

「なあ、ドレム。もしかしてクラウディオは」
「バトルジャンキー、俗に言う戦闘狂です」
「最悪だ。僕が一番戦いたくないタイプだよ」

 クラウディオは虚空に手を掲げ、ほくそ笑んだ。

「私のお相手願おうか、少年」

 寂れた地下道の中で、僕と王都最強と謳われる男の戦いが始まった。



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