ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-33 それぞれの戦い



 2-33 それぞれの戦い


「どっせーい!」

 ドゴォン! と長閑な午後の時間をぶち壊し、大砲が放たれたかと耳を疑う程の轟音がエルクセム王都に響き渡った。

 僕の拳の先から放たれた衝撃波はエルクセム城の堅牢な正門を打ち破り、大きな凹みが作られたと共に吹き飛んだ。

「いやいや、冒頭からいきなり何やってんですか貴方は!?」

 後ろからドレムが野次を飛ばしてくる。うるさい。

 なんだよ、技術衝打メソッドインパルスで正門ぶっ壊した何が気に入らないんだ。

「こそこそ潜入するのも怠いじゃん? もう正面突破でいいよ正面突破」
「貴方盗賊職でしょう!? 普通はこっそり裏口から潜入するもんですよ!」

 僕はドレムに肩を竦めて、やれやれと首を振った。

「悪者に攫われたお姫様を助ける勇者がそんなことする訳ないだろ。正々堂々と戦うに決まっているでしょ」
「貴方は勇者と言うよりか、小狡い小悪党だと思うんですけど」
 「るっせ。余生なお世話だ」

 誰が小悪党だ、誰が。そんなもの清らかな心を持った僕には思い当たる節が.......結構あるな。

 軽口を叩いてた僕達たが、門をぶち破った事で、騒ぎに駆け付けてきた数百人以上の騎士兵が現れた。銀の甲冑の大軍がわらわらと視界を埋め尽くし、全員が殺気を飛ばして武器を構える。

「おっと、どうやらみんな殺る気のようですね。さーて、行きますか。裏切り者の第三騎士団の副団長さん」

 僕は口元を緩め、紅花匕首を腰のベルトから抜いて構えた。

「あーもう、これ手遅れみたいな感じですね。後戻りできませんね、これは。全く、仕方ないです。アシュレイさんを助けるまで、地獄の底までとことん付き合ってあげますよ」

 横にいたドレムも杖を騎士団の大軍に向けて不敵に笑った。

「ではまずは、準備運動と行きますか」

 たった二人だけの僕達に対し、騎士兵の大軍が咆哮を響かせ、圧倒的な数の暴力を持ってして襲い掛かかる。

 今ここに、アシュレイとリフィアを助ける為の開戦の火蓋が幕を切った。



 ◆◇◆



「あーあ。どうしてこうなったんだよ。俺って結構運が悪い系?」

 俺は頭を掻きながら、自分の不運を嘆いて天を仰いだ。

 俺達とエキューデが第二騎士団本部へ向かう途中、大多数の騎士兵達を押し退けて現れたのは、第四騎士団騎士団長。聖剣の騎士、レオナ=アリステナ。そして第四騎士団副団長。迅雷の騎士、ゼノ=ギラヴァンツ。

 そう、ドレムさん曰く戦闘能力に特化した騎士団だ。それもそのはず、レオナという女騎士はLv48、ゼノといういけ好かないイケメン野郎はLv45。Lv58のクラウディオ程ではないにしろ、確かに戦闘能力に特化していると言えるだろう。

 しかも、取り巻きのモブ騎士兵達のLvも平均25オーバー。こりゃあ、少々不味いかな。

 俺は第四騎士団の連中と出会す前の途中の会話を、思わず改めて思い出してしまった。


 
 ◆◇◆

 

「ドレムの話を聞いた通りだと、僕とドレムが第一騎士団本部へ。そしてエキューデとミナト達が第二騎士団本部。この二つのメンバーに別れようと思う」

 エルクセム城の方向に走りながら、俺達はウェルトの作戦を聞いていた。

「小僧、その理由は?」
「裏切り者に聞いた話通りだと、第一騎士団本部までの道はかなり入り組んでいるらしい。だから土地勘のある裏切り者は確定だ」
「言い方が酷いですね! 言い方!」

 ドレムさんが頬を膨らませて怒る。かわいい。

「次に僕は道に迷いやすい。ぶっちゃけると方向音痴だ。だから裏切り者に付いて行くから確定」
「俺達は余り物ってこと?」

 僕は頷いて言った。

「そゆこと」
「ひでぇ」
「ま、もう一つの理由が第一騎士団に最強のクラウディオってやつが居るんだろ? それに、僕とエキューデと二人がかりでも倒せなかったユリウスもいる。だから、少なくとも戦えるドレムを選んだんだ」
「た、確かに。第二騎士団の団長副団長の実力は未知数ですが戦闘能力は高いという話は聞いてないですね。そう考えればこのメンバー分けは妥当とも言えます」

 なるほどな、ウェルトとドレムさんが担当するのは第一騎士団。二手に分けるとしても、第一騎士団を相手とる方に戦力を分けた方が無難なのか。

 そう考えた俺はふと、これまでの会話で気付いた疑問をぶつけてみた。

「でもよ、それなら戦闘能力に特化した第四騎士団の連中はどうするんだ?」
 「.......ま、なんとかなるだろ」
「投げた! この人投げやがったよ!」
「ですが第四騎士団はどうしようもないです。何処で出会すかは本当に私も分からないですから」
 
 

 ◆◇◆



 出会しちゃったよ。戦闘能力に特化しやがった第四騎士団の連中に。ご丁寧に団長副団長も揃っています。

 そうだね、何処で出会すかは分からないもんね。だけどこんな簡単に見つかるとは思ったもみなかったよ。

 どうすんのよこれ。

「おい、そこのはなたれ小僧」
「誰がはなたれ小僧だ!」
「子奴らは我一人で充分だ。はなたれ小僧は先に行け」

 エキューデが俺に向かって手をしっしっと払い、先へと促している。

「本気で言ってるのか? お前一人でほんとに大丈夫なのかよ?」

 俺はエキューデの余裕ぶった表情に理解が出来ない。こんなんリンチ確定だろ。フルボッコにされてお終いだ。

「我を誰だと思っている? 偉大なる屍霊魔術の我に掛かれば、こんな雑魚共、ものの数分で片付くに決まっておる」

 鼻でふん、と笑ったエキューデの顔を見て、俺はやっと理解できた。

 こいつ.......そういうことかよ。
 悔しいが俺達は戦力にまるでならない。エキューデにとって俺達は居ても邪魔なだけだろう。

「.......分かった。先へ行くぞノアと畜生二匹! おい、エキューデ、俺達は遠慮しないで先に行くからな!」
「う、うん!」

 俺達は第四騎士団の騎士団長と副騎士団長の間を通り抜けて、第二騎士団本部へと先に進んだ。 

 ちらりと後ろを向けば、エキューデが「してやったり」という顔をで俺達に笑いかけていた。

「.......!」

 俺は思わず唇を噛んで下を向く。

 非力な俺には願うことしか出来ない。ただ無事を祈るだけしか、こんな俺には出来ないのだから。

 足音が遠ざかり、二人と二匹が走り去っていった後、残された者達は互いに何処か期待に満ちた眼差しで向き合っていた。

「さて、邪魔者は居なくなったことだし始めるとするか」

 余裕ぶった侵入者の言葉を聞いた、レオナ=アレステナは獰猛な笑みを浮かべた。

 王に狼藉を行った侵入者は三人と二匹。

 その内、レオナが危険因子と認めたのは目の前にいる、屍霊魔術師と名乗った男だけだった。

 レオナには分かる。この男、かなりの死線を潜り抜けてきた『強者』であると。

「随分と舐められたものだな。おい、ゼノ」
「はっ、団長」
「部下を引き下げろ。こいつはオレの獲物だ。一人でやる」
「御意」

 レオナの命令を忠実に従うゼノ=ギラヴァンツは一声掛けて、周りにいる有象無象を下がらせる。

 人の肉を使った即席のリング場。それがエルクセム城内で異様な熱気を醸し出した。

「久々の上物だ.......。精々オレを楽しませてくれよ?」

 レオナが天井に手を翳すと、何も無い虚空から装飾が施された神々しい雰囲気を纏う一振の剣が現れた。

 神器『聖剣』。

 レオナは聖剣の神器所有者。それが、レオナが聖剣の騎士と呼ばれている所以。

「神器使いか。相手に取って不足は無いようだな」

 侵入者はレオナの聖剣を見て、自分に相応しい敵だと認めた。

 それだけで、戦い殺し合いが成立する。

「第四騎士団長。レオナ=アレステナ! 推して参る!」




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