ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-21 石厳の騎士



 2-21 石厳せきげんの騎士


 僕の背丈をも超える石棘が何十本も飛来する。

 金属と岩石が擦れる音を散らしながら、僕は飛んできた石棘をランセットで次々と弾き飛ばしていく。

 腕を振るう度に手が痺れる。弾き飛ばせば飛ばすほど、腕全体に大きな振動が襲い、筋肉と骨が軋んでいく。

「おじさんの怒りぃぃぃぃ!」
「危なっ.......!」

 腰溜に構えて放たれたロイドの剣が、僕を捉えられず空を切る。

 身を捻ってなんとか躱し、ロイドの剣が骨で構築された地面を貫いた。

 化け物かよこの男。一体どんな思考回路をしてるんだ。魔法を展開しながら高等技術の剣術を織り交ぜて戦闘をするなんて、どれほどの修練を積めば出来るのだろうか。

 僕も戦闘中に魔法を使うこともあるが、同時に体を動かすには簡単な動作しか出来ない。

 しかし、驚くことにこの男は、魔法で展開した石棘の位置を調整しながら僕に斬りかかってくる。凄まじい精度で石棘を飛ばしながら、しかも自分自身に当たらないように調整し、近接戦闘を仕掛けてきやがる。

「なろっ! 空激波くうげきは!」

 僕がロイドの斬撃を躱した瞬間、その隙を狙ったかのように七本の石棘が集中して降り注いできた。

 一点集中の攻撃。

 流石にランセットで弾き飛ばせないと判断した僕は、すかさず全力の空激波を発動し、圧倒的な風圧で石棘を吹き飛ばした。

「おじさんの恨みぃぃ!」

 剣戟の音が響いた。ロイドの剣と僕のランセットがぶつかり合い、激しく火花が散った。

 石棘かと思えば剣。剣かと思えば石棘。
 
 魔法と剣術を器用に組み合わせるロイドの戦術に僕は劣勢を強いられていた。

「お主、中々やるな! 石火連刃せっかれんじん!」

 僕と戦闘をしている中で、初めてロイドが技能を発動した。展開された石棘を操りながら、剣撃と合わせて僕に襲い掛かかる。

 石棘を躱し、剣を躱し、石棘を弾き、剣を弾き、ロイドの猛攻を防いでいたが、躱しきれずにランセットで受けたロイドの剣圧で僕は足を滑らせながら一気に後方へ吹っ飛んだ。

 僕のランセットは分類からすれば短剣という括りに入る。

 それで長剣の括りに入るロイドの剣を受け止めれば、重さ、大きさに耐えられずに負けたランセットは、使用者にその衝撃をもろに伝達させる。

 もっと言えば僕の筋力のステータスは凄ぶる低い。ロイドの剣圧に耐えられないのは当たり前だった。

「天誅ぅぅぅ!」

 ロイドが更に石棘を展開させながら僕に向かって走る。剣を煌めかせ、石棘と巧みに連携しながら襲い掛かる。 

 石棘が不規則に飛び回り、ロイドの動きを隠しながら僕へと肉薄する。

 目に映る石棘と、後方から輝く剣の煌めき。

 まずい、この物量をランセットで弾くのは無理だ。

「小僧! これを使え!」

 僕の危機を察したのか、後ろからエキューデが何か赤い物を飛ばしてきた。僕はランセットをベルトに収めて跳躍し、飛んできた物を掴んで振った。

 一閃。

 巨大な石棘は、鋭く尖った先から綺麗に一刀両断され、何処かへ飛んで行った。

「なにっ!?」

 ロイドが驚愕の表情を顔に浮かべる。

 驚くことも無理もない。というかやった本人である僕も驚いている。

 飛来したさっきの石棘の大きさは相当なものだった。それを易易と切り裂いたのだから。

 エキューデから渡されたのは鍔の無い短刀だった。ただ、その短刀は異質だった。

 特に特徴的なのは、刀身から柄まで深紅に染まっていることだ。

紅花匕首べっかあいくち。我の血から作った短刀だ。切れ味は保証するぞ!」
「いい得物ありがとよ。偉大なる屍霊魔術師さん.......よっ!」

 僕は逆手に紅花匕首を握り、ロイドに向かって駆け出した。向かう石棘という石棘を紅花匕首で切り刻みながら、今度は僕がロイドを肉薄する。

霞駆かすみがけ!」

 発動した瞬間、視界から映る全ての動きが遅くなって見えた。

 石棘とロイドの動き。

 全てが抵抗が強い水中で動いているかのように、とてもゆっくりだ。

 飛んできた全ての石棘を紅花匕首で切り刻む。

 鈍い。あまりにも、鈍い。

 遅延化する世界の中で、ロイドの剣閃が空間を奔った。そして僕はそれを紅花匕首で向かい打つ。

 .......かに思えた。

 ロイドの剣が切れた・・・・・・・・

 手応えすら無かった。僕はロイドの剣を上に弾こうと振るったのに、まるで豆腐を切ったかの様な感触が伝わり、ロイドの剣の刃は根元から飛んでいった。

「え?」
「へ?」

 切れ味が尋常じゃない。ロイドの剣はジョサイアが腰に下げていた大業物と遜色がないものだった。

 それをいとも容易く切り裂いたこの紅花匕首の切れ味は、アダンマンタイトと呼ばれる最上級の希少鉱石レアメタルで作られた剣とほぼ同等、あるいはそれ以上の切れ味を誇るだろう。

「ぐはぁッ!?」

 互いに予想外の出来事が起きた故に隙を晒したが、霞駆けを使用して思考が早まっていた僕の方がほんの僅かだが早く動けた。

 旋風脚せんぷうきゃくを発動し、弧を描きながらロイドの腹を片足で思いっきり蹴り飛ばした。

 ごう、と旋風脚の文字通り、旋風が吹き荒れた。

 衝撃波と風圧が入り乱れ、ロイドは骨の地盤を擦りながら後ろへと押される。

「まだだ! 技術衝打メソッドインパルス!」

 僕は一気に決着を付けに行った。片足を踏み出し、渾身の力を込めてロイドの腹に技術衝打を撃ち込む。

 鎧が飴細工のように粉々に砕け散り、血を吐きながらロイドは骨の塊を盛大に破壊しながら激突した。

 ロイドは技術衝打の一撃で、糸の切れた人形のように動かなくなった。

「小僧、やったのか?」

 僕の後ろから、石棘を防いでいるだけで精一杯だったエキューデが顔を出てきた。やつれた顔をしながら、エキューデはロイドの顔をちょんとょんとつつく。

「やったみたいだ。よし、今のうちだ。もう動けないように簀巻きにしておこう」

 僕は暗器を発動し、エキューデが巻かれていた魔力封じの鎖を取り出した。それでロイドの身体をぐるぐると巻いて、簀巻きの完成だ。

「やったぜ!」
「やったぜ!」

 気絶して転がされたロイドの上で、僕とエキューデはお互いにハイタッチを交わした。僕達は悔恨をすっかり水に流して笑いあった。

 その時、

「小僧! 危ない!」

 いきなりエキューデが叫び、僕のことを後ろに押し飛ばした。

「えっ? かばっ!?」

 食らったのは電圧の弾丸。蒼い雷光が迸り、脇腹に電気が流れて痺れる感覚と共に、鈍く、鋭い痛みが全身に走った。

「何事かと来てみれば、この魔物を召喚したのは貴方達ですか」

 僕は脇腹を庇いながらゆっくりと立ち上がる。

 エキューデが僕を押し飛ばしていなければ、体のど真ん中に直撃して、かなりダメージを受けていただろう。

 ロイドの次に現れたのは黒いローブを纏った女性だった。杖を僕に差し向けていたのを見れば、この女性が僕に魔法を飛ばしたのは明らかだった。

「私の魔法を受けてすぐに立ち上がれるなんてとんだ化け物ですね.......。団長を無力化している!? 二人共、気を付けてください! この者達はかなりの手練です!」

 僕の精神のステータスは無駄に高いからな。あまり魔法が効きにくい体質なんだ。って二人共? 敵は複数なのか。

 僕は紅花匕首を構えて臨戦態勢に入る。しかし、ローブ姿の女性の後ろから現れた二人を見て、僕は目を疑った。

「お兄ちゃん!」
「ウェルト、お前はこんな所で何をしているんだ」

 ローブ姿の女性の後ろから現れたのは、つい先程別れたリフィアとアシュレイだった。


 

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